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個人の尊厳、幸福追求権(自己決定権、その他)

修徳学園高校パーマ事件 最一小判平成8年7月18日

概要
普通自動車運転免許の取得を制限しパーマをかけることを禁止する校則に違反するなどの理由で私立高等学校が生徒に対して自主退学の勧告をしたことに、違法があるとはいえない。
判例
事案:Xは、校則に違反するとして修徳高校から退学勧告されたことに対し、同校の普通自動車運転免許の取得を制限しパーマをかけることを禁止する校則が違法であると主張して訴訟を提起した。

判旨:「修徳高校女子部の、普通自動車運転免許の取得を制限し、パーマをかけることを禁止する旨の校則が憲法13条、21条、22条、26条に違反すると主張するが、憲法上のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体と個人との関係を規律するものであって、私人相互間の関係について当然に適用ないし類推適用されるものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和43年(オ)第932号同48年12月12日大法廷判決・民集27巻11号1536頁)の示すところである。したがって、私立学校である修徳高校の本件校則について、それが直接憲法の右基本権保障規定に違反するかどうかを論ずる余地はない。所論違憲の主張は採用することができない。
 私立学校は、建学の精神に基づく独自の伝統ないし校風と教育方針によって教育活動を行うことを目的とし、生徒もそのような教育を受けることを希望して入学するものである。原審の適法に確定した事実によれば、(1)修徳高校は、清潔かつ質素で流行を追うことなく華美に流されない態度を保持することを教育方針とし、それを具体化するものの一つとして校則を定めている、(2)修徳高校が、本件校則により、運転免許の取得につき、一定の時期以降で、かつ、学校に届け出た場合にのみ教習の受講及び免許の取得を認めることとしているのは、交通事故から生徒の生命身体を守り、非行化を防止し、もって勉学に専念する時間を確保するためである、(3)同様に、パーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためである、というのであるから、本件校則は社会通念上不合理なものとはいえず、生徒に対してその遵守を求める本件校則は、民法1条、90条に違反するものではない。上告人は、本件校則違反前にも種々の問題行動を繰り返していたばかりでなく、平素の修学態度、言動その他の行状についても遺憾の点が少なくなかった、というのである。これらの上告人の校則違反の態様、反省の状況、平素の行状、従前の学校の指導及び措置並びに本件自主退学勧告に至る経過等を勘案すると、本件自主退学勧告に所論の違法があるとはいえない。」
過去問・解説
(R3 司法 第2問 ア)
髪型の自由は、自己決定権として憲法第13条によって保障されるものである。それゆえ、非行を防止する目的で高校生らしい髪型を維持するよう求める校則の定めが、社会通念上不合理なものとはいえないとしても、これに反した生徒を退学させることは許されない。

(正答)  

(解説)
修徳高校パーマ事件判決(最判平8.7.18)は、「学校に届け出た場合にのみ教習の受講及び免許の取得を認めることとしているのは、交通事故から生徒の生命身体を守り、非行化を防止し、もって勉学に専念する時間を確保するためである、…同様に、パーマをかけることを禁止しているのも、高校生にふさわしい髪型を維持し、非行を防止するためである、というのであるから、本件校則は社会通念上不合理なものとはいえず、生徒に対してその遵守を求める本件校則は、民法1条、90条に違反するものではない。」としている。したがって、本肢前段は正しい。
しかし、本判決は、「本件自主退学勧告に所論の違法があるとはいえない。」としているから、本肢後段は誤っている。
総合メモ

どぶろく事件 最一小判平成元年12月14日

概要
酒税法7条1項、54条1項の規定は、自己消費目的の酒類製造を処罰するものであるが、憲法31条、13条に違反しない。
判例
事案:被告人は、無許可のまま清酒及び雑酒(どぶろく)を公然と製造し、酒税法違反で起訴された。

判旨:「弁護人…の上告趣意のうち、違憲をいう点の所論は、自己消費を目的とする酒類製造は、販売を目的とする酒類製造とは異なり、これを放任しても酒税収入が減少する虞はないから、酒税法7条1項、54条1項は販売を目的とする酒類製造のみを処罰の対象とするものと解すべきであり、自己消費を目的とする酒類製造を酒税法の右各規定により処罰するのは、法益侵害の危険のない行為を処罰し、個人の酒造りの自由を合理的な理由がなく制限するものであるから、憲法31条、13条に違反するというのである。
 しかし、酒税法の右各規定は、自己消費を目的とする酒類製造であっても、これを放任するときは酒税収入の減少など酒税の徴収確保に支障を生じる事態が予想されるところから、国の重要な財政収入である酒税の徴収を確保するため、製造目的のいかんを問わず、酒類製造を一律に免許の対象とした上、免許を受けないで酒類を製造した者を処罰することとしたものであり(昭和28年(あ)第3721号同30年7月29日第二小法廷判決・刑集9巻9号1972頁参照)、これにより自己消費目的の酒類製造の自由が制約されるとしても、そのような規制が立法府の裁量権を逸脱し、著しく不合理であることが明白であるとはいえず、憲法31条、13条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(昭和55年(行ツ)第15号同60年3月27日大法廷判決・民集39巻2号247頁。なお、昭和34年(あ)第1516号同35年2月11日第一小法廷判決・裁判集刑事132号219頁参照)の趣旨に徴し明らかであるから、論旨は理由がない。」
過去問・解説
(R5 司法 第1問 イ)
最高裁判所は、自己消費を目的とする酒類製造を処罰することの合理性が争われた事件において、自己消費目的の酒類製造の自由は人格的生存に不可欠であるとまでは断じ難く、制約しても憲法第13条に違反するものでないとした。

(正答)  

(解説)
どぶろく事件判決(最判平元.12.14)は、「自己消費目的の酒類製造の自由」に言及しているが、これが「人格的生存に不可欠である」か否かについては言及していない。
総合メモ