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憲法 公衆浴場事件 最二小判平成元年1月20日 - 解答モード

概要
公衆浴場法2条2項及び大阪府公衆浴場法施行条例2条の適正配置規制及び距離制限は、積極目的に基づく規制であるところ、立法府のとった手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白であるとはいえないから、憲法22条1項に違反しない。
判例
事案:各事件において、公衆浴場業の許可制に関する公衆浴場法2条2項所定の適正配置規制(及び同条項の委任を受けた各地域における委任条例による適正配置の基準‐例えば、「公衆浴場の設置の場所の配置の基準は、既に許可を受けた公衆浴場から市部にあっては250米以上、郡部にあっては300米以上の距離とする」など)の憲法22条1項違反が問題となった。

解説:昭和30年判決(最大判昭30.1.26)は、「公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる、多分に公共性を伴う厚生施設である。そして、若しその設立を業者の自由に委せて、何等その偏在及び濫立を防止する等その配置の適正を保つために必要な措置が講ぜられないときは、その偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれなきを保し難く、また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理ならしめ、ひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれなきを保し難い。このようなことは、上記公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、出来る限り防止することが望ましいことであ…る」として規制目的を消極目的と捉えた上で、許可制自体と適正配置規制の双方について憲法22条1項に違反しないと判示した。
 平成元年1月20日判決(最判平元.1.20)は、「衆浴場法に公衆浴場の適正配置規制の規定が追加されたのは昭和25年法律第187号の同法改正法によるのであるが、公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「公衆浴場業者が経営の困難から廃業や転業をすることを防止し、健全で安定した経営を行えるように種々の立法上の手段をとり、国民の保健福祉を維持することは、まさに公共の福祉に適合するところであり、右の適正配置規制及び距離制限も、その手段として十分の必要性と合理性を有していると認められる。もともと、このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきであるところ…、右の適正配置規制及び距離制限がその場合に当たらないことは、多言を要しない。」として、明白の原則を適用して結論として憲法22条1項違反を否定している。
 平成元年3月7日判決(最判平元.3.7)は、「公衆浴場法…2条2項による適正配置規制の目的は、国民保健及び環境衛生の確保にあるとともに、公衆浴場が自家風呂を持たない国民にとって日常生活上必要不可欠な厚生施設であり、入浴料金が物価統制令により低額に統制されていること、利用者の範囲が地域的に限定されているため企業としての弾力性に乏しいこと、自家風呂の普及に伴い公衆浴場業の経営が困難になっていることなどにかんがみ、既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保しようとすることも、その目的としているものと解されるのであり」として規制目的を消極目的と積極目的の双方と捉えた上で、「適正配置規制は右目的を達成するための必要かつ合理的な範囲内の手段と考えられる」として憲法22条1項違反を否定している。本判決については、合理性の基準を採用していると理解されている。
過去問・解説

(H18 司法 第7問 C)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。空欄に、後記1から6までの中から適切なものを補充して、文章を完成させなさい。
これらを受けて、職業選択の自由を規制する法令の合憲性審査基準に関して、判例はいわゆる「目的二分論」に立っていると理解した上で、これを基本的に支持する見解がある一方で、規制目的と合憲性審査基準を対応させることについて批判的な見解もある。このような中、最高裁判所は、平成元年に、[空欄]において、ある小法廷が、小売市場事件の判決と同様の合憲性審査基準を述べた上で、当該規制は違憲とすべき場合に当たらない旨判示したのに対して、別の小法廷は、そのような審査基準を述べることなく当該規定の合憲性を肯定して、判断手法が分かれた。

 1. 薬局設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による開設不許可事由とした薬事法の規定の合憲性が争われた事案
 2. たばこ事業法、同法施行規則及びこれを受けた大蔵大臣依命通達による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制の合憲性が争われた事案
 3. 公衆浴場設置場所が配置の適正を欠くと認められることを都道府県知事による経営不許可事由とした公衆浴場法の規定の合憲性が争われた事案
 4. 酒類の販売業を税務署長の免許制とし、その要件を定めている酒税法の規定の合憲性が争われた事案
 5. 都道府県知事の許可なく小売市場を開設することを禁じた小売商業調整特別措置法の規定の合憲性が争われた事案
 6. 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案

(正答)3

(解説)
平成元年1月20日判決(最判平元.1.20)は、「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきであるところ…、右の適正配置規制及び距離制限がその場合に当たらないことは、多言を要しない。」として、明白の原則を適用して結論として憲法22条1項違反を否定している。
これに対し、平成元年3月7日判決(最判平元.3.7)は、「公衆浴場法…2条2項による適正配置規制の目的は、国民保健及び環境衛生の確保にあるとともに、公衆浴場が自家風呂を持たない国民にとって日常生活上必要不可欠な厚生施設であり、入浴料金が物価統制令により低額に統制されていること、利用者の範囲が地域的に限定されているため企業としての弾力性に乏しいこと、自家風呂の普及に伴い公衆浴場業の経営が困難になっていることなどにかんがみ、既存公衆浴場業者の経営の安定を図ることにより、自家風呂を持たない国民にとって必要不可欠な厚生施設である公衆浴場自体を確保しようとすることも、その目的としているものと解されるのであり」として規制目的を消極目的と積極目的の双方と捉えた上で、「適正配置規制は右目的を達成するための必要かつ合理的な範囲内の手段と考えられる」として憲法22条1項違反を否定している。本判決については、合理性の基準を採用していると理解されている。

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