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憲法 堀木訴訟 最大判昭和57年7月7日 - 解答モード
概要
②障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止を定める児童福祉手当法4条3項3号は、憲法14条にも憲法13条にも違反しない。
判例
本事件では、障害福祉年金と児童扶養手当の併給禁止を定める児童福祉手当法4条3項3号の憲法25条適合性と憲法14条1項適合性が争点となった。
過去問・解説
(H19 司法 第10問 ア)
憲法25条2項は事前の積極的防貧施策をなすべき国の努力義務を定め、1項は2項の防貧施策の実施にかかわらずなお落ちこぼれた者に対し、「最低限度の生活」を確保するため事後的救貧施策をなすべき国の責務を定めている。したがって、1項にかかわる生活保護の受給資格等が争われる事案は、国民年金法による障害福祉年金の受給制限が争われる2項に関する事案よりも厳格な司法審査が行われる。
(正答) ✕
(解説)
堀木訴訟の控訴審判決(大阪高判昭50.1.10)は、1項と2項を峻別し、2項は国の事前の積極的貧困施策をなすべき努力義務のあることを、1項は2項の防貧施策の実施にもかかわらずなお落ちこぼれた者に対し事後的・補足的かつ個別的な救貧施策をなすべき義務があることを宣言したものであるとして、峻別論に立っている。この峻別論は、2項の防貧施策には広い立法裁量が認められ、その合憲性を緩やかに審査されるとする一方で、1項を「最低限度の生活の保障」という絶対的基準の確保を直接の目的としていると捉え、1項の救貧施策には厳格な審査基準が適用されるとする。
これに対し、最高裁(最大判昭57.7.7)は、同条1項と2項はともに福祉国家の理念に基づく国の責務を規定したものであり、両者が相まって生存権が設定充実されていくものであると述べ、峻別論を採用しなかった。
(H19 司法 第10問 ウ)
憲法25条の趣旨を立法により実現することについては、多方面にわたる複雑多様な、しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。したがって、憲法25条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられるが、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるを得ないような場合には裁判所が審査判断するのであるから、憲法25条は裁判規範性を持つといえる。
(H22 司法 第3問 ウ)
社会保障給付の受給が争われている場合には、法令等の憲法25条違反の問題と14条1項違反の問題は一括して審査され、法令等の内容が著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱、濫用とみざるを得ない場合を除き、違憲とは判断されない。
(H27 共通 第2問 イ)
併給調整条項の適用により、障害福祉年金を受けることのできる者とそうでない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別が生じても、両給付が基本的に同一の性格を有し、併給調整に立法裁量があることなどに照らすと、合理的理由のない不当なものとはいえない。
(正答) 〇
(解説)
堀木訴訟判決(最大判昭57.7.7)は、「児童扶養手当は、…障害福祉年金と基本的に同一の性格を有するもの、と見るのがむしろ自然である。」とした上で、「社会保障給付の全般的公平を図るため公的年金相互間における併給調整を行うかどうかは、さきに述べたところにより、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。」としている。その上で、本判決は、「本件併給調整条項の適用により、上告人のように障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても、…右差別がなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。」としている。
(H29 共通 第10問 イ)
憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、きわめて抽象的・相対的な概念であって、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるから、国の立法として具体化される場合にも、国の財政事情は考慮されるべきではない。
(R2 司法 第9問 ア)
憲法25条の規定の趣旨に応えて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量に委ねられているが、何ら合理的理由のない不当な差別的取扱いや、個人の尊厳を毀損するような内容の定めがあれば、憲法14条及び13条違反の問題を生じることがある。
(R3 共通 第9問 ア)
憲法25条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」は、抽象的・相対的な概念であって、その具体的な内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同規定を現実の立法として具体化するに当たっては、国の財政事情を無視することができず、高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。
(R3 共通 第9問 ウ)
憲法25条2項で定める防貧施策については広い立法裁量が認められる一方、同条1項で定める救貧施策については、国は国民の最低限度の生活を保障する責務を負い、前者よりも厳格な違憲審査基準が用いられる。
(正答) ✕
(解説)
堀木訴訟の控訴審判決(大阪高判昭50.1.10)は、1項と2項を峻別し、2項は国の事前の積極的貧困施策をなすべき努力義務のあることを、1項は2項の防貧施策の実施にもかかわらずなお落ちこぼれた者に対し事後的・補足的かつ個別的な救貧施策をなすべき義務があることを宣言したものであるとして、峻別論に立っている。この峻別論は、2項の防貧施策には広い立法裁量が認められ、その合憲性を緩やかに審査されるとする一方で、1項を「最低限度の生活の保障」という絶対的基準の確保を直接の目的としていると捉え、1項の救貧施策には厳格な審査基準が適用されるとする。
これに対し、最高裁(最大判昭57.7.7)は、同条1項と2項はともに福祉国家の理念に基づく国の責務を規定したものであり、両者が相まって生存権が設定充実されていくものであると述べ、峻別論を採用しなかった。
(R4 司法 第3問 イ)
生存権は、生存に直結する権利であり精神的自由に準ずる権利である一方、これを具体化するための立法には高度の専門技術的な政策的判断を要するところ、併給調整条項の適用により、障害福祉年金の受給者と非受給者との間で児童扶養手当の受給に関する区別が生じるとしても、立法目的に合理的な根拠があり、かつ、立法目的と当該区別との間に実質的関連性が認められ、合理的理由のない差別とはいえないから、憲法14条に違反しない。
(正答) ✕
(解説)
堀木訴訟判決(最大判昭57.7.7)は、「本件併給調整条項の適用により、Xのように障害福祉年金を受けることができる地位にある者とそのような地位にない者との間に児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても、さきに説示したところに加えて原判決の指摘した諸点、とりわけ身体障害者、母子に対する諸施策及び生活保護制度の存在などに照らして総合的に判断すると、右差別がなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえない…。」としており、「立法目的に合理的な根拠があり、かつ、立法目的と当該区別との間に実質的関連性が認められ」(本肢)るか否かにまで踏み込んだ審査は行っていない。
(R5 司法 第7問 ア)
堀木訴訟判決(最大判昭和57年7月7日)は、憲法25条の規定の要請にこたえて制定された法令において、憲法14条違反の問題を生じる余地はあるが、併給調整を行うかどうかは立法府の裁量の範囲内に属し、併給調整条項の適用により、児童扶養手当の受給に関して差別を生ずることになるとしても、身体障害者、母子に対する諸施策及び生活保護制度の存在などに照らして総合的に判断すると、かかる差別はなんら合理的理由のない不当なものであるとはいえないとした。