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集会の自由

皇居前広場事件 最大判昭和28年12月23日

概要
①昭和27年5月1日のメーデーのための皇居外苑使用不許可処分の取消を求める訴は、その期日の経過により判決を求める法律上の利益を喪失する。
②中央メーデーのための皇居外苑の使用を不許可とすることは、「集会の自由」を定めた憲法21条に違反しない。
判例
事案:日本労働組合総評議会は1951年5月3日に数百人規模のデモを行い、数十人が検挙された。同年11月に、同会はメーデーのための皇居外苑使用許可申請をしたものの不許可処分となり、不許可処分を定めた公園管理規則が憲法21条の集会の自由に照らして判断されるべきとして出訴した。

判旨:①「狭義の形成訴訟の場合においても、形成権発生後の事情の変動により具体的に保護の利益なきに至ることあるべきは多言を要しないところである。…また、被上告人は同年5月1日における皇居外苑の使用を許可しなかつただけで、上告人に対して将来に亘り使用を禁じたものでないことも明白である。されば、…同日の経過により判決を求める法律上の利益を喪失したものといわなければならない。」
 ②「なお、念のため、本件不許可処分の適否に関する当裁判所の意見を附加する。
 本件皇居外苑は国有財産法3条2項2号にいう公共福祉用財産に該当するものであること、被上告人厚生大臣は同法5条及び厚生省設置法8条17号によりこれが管理を担当するものであること、本件不許可処分が厚生大臣において右管理のため制定した厚生省令国民公園管理規則4条に基きなされたものであることは、いずれも明らかである。そして、国有財産法によれば、公共福祉用財産は、国が直接公共の用に供した財産であつて、国民は、その供用された目的に従つて均しくこれを利用しうるものであり、この点において、公共福祉用財産は、普通財産と異ることは勿論他の行政財産ともその性質を異にするものである。しかし、公共福祉用財産には多くの種類があり、それが公共の用に供せられる目的は財産の種類によつて異なり、また、それが公共の用に供せられる態様及び程度も財産の規模、施設のいかんによつて異なるもののあることは当然である。従つて、上述のごとく公共福祉用財産は、国民が均しくこれを利用しうるものである点に特色があるけれども、国民がこれを利用しうるのは、当該公共福祉用財産が公共の用に供せられる目的に副い、且つ公共の用に供せられる態様、程度に応じ、その範囲内においてなしうるのであつて、これは、皇居外苑の利用についても同様である。また国有財産の管理権は、国有財産法5条により、各省各庁の長に属せしめられており、公共福祉用財産をいかなる態様及び程度において国民に利用せしめるかは右管理権の内容であるが、勿論その利用の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。これは、皇居外苑の管理についても同様であつて、その管理権の根拠規定たる国有財産法5条、厚生省設置法8条17号及び厚生大臣がその管理権に基いて定めた国民公園管理規則には、皇居外苑を使用せしめることの許否につき具体的方針は特に定められていないけれども、国民公園を本来の目的に副うて使用するのでなく利用する同規則3条のような場合は別として、国民が同公園に集合しその広場を利用することは、一応同公園が公共の用に供せられている目的に副う使用の範囲内のことであり、唯本件のようにそれが集会又は示威行進のためにするものである場合に、同公園の管理上の必要から、これを厚生大臣の認可にかからしめたものであるから、その許否は管理権者の単なる自由裁量に委ねられた趣旨と解すべきでなく、管理権者たる厚生大臣は、皇居外苑の公共福祉用財産たる性質に鑑み、また、皇居外苑の規模と施設とを勘案し、その公園としての使命を十分達成せしめるよう考慮を払つた上、その許否を決しなければならないのである。いま、本件厚生大臣の不許可処分についてみるに、弁論の全趣旨によれば、被上告人厚生大臣は、皇居外苑を旧皇室苑地という由緒を持つ外、現在もなお皇居の前庭であるという特殊性を持つた公園であるとし、この皇居外苑の特性と公園本来の趣旨に照らしてこれが管理については、速に原状回復をはかり、常に美観を保持し、静穏を保持し、国民一般の散策、休息、観賞及び観光に供し、その休養慰楽、厚生に資し、もつてできるだけ広く国民の福祉に寄与することを基本方針としていることが認められ、また、本件不許可処分は、許可申請の趣旨がその申請書によれば昭和27年5月1日メーデーのために、参加人員約50万人の予定で午前九時から午後5時まで二重橋皇居外苑の全域を使用することの許可を求めるというにあつて、二重橋前の外苑全域の面積の中国民一般の立入を禁止している緑地を除いた残部の人員収容能力は右参加予定員数の約半数に止まるから、若し本件申請を許可すれば、立入禁止区域をも含めた外苑全域に約50万人が長時間充満することとなり、尨大な人数、長い使用時間からいつて、当然公園自体が著しい損壊を受けることを予想せねばならず、かくて公園の管理保存に著しい支障を蒙るのみならず、長時間に亘り一般国民の公園としての本来の利用が全く阻害されることになる等を理由としてなされたことが認められる。これらを勘案すると本件不許可処分は、それが管理権を逸脱した不法のものであると認むべき事情のあらわれていない本件においては、厚生大臣は国民公園管理規則4条の適用につき勘案すべき諸点を十分考慮の上、その公園としての使命を達成せしめようとする立場に立つて、不許可処分をしたものであつて、決して単なる自由裁量によつたものでなく管理権の適正な運用を誤つたものとは認められない。次に、国民公園管理規則1条には、「皇居外苑…の利用に関してはこの規則の定めるところによる。」とあるから、同規則4条による許可又は不許可は、国民公園の利用に関する許可又は不許可であり、厚生大臣の有する国民公園の管理権の範囲内のことであつて、元来厚生大臣の権限とされていない集会を催し又は示威運動を行うことの許可又は不許可でないことは明白である。されば同条に基いた本件不許可処分は、厚生大臣がその管理権の範囲内に属する国民公園の管理上の必要から、本件メーデーのための集会及び示威行進に皇居外苑を使用することを許可しなかつたのであつて、何ら表現の自由又は団体行動権自体を制限することを目的としたものでないことは明らかである。ただ、厚生大臣が管理権の行使として本件不許可処分をした場合でも、管理権に名を藉り、実質上表現の自由又は団体行動権を制限するの目的に出でた場合は勿論、管理権の適正な行使を誤り、ために実質上これらの基本的人権を侵害したと認められうるに至つた場合には、違憲の問題が生じうるけれども、本件不許可処分は、既に述べたとおり、管理権の適正な運用を誤つたものとは認められないし、また、管理権に名を藉りて実質上表現の自由又は団体行動権を制限することを目的としたものとも認められないのであつて、そうである限り、これによつて、たとえ皇居前広場が本件集会及び示威行進に使用することができなくなつたとしても、本件不許可処分が憲法21条及び28条違反であるということはできない。以上述べたところにより、本件不許可処分には所論のような違法は認められない。」
過去問・解説
(H30 共通 第6問 ウ)
市の管理する公園について、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合でないのに、その使用を規制するのは、集会の自由を不当に制限することになる

(正答)  

(解説)
皇居前広場事件判決(最大判昭28.12.23)は、「公共福祉用財産には多くの種類があり、それが公共の用に供せられる目的は財産の種類によつて異なり、また、それが公共の用に供せられる態様及び程度も財産の規模、施設のいかんによつて異なるもののあることは当然である。」とした上で、「皇居外苑の利用…の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。」としており、人の生命、身体又は財産に対する明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることを要求していない。
こうした危険を要求したのは、市民会館の使用不許可処分に関する泉佐野市民会館事件判決(最判平7.3.7)である。

(R5 共通 第4問 ウ)
皇居外苑などの国民公園は、国が直接公共の用に供した財産であるとしても、集会のために設置されたものではないため、公園を集会に使用するための許可の申請について、公園の管理権者はその許否を自由に決することができ、不許可処分を行っても憲法第21条に反しない。

(正答)  

(解説)
皇居前広場事件判決(最判昭28.12.23)は、「皇居外苑の利用…の許否は、その利用が公共福祉用財産の、公共の用に供せられる目的に副うものである限り、管理権者の単なる自由裁量に属するものではなく、管理権者は、当該公共福祉用財産の種類に応じ、また、その規模、施設を勘案し、その公共福祉用財産としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであり、若しその行使を誤り、国民の利用を妨げるにおいては、違法たるを免れないと解さなければならない。」としている。
総合メモ

泉佐野市民会館事件 最三小判平成7年3月7日

概要
①市立泉佐野市民会館条例7条1号にいう「公の秩序をみだすおそれがある場合」(市民会館使用の不許可事由)は、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当であり、そう解する限り、同条1号による集会規制(許可制)は憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもない。
②本件集会が本件会館で開かれたならば、本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、グループの構成員だけでなく、本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、具体的に明らかに予見されることを理由とするものと認められる。
判例
事案:Xらは、市立泉佐野市民会館ホールで「関西新空港反対全国総決起集会」を開催することを企画し、泉佐野市長に対し、市立泉佐野市民会館条例6条に基づき、使用団体名を「全関西実行委員会」として、右ホールの使用許可の申請をした。
 本件申請の許否の専決権者である泉佐野市総務部長は、「本件集会は、全関西実行委員会の名義で行うものとされているが、その実体はいわゆる中核派(全学連反戦青年委員会)が主催するものであり、中核派は、本件申請の直後である4月4日に後記の連続爆破事件を起こすなどした過激な活動組織であり、泉佐野商業連合会等の各種団体からいわゆる極左暴力集団に対しては本件会館を使用させないようにされたい旨の嘆願書や要望書も提出されていた。このような組織に本件会館を使用させることは、本件集会及びその前後のデモ行進などを通じて不測の事態を生ずることが憂慮され、かつ、その結果、本件会館周辺の住民の平穏な生活が脅かされるおそれがあって、公共の福祉に反する。」との理由により、本件集会のための本件会館の使用が、本件会館の使用を許可してはならない事由を定める本件条例7条のうち1号の「公の秩序をみだすおそれがある場合」及び3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」に該当すると判断し、泉佐野市長の名で、本件申請を不許可とする処分をした。

判旨:①「泉佐野市の設置した本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、泉佐野市は、正当な理由がない限り、住民がこれを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、住民の利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。本件条例は、同法244条の2第1項に基づき、公の施設である本件会館の設置及び管理について定めるものであり、本件条例7条の各号は、その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると解される。そして、地方自治法244条にいう普通地方公共団体の公の施設として、本件会館のように集会の用に供する施設が設けられている場合、住民は、その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由なくその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれが生ずることになる。したがって、本件条例7条1号及び3号を解釈適用するに当たっては、本件会館の使用を拒否することによって憲法の保障する集会の自由を実質的に否定することにならないかどうかを検討すべきである。」
 このような観点からすると、集会の用に供される公共施設の管理者は、当該公共施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公共施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきであって、これらの点からみて利用を不相当とする事由が認められないにもかかわらずその利用を拒否し得るのは、利用の希望が競合する場合のほかは、施設をその集会のために利用させることによって、他の基本的人権が侵害され、公共の福祉が損なわれる危険がある場合に限られるものというべきであり、このような場合には、その危険を回避し、防止するために、その施設における集会の開催が必要かつ合理的な範囲で制限を受けることがあるといわなければならない。そして、右の制限が必要かつ合理的なものとして肯認されるかどうかは、基本的には、基本的人権としての集会の自由の重要性と、当該集会が開かれることによって侵害されることのある他の基本的人権の内容や侵害の発生の危険性の程度等を較量して決せられるべきものである。本件条例7条による本件会館の使用の規制は、このような較量によって必要かつ合理的なものとして肯認される限りは、集会の自由を不当に侵害するものではなく、また、検閲に当たるものではなく、したがって、憲法21条に違反するものではない。そして、このような較量をするに当たっては、集会の自由の制約は、基本的人権のうち精神的自由を制約するものであるから、経済的自由の制約における以上に厳格な基準の下にされなければならない…。
 本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、同号は、広義の表現を採っているとはいえ、右のような趣旨からして、本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、前記各大法廷判決の趣旨によれば、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である…。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。そして、右事由の存在を肯認することができるのは、そのような事態の発生が許可権者の主観により予測されるだけではなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合でなければならないことはいうまでもない。なお、右の理由で本件条例7条1号に該当する事由があるとされる場合には、当然に同条3号の「その他会館の管理上支障があると認められる場合」にも該当するものと解するのが相当である。」
 ②「…本件不許可処分は、本件集会の目的やその実質上の主催者と目される中核派という団体の性格そのものを理由とするものではなく、また、泉佐野市の主観的な判断による蓋然的な危険発生のおそれを理由とするものでもなく、中核派が、本件不許可処分のあった当時、関西新空港の建設に反対して違法な実力行使を繰り返し、対立する他のグループと暴力による抗争を続けてきたという客観的事実からみて、本件集会が本件会館で開かれたならば、本件会館内又はその付近の路上等においてグループ間で暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生じ、その結果、グループの構成員だけでなく、本件会館の職員、通行人、付近住民等の生命、身体又は財産が侵害されるという事態を生ずることが、具体的に明らかに予見されることを理由とするものと認められる。
 もとより、普通地方公共団体が公の施設の使用の許否を決するに当たり、集会の目的や集会を主催する団体の性格そのものを理由として、使用を許可せず、あるいは不当に差別的に取り扱うことは許されない。しかしながら、本件において被 上告人が上告人らに本件会館の使用を許可しなかったのが、上告人らの唱道する関西新空港建設反対という集会目的のためであると認める余地のないことは、前記…のとおり、被上告人が、過去に何度も…講演等のために本件会館小会議室を使用することを許可してきたことからも明らかである。また、本件集会が開かれることによって前示のような暴力の行使を伴う衝突が起こるなどの事態が生ずる明らかな差し迫った危険が予見される以上、本件会館の管理責任を負う被上告人がそのような事態を回避し、防止するための措置を採ることはやむを得ないところであって、 本件不許可処分が本件会館の利用について上告人らを不当に差別的に取り扱ったものであるということはできない。それは、上告人らの言論の内容や団体の性格そのものによる差別ではなく、本件集会の実質上の主催者と目されるG派が当時激しい実力行使を繰り返し、対立する他のグループと抗争していたことから、その山場であるとされる本件集会には右の危険が伴うと認められることによる必要かつ合理的な制限であるということができる。
 また、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条に反対する他のグループ等がこれを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことは、憲法21条の趣旨に反するところである。しかしながら、本件集会の実質上の主催者と目されるG派は…他のグループと過激な対立抗争を続けており、他のグループの集会を攻撃して妨害し、更には人身に危害を加える事件も引き起こしていたのであって、これに対し他のグループから報復、襲撃を受ける危険があったことは前示のとおりであり、これを被上告人が警察に依頼するなどしてあるかじめ防止することは不可能に近かったといわなければならず、平穏な集会を行おうとしている者に対して一方的に実力による妨害がされる場合と 同一に論ずることはできないのである。
 したがって、本件不許可処分が憲法21条、地方自治法244条に違反するということはできない。」
過去問・解説
(H25 予備 第3問 ア)
集会の自由に対する不当な制約を防ぐため、集会の用に供される公共施設の利用許可申請を公の秩序が害されるおそれを理由にして拒否することが許されるのは、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見される場合に限られる。

(正答)  

(解説)
市泉佐野市民会館事件判決(最判平7.3.7)は、市民会館という公共施設の使用の不許可処分に関する事案において、「本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、…本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、前記各大法廷判決の趣旨によれば、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である…。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。」としている。

(H30 司法 第6問 ア)
市民会館は、集会をするために必須の施設であるから、その使用について、届出制ではなく、許可制を採ることは、集会の自由を不当に制限することになる。

(正答)  

(解説)
市泉佐野市民会館事件判決(最判平7.3.7)は、市民会館という公共施設の使用の不許可処分に関する事案において、「本件条例7条1号は、「公の秩序をみだすおそれがある場合」を本件会館の使用を許可してはならない事由として規定しているが、…本件会館における集会の自由を保障することの重要性よりも、本件会館で集会が開かれることによって、人の生命、身体又は財産が侵害され、公共の安全が損なわれる危険を回避し、防止することの必要性が優越する場合をいうものと限定して解すべきであり、その危険性の程度としては、前記各大法廷判決の趣旨によれば、単に危険な事態を生ずる蓋然性があるというだけでは足りず、明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されることが必要であると解するのが相当である…。そう解する限り、このような規制は、他の基本的人権に対する侵害を回避し、防止するために必要かつ合理的なものとして、憲法21条に違反するものではなく、また、地方自治法244条に違反するものでもないというべきである。」としており、不許可事由について合憲限定解釈をすることにより、市民会館の許可制は憲法21条1項に違反しないとしている。
総合メモ

上尾市福祉会館事件 最二小判平成8年3月15日

概要
①上尾市福祉会館設置及び管理条例6条1項1号は、「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが、 右規定は、会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。
②本件事実関係の下においては、本件不許可処分時において、本件合同葬のための本件会館の使用によって、本件条例6条1項1号に定める「会館の管理上支障がある」との事態が生ずることが、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできないから、本件不許可処分は、本件条例の解釈適用を誤った違法なものというべきである。
判例
事案:労働組合Xは、過激派の内ゲバとみられる殺人事件の犠牲者になった労働組合の幹部について、労働組合葬を挙行するために、上尾市福祉会館の利用を申請したところ、「本件会館を本件合同葬のために利用させた場合には、原告に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずると懸念されること」を一つの理由として、申請を拒否された。

判旨:①「本件会館は、地方自治法244条にいう公の施設に当たるから、被上告人は、正当な理由がない限り、これを利用することを拒んではならず(同条2項)、また、その利用について不当な差別的取扱いをしてはならない(同条3項)。本件条例は、 同法244条の2第1項に基づき、公の施設である本件会館の設置及び管理について定めるものであり、本件条例6条1項各号は、その利用を拒否するために必要とされる右の正当な理由を具体化したものであると解される。そして、同法244条に定める普通地方公共団体の公の施設として、本件会館のような集会の用に供する施設が設けられている場合、住民等は、その施設の設置目的に反しない限りその利用を原則的に認められることになるので、管理者が正当な理由もないのにその利用を拒否するときは、憲法の保障する集会の自由の不当な制限につながるおそれがある。したがって、集会の用に供される公の施設の管理者は、当該公の施設の種類に応じ、また、その規模、構造、設備等を勘案し、公の施設としての使命を十分達成せしめるよう適正にその管理権を行使すべきである。以上のような観点からすると、本件条例6条1項1号は、「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが、 右規定は、会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。」  
 ②「本件不許可処分は、本件会館を本件合同葬のために利用させた場合には、 上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずると懸念されることを一つの理由としてされたものであるというのである。しかしながら、前記の事実関係によれば、G館長が前記の新聞報道によりF部長の殺害事件がいわゆる内ゲバにより引き起こされた可能性が高いと考えることにはやむを得ない面があったとしても、そのこと以上に本件合同葬の際にまで上告人に反対する者らがこれを妨害するなどして混乱が生ずるおそれがあるとは考え難い状況にあったものといわざるを得ない。また、主催者が集会を平穏に行おうとしているのに、その集会の目的や主催者の思想、信条等に反対する者らが、これを実力で阻止し、妨害しようとして紛争を起こすおそれがあることを理由に公の施設の利用を拒むことができるのは、前示のような公の施設の利用関係の性質に照らせば、警察の警備等によってもなお混乱を防止することができないなど特別な事情がある場合に限られるものというべきである。ところが、前記の事実関係によっては、右のような特別な事情があるということはできない。なお、警察の警備等によりその他の施設の利用客に多少の不安が生ずることが会館の管理上支障が生ずるとの事態に当たるものでないことはいうまでもない。
 次に、本件不許可処分は、本件会館を本件合同葬のために利用させた場合には、同時期に結婚式を行うことが困難となり、結婚式場等の施設利用に支障が生ずることを一つの理由としてされたものであるというのである。ところで、本件会館のような公の施設の供用に当たって、当該施設の設置目的を専ら結婚式等の祝儀のための利用に限るとか、結婚式等の祝儀のための利用を葬儀等の不祝儀を含むその他の利用に優先して認めるといった運営方針を定めることは、それ自体必ずしも不合理なものとはいえないものというべきところ、被上告人は、本件会館の運営に当たり、基本的には葬儀のための利用には消極的であり、一部の例を除き、本件会館は従来一般の葬儀のために使用されたことはなかったというのである。しかし、本件会館には、斎場として利用するための特別の施設は設けられていないものの、結婚式関係の施設のほか、多目的に利用が可能な大小ホールを始めとする各種の施設が設けられている上、一階の大ホールと2階以上にあるその他の施設は出入口を異にしていること、葬儀と結婚式が同日に行われるのでなければ、施設が葬儀の用にも供されることを結婚式等の利用者が嫌悪するとは必ずしも思われないこと…をも併せ考えれば、故人を追悼するための集会である本件合同葬については、それを行うために本件会館を使用することがその設置目的に反するとまでいうことはできない。そして、前記の事実関係によっても、本件会館について、結婚式等の祝儀のための利用を葬儀等の不祝儀を含むその他のための利用に優先して認めるといった確固たる運営方針が確立され、そのために、利用予定日の直前まで不祝儀等のための利用の許否を決しないなどの運用がなされていたとのことはうかがえない上、上告人らの利用予定日の一箇月余り前である本件不許可処分の時点では、結婚式のための使用申込みはなく、現にその後もなかったというのである。以上によれば、本件事実関係の下においては、本件不許可処分時において、本件合同葬のための本件会館の使用によって、本件条例6条1項1号に定める「会館の管理上支障がある」との事態が生ずることが、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測されたものということはできないから、本件不許可処分は、本件条例の解釈適用を誤った違法なものというべきである。」
過去問・解説
(H25 予備 第3問 イ)
集会の用に供される公共施設においてある集会を開催すると、それに反対する勢力が妨害行為を起こすことが確実に予想される場合、施設管理者が自らの管理権を行使するだけではその妨害行為による混乱を防止できないと判断すれば、当該集会を不許可とすることができる。

(正答)  

(解説)
上尾福祉会館事件判決(最判平8.3.15)は「本件条例6条1項1号は、「会館の管理上支障があると認められるとき」を本件会館の使用を許可しない事由として規定しているが、 右規定は、会館の管理上支障が生ずるとの事態が、許可権者の主観により予測されるだけでなく、客観的な事実に照らして具体的に明らかに予測される場合に初めて、本件会館の使用を許可しないことができることを定めたものと解すべきである。」としている。  
総合メモ

広島市暴走族追放条例事件 最三小判平成19年9月18日

概要
①広島市暴走族追放条例16条1項1号にいう「集会」は、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外、服装、旗、言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団によって同条例16条1項1号及び17条所定の場所及び態様で行われるものに限定されると解されると解釈することができ、このように解釈すれば、同条例16条1項1号、17条及び19条は、憲法31条に違反しない。
②広島市暴走族追放条例16条1項1号、17条及び19条は、その弊害を防止しようとする規制目的の正当性、弊害防止手段としての合理性、この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし、いまだ憲法21条1項に違反するとまではいえない。
判例
事案:広島市暴走族追放条例16条1項は、「何人も、次に掲げる行為をしてはならない。」と定め、同条項1号は「公共の場所において、当該場所の所有者又は管理者の承諾又は許可を得ないで、公衆に不安又は恐怖を覚えさせるようない集又は集会を行うこと」を掲げる。そして、本条例17条は、「前条第1項第1号の行為が、本市の管理する公共の場所において、特異な服装をし、顔面の全部若しくは一部を覆い隠し、円陣を組み、又は旗を立てる等威勢を示すことにより行われたときは、市長は、当該行為者に対し、当該行為の中止又は当該場所からの退去を命ずることができる。」とし、本条例19条は、この市長の命令に違反した者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処するものと規定している。

判旨:「本条例は、暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること、禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど、規定の仕方が適切ではなく、本条例がその文言どおりに適用されることになると、規制の対象が広範囲に及び、憲法21条1項及び31条との関係で問題があることは所論のとおりである。しかし、本条例19条が処罰の対象としているのは、同17条の市長の中止・退去命令に違反する行為に限られる。そして、本条例の目的規定である1条は、「暴走行為、い集、集会及び祭礼等における示威行為が、市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず、国際平和文化都市の印象を著しく傷つけている」存在としての「暴走族」を本条例が規定する諸対策の対象として想定するものと解され、本条例5条、6条も、少年が加入する対象としての「暴走族」を想定しているほか、本条例には、暴走行為自体の抑止を眼目としている規定も数多く含まれている。また、本条例の委任規則である本条例施行規則3条は、「暴走、騒音、暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう、印刷等をされた服装等」の着用者の存在(1号)、「暴走族名等暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう、印刷等をされた旗等」の存在(4号)、「暴走族であることを強調するような大声の掛合い等」(5号)を本条例17条の中止 命令等を発する際の判断基準として挙げている。このような本条例の全体から読み取ることができる趣旨、さらには本条例施行規則の規定等を総合すれば、本条例が規制の対象としている「暴走族」は、本条例1条7号の定義にもかかわらず、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には、服装、旗、言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され、したがって、市長において本条例による 中止・退去命令を発し得る対象も、被告人に適用されている「集会」との関係では、本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が、本条例16条1項1号、17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。
 そして、このように限定的に解釈すれば、本条例16条1項1号、17条、19条の規定による規制は、広島市内の公共の場所における暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと、規制に係る集会であっても、これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく、市長による中止命令等の対象とするにとどめ、この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等にかんがみると、その弊害を防止しようとする規制目的の正当性、弊害防止手段としての合理性、この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし、いまだ憲法21条1項、31条に違反するとまではいえないことは…明らかである。 (3) なお、所論は、本条例16条1項1号、17条、19条の各規定が明確性 を欠き、憲法21条1項、31条に違反する旨主張するが、各規定の文言が不明確であるとはいえないことは、最高裁昭和44年(あ)第1501号同49年11月6日大法廷判決・刑集28巻9号393頁,最高裁昭和61年(行ツ)第11号平成4年7月1日大法廷判決・民集46巻5号437頁の趣旨に徴して明らかである。」
過去問・解説
(H27 共通 第18問 ウ)
判例は、集会の自由の規制が問題となった広島市暴走族追放条例について、条例の改正が立法技術上困難でないから、あえて合憲限定解釈をする必要はないとした。

(正答)  

(解説)
広島市暴走族追放条例事件判決(最判平19.9.18)は、「本条例が規制の対象としている「暴走族」は、本条例1条7号の定義にもかかわらず、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の外には、服装、旗、言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され、したがって、市長において本条例による 中止・退去命令を発し得る対象も、被告人に適用されている「集会」との関係では、本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が、本条例16条1項1号、17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。」として、広島市暴走族追放事例における規制対象である「集会」を合憲限定解釈している。
総合メモ