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憲法 司法書士法事件 最三小判平成12年2月8日 - 解答モード

概要
司法書士法の各規定が、登記制度が国民の権利義務等や社会生活上の利益にに重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、原則として司法書士に登記業務の独占を認める職域規制を定めていることは、公共の福祉に合致した合理的なものであり、憲法22条1項に違反しない。
判例
事案:司法書士法は、登記に関する手続の代理等を司法書士の業務と定め(2条1項1号)、司法書士会に入会している司法書士以外の者にこれらの業務を行うことを原則として禁止し(19条1項)、違反者を1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する(25条1項)ことを定めている。登記申請の代理を司法書士に原則的に独占させている司法書士法の合憲性が問題となった。

判旨:「司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条1項に違反するものでないことは、当裁判所の判例…の趣旨に徴し明らかである。」
過去問・解説

(H18 司法 第7問 改題)
次の文章は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性判断基準に関するものである。司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続の代理業務等を行うことを禁じた司法書士法の規定の合憲性が争われた事案は、AないしDのどのアルファベットに入るか。なお、いずれにも該当しない場合には×を選択すること。
 最高裁判所は、職業選択の自由を規制する法令の合憲性に関して、[A]の判決において、積極的な社会経済政策を実施するための法的規制措置については、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることが明白な場合に限って、これを違憲として、その効力を否定することができる旨判示した。その後、[B]の判決では、職業の許可制について合憲性を肯定し得るためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、それが自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するより緩やかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によっては、その目的を十分に達成することができないと認められることを要する旨判示した。
 これらを受けて、職業選択の自由を規制する法令の合憲性審査基準に関して、判例はいわゆる「目的二分論」に立っていると理解した上で、これを基本的に支持する見解がある一方で、規制目的と合憲性審査基準を対応させることについて批判的な見解もある。このような中、最高裁判所は、平成元年に、[C]において、ある小法廷が、[A]の判決と同様の合憲性審査基準を述べた上で、当該規制は違憲とすべき場合に当たらない旨判示したのに対して、別の小法廷は、そのような審査基準を述べることなく当該規定の合憲性を肯定して、判断手法が分かれた。しかし、平成5年の[D]についての判決では、その規制目的に言及した上で、[A]の判決を引用して、当該規制は、その目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難く、憲法22条1項に違反するということはできない旨判示した。

(正答)  

(解説)
小売市場事件判決(最大判昭47.11.22)は、「積極的な社会経済政策…の一手段として…の…経済活動に対する法的規制措置については、立法府の政策的技術的な裁量に委ねるほかはなく、裁判所は、立法府の右裁量的判断を尊重するのを建前とし、ただ、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白である場合に限つて、これを違憲として、その効力を否定することができるものと解するのが相当である。」とした。[A]
その後、薬事法事件判決(最大判昭50.4.30)は、「一般に許可制は、単なる職業活動の内容及び態様に対する規制を超えて、狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課するもので、職業の自由に対する強力な制限であるから、その合憲性を肯定しうるためには、原則として、重要な公共の利益のために必要かつ合理的な措置であることを要し、また、それが社会政策ないしは経済政策上の積極的な目的のための措置ではなく、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的措置である場合には、許可制に比べて職業の自由に対するよりゆるやかな制限である職業活動の内容及び態様に対する規制によつては右の目的を十分に達成することができないと認められることを要する…。」とした。[B]
このよう中で、平成元年1月20日判決(最判H元.1.20)は、「公衆浴場が住民の日常生活において欠くことのできない公共的施設であり、これに依存している住民の需要に応えるため、その維持、確保を図る必要のあることは、立法当時も今日も変わりはない。むしろ、公衆浴場の経営が困難な状況にある今日においては、一層その重要性が増している。」として規制目的を積極目的として捉えた上で、「このような積極的、社会経済政策的な規制目的に出た立法については、立法府のとつた手段がその裁量権を逸脱し、著しく不合理であることの明白な場合に限り、これを違憲とすべきである」としている。[C]
その後、酒類販売免許制事件(最判平4.12.15)は、「租税法の定立については、国家財政、社会経済、国民所得、国民生活等の実態についての正確な資料を基礎とする立法府の政策的、技術的な判断にゆだねるほかはなく、裁判所は、基本的にはその裁量的判断を尊重せざるを得ないものというべきである。…以上のことからすると、租税の適正かつ確実な賦課徴収を図るという国家 の財政目的のための職業の許可制による規制については、その必要性と合理性についての立法府の判断が、右の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので、著しく不合理なものでない限り、これを憲法22条1項の規定に違反するものということはできない」としている。
その後、たばこ事業法事件判決(最判平5.6.25)は、「たばこ事業法22条は、たばこ事業法附則10条1項に基づき製造たばこの小売販売業を行うことの許可を受けた者とみなされる右小売人の保護を図るため、当分の間に限り、製造たばこの小売販売業について許可制を採用することとしたものであり、右許可制の採用は、公共の福祉に適合する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができる。そして、同法23条3号、同法施行規則20条2号及びこれを受けた大蔵大臣依命通達…による製造たばこの小売販売業に対する適正配置規制は、右目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまるものであって、これが著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、製造たばこの小売販売業に対する右規制が、憲法22条1項に違反するということはできない。」として、たばこ事業法上の許可制について、積極目的規制に位置付けた上で、小売市場事件判決の明白の原則を採用している。[D]
以上より、司法書士法事件判決(最判平12.2.8)は、[A][B][C][D]のいずれにも入らない。


(H26 司法 第9問 ウ)
登記制度が国民の権利義務等に重大な影響を及ぼすことなどから、原則として司法書士に登記業務の独占を認める職域規制は、公共の福祉に合致した合理的な規制である。

(正答)  

(解説)
司法書士法事件判決(最判平12.2.8)は、「司法書士法の右各規定は、登記制度が国民の権利義務等社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどにかんがみ、法律に別段の定めがある場合を除き、司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が、他人の嘱託を受けて、登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰することにしたものであって、右規制が公共の福祉に合致した合理的なもので憲法22条1項に違反するものでないことは…明らかである。」としている。

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