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憲法 東京都売春取締条例事件 最大判昭和33年10月15日 - 解答モード

概要
憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。
判例
事案:東京都内で料亭を経営していた被告人は、同料亭内で複数の女中に不特定の客を相手に売春をさせ、その報酬の一部をみずから取得していたとして、東京都売春取締条例4条違反の管理売春として起訴され、第一審で罰金刑を受けた。そこで、被告人は、売春取締りは、法律により全国一律に規律すべきもので地方公共団体が個々に条例で罰則を定めるべきではなく、各都道府県ごとに処罰の規定が異なる売春取締条例は憲法の平等原則及び人権尊重の憲法の精神にも反すると主張した。
 本件では、被告人が主張する通り、条例による地域的別異取扱いの憲法14条1項違反が問題となった。

判旨:「社会生活の法的規律は通常、全国にわたり劃一的な効力をもつ法律によつてなされているけれども、中には各地方の特殊性に応じその実情に即して規律するためにこれを各地方公共団体の自治に委ねる方が一層合目的なものもあり、またときにはいずれの方法によつて規律しても差支えないものもある。これすなわち憲法94条が、地方公共団体は「法律の範囲内で条例を制定することができる」と定めている所以である。地方自治法は、憲法のこの規定に基き、普通地方公共団体は、法令に違反しない限りにおいて、その事務に関し、条例を制定することができる旨を規定し(同法14条1項)、その事務として、「地方公共の秩序を維持し、住民及び滞在者の安全、健康及び福祉を保持すること」(同法2条3項1号)や「風俗又は清潔を汚す行為の制限その他の保健衛生、風俗のじゆん化に関する事項を処理すること」(同条同項7号)等を例示している。そして条例中には、法令に特別の定があるものを除く外、「条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、10万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる」(同法14条5項)としているのである。本件東京都売春等取締条例は前記憲法94条並に地方自治法の諸条規に基いて制定されたものである。
 …論旨…は、売春取締に関する罰則を条例で定めては、地域によつて取扱に差別を生ずるが故に、憲法の掲げる平等の原則に反するとの趣旨を主張するものと解される。しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違憲ということはできない。論旨は理由がない。」

補足意見:「多数意見は「しかし憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあつても、所論のように地域差の故をもつて違法ということはできない。」と判示している。
 しかし、憲法94条は「地方公共団体は……法律の範囲内で条例を制定することができる」と規定し、条例制定権は、法律の範囲内で許されることを規定している以上、法律の上位にある憲法の諸原則の支配をも受けるものと解すべきことは当然であつて、各公共団体の制定した条例も、憲法14条の「法の下に平等の原則」に違反することは許されないものと解する。すなわち、憲法が自ら公共団体に条例制定権を認めているからといつて、その各条例相互の内容の差異が、憲法14条の原則を破るような結果を生じたときは、やはり違憲問題を生ずるものというべきであつて、例えば、同種の行為について一地域では外国人のみを処罰したり、他の地域では外国人のみにつき処罰を免除するが如き各条例は、特段の合理的根拠のない限り、憲法14条に反することになろう。これを要するに、憲法が各地方公共団体に、条例制定権を認めているからといつて、当然に、各条例相互間に憲法14条の原則を破る結果を生ずることまでも、憲法が是認しているものと解すべきではなく、各条例が各地域の特殊な地方の実情その他の合理的根拠に基いて制定され、その結果生じた各条例相互間の差異が、合理的なものとして是認せられて始めて、合憲と判断すべきものと考える。多数意見が「憲法が各地方公共団体に条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところである」として、無条件に地域的差別取扱を合憲とする趣旨であるとするならば、私どもの遽に賛同し得ないところである。また、弁護人主張の如く売春取締に関する法制は、必ず法律によつて全国一律に、統一的に規律しなければ憲法14条に反するとする所論も採るを得ない。すなわち、全国的に統一した法律の制定されていない時期においては、各地方公共団体が憲法九四条、地方自治法に基き各公共団体が売春取締に関する条例を制定すること自体は、何ら違憲ということはできない。(ただ、各地方公共団体の制定した条例相互の内容の差異が、憲法14条に反する結果を生じたとき始めて違憲の問題が生ずるに過ぎないのであつて、上告人は地域について具体的に差異の生じたことについて何ら主張がないのである。)(裁判官下飯坂潤夫、同奥野健一の補足意見は次のとおりである。)」
過去問・解説
正答率 : 100.0%

(H19 司法 第5問 ア)
地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果、その取扱いに差異を生じることがあっても、憲法第14条第1項に反しないとした判決(最大判昭和33年10月15日)の多数意見は、憲法が認めた地方公共団体の条例制定権の尊重を論拠とするものである。

(正答)  

(解説)
東京都売春取締条例事件判決(最大判昭33.10.15)における多数意見は、「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。」としているから、取り扱いに差異が生じる根拠を条例制定権に求めているといえる。


正答率 : 0.0%

(H28 共通 第3問 ウ)
条例においては、一定の取締規定を設け、法律による委任の範囲で、その違反に対する罰則を規定することが許されるが、禁錮又は懲役の刑は、全国一律に規律すべきものと解されるので、それぞれの条例の間で法定刑が異なる場合は、憲法第14条に違反する。

(正答)  

(解説)
東京都売春取締条例事件判決(最大判昭33.10.15)が、「地方自治法は、…条例中には、法令に特別の定があるものを除く外、条例に違反した者に対し、2年以下の懲役若しくは禁錮、10万円以下の罰金、拘留、科料又は没収の刑を科する旨の規定を設けることができる」(同法14条5項)としているのである。…憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によつて差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。」としているから、禁錮又は懲役の刑について、地域ごとの条例の間で法定刑が異なることは憲法14条1項に違反せず許容される。


正答率 : 100.0%

(H30 共通 第2問 ウ)
地方公共団体が法律の範囲内で条例を制定することができるとしている条例制定権の規定(憲法第94条)に照らすと、地方公共団体が売春の取締りについて各別に条例を制定する結果、その取扱いに差別を生ずることがあっても、地域差の故をもって憲法第14条第1項に反するとはいえない。

(正答)  

(解説)
東京都売春取締条例事件判決(最大判昭33.10.15)が、「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。それ故、地方公共団体が売春の取締について各別に条例を制定する結果、その取扱に差別を生ずることがあっても、所論のように地域差の故をもって違憲ということはできない。」としている。


正答率 : 100.0%

(R4 共通 第19問 ウ)
憲法第94条は、地方公共団体に条例制定権を認めており、ある事項を条例によって規制する結果として、地方公共団体ごとにその取扱いに差異が生じることがあり得るから、ある事項について条例によって刑罰を定める場合、地域によって刑罰の内容に差異が生じることも許容され得る。

(正答)  

(解説)
東京都売春取締条例事件判決(最大判昭33.10.15)が、「憲法が各地方公共団体の条例制定権を認める以上、地域によって差別を生ずることは当然に予期されることであるから、かかる差別は憲法みずから容認するところであると解すべきである。」としているから、ある事項について条例によって刑罰を定める場合、地域によって刑罰の内容に差異が生じることも許容され得る。

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