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憲法 農業災害補償法事件 最三小判平成17年4月26日 - 解答モード

概要
農業共済組合の区域内に住所を有する水稲等の耕作の業務を営む者でその業務の規模が一定の基準に達するものは当該組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立する旨を定める改正前農業災害補償法の各規定は、憲法22条1項に違反しない。
判例
事案:改正前農業災害補償法は、農業共済組合の区域内に住所を有する水稲等の耕作の業務を営む者でその業務の規模が一定の基準に達するものは当該組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立する旨を定めており、これが憲法22条1項に違反するかが問題となった。

判旨:「法が、水稲等の耕作の業務を営む者でその耕作面積が一定の規模以上のものは農業共済組合の組合員となり当該組合との間で農作物共済の共済関係が当然に成立するという仕組み(法15条1項、16条1項、19条、104条1項。以下「当然加入制」という。)を採用した趣旨は、国民の主食である米の生産を確保するとともに、水稲等の耕作をする自作農の経営を保護することを目的とし、この目的を実現するため、農家の相互扶助の精神を基礎として、災害による損失を相互に分担するという保険類似の手法を採用することとし、被災する可能性のある農家をなるべく多く加入させて危険の有効な分散を図るとともに、危険の高い者のみが加入するという事態を防止するため、原則として全国の米作農家を加入させたところにあると解される。法が制定された昭和22年当時、食糧事情が著しくひっ迫していた一方で、農地改革に伴い多数の自作農が創設され、農業経営の安定が要請されていたところ、当然加入制は、もとより職業の遂行それ自体を禁止するものではなく、職業活動に付随して、その規模等に応じて一定の負担を課するという態様の規制であること、組合員が支払うべき共済掛金については、国庫がその一部を負担し、災害が発生した場合に支払われる共済金との均衡を欠くことのないように設計されていること、甚大な災害が生じた場合でも政府による再保険等により共済金の支払が確保されていることに照らすと、主食である米の生産者についての当然加入制は、米の安定供給と米作農家の経営の保護という重要な公共の利益に資するものであって、その必要性と合理性を有していたということができる。
 もっとも、その後、社会経済の状況の変化に伴い、米の供給が過剰となったことから生産調整が行われ、また、政府が米穀管理基本計画に基づいて生産者から米を買い上げることを定めていた食糧管理法は平成7年に廃止されるに至っている。しかしながら、上告人が本件差押えに係る共済掛金等の支払義務を負った当時においても、米は依然として我が国の主食としての役割を果たし、重要な農作物としての地位を占めており、その生産過程は自然条件に左右されやすく、時には冷害等により広範囲にわたって甚大な被害が生じ、国民への供給不足を来すことがあり得ることには変わりがないこと、また、食糧管理法に代わり制定された主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律(平成15年法律第103号による改正前のもの)は、主要食糧の需給及び価格の安定を図ることを目的として、米穀の生産者から消費者までの計画的な流通を確保するための措置等を講ずることを定めており、災害補償につき個々の生産者の自助にゆだねるべき状態に至っていたということはできないことを勘案すれば、米の生産者についての当然加入制はその必要性と合理性を失うに至っていたとまではいえないと解すべきである。
 このように、上記の当然加入制の採用は、公共の福祉に合致する目的のために必要かつ合理的な範囲にとどまる措置ということができ、立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白であるとは認め難い。したがって、上記の当然加入制を定める法の規定は、職業の自由を侵害するものとして憲法22条1項に違反するということはできない。」
過去問・解説

(H29 共通 第8問 ア)
農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性は、当該仕組みが国民の主食である米の生産の確保と稲作を行う自作農の経営の保護を目的とすることから、必要最小限度の規制であるか否かによって判断される。

(正答)  

(解説)
農業災害補償法事件判決(最判平17.4.26)は、農業災害補償法が一定の稲作農業者を農業共済組合に当然に加入させる仕組みを採用したことの合憲性について、「立法府の政策的、技術的な裁量の範囲を逸脱するもので著しく不合理であることが明白である」か否かにより審査している。

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