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手続的権利と人身の自由(37条)
被告人の訴訟費用の負担 最大判昭和23年12月27日
概要
憲法37条2項は、有罪の宣告を受けた刑事被告人にも訴訟費用を負担せしめてはならないという趣意の規定ではない。
判例
事案:有罪判決を受けた刑事被告人に訴訟費用の負担を命ずることができるのかが問題となった。
判旨:「憲法第37条第2項は「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と規定している。右規定の公費で自己のために、証人を求める権利を有するという意義は、刑事被告人は、裁判所に対して証人の喚問を請求するには、何等財産上の出捐を必要としない、証人訊問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給するのであつて、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることはしない。被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求するの自由が妨げられてはならないという趣旨であつて、もつぱら、刑事被告人をして、訴訟上の防禦権を遺憾なく行使せしめんとする法意にもとずくものである。しかしながら、それは、要するに、被告人をして、訴訟の当事者たる地位にある限度において、その防禦権を充分に行使せしめんとするのであつて、その被告人が、判決において有罪の言渡を受けた場合にも、なおかつ、その被告人に訴訟費用の負担を命じてはならないという趣意の規定ではない。すなわち、論旨のいうように、訴訟に要する費用は、すべてこれを公費として国家において負担することとし、有罪の宣告を受けた刑事被告人にも訴訟費用を負担せしめてはならないという趣意の規定ではないのである。」
判旨:「憲法第37条第2項は「刑事被告人は、すべての証人に対して審問する機会を充分に与えられ、又公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と規定している。右規定の公費で自己のために、証人を求める権利を有するという意義は、刑事被告人は、裁判所に対して証人の喚問を請求するには、何等財産上の出捐を必要としない、証人訊問に要する費用、すなわち、証人の旅費、日当等は、すべて国家がこれを支給するのであつて、訴訟進行の過程において、被告人にこれを支弁せしむることはしない。被告人の無資産などの事情のために、充分に証人の喚問を請求するの自由が妨げられてはならないという趣旨であつて、もつぱら、刑事被告人をして、訴訟上の防禦権を遺憾なく行使せしめんとする法意にもとずくものである。しかしながら、それは、要するに、被告人をして、訴訟の当事者たる地位にある限度において、その防禦権を充分に行使せしめんとするのであつて、その被告人が、判決において有罪の言渡を受けた場合にも、なおかつ、その被告人に訴訟費用の負担を命じてはならないという趣意の規定ではない。すなわち、論旨のいうように、訴訟に要する費用は、すべてこれを公費として国家において負担することとし、有罪の宣告を受けた刑事被告人にも訴訟費用を負担せしめてはならないという趣意の規定ではないのである。」
過去問・解説
(H28 司法 第10問 ウ)
有罪判決を受けた刑事被告人に対し、裁判所に出廷させた証人に旅費、日当及び宿泊料を負担させることは、「刑事被告人は、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と定める憲法第37条第2項の規定に違反しない。
有罪判決を受けた刑事被告人に対し、裁判所に出廷させた証人に旅費、日当及び宿泊料を負担させることは、「刑事被告人は、公費で自己のために強制的手続により証人を求める権利を有する」と定める憲法第37条第2項の規定に違反しない。
(正答) 〇
(解説)
判例(最大判昭23.12.27)は、「憲法第37条第2項は、…被告人をして、訴訟の当事者たる地位にある限度において、その防禦権を充分に行使せしめんとするのであつて、その被告人が、判決において有罪の言渡を受けた場合にも、なおかつ、その被告人に訴訟費用の負担を命じてはならないという趣意の規定ではない」としている。したがって、有罪判決を受けた刑事被告人に対し、裁判所に出廷させた証人に旅費、日当及び宿泊料を負担させることは、37条2項に違反しない。
判例(最大判昭23.12.27)は、「憲法第37条第2項は、…被告人をして、訴訟の当事者たる地位にある限度において、その防禦権を充分に行使せしめんとするのであつて、その被告人が、判決において有罪の言渡を受けた場合にも、なおかつ、その被告人に訴訟費用の負担を命じてはならないという趣意の規定ではない」としている。したがって、有罪判決を受けた刑事被告人に対し、裁判所に出廷させた証人に旅費、日当及び宿泊料を負担させることは、37条2項に違反しない。
総合メモ
刑事裁判における証人の喚問 最大判昭和23年7月29日
概要
憲法37条2項は、不正不当の理由に基づくものでない限り、裁判所には被告人又は弁護人が証人申請をした証人を全て喚問すべき義務があるという趣旨に解すべきではない。
判例
事案:裁判所は、被告人又は弁護人の証人申請に基づいて全ての証人を喚問しなければならないのかが問題となった。
判旨:「刑事裁判における証人の喚問は、被告人にとりても又検察官にとりても重要な関心事であることは言うを待たないが、さればといつて被告人又は弁護人からした証人申請に基きすべての証人を喚問し不必要と思われる証人までをも悉く訊問しなければならぬという訳のものではなく、裁判所は当該事件の裁判をなすに必要適切な証人を喚問すればそれでよいものと言うべきである。そして、いかなる証人が当該事件の裁判に必要適切であるか否か、従つて証人申請の採否は、各具体的事件の性格、環境、属性、その他諸般の事情を深く斟酌して、当該裁判所が決定すべき事柄である。しかし、裁判所は、証人申請の採否について自由裁量を許されていると言つても主観的な専制ないし独断に陥ることは固より許され難いところであり、実験則に反するに至ればここに不法を招来することとなるのである。そこで、憲法第37条第2項の趣旨もまた上述するところと相背馳するものではない。同条からして直ちに所論のように、不正不当の理由に基かざる限り弁護人の申請した証人はすべて裁判所が喚問すべき義務があると論定し去ることは、当を得たものと言うことができない。証人の採否はどこまでも前述のごとく事案に必要適切であるか否かの自由裁量によつて当該裁判所が決定すべき事柄である。さて、本件において原裁判所は弁護人から申請のあつた証人中村隆幸について申請を却下したのであるが、つぶさに本件の具体的性質、環境その他諸般の事情を斟酌すれば、該証人の喚問は必ずしも裁判に必要適切なものでないと認めても実験則に反するところはないから、右却下は何等の違法を生ずることがない。」
判旨:「刑事裁判における証人の喚問は、被告人にとりても又検察官にとりても重要な関心事であることは言うを待たないが、さればといつて被告人又は弁護人からした証人申請に基きすべての証人を喚問し不必要と思われる証人までをも悉く訊問しなければならぬという訳のものではなく、裁判所は当該事件の裁判をなすに必要適切な証人を喚問すればそれでよいものと言うべきである。そして、いかなる証人が当該事件の裁判に必要適切であるか否か、従つて証人申請の採否は、各具体的事件の性格、環境、属性、その他諸般の事情を深く斟酌して、当該裁判所が決定すべき事柄である。しかし、裁判所は、証人申請の採否について自由裁量を許されていると言つても主観的な専制ないし独断に陥ることは固より許され難いところであり、実験則に反するに至ればここに不法を招来することとなるのである。そこで、憲法第37条第2項の趣旨もまた上述するところと相背馳するものではない。同条からして直ちに所論のように、不正不当の理由に基かざる限り弁護人の申請した証人はすべて裁判所が喚問すべき義務があると論定し去ることは、当を得たものと言うことができない。証人の採否はどこまでも前述のごとく事案に必要適切であるか否かの自由裁量によつて当該裁判所が決定すべき事柄である。さて、本件において原裁判所は弁護人から申請のあつた証人中村隆幸について申請を却下したのであるが、つぶさに本件の具体的性質、環境その他諸般の事情を斟酌すれば、該証人の喚問は必ずしも裁判に必要適切なものでないと認めても実験則に反するところはないから、右却下は何等の違法を生ずることがない。」
総合メモ
高田事件 最大判昭和47年12月20日
概要
憲法37条1項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定である。
判例
事案:裁判が審理の途中で中断し、そのまま15年余にわたり審理が再開されなかったことが、憲法37条1項によって保障される被告人の迅速な裁判を受ける権利を侵害するものであるか否かが問題となった。
判旨:「当裁判所は、憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。
刑事事件について審理が著しく遅延するときは、被告人としては長期間罪責の有無未定のまま放置されることにより、ひとり有形無形の社会的不利益を受けるばかりでなく、当該手続においても、被告人または証人の記憶の減退・喪失、関係人の死亡、証拠物の滅失などをきたし、ために被告人の防禦権の行使に種々の障害を生ずることをまぬがれず、ひいては、刑事司法の理念である、事案の真相を明らかにし、罪なき者を罰せず罪ある者を逸せず、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するという目的を達することができないことともなるのである。上記憲法の迅速な裁判の保障条項は、かかる弊害発生の防止をその趣旨とするものにほかならない。
もつとも、「迅速な裁判」とは、具体的な事件ごとに諸々の条件との関連において決定されるべき相対的な観念であるから、憲法の右保障条項の趣旨を十分に活かすためには、具体的な補充立法の措置を講じて問題の解決をはかることが望ましいのであるが、かかる立法措置を欠く場合においても、あらゆる点からみて明らかに右保障条項に反すると認められる異常な事態が生じたときに、単に、これに対処すべき補充立法の措置がないことを理由として、救済の途がないとするがごときは、右保障条項の趣旨を全うするゆえんではないのである。
それであるから、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判の保障条項によつて憲法がまもろうとしている被告人の諸利益が著しく害せられると認められる異常な事態が生ずるに至つた場合には、さらに審理をすすめても真実の発見ははなはだしく困難で、もはや公正な裁判を期待することはできず、いたずらに被告人らの個人的および社会的不利益を増大させる結果となるばかりであつて、これ以上実体的審理を進めることは適当でないから、その手続をこの段階において打ち切るという非常の救済手段を用いることが憲法上要請されるものと解すべきである。
翻つて本件をみるに、原判決は、「たとえ当初弁護人側から本件審理中断の要請があり、その後訴訟関係人から審理促進の申出がなかつたにせよ、15年余の間全く本件の審理を行なわないで放置し、これがため本件の裁判を著しく遅延させる事態を招いたのは、まさにこの憲法によつて保障された本件被告人らの迅速な裁判を受ける権利を侵害したものといわざるを得ない。」という前提に立ちながら、「刑事被告人の迅速な裁判を受ける憲法上の権利を現実に保障するためには、いわゆる補充立法により、裁判の遅延から被告人を救済する方法が具体的に定められていることが先決である。ところが、現行法制のもとにおいては、未だかような補充立法がされているものとは認められないから、裁判所としては救済の仕様がないのである。」との見解のもとに、公訴時効が完成した場合に準じ刑訴法337条4号により被告人らを免訴すべきものとした第一審判決を破棄し、本件を第一審裁判所に差し戻すこととしたものであり、原判決の判断は、この点において憲法37条1項の迅速な裁判の保障条項の解釈を誤つたものといわなければならない。
そこで、本件において、審理の著しい遅延により憲法の定める迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態が生じているかどうかを、次に審案する。
そもそも、具体的刑事事件における審理の遅延が右の保障条項に反する事態に至つているか否かは、遅延の期間のみによつて一律に判断されるべきではなく、遅延の原因と理由などを勘案して、それ遅延がやむをえないものと認められないかどうか、これにより右の保障条項がまもろうとしている諸利益がどの程度実際に害せられているかなど諸般の情況を総合的に判断して決せられなければならないのであつて、たとえば、事件の複雑なために、結果として審理に長年月を要した場合などはこれに該当しないこともちろんであり、さらに被告人の逃亡、出廷拒否または審理引延しなど遅延の主たる原因が被告人側にあった場合には、被告人が迅速な裁判をうける権利を自ら放棄したものと認めるべきであつて、たとえその審理に長年月を要したとしても,迅速な裁判をうける被告人の権利が侵害されたということはできない。
ところで、公訴提起により訴訟係属が生じた以上は、裁判所として、これを放置しておくことが許されないことはいうまでもないが、当事者主義を高度にとりいれた現行刑事訴訟法の訴訟構造のもとにおいては、検察官および被告人側にも積極的な訴訟活動が要請されるのである。しかし、少なくとも検察官の立証がおわるまでの間に訴訟進行の措置が採られなかつた場合において、被告人側が積極的に期日指定の申立をするなど審理を促す挙に出なかつたとしても、その一事をもつて、被告人が迅速な裁判をうける権利を放棄したと推定することは許されないのである。
判旨:「当裁判所は、憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する。
刑事事件について審理が著しく遅延するときは、被告人としては長期間罪責の有無未定のまま放置されることにより、ひとり有形無形の社会的不利益を受けるばかりでなく、当該手続においても、被告人または証人の記憶の減退・喪失、関係人の死亡、証拠物の滅失などをきたし、ために被告人の防禦権の行使に種々の障害を生ずることをまぬがれず、ひいては、刑事司法の理念である、事案の真相を明らかにし、罪なき者を罰せず罪ある者を逸せず、刑罰法令を適正かつ迅速に適用実現するという目的を達することができないことともなるのである。上記憲法の迅速な裁判の保障条項は、かかる弊害発生の防止をその趣旨とするものにほかならない。
もつとも、「迅速な裁判」とは、具体的な事件ごとに諸々の条件との関連において決定されるべき相対的な観念であるから、憲法の右保障条項の趣旨を十分に活かすためには、具体的な補充立法の措置を講じて問題の解決をはかることが望ましいのであるが、かかる立法措置を欠く場合においても、あらゆる点からみて明らかに右保障条項に反すると認められる異常な事態が生じたときに、単に、これに対処すべき補充立法の措置がないことを理由として、救済の途がないとするがごときは、右保障条項の趣旨を全うするゆえんではないのである。
それであるから、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判の保障条項によつて憲法がまもろうとしている被告人の諸利益が著しく害せられると認められる異常な事態が生ずるに至つた場合には、さらに審理をすすめても真実の発見ははなはだしく困難で、もはや公正な裁判を期待することはできず、いたずらに被告人らの個人的および社会的不利益を増大させる結果となるばかりであつて、これ以上実体的審理を進めることは適当でないから、その手続をこの段階において打ち切るという非常の救済手段を用いることが憲法上要請されるものと解すべきである。
翻つて本件をみるに、原判決は、「たとえ当初弁護人側から本件審理中断の要請があり、その後訴訟関係人から審理促進の申出がなかつたにせよ、15年余の間全く本件の審理を行なわないで放置し、これがため本件の裁判を著しく遅延させる事態を招いたのは、まさにこの憲法によつて保障された本件被告人らの迅速な裁判を受ける権利を侵害したものといわざるを得ない。」という前提に立ちながら、「刑事被告人の迅速な裁判を受ける憲法上の権利を現実に保障するためには、いわゆる補充立法により、裁判の遅延から被告人を救済する方法が具体的に定められていることが先決である。ところが、現行法制のもとにおいては、未だかような補充立法がされているものとは認められないから、裁判所としては救済の仕様がないのである。」との見解のもとに、公訴時効が完成した場合に準じ刑訴法337条4号により被告人らを免訴すべきものとした第一審判決を破棄し、本件を第一審裁判所に差し戻すこととしたものであり、原判決の判断は、この点において憲法37条1項の迅速な裁判の保障条項の解釈を誤つたものといわなければならない。
そこで、本件において、審理の著しい遅延により憲法の定める迅速な裁判の保障条項に反する異常な事態が生じているかどうかを、次に審案する。
そもそも、具体的刑事事件における審理の遅延が右の保障条項に反する事態に至つているか否かは、遅延の期間のみによつて一律に判断されるべきではなく、遅延の原因と理由などを勘案して、それ遅延がやむをえないものと認められないかどうか、これにより右の保障条項がまもろうとしている諸利益がどの程度実際に害せられているかなど諸般の情況を総合的に判断して決せられなければならないのであつて、たとえば、事件の複雑なために、結果として審理に長年月を要した場合などはこれに該当しないこともちろんであり、さらに被告人の逃亡、出廷拒否または審理引延しなど遅延の主たる原因が被告人側にあった場合には、被告人が迅速な裁判をうける権利を自ら放棄したものと認めるべきであつて、たとえその審理に長年月を要したとしても,迅速な裁判をうける被告人の権利が侵害されたということはできない。
ところで、公訴提起により訴訟係属が生じた以上は、裁判所として、これを放置しておくことが許されないことはいうまでもないが、当事者主義を高度にとりいれた現行刑事訴訟法の訴訟構造のもとにおいては、検察官および被告人側にも積極的な訴訟活動が要請されるのである。しかし、少なくとも検察官の立証がおわるまでの間に訴訟進行の措置が採られなかつた場合において、被告人側が積極的に期日指定の申立をするなど審理を促す挙に出なかつたとしても、その一事をもつて、被告人が迅速な裁判をうける権利を放棄したと推定することは許されないのである。
…(中略)…
以上の次第で、被告人らが迅速な裁判をうける権利を自ら放棄したとは認めがたいこと、および迅速な裁判の保障条項によつてまもられるべき被告人の諸利益が実質的に侵害されたと認められることは、前述したとおりであるから、本件は、昭和四四年第一審裁判所が公判手続を更新した段階においてすでに、憲法37条1項の迅速な裁判の保障条項に明らかに違反した異常な事態に立ち至つていたものと断ぜざるを得ない。したがつて、本件は、冒頭説示の趣旨に照らしても、被告人らに対して審理を打ち切るという非常救済手段を用いることが是認されるべき場合にあたるものといわなければならない。
刑事事件が裁判所に係属している間に迅速な裁判の保障条項に反する事態が生じた場合において、その審理を打ち切る方法については現行法上よるべき具体的な明文の規定はないのであるが、前記のような審理経過をたどつた本件においては、これ以上実体的審理を進めることは適当でないから、判決で免訴の言渡をするのが相当である。」
刑事事件が裁判所に係属している間に迅速な裁判の保障条項に反する事態が生じた場合において、その審理を打ち切る方法については現行法上よるべき具体的な明文の規定はないのであるが、前記のような審理経過をたどつた本件においては、これ以上実体的審理を進めることは適当でないから、判決で免訴の言渡をするのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第9問 ア)
迅速な裁判を一般的に保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有するものではないので、現実にこの保障に明らかに反し、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる事態が生じた場合には、これに対処すべき法律上の規定があるときに限ってその審理を打ち切ることができる。
迅速な裁判を一般的に保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有するものではないので、現実にこの保障に明らかに反し、迅速な裁判を受ける被告人の権利が害されたと認められる事態が生じた場合には、これに対処すべき法律上の規定があるときに限ってその審理を打ち切ることができる。
(正答) ✕
(解説)
高田事件判決(最大判昭47.12.20)は、「憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する」としている。
本肢は、「迅速な裁判を一般的に保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有するものではない」、「これに対処すべき法律上の規定があるときに限って」としている点において、誤っている。
高田事件判決(最大判昭47.12.20)は、「憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する」としている。
本肢は、「迅速な裁判を一般的に保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有するものではない」、「これに対処すべき法律上の規定があるときに限って」としている点において、誤っている。
(R1 司法 第8問 イ)
迅速な裁判を受ける権利を保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有しており、審理の著しい遅延の結果、被告人の上記権利が害される異常な事態が生じた場合には、法律上の具体的な根拠がなくても審理を打ち切るべきである。
迅速な裁判を受ける権利を保障する憲法第37条第1項は、それ自体が裁判規範性を有しており、審理の著しい遅延の結果、被告人の上記権利が害される異常な事態が生じた場合には、法律上の具体的な根拠がなくても審理を打ち切るべきである。
(正答) 〇
(解説)
高田事件判決(最大判昭47.12.20)は、「憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する」としている。
高田事件判決(最大判昭47.12.20)は、「憲法37条1項の保障する迅速な裁判をうける権利は、憲法の保障する基本的な人権の一つであり、右条項は、単に迅速な裁判を一般的に保障するために必要な立法上および司法行政上の措置をとるべきことを要請するにとどまらず、さらに個々の刑事事件について、現実に右の保障に明らかに反し、審理の著しい遅延の結果、迅速な裁判をうける被告人の権利が害せられたと認められる異常な事態が生じた場合には、これに対処すべき具体的規定がなくても、もはや当該被告人に対する手続の続行を許さず、その審理を打ち切るという非常救済手段がとられるべきことをも認めている趣旨の規定であると解する」としている。