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裁判所(統治行為)

砂川事件 最大判昭和34年12月16日

概要
高度の政治性を有する事柄が違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にある。
判例
事案:米軍駐留と旧日米安全保障条約の憲法9条適合性が刑事責任の前提問題として争われた。
 なお、憲法9条2項に関する判旨は、平和主義のカテゴリに属する砂川事件で取り上げている(https://law-lib.jp/subjects/1/precedents/2)。

判旨:「本件安全保障条約は、…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、したがって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねられるべきものであると解するを相当とする。そして、このことは、本件安全保障条約またはこれに基く政府の行為の違憲なりや否やが、本件のように前提問題となっている場合であると否とにかかわらないのである。」
過去問・解説
(H26 予備 第11問 ア)
日米安全保障条約は、主権国としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有するもので、その内容の合憲性判断は、一見極めて明白に違憲無効でない限り、裁判所の審査権の範囲外である。

(正答)  

(解説)
砂川事件判決(最大判昭34.12.16)は、「本件安全保障条約は、…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、…違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、したがって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって…」としている。

(H30 予備 第12問 ア)
砂川事件判決(最大判昭和34年12月16日)は、主権国家としての我が国の存立の基礎に極めて重大な関係を持つ高度の政治性を有する条約について、憲法に対する優位性を認め、裁判所の違憲審査権の範囲外にあると判断した。

(正答)  

(解説)
砂川事件判決(最大判昭34.12.16)は、「本件安全保障条約は、…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、…違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、したがって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって…」としており、形式的効力において憲法が条約に優位することを前提とした判示をしている。
総合メモ

苫米地事件 最大判昭和35年6月8日

概要
衆議院解散の効力は、訴訟の前提問題であったとしても裁判所の審査権が及ばない。
判例
事案:衆議院解散の効力に司法審査が及ぶかが問題となった。

判旨:「現実に行われた衆議院の解散が、その依拠する憲法の条章について適用を誤つたが故に、法律上無効であるかどうか、これを行うにつき憲法上必要とせられる内閣の助言と承認に瑕疵があつたが故に無効であるかどうかのごときことは裁判所の審査権に服しないものと解すべきである。
 日本国憲法は、立法、行政、司法の三権分立の制度を確立し、司法権はすべて裁判所の行うところとし(憲法76条1項)、また裁判所法は、裁判所は一切の法律上の争訟を裁判するものと規定し(裁判所法3条1項)、これによつて、民事、刑事のみならず行政事件についても、事項を限定せずいわゆる概括的に司法裁判所の管轄に属するものとせられ、さらに憲法は一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを審査決定する権限を裁判所に与えた(憲法81条)結果、国の立法、行政の行為は、それが法律上の争訟となるかぎり、違憲審査を含めてすべて裁判所の裁判権に服することとなつたのである。
 しかし、わが憲法の三権分立の制度の下においても、司法権の行使についておのずからある限度の制約は免れないのであつて、あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象となるものと即断すべきでない。直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきである。
 衆議院の解散は、衆議院議員をしてその意に反して資格を喪失せしめ、国家最高の機関たる国会の主要な一翼をなす衆議院の機能を一時的とは言え閉止するものであり、さらにこれにつづく総選挙を通じて、新な衆議院、さらに新な内閣成立の機縁を為すものであつて、その国法上の意義は重大であるのみならず、解散は、多くは内閣がその重要な政策、ひいては自己の存続に関して国民の総意を問わんとする場合に行われるものであつてその政治上の意義もまた極めて重大である。すなわち衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは既に前段説示するところによつてあきらかである。そして、この理は、本件のごとく、当該衆議院の解散が訴訟の前提問題として主張されている場合においても同様であつて、ひとしく裁判所の審査権の外にありといわなければならない。
 本件の解散が憲法7条に依拠して行われたことは本件において争いのないところであり、政府の見解は、憲法7条によつて、…すなわち憲法69条に該当する場合でなくとも、…憲法上有効に衆議院の解散を行い得るものであり、本件解散は右憲法7条に依拠し、かつ、内閣の助言と承認により適法に行われたものであるとするにあることはあきらかであつて、裁判所としては、この政府の見解を否定して、本件解散を憲法上無効なものとすることはできないのである。」
過去問・解説
(H22 司法 第13問 ア)
天皇の国事行為に関する最高裁判所の判例によれば、内閣の「助言」とは内閣から天皇への事前の申出であり、「承認」とは天皇の行為が「助言」の趣旨に合致するものであると事後に認めることであって、いずれも閣議により決定しなければならないとされている。

(正答)  

(解説)
苫米地事件判決(最大判昭35.6.8)は、衆議院解散の効力には司法審査が及ばないとしているため、内閣の「助言」と「承認」についての閣議決定の要否については判断していない。

(H22 司法 第18問 ウ)
衆議院の解散に対する有効無効の判断は、たとえ法律上可能であっても裁判所の審査権の外にあり、主権者たる国民に対して政治的責任を負う政府、国会等の政治部門に任され、最終的には国民の政治判断に委ねられている。

(正答)  

(解説)
苫米地事件判決(最大判昭35.6.8)は、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。」とした上で、「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは既に前段説示するところによつてあきらかである。」としている。

(H24 共通 第17問 イ)
苫米地事件判決(最大判昭和35年6月8日)は、法律上の争訟の要件が満たされる事案であっても、高度の政治性を有する国家行為に関しては、実際的必要性の観点から、裁判所が司法判断を下すのを自制すべきであるとしたものである。

(正答)  

(解説)
苫米地事件判決(最大判昭35.6.8)は、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきである。」とした上で、「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは既に前段説示するところによつてあきらかである。」としている。このように、本判決は、実際的必要性の観点からではなく、司法権に内在する制約として司法審査を否定している。

(H26 予備 第11問 ウ)
衆議院解散の効力をめぐる争いは、本来、内閣と衆議院という両政治部門間の争いであり、議員歳費請求のように前提問題として解散の効力を争う場合であっても、その実質は機関訴訟というべきもので、裁判所は、原則として統治部門の自律的解決を尊重すべきである。

(正答)  

(解説)
苫米地事件判決(最大判昭35.6.8)は、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であつても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。この司法権に対する制約は、結局、三権分立の原理に由来し、当該国家行為の高度の政治性、裁判所の司法機関としての性格、裁判に必然的に随伴する手続上の制約等にかんがみ、特定の明文による規定はないけれども、司法権の憲法上の本質に内在する制約と理解すべきである。」とした上で、「衆議院の解散は、極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であつて、かくのごとき行為について、その法律上の有効無効を審査することは司法裁判所の権限の外にありと解すべきことは既に前段説示するところによつてあきらかである。」としている。このように、本判決は、司法権に内在する制約として司法審査を否定しているのであって、実質が機関訴訟というべきものであることを理由にしているわけではない。

(R4 司法 第17問 ウ)
三権分立の制度の下において、司法権の行使について、ある限度の制約は免れず、あらゆる国家行為が無制限に司法審査の対象となるわけではないと解すべきであるところ、衆議院の解散のような直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為は、国会等の政治部門の判断に委ねられ、最終的に国民の政治判断に委ねられているものと解すべきであるから、衆議院の解散が違法であることを前提とする国会議員の歳費の支払を請求する訴えは、法律上の争訟に当たるとはいえない。

(正答)  

(解説)
苫米地事件判決(最大判昭35.6.8)は、「直接国家統治の基本に関する高度に政治性のある国家行為のごときはたとえそれが法律上の争訟となり、これに対する有効無効の判断が法律上可能である場合であっても、かかる国家行為は裁判所の審査権の外にあり、その判断は主権者たる国民に対して政治的責任を負うところの政府、国会等の政治部門の判断に委され、最終的には国民の政治判断に委ねられているものと解すべきである。」としており、統治行為論を理由とする司法審査の可否と「法律上の争訟」に当たるか否かを別問題として扱っている。
総合メモ

沖縄代理署名訴訟 最大判平成8年8月28日

概要
駐留軍用地特措法は、憲法前文、9条、13条、29条3項に違反しない。
判例
事案:国が沖縄県知事に対して駐留軍用地特措法14条1項に基づく署名押印を求めたところ、知事がそれを拒否したため、国が知事に対し署名等代行を求めて訴訟を提起した事案において、駐留軍用地特措法の合憲性が争われた。

判旨:「日米安全保障条約6条、日米地位協定2条1項の定めるところによれば、我が国は、日米地位協定25条に定める合同委員会を通じて締結される日米両国間の協定によって合意された施設及び区域を駐留軍の用に供する条約上の義務を負うものと解される。我が国が、その締結した条約を誠実に遵守すべきことは明らかであるが(憲法98条2項)、日米安全保障条約に基づく右義務を履行するために必要な土地等をすべて所有者との合意に基づき取得することができるとは限らない。これができない場合に、当該土地等を駐留軍の用に供することが適正かつ合理的であることを要件として(駐留軍用地特措法3条)、これを強制的に使用し、又は収用することは、条約上の義務を履行するために必要であり、かつ、その合理性も認められるのであって、私有財産を公共のために用いることにほかならないものというべきである。国が条約に基づく国家としての義務を履行するために必要かつ合理的な行為を行うことが憲法前文、9条、13条に違反するというのであれば、それは当該条約自体の違憲をいうに等しいことになるが、日米安全保障条約及び日米地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白でない以上、裁判所としては、これが合憲であることを前提として駐留軍用地特措法の憲法適合性についての審査をすべきであるし…、所論も、日米安全保障条約及び日米地位協定の違憲を主張するものではないことを明示している。そうであれば、駐留軍用地特措法は、憲法前文、9条、13条、29条3項に違反するものということはできない。」
過去問・解説
(H26 予備 第11問 イ)
日米安全保障条約及び日米地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白でない以上、裁判所としては、これらが合憲であることを前提として、これらの条約を履行するために制定された、いわゆる駐留軍用地特措法の合憲性を審査すべきである。

(正答)  

(解説)
沖縄代理署名訴訟判決(最大判平8.8.28)は、砂川事件判決(最大判昭34.12.16)を参照し、「日米安全保障条約及び日米地位協定が違憲無効であることが一見極めて明白でない以上、裁判所としては、これが合憲であることを前提として駐留軍用地特措法の憲法適合性についての審査をすべきである」としている。
総合メモ