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表現の自由(表現の自由と国家の援助)

船橋市市立西図書館事件 最一小判平成17年7月14日

概要
公立図書館の職員である公務員が、閲覧に供されている図書の廃棄について、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをすることは、当該図書の著作者の人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となる。
判例
事案:Y1市が設置する公立図書館Y2(以下「Y2館」という)の職員(司書)であるY3は、Xらの著作に対する否定的評価と反感から、独断で、Y2館の蔵書から、Xらの執筆又は編集に係る書籍を廃棄した(廃棄された書籍はいずれも、Y2館の除籍基準に該当するものではなかった)。Xらは、Y1市及びY3らを被告として、本件廃棄により著作者としての人格的利益を侵害されたことを理由に、損害賠償を求めて出訴した。
 第一審判決・第二審判決は、Xらが主張する著作者としての人格的利益について、当該図書館がその自由裁量に基づいて自らの判断と責任で購入し、市民の閲覧に供したことによって反射的に生じる事実上の利益に過ぎず、それを法的に保護された権利ないし利益ということはできないとした。

判旨:「公立図書館の上記のような役割、機能等に照らせば、公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場ということができる。そして、公立図書館の図書館職員は、公立図書館が上記のような役割を果たせるように、独断的な評価や個人的な好みにとらわれることなく、公正に図書館資料を取り扱うべき職務上の義務を負うものというべきであり、閲覧に供されている図書について、独断的な評価や個人的な好みによってこれを廃棄することは、図書館職員としての基本的な職務上の義務に反するものといわなければならない。
 他方、公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる。したがって、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。そして、著作者の思想の自由、表現の自由が憲法により保障された基本的人権であることにもかんがみると、公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている著作者が有する上記利益は、法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であり、公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な職務上の義務に反し、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。
 …前記事実関係によれば、本件廃棄は、公立図書館であるY2館の司書Y3が、…その著書に対する否定的評価と反感から行ったものというのであるから、Xらは、本件廃棄により、上記人格的利益を違法に侵害されたものというべきである。」
過去問・解説
(H26 司法 第7問 ア)
表現の自由は、公立図書館に自己の著作物の収蔵を求めることまで保障するものではないから、公立図書館で閲覧に供された図書を職員が著作者の思想や信条を理由として廃棄することは、その思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものとはいえない。

(正答)  

(解説)
船橋市市立西図書館事件判決(最判平17.7.14)は、「公立図書館が、上記のとおり、住民に図書館資料を提供するための公的な場であるということは、そこで閲覧に供された図書の著作者にとって、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるということができる。したがって 、公立図書館の図書館職員が閲覧に供されている図書を著作者の思想や信条を理由とするなど不公正な取扱いによって廃棄することは、当該著作者が著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益を不当に損なうものといわなければならない。」としている。

(R4 共通 第5問 イ)
公立図書館は、住民に対して思想、意見その他の種々の情報を含む図書館資料を提供してその教養を高めること等を目的とする公的な場であり、図書の著作者にとっては、その思想、意見等を公衆に伝達する公的な場でもあるから、図書の著作者は、公立図書館に対して表現の自由に基づいて自らの著作物を購入し、閲覧に供するよう求めることができる。

(正答)  

(解説)
船橋市市立西図書館事件判決(最判平17.7.14)は、「公立図書館において、その著作物が閲覧に供されている著作者が有する」「著作物によってその思想、意見等を公衆に伝達する利益」は「法的保護に値する人格的利益であると解するのが相当であ…る」とした上で、「公立図書館の図書館職員である公務員が、図書の廃棄について、基本的な職務上の義務に反し、著作者又は著作物に対する独断的な評価や個人的な好みによって不公正な取扱いをしたときは、当該図書の著作者の上記人格的利益を侵害するものとして国家賠償法上違法となるというべきである。」としている。
しかし、本判決は、図書の著作者が公立図書館に対して表現の自由に基づいて自らの著作物を購入し、閲覧に供するよう求めるような作為的請求の可否については、判断を示していない。
総合メモ