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人権享有主体性(外国人)

不法出国・密輸事件 最大判昭和32年12月25日

概要
①外国移住の自由(憲法22条2項)は、外国人にも保障される。
②出入国管理令25条1項は、本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を行うという目的を達成する公共の福祉のため設けられたものであるから、合憲である。
判例
事案:Yらは、1953年(昭和28年)1月13日、旧関税法違反及び出入国管理令違反の現行犯として逮捕され、下級審裁判所で有罪判決を受けたところ、上告して、出入国管理令(現:出入国管理及び難民認定法)の規定により処罰することは憲法22条2項が保障する外国移住の自由を制限するものであり違憲であるなどと主張した。

判旨:「憲法22条2項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。次に、出入国管理令25条1項は、本邦外の地域におもむく意図をもつて出国しようとする外国人は、その者が出国する 出入国港において、入国審査官から旅券に出国の証印を受けなければならないと定め、同2項において、前項の外国人は、旅券に証印を受けなければ出国してはならないと規定している。右は、出国それ自体を法律上制限するものではなく、単に、出国の手続に関する措置を定めたものであり、事実上かかる手続的措置のために外国移住の自由が制限される結果を招来するような場合があるにしても、同令1条に規定する本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を行うという目的を達成する公共の福祉のため設けられたものであつて、合憲性を有するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第8問 オ)
居住・移転の自由に関する次の文章の中で適切なものを選択して文章を完成させる場合、正しいものを選びなさい。憲法22条は、職業選択の自由とともに、居住・移転の自由を保障している。この自由は、自己の住所又は居所を自由に決定し、また、自己の欲する場所へ自由に移動することを内容とする。日本に在留する外国人には(A:出国の自由はあるが、再入国の自由については争いがある B:再入国の自由はあるが、入国の自由については争いがある)。

(正答)A

(解説)
不法出国・密輸事件判決(最大判昭32.12.25)は、「憲法22条2項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。」として、憲法22条2項を根拠として、外国移住の自由、すなわち、出国の自由を認めている。
これに対して、森川キャサリーン事件判決(最判平4.11.16)は、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない」としており、再入国の自由は認められていない。したがって、Aが正しい。

(H22 司法 第1問 ウ)
出国の自由は外国人にも保障されるが、再入国する自由については、憲法22条2項に基づき、我が国に生活の本拠を持つ外国人に限り、我が国の利益を著しく、かつ、直接に害することのない場合にのみ認められる。

(正答)  

(解説)
 不法出国・密輸事件判決(最大判昭32.12.25)は、前段について、「憲法22条2項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。」として、憲法22条2項を根拠として、外国移住の自由、すなわち出国の自由を認めている。したがって、本肢前段は正しい。
森川キャサリーン事件判決(最判平4.11.16)は、後段について、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない」として、再入国の自由を憲法上の権利として認めたものということはできない。したがって、本肢後段の「再入国する自由については…我が国に生活の本拠を持つ外国人に限り、我が国の利益を著しく、かつ、直接に害することのない場合にのみ認められる。」との部分は、同判決と矛盾する。
総合メモ

マクリーン事件 最大判昭和53年10月4日

概要
〇外国人は、憲法上も出入国管理令上も、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。
〇政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
〇外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。
判例
事案:アメリカ国籍をもつXは、出入国管理令(現:出入国管理及び難民認定法)に基づき語学学校の英語教師として在留期間を1年とする上陸許可を得て入国し、法務大臣Yに対して1年間の在留期間の更新を申請したところ、更新不許可とされ、不許可の理由にはXが在留期間中に政治活動を行ったことも含まれていた。

判旨:①「憲法22条1項は、日本国内における居住・移転の自由を保障する旨を規定するにとどまり、外国人がわが国に入国することについてはなんら規定していないものであり、このことは、国際慣習法上、国家は外国人を受け入れる義務を負うものではなく、特別の条約がない限り、外国人を自国内に受け入れるかどうか、また、これを受け入れる場合にいかなる条件を付するかを、当該国家が自由に決定することができるものとされていることと、その考えを同じくするものと解される(最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月19日大法廷判決・刑集11巻6号1663頁参照)。したがつて、憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。…出入国管理令は、当該外国人が在留期間の延長を希望するときには在留期間の更新を申請することができることとしているが(21条1項、2項)、その申請に対しては法務大臣が「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるときに限り」これを許可することができるものと定めている(同条3項)のであるから、出入国管理令上も在留外国人の在留期間の更新が権利として保障されているものでないことは、明らかである。」
 ②「右のように出入国管理令が原則として一定の期間を限つて外国人のわが国への上陸及び在留を許しその期間の更新は法務大臣がこれを適当と認めるに足りる相当の理由があると判断した場合に限り許可することとしているのは、法務大臣に一定の期間ごとに当該外国人の在留中の状況、在留の必要性・相当性等を審査して在留の許否を決定させようとする趣旨に出たものであり、そして、在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていないのは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広汎なものとする趣旨からであると解される。…出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の「在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由」があるかどうかの判断の場合…、右判断に関する前述の法務大臣の裁量権の性質にかんがみ、その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。」
 ③「…Xの在留期間更新申請に対しYが更新を適当と認めるに足りる相当な理由があるものとはいえないとしてこれを許可しなかつたのは、Xの在留期間中の無届転職と政治活動のゆえであつたというのであり、原判決の趣旨に徴すると、なかでも政治活動が重視されたものと解される。思うに、憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。しかしながら、前述のように、外国人の在留の許否は国の裁量にゆだねられ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、ただ、出入国管理令上法務大臣がその裁量により更新を適当と認めるに足りる相当の理由があると判断する場合に限り在留期間の更新を受けることができる地位を与えられているにすぎないものであり、したがつて、外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであるからといつてなんら妨げられるものではない。」
過去問・解説
(H21 司法 第1問 イ)
憲法第3章の人権規定は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、我が国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ。国家から干渉されない自由である自由権は、その性質上いずれも日本国民と同様に保障される。

(正答)  

(解説)
マクリーン事件判決(最大判昭63.12.20)は、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであ」るとしている。したがって、本肢前段は正しい。しかし、同判決は、自由権が、性質上いずれも日本人と同様に保障されるとはしていない。よって、本肢後段は誤りである。

(H23 司法 第10問 イ)
外国人の享有する人権の範囲について、その人権の性質に応じて個別的に判断されるとする考えによれば、参政権や社会権などはその範囲外であり、したがって、外国人には労働基本権の適用がない。

(正答)  

(解説)
マクリーン事件判決(最大判昭63.12.20)は、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべき」としていることから、同判決は、外国人に当該人権が保障されるかは人権の性質に応じて判断しているといえる。したがって、本肢前段は正しい。もっとも、労働基本権については権利の性質上外国人に保障を及ぼしても日本人に不利益が及ぶとは考え難く、外国人にも保障される。よって、本肢後段は誤っている。

(H25 司法 第1問 ア)
外国人の政治活動の自由は、我が国の政治的意思決定に影響を及ぼす活動であっても、憲法上保障される。

(正答)  

(解説)
マクリーン事件判決(最大判昭63.12.20)は、「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解する」としていることから、日本の政治的意思決定に影響を及ぼす活動については外国人の政治活動の自由は保障されない。

(H29 予備 第5問 ウ)
基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象としていると解されるものを除き、外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきで、政治活動の自由についても、政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑み相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶ。

(正答)  

(解説)
マクリーン事件判決(最大判昭63.12.20)は、「憲法第3章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」としている。

(R6 司法 第1問 イ)
人権の享有主体に関する次の記述について、bの見解がaの見解の批判となっている場合には○を、そうでない場合には✕を選びなさい。

a.判例によれば、外国人の政治活動の自由の保障は、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを保障することが相当でないと解されるものには及ばない。
b.外国人には、参加の態様にかかわらず、政治的な主張を行うデモや集会に参加する自由が保障されなくなる。

(正答)

(解説)
aの見解の根拠となるマクリーン事件判決(最大判昭53.10.4)の判例によれば、外国人の政治活動の自由の保障は、我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位に鑑みこれを保障することが相当でないと解されるものには及ばないとする。
そのため、aの見解は外国人は「我が国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等」の場合に政治活動の自由が保障されないとするのであるから、bの見解にあるように態様を問わずに政治的な主張を行うデモや集会に参加する自由が保障されなくなるという批判は適切ではない。
総合メモ

森川キャサリーン事件 最一小判平成4年11月16日

概要
我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。
判例
事案:アメリカ合衆国民Xは、入管法(出入国管理及び難民認定法)に基づき1973年に日本に上陸し、その後在留更新許可申請を許可されて日本に在留し続けてきた者であり、1982年11月、韓国旅行の計画を立てて再入国許可申請をしたところ、法務大臣は、Xが当時の外国人登録法14条1項の指紋押なつを拒否していることを理由に再入国許可申請を不許可とした。 この不許可処分との関係で、外国人にも外国へ一時旅行する自由が憲法上保障されるかが問題となった。

判旨:「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでないことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和29年(あ)第3594号同32年6月19日判決・刑集11巻6号1663頁、昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日判決・民集32巻7号1223頁)の趣旨に徴して明らかである。」
過去問・解説
(H22 司法 第1問 ウ)
出国の自由は外国人にも保障されるが、再入国する自由については、憲法22条2項に基づき、我が国に生活の本拠を持つ外国人に限り、我が国の利益を著しく、かつ、直接に害することのない場合にのみ認められる。

(正答)  

(解説)
 不法出国・密輸事件判決(最大判昭32.12.25)は、前段について、「憲法22条2項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。」として、憲法22条2項を根拠として、外国移住の自由、すなわち出国の自由を認めている。したがって、本肢前段は正しい。
森川キャサリーン事件判決(最判平4.11.16)は、後段について、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものではない」として、再入国の自由を憲法上の権利として認めたものということはできない。したがって、本肢後段の「再入国する自由については…我が国に生活の本拠を持つ外国人に限り、我が国の利益を著しく、かつ、直接に害することのない場合にのみ認められる。」との部分は、同判決と矛盾する。

(R6 司法 第7問 ア)
判例は、日本に適法に在留する外国人には、憲法上、その在留期間内において外国へ一時旅行する自由が保障されているものと解している。

(正答)  

(解説)
森川キャサリーン事件判決(最判平4.11.16)は、「我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでない」としている。
総合メモ

外国人の地方参政権 最三小判平成7年2月28日

概要
①憲法93条2項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえない。
②我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。しかし、このような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。
判例
事案:外国人に地方公共団体の選挙権を認めていない地方自治法11条・18条及び公職選挙法9条2項の違憲性が問題となった。

判旨:「憲法15条1項…は、国民主権の原理に基づき、公務員の終局的任免権が国民に存することを表明したものにほかならないところ、主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らかである。そうとすれば、公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。そして、地方自治について定める憲法第8章は、93条2項において、地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が直接これを選挙するものと規定しているのであるが、前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法15条1項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。以上のように解すべきことは、当裁判所大法廷判決(最高裁昭和35年(オ)第579号同年12月14日判決・民集14巻14号3037頁、最高裁昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日判決・民集32巻7号1223頁)の趣旨に徴して明らかである。
 このように、憲法93条2項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえないが、憲法第8章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解されるから、我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。」
過去問・解説
(H25 司法 第1問 イ)
我が国に在留する外国人には、居住する地方公共団体の長及びその議会の議員に対する選挙権が憲法上保障されていない。

(正答)  

(解説)
外国人の地方参政権について判断した判決(最判平7.2.28)は、「憲法93条2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。」としている。

(H29 予備 第5問 イ)
我が国に在留する外国人のうち、永住者等でその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められる者についてであっても、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されている。

(正答)  

(解説)
外国人の地方参政権について判断した判決(最判平7.2.28)は、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。」としているため、特別永住外国人に地方自治体の長に対する選挙権を付与することは憲法上禁止されていない。

(R5 司法 第19問 イ)
憲法第93条第2項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するが、外国人のうち永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、法律により、地方公共団体の長や議会の議員に対する選挙権を付与することは、憲法上禁止されていない。

(正答)  

(解説)
外国人の地方参政権について判断した判決(最判平7.2.28)は、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない。」としているため、特別永住外国人に地方自治体の長に対する選挙権を付与することは憲法上禁止されていない。
総合メモ

東京都管理職選考受験資格等請求事件 最大判平成17年1月26日

概要
①原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではない。
②普通地方公共団体が公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではない。この理は、前記の特別永住者についても異なるものではない。
判例
事案:東京都の管理職任用制度において、日本国籍を有しない者に管理職選任の受験資格を認めていないことについて、主として憲法14条1項・15条1項違反が問題となった。

判旨:「地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については、次のように解するのが相当である。すなわち、公権力行使等地方公務員の職務の遂行は、住民の権利義務や法的地位の内容を定め、あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど、住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。それゆえ、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。
 そして、普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきである。そうすると、普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。そして、この理は、前記の特別永住者についても異なるものではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第15問 ア)
判例(最大判平成17年1月26日)は、地方公共団体が、在留外国人を職員として採用する場合、その者について、どのような昇任の条件を定めるかは当該地方公共団体の裁量にゆだねられるから、その判断に裁量権の逸脱・濫用がない限り、違法の問題を生じないとした。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「地方公務員法は、…明文の規定を置いていないが(同法19条1項参照)、普通地方公共団体が、法による制限の下で、条例、人事委員会規則等の定めるところにより職員に在留外国人を任命することを禁止するものではない。」とするにとどまり、在留外国人の公務員就任が裁量に委ねられるかについて判示していない。また、裁量権の逸脱・濫用についても言及していない。

(H18 司法 第15問 イ)
判例(最大判平成17年1月26日)は、日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める「特別永住者」の公務就任権を制限する場合について、一般の在留外国人とは異なる取扱いが求められると解する余地を否定した。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「普通地方公共団体が、…公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築…した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、…合理的な理由に基づいて日本の国籍を有する職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、…労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではない。そして、この理は、前記の特別永住者についても異なるものではない。」としているから、特別永住外国人について一般の在留外国人と異なる取扱いが求められるものではない。

(H18 司法 第15問 ウ)
憲法が、在留外国人に対し一定の範囲で公務就任権を保障しているか否かについては争いがあるが、判例(最大判平成17年1月26日)は、これを否定する立場に立つことを明らかにしたものである。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、労基法3条及び憲法14条1項に違反するか否かについては言及しているが、在留外国人に対し一定の範囲で公務就任権を保障しているか否かについては明確な結論を示していない。

(H18 司法 第15問 エ)
判例(最大判平成17年1月26日)は、当該地方公共団体の管理職の中に、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするものが含まれていることを前提としている。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については、次のように解するのが相当である。」とした上で、「普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきである。」としていることから、管理職にその範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするものが含まれていることを前提としているといえる。

(H23 司法 第1問 ア)
普通地方公共団体は、職員に採用した在留外国人について、国籍を理由として、給与等の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないが、合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「普通地方公共団体は、職員に採用した在留外国人について、国籍を理由として、給与、勤務時間その他の勤務条件につき差別的取扱いをしてはならないものとされており(労働基準法3条、112条、地方公務員法58条3項)、地方公務員法24条6項に基づく給与に関する条例で定められる昇格(給料表の上位の職務の級への変更)等も上記の勤務条件に含まれるものというべきである。」としているため、本肢前段は正しい。また、「しかし、上記の定めは、普通地方公共団体が職員に採用した在留外国人の処遇につき合理的な理由に基づいて日本国民と異なる取扱いをすることまで許されないとするものではない。」としていることから、本肢後段も正しい。

(H23 司法 第1問 イ)
普通地方公共団体が、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任できる措置を執ることは、憲法第14条第1項に違反しない。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきである。そうすると、普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。」としている。

(H23 司法 第1問 ウ)
日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法に定める特別永住者は、居住する地方公共団体の自治の担い手であり、地方公共団体の管理職への昇任を制限するには、一般の在留外国人とは異なる理由が必要である。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「上記の管理職の任用制度を適正に運営するために必要があると判断して、職員が管理職に昇任するための資格要件として当該職員が日本の国籍を有する職員であることを定めたとしても、合理的な理由に基づいて日本の国籍を有する職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではない。そして、この理は、前記の特別永住者についても異なるものではない。」とし、特別永住外国人を一般の在留外国人と区別しないこととした。

(H29 予備 第5問 ア)
地方公務員のうち、住民の権利義務を直接形成し、その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い、若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い、又はこれらに参画することを職務とするものについては、原則として日本国籍を有する者が就任することが想定され、外国人が就任することは想定されていない。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「公権力行使等地方公務員の職務の遂行は、住民の権利義務や法的地位の内容を定め、あるいはこれらに事実上大きな影響を及ぼすなど、住民の生活に直接間接に重大なかかわりを有するものである。それゆえ、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。」としている。

(R3 司法 第11問 ア)
国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであることからすると、外国人が普通地方公共団体の公務員に就任することは、その者が公権力の行使に当たる行為を行うかどうかにかかわらず、本来我が国の法体系の想定するところではない。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、国民主権の原理に基づき、国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法1条、15条1項参照)に照らし、原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり、我が国以外の国家に帰属し、その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは、本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。」としており、「外国人が公権力行使等地方公務員に就任すること」が本来我が国の法体系の想定するところではないと述べるにとどまる。

(R6 司法 第3問 ウ)
多数の者が多様な仕事をしている普通地方公共団体の管理職選考において、その職務の性質にかかわらず、日本国籍を有しないことを理由に受験を認めないとする措置は、その合理的根拠を見いだすことができないから、憲法第14条に由来し、国籍を理由として差別することを禁じた労働基準法第3条の規定に反する違法な措置というべきである。

(正答)  

(解説)
判例(最大判平17.1.26)は、「普通地方公共団体が、公務員制度を構築するに当たって、公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも、その判断により行うことができるものというべきである。そうすると、普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で、日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは、合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり、上記の措置は、労働基準法3条にも、憲法14条1項にも違反するものではないと解するのが相当である。そして、この理は、前記の特別永住者についても異なるものではない。」としている。
総合メモ

塩見訴訟 最一小判平成元年3月2日

概要
①旧国民年金法上の国籍条項の規定及び昭和34年11月1日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対して同法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法25条に違反しない。
②旧国民年金法上の国籍条項の規定及び昭和34年11月1日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対して同法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法14条1項に違反しない。
③旧国民年金法上の国籍条項の規定は、憲法98条2項に違反しない。
判例
事案:1959年に制定された国民年金法では、国籍要件が課されていたため、在日外国人は、老齢・死亡・障害に対する年金のいずれにおいても社会保障の対象から除外されていた。このうち、障害福祉年金は、全額国庫負担で支給された無拠出制の年金であった。
 在日朝鮮人Xは、1952年のサンフランシスコ講和条約の締結に伴い日本国籍を喪失していたが、1970年に日本国籍の男性(全盲)と結婚し、帰化により再度日本国籍を取得した際、自身も幼少の頃に罹患した麻疹(はしか)により全盲となり国民年金法別表所定の1級の疾病(障害)の状態であったことから、大阪府知事に対し障害福祉年金裁定を請求したところ、大阪府知事は、国籍要件を満たさない(国民年金法56条1項但書は、疾病認定日(本件では法施行日である1959年11月1日)に日本国民でない者には国民年金を支給しない旨を定めていた)ことを理由に、請求を棄却した。
 本事件では、国民年金の受給資格としての国籍条項について、①憲法25条違反、②憲法14条1項違反、③憲法98条2項違反が主たる争点として問題になった。

判旨:①「憲法25条は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきこと(1項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(2項)を国の責務として宣言したものであるが、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によって国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきこと、そして、同条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄である…。そこで、本件で問題とされている国籍条項が憲法25条の規定に違反するかどうかについて考えるに、国民年金制度は、憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため、老齢、障害又は死亡によって国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によって防止することを目的とし、保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本として創設されたものであるが、制度発足当時において既に老齢又は一定程度の障害の状態にある者、あるいは保険料を必要期間納付することができない見込みの者等、保険原則によるときは給付を受けられない者についても同制度の保障する利益を享受させることとし、経過的又は補完的な制度として、無拠出制の福祉年金を設けている。法81条1項の障害福祉年金も、制度発足時の経過的な救済措置の一環として設けられた全額国庫負担の無拠出制の年金であって、立法府は、その支給対象者の決定について、もともと広範な裁量権を有しているものというべきである。加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。…そうすると、国籍条項及び昭和34年11月1日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法25条の規定に違反するものではない」
②「国籍条項及び昭和34年11月1日より後に帰化によって日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことが、憲法14条1項の規定に違反するかどうかについて考えるに、憲法14条1項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである。ところで、法81条1項の障害福祉年金の給付に関しては、廃疾の認定日に日本国籍がある者とそうでない者との間に区別が設けられているが、前示のとおり、右障害福祉年金の給付に関し、自国民を在留外国人に優先させることとして在留外国人を支給対象者から除くこと、また廃疾の認定日である制度発足時の昭和34年11月1日において日本国民であることを受給資格要件とすることは立法府の裁量の範囲に属する事柄というべきであるから、右取扱いの区別については、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない。」
③「…所論の条約、宣言等は、わが国に対して法的拘束力を有しないか、法的拘束力を有していても国籍条項を直ちに排斥する趣旨のものではないから、国籍条項がこれらに抵触することを前提とする憲法98条2項違反の主張は、その前提を欠くというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第2問 ア)
塩見訴訟(最判平成元年3月2日)は、在留外国人に対する社会保障に関し、定住外国人か否かを区別しつつ、限られた財源の下では、福祉的給付を行うに当たり自国民を定住外国人より優先的に扱うことも許されるとした。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」とし、定住外国人か否かの区別をしていない。

(H19 司法 第2問 イ)
塩見訴訟(最判平成元年3月2日)は、障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日に日本国民でない者に受給資格を認めないことは憲法第14条第1項に反しないとしたが、これは、同項の規定の趣旨は外国人に対しても及ぶとする考え方と矛盾しない。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「憲法14条1項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである。ところで、法81条1項の障害福祉年金の給付に関しては、廃疾の認定日に日本国籍がある者とそうでない者との間に区別が設けられているが、前示のとおり、右障害福祉年金の給付に関し、自国民を在留外国人に優先させることとして在留外国人を支給対象者から除くこと、また廃疾の認定日である制度発足時の昭和34年11月1日において日本国民であることを受給資格要件とすることは立法府の裁量の範囲に属する事柄というべきであるから、右取扱いの区別については、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない。」とし、外国人にも憲法14条1項が及ぶことを前提に旧国民年金法81条1項が憲法14条1項に反しないかを判断している。

(H19 司法 第2問 ウ)
塩見訴訟(最判平成元年3月2日)は、障害福祉年金の受給資格について国籍要件を課すことは憲法に違反しないと判示する一方、在留外国人に対する社会保障上の施策として、将来的には法律を改正して国籍要件を撤廃するのが望ましいとの判断を示した。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「憲法14条1項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであって、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである。ところで、法81条1項の障害福祉年金の給付に関しては、廃疾の認定日に日本国籍がある者とそうでない者との間に区別が設けられているが、前示のとおり、右障害福祉年金の給付に関し、自国民を在留外国人に優先させることとして在留外国人を支給対象者から除くこと、また廃疾の認定日である制度発足時の昭和34年11月1日において日本国民であることを受給資格要件とすることは立法府の裁量の範囲に属する事柄というべきであるから、右取扱いの区別については、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない。」とし、障害福祉年金の受給資格について国籍要件を課すことは憲法に違反しないとして、将来的に国籍要件を撤廃することが望ましいとはしていない。

(H19 司法 第2問 エ)
塩見訴訟(最判平成元年3月2日)は、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかは、立法府の広い裁量に委ねられており、国は特別の条約の存しない限り、その政治的判断によりこれを決定できるという考え方を前提としている。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」としている。

(H25 司法 第1問 ウ)
社会保障の施策において外国人をどのように処遇するかについては、憲法上立法府の裁量に委ねられている。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「制度発足時の経過的な救済措置の一環として設けられた全額国庫負担の無拠出制の年金であって、立法府は、その支給対象者の決定について、もともと広範な裁量権を有しているものというべきである。加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」とし、社会保障政策において外国人をどのように処遇するかにつき、立法府の裁量を認めている。

(H26 共通 第10問 ア)
限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、国が自国民を在留外国人より優先的に扱うことは許されるが、特別永住者について障害福祉年金の支給対象から一切除外することは、不合理な差別となる。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟判決(最判平元.3.2)は、「社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。」とし、定住外国人か否かの区別をせず、日本人を外国人より優遇することを認めている。

(R6 司法 第3問 ア)
憲法第25条の趣旨の具体化は立法府の広い裁量に委ねられており、障害福祉年金の受給資格についても立法府の裁量の範囲に属するというべきであるから、自国民を在留外国人に優先させ、在留外国人を支給対象者から除外する合理性は否定できず、憲法第14条第1項には違反しない。

(正答)  

(解説)
塩見訴訟事件判決(最判平元.3.2)によれば、「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄である」とした上で、障害福祉年金の受給資格についても立法府の裁量の範囲に属するというべきであるから、自国民を在留外国人に優先させ、在留外国人を支給対象者から除外する合理性は否定できないとされる。
総合メモ

外国人の生活保護受給権 最二小判平成26年7月18日

概要
外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しない。
判例
事案:永住者の在留資格を有する外国人Xが、生活保護法に基づく生活保護の申請をしたところ、大分市福祉事務所長から同申請を違法に却下する処分を受けたため、その取消しを求めた事案において、外国人にも生活保護法に基づく受給権が認められるかが問題となった。

判旨:①「旧生活保護法は、その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し、現行の生活保護法は、1条及び2条において、その適用の対象につき「国民」と定めたものであり、このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって、外国人はこれに含まれないものと解される。そして、現行の生活保護法が制定された後、現在に至るまでの間、同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず、同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。したがって、生活保護法を始めとする現行法令上、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。」
 ②「また、本件通知は行政庁の通達であり、それに基づく行政措置として一定範囲の外国人に対して生活保護が事実上実施されてきたとしても、そのことによって、生活保護法1条及び2条の規定の改正等の立法措置を経ることなく、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されるものとなると解する余地はなく、・・・我が国が難民条約等に加入した際の経緯を勘案しても、本件通知を根拠として外国人が同法に基づく保護の対象となり得るものとは解されない。なお、本件通知は、その文言上も、生活に困窮する外国人に対し、生活保護法が適用されずその法律上の保護の対象とならないことを前提に、それとは別に事実上の保護を行う行政措置として、当分の間、日本国民に対する同法に基づく保護の決定実施と同様の手続により必要と認める保護を行うことを定めたものであることは明らかである。」
 ③「以上によれば、外国人は、行政庁の通達等に基づく行政措置により事実上の保護の対象となり得るにとどまり、生活保護法に基づく保護の対象となるものではなく、同法に基づく受給権を有しないものというべきである。」
過去問・解説
(H29 司法 第10問 ウ)
国は、難民条約の批准及びこれに伴う国会審議等を契機に、外国人に対する生活保護について一定の範囲で国際法及び国内公法上の義務を負うことを認めるに至ったものであり、少なくとも永住外国人にも憲法第25条第1項の保障が及ぶものとなったと解すべきであるから、生活保護法の適用対象となる「国民」には永住外国人も含まれる。

(正答)  

(解説)
判例(最判平26.7.18)は、「旧生活保護法は、その適用の対象につき「国民」であるか否かを区別していなかったのに対し、現行の生活保護法は、1条及び2条において、その適用の対象につき「国民」と定めたものであり、このように同法の適用の対象につき定めた上記各条にいう「国民」とは日本国民を意味するものであって、外国人はこれに含まれないものと解される。そして、現行の生活保護法が制定された後、現在に至るまでの間、同法の適用を受ける者の範囲を一定の範囲の外国人に拡大するような法改正は行われておらず、同法上の保護に関する規定を一定の範囲の外国人に準用する旨の法令も存在しない。したがって、生活保護法を始めとする現行法令上、生活保護法が一定の範囲の外国人に適用され又は準用されると解すべき根拠は見当たらない。」として、生活保護法の適用対象である「国民」には外国人は含まれないとした。したがって、「生活保護法の適用対象となる「国民」には永住外国人も含まれる」とする点で、本肢は誤っている。
総合メモ