(H18 司法 第5問 小問1第2肢改題)
公職候補者を厳しく批判する雑誌の刊行、販売、配布等を差し止める仮処分が争われた事例についての判決は、事実の報道の自由が憲法21条の保障の下にあると述べるにあたり、報道機関の報道が国民の「知る権利」に奉仕することを指摘している。
(正答) ✕
(解説)
報道機関の報道が国民の「知る権利」に奉仕することを指摘しているのは、「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)ではなく、博多駅事件決定(最大決昭44.11.26)である。
(H24 司法 第3問 ア)
裁判所の事前差止めは、思想内容等の表現物につき、その発表の禁止を目的として、対象となる表現物の内容を網羅的一般的に審査する性質を有するものではあるが、裁判所という司法機関により行われるものであるから、憲法21条2項前段の「検閲」には当たらない。
(正答)✕
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「憲法21条2項前段にいう検閲とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべき…である。」とした上で、裁判所の事前差止めについて、「表現物の内容の網羅的一般的な審査に基づく事前規制が行政機関によりそれ自体を目的として行われる場合とは異なり、個別的な私人間の紛争について、司法裁判所により、当事者の申請に基づき差止請求権等の私法上の被保全権利の存否、保全の必要性の有無を審理判断して発せられるものであ」ることを理由に、「『検閲』には当たらない…。」としている。
したがって、裁判所の事前差止めについて、「対象となる表現物の内容を網羅的一般的に審査する性質を有する」とする点、及び「裁判所という司法機関により行われる」ことだけを理由として検閲に当たらないとする点において、本肢は誤っている。
(H24 司法 第3問 イ)
裁判所の事前差止めは、表現行為が公共の利害に関する事項の場合は原則として許されないが、表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものでないことが明白で、かつ、被害者が重大で著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に許される。
(正答) 〇
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであつて、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(前記…参照)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきであ…る」としている。
(H24 司法 第3問 ウ)
公共の利害に関する事項についての表現行為に対し事前差止めを命ずる仮処分命令を発する際には、口頭弁論又は債務者の審尋を行い、表現内容の真実性等の主張立証の機会を与えることが原則として必要である。
(正答) 〇
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「表現行為の事前抑制につき以上説示するところによれば、公共の利害に関する事項についての表現行為に対し、その事前差止めを仮処分手続によつて求める場合に、一般の仮処分命令手続のように、専ら迅速な処理を旨とし、口頭弁論ないし債務者の審尋を必要的とせず、立証についても疎明で足りるものとすることは、表現の自由を確保するうえで、その手続的保障として十分であるとはいえず、しかもこの場合、表現行為者側の主たる防禦方法は、その目的が専ら公益を図るものであることと当該事実が真実であることとの立証にあるのである…から、事前差止めを命ずる仮処分命令を発するについては、口頭弁論又は債務者の審尋を行い、表現内容の真実性等の主張立証の機会を与えることを原則とすべきものと解するのが相当である。」としている。
(R3 予備 第3問 ア)
裁判所による出版物の頒布等の事前差止めは、憲法21条2項にいう検閲に当たり原則として禁じられるが、出版等の表現の自由が個人の名誉の保護と衝突する場合には、厳格かつ明確な要件の下、例外的に事前差止めが許容されることがある。
(正答)✕
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「仮処分による事前差止めは、…『検閲』には当たらない」としている。
したがって、「裁判所による…事前差止めは、憲法21条2項にいう検閲に当たり」とする点において、本肢は誤っている。
(R5 司法 第3問 イ)
公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関する事前差止めは、原則として許されず、例外的に、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときにのみ許されるが、その場合には迅速を旨とする仮処分手続による以上、原則として、口頭弁論や債務者審尋を経る必要はない。
(正答)✕
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「表現行為の事前抑制につき以上説示するところによれば、公共の利害に関する事項についての表現行為に対し、その事前差止めを仮処分手続によつて求める場合に、一般の仮処分命令手続のように、専ら迅速な処理を旨とし、口頭弁論ないし債務者の審尋を必要的とせず、立証についても疎明で足りるものとすることは、表現の自由を確保するうえで、その手続的保障として十分であるとはいえず、しかもこの場合、表現行為者側の主たる防禦方法は、その目的が専ら公益を図るものであることと当該事実が真実であることとの立証にあるのである…から、事前差止めを命ずる仮処分命令を発するについては、口頭弁論又は債務者の審尋を行い、表現内容の真実性等の主張立証の機会を与えることを原則とすべきものと解するのが相当である。」とした上で、「ただ、差止めの対象が公共の利害に関する事項についての表現行為である場合においても、口頭弁論を開き又は債務者の審尋を行うまでもなく、債権者の提出した資料によつて、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であり、かつ、債権者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があると認められるときは、口頭弁論又は債務者の審尋を経ないで差止めの仮処分命令を発したとしても、憲法21条の前示の趣旨に反するものということはできない。」としている。
したがって、「原則として、口頭弁論や債務者審尋を経る必要はない。」とする点において、本肢は誤っている。
(R5 予備 第2問 ウ)
人格権としての個人の名誉を害する内容を含む表現行為の事前差止めは、その対象が公務員や公職選挙の候補者に対する評価、批判等である場合には原則として許されないが、その表現内容が真実でなく、又は専ら公益を図る目的のものでないことが明白であって、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあるときは、例外的に許される。
(正答)〇
(解説)
「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭61.6.11)は、「出版物の頒布等の事前差止めは、このような事前抑制に該当するものであつて、とりわけ、その対象が公務員又は公職選挙の候補者に対する評価、批判等の表現行為に関するものである場合には、そのこと自体から、一般にそれが公共の利害に関する事項であるということができ、前示のような憲法21条1項の趣旨(前記…参照)に照らし、その表現が私人の名誉権に優先する社会的価値を含み憲法上特に保護されるべきであることにかんがみると、当該表現行為に対する事前差止めは、原則として許されないものといわなければならない。ただ、右のような場合においても、その表現内容が真実でなく、又はそれが専ら公益を図る目的のものではないことが明白であつて、かつ、被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被る虞があるときは、当該表現行為はその価値が被害者の名誉に劣後することが明らかであるうえ、有効適切な救済方法としての差止めの必要性も肯定されるから、かかる実体的要件を具備するときに限つて、例外的に事前差止めが許されるものというべきであ…る。」としている。