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憲法 砂川事件 最大判昭和34年12月16日 - 解答モード
概要
②憲法9条2項が戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となって、これに指揮権、管理権を行使することにより、同条第1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起すことのないようにするためである。
③憲法9条は、わが国が主権国として有する固有の自衛権を何ら否定してはいない。
④憲法は、わが国の平和と安全を維持するためにふさわしい方式または手段である限り、国際情勢の実情に則し適当と認められる以上、他国に安全保障を求めることを何ら禁ずるものではない。
⑤わが国が主体となって指揮権、管理権を行使し得ない外国軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても憲法9条第2項の「戦力」には該当しない。
⑥高度の政治性を有する事柄が違憲であるか否の法的判断は、純司法的機能を使命とする司法裁判所の審査に原則としてなじまない性質のものであり、それが一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外にある。
判例
判旨:「憲法9条は、わが国が敗戦の結果、ポツダム宣言を受諾したことに伴い、日本国民が過去におけるわが国の誤って犯すに至った軍国主義的行動を反省し、政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないようにすることを決意し、深く恒久の平和を念願して制定したものであって、前文および98条2項の国際協調の精神と相まって、わが憲法の特色である平和主義を具体化した規定である。
9条1項においては「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求」することを宣言し、また「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定し、さらに同条2項においては、「前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と規定した。かくのごとく、同条は、同条にいわゆる戦争を放棄し、いわゆる戦力の保持を禁止しているのであるが、しかしもちろんこれによりわが国が主権国として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものではなく、わが憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではないのである。…わが国が、自国の平和と安全を維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうることは、国家固有の権能の行使として当然のことといわなければならない。すなわち、われら日本国民は、憲法9条2項により、同条項にいわゆる戦力は保持しないけれども、これによって生ずるわが国の防衛力の不足は、これを憲法前文にいわゆる平和を愛好する諸国民の公正と信義に信頼することによって補ない、もってわれらの安全と生存を保持しようと決意したのである。そしてそれは、…国際連合の機関である安全保障理事会等の執る軍事的安全措置等に限定されたものではなく、わが国の平和と安全を維持するための安全保障であれば、その目的を達するにふさわしい方式又は手段である限り、国際情勢の実情に即応して適当と認められるものを選ぶことができることはもとよりであって、憲法9条は、わが国がその平和と安全を維持するために他国に安全保障を求めることを、何ら禁ずるものではないのである。
そこで、右のような憲法9条の趣旨に即して同条2項の法意を考えてみるに、同条項において戦力の不保持を規定したのは、わが国がいわゆる戦力を保持し、自らその主体となってこれに指揮権、管理権を行使することにより、同条1項において永久に放棄することを定めたいわゆる侵略戦争を引き起こすがごときことのないようにするためであると解するを相当とする。したがって、同条2項がいわゆる自衛のための戦力の保持をも禁じたものであるか否かは別として、同条項がその保持を禁止した戦力とは、わが国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、結局わが国自体の戦力を指し、外国の軍隊は、たとえそれがわが国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しないと解すべきである。
本件安全保障条約は、…主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、したがって、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第一次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねられるべきものであると解するを相当とする。そして、このことは、本件安全保障条約またはこれに基く政府の行為の違憲なりや否やが、本件のように前提問題となっている場合であると否とにかかわらないのである。」
過去問・解説
(H18 司法 第10問 ア)
憲法第9条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではなく、憲法の平和主義は決して無防備、無抵抗を定めたものではない。
(H18 司法 第10問 イ)
憲法第9条第2項がその保持を禁止した戦力とは、我が国が主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力をいうものであり、外国の軍隊は、たとえそれが我が国に駐留するとしても、ここにいう戦力には該当しない。
(H18 司法 第10問 ウ)
憲法第9条が侵略のための陸海空軍その他の戦力の保持を禁じていることは一見明白であるが、自衛のための軍隊その他の戦力の保持を禁じているか否かに関して憲法第9条第2項は一義的に明確な規定と解することはできない。
(H23 予備 第8問 ア)
憲法第9条は、我が国が主権国として持つ固有の自衛権を否定するものではない。憲法前文の趣旨からして、憲法第9条は、国際連合のような国際機関にばかりでなく、他国に安全保障を求めることを禁じるものではない。
(H23 予備 第8問 イ)
憲法第9条第2項にいう「戦力」とは、我が国がその主体となって指揮権、管理権を行使し得る戦力をいう。我が国に駐留する外国の軍隊がここにいう戦力に該当するか否かの判断は、裁判所の司法審査権の範囲外である。
(H30 司法 第14問 ア)
憲法第9条第2項が保持を禁止した戦力とは、我が国がその主体となってこれに指揮権、管理権を行使し得る戦力に限られず、我が国との安全保障条約に基づき我が国に駐留する外国の軍隊も、我が国の要請に応じて武力を行使する可能性があるので、同項の戦力に該当し得る。
(R5 司法 第13問 イ)
判例は、憲法第9条第1項によっても我が国が主権国家として持つ固有の自衛権は何ら否定されたものでなく、同条第2項は自衛のための戦力の保持まで禁じたものではないから、我が国の平和と安全の維持を目的としたアメリカ合衆国軍隊の駐留は同条に違反しないとしている。
(R6 予備 第8問 ウ)
アメリカ合衆国軍隊の駐留を合憲と解する考え方として、憲法第9条第2項の「戦力」とは、日本が指揮権、管理権を行使し得る戦力を意味し、外国の軍隊はこれに当たらないとするものがあり、最高裁判所は、この考え方を採用している。