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前文

長沼ナイキ事件 最一小判昭和57年9月9日

概要
憲法前文第2段の裁判規範性は、認められない。
判例
事案:防衛庁の申請を受け、森林法26条2項に基づき当時の農林大臣が保安林の指定を解除したのに対し、反対住民らが当該指定の解除が違法であると主張し、保安林の指定の解除の取消しと執行停止を求め、その中で憲法前文の裁判規範性が問題となった。

判旨:長沼ナイキ事件の第一審(札幌地判昭和48年9月7日)においては憲法前文2項について「平和的生存権が、全世界の国民に共通するものである。そしてそれは、たんに国家が、その政策として平和主義を掲げた結果、国民が平和のうちに生存しうるといつた消極的な反射的利益を意味するものではなく、むしろ、積極的に、わが国の国民のみならず、世界各国の国民にひとしく平和的生存権を確保するために、国家みずからが、平和主義を国家基本原理の一つとして掲げ、そしてまた、平和主義をとること以外に、全世界の諸国民の平和的生存権を確保する道はない、とする根本思想に由来するものといわなければならない。…この、社会において国民1人1人が平和のうちに生存し、かつ、その幸福を追及することのできる権利をもつことは、さらに、憲法第3章の各条項によって、個別的な基本的人権の形で具体化され、規定されている。」として、平和的生存権の裁判規範性を認めた。
しかし、最高裁(最一小判昭和57年9月9日)は、憲法前文の裁判規範性を認めなかった原審同様、「なお、所論中いわゆる平和的生存権に関する原審の判断の不当をいう部分は、原判決の右結論に影響のない点についてその判示の不当をいうものにすぎない。それ故、論旨は採用することができない。」として憲法前文の裁判規範性を認めなかった。
過去問・解説
(H25 司法 第12問 ウ)
前文第2段は、「平和のうちに生存する権利」を謳っており、最高裁判所はその裁判規範性を認めている。

(正答)  

(解説)
長沼ナイキ事件の第一審(札幌地判昭48.9.7)は、憲法前文2項について「平和的生存権が、全世界の国民に共通するものである。そしてそれは、たんに国家が、その政策として平和主義を掲げた結果、国民が平和のうちに生存しうるといつた消極的な反射的利益を意味するものではなく、むしろ、積極的に、わが国の国民のみならず、世界各国の国民にひとしく平和的生存権を確保するために、国家みずからが、平和主義を国家基本原理の一つとして掲げ、そしてまた、平和主義をとること以外に、全世界の諸国民の平和的生存権を確保する道はない、とする根本思想に由来するものといわなければならない。…この、社会において国民一人一人が平和のうちに生存し、かつ、その幸福を追及することのできる権利をもつことは、さらに、憲法第三章の各条項によって、個別的な基本的人権の形で具体化され、規定されている。」として、平和的生存権の裁判規範性を認めた。しかし、最高裁(最判昭57.9.9)は、「なお、所論中いわゆる平和的生存権に関する原審の判断の不当をいう部分は、原判決の右結論に影響のない点についてその判示の不当をいうものにすぎない。それ故、論旨は採用することができない。」として、原審同様、憲法前文2段の裁判規範性を認めなかった。

(H29 予備 第7問 ア)
日本国憲法の前文は、国民主権、基本的人権の尊重、平和主義の3つの基本原理を明らかにしており、憲法の一部をなすものであって、当該規定を根拠に裁判所に救済を求めることができるという意味で、最高裁判所の判例においても裁判規範性が認められている。

(正答)  

(解説)
前記の通り、長沼ナイキ事件の第一審(札幌地判昭48.9.7)は、憲法前文2項について、平和的生存権の裁判規範性を認めた。しかし、最高裁(最判昭57.9.9)は、「なお、所論中いわゆる平和的生存権に関する原審の判断の不当をいう部分は、原判決の右結論に影響のない点についてその判示の不当をいうものにすぎない。それ故、論旨は採用することができない。」として、原審同様、憲法前文2段の裁判規範性を認めなかった。

(H30 司法 第14問 イ)
憲法前文が定める平和的生存権は、憲法第9条及び第3章の規定によって具体化され、裁判規範として現実的・個別的内容を持つものであるから、森林法上の保安林指定の解除処分が自衛隊の基地の建設を目的とするものである場合、周辺の住民は、同処分の取消訴訟において、平和的生存権の侵害のおそれを根拠として原告適格を有する。

(正答)  

(解説)
前記の通り、長沼ナイキ事件の第一審(札幌地判昭48.9.7)は、憲法前文2項について、平和的生存権の裁判規範性を認めた。しかし、最高裁(最判昭57.9.9)は、「なお、所論中いわゆる平和的生存権に関する原審の判断の不当をいう部分は、原判決の右結論に影響のない点についてその判示の不当をいうものにすぎない。それ故、論旨は採用することができない。」として、原審同様、憲法前文2段の裁判規範性を認めなかった。したがって、本肢前段は誤っている。また、同事件の最高裁判決は、上告人らの主張する平和的生存権に触れずに上告を棄却している点で、平和的生存権の侵害のおそれを根拠として原告適格を有するとはいえない。よって、本肢後段も誤っている。

(R5 司法 第13問 ウ)
判例は、憲法前文に規定されている「平和のうちに生存する権利」はあらゆる基本的人権を支える基礎的な権利であるため、具体的訴訟においても、それ自体で独立して私法上の行為の効力を判断する基準になるとしている。

(正答)  

(解説)
前記の通り、長沼ナイキ事件の第一審(札幌地判昭48.9.7)は、憲法前文2項について、平和的生存権の裁判規範性を認めた。しかし、最高裁(最判昭57.9.9)は、「なお、所論中いわゆる平和的生存権に関する原審の判断の不当をいう部分は、原判決の右結論に影響のない点についてその判示の不当をいうものにすぎない。それ故、論旨は採用することができない。」として、原審同様、憲法前文2段の裁判規範性を認めなかった。
総合メモ