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憲法 ヘイトスピーチの差止め 最三小判平成26年12月9日 - 解答モード
概要
在日朝鮮学校へのヘイトスピーチについて損害賠償及び差止めを求めて争われた事案において、原審がいずれの請求も認容したため、被告側が上告したところ、最高裁は、民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民事訴訟法312条1項又は2項所定の場合に限られるとして、上告を棄却した。
判例
事案:在日朝鮮人の学校を設置・運営するXは、Yらが本件学校の近辺等で示威活動を行ったこと及びその映像をインターネットを通じて公開したことが不法行為に該当するとして、損害賠償の支払及びXを非難、誹謗中傷するなどの演説等(ヘイトスピーチ)の差止めを求めた。
原審(大阪高判平26.7.8)は、人種差別撤廃条約は、公権力と個人との関係を規律するものであり、私人相互の関係を直接規律するものではなく、私人相互の関係に適用または類推適用されるものでもないから、その趣旨は、民法709条等の個別の規定の解釈適用を通じて、他の憲法原理や私的自治の原則との調和を図りながら実現されるべきものであるところ、一般に私人の表現行為は表現の自由として保障されるものであるが、私人間において人種差別的な発言が行われた場合には、その発言が憲法や本件条約の趣旨に照らし、合理的理由を欠き、社会的に許容しうる範囲を超えて、他人の権利又は法益を侵害したとの要件を満たすと解すべきであり、これによって生じた損害を加害者に賠償させることを通じて、人種差別を撤廃すべきものとする同条約の趣旨を私人間においても実現すべきものであるとした。その上で、Yらの本件活動は、本件学校が無許可で本件公園を使用していたことが契機となったとはいえ、本件発言の主眼は、在日朝鮮人を嫌悪・蔑視してその人格を否定し、在日朝鮮人に対する差別意識を世間に訴え、我が国の社会から在日朝鮮人を排斥すべきであるとの見解を声高に主張することにあったというべきであり、主として公益を図る目的であったということはできないとし、Yらに対する損害賠償及び差止請求を認めた。これに対し、Yらは上告した。
判旨:「民事事件について最高裁判所に上告をすることが許されるのは、民訴法312条1項又は2項所定の場合に限られるところ、本件上告理由は、違憲及び理由の不備・食違いをいうが、その実質は事実誤認又は単なる法令違反を主張するものであって、明らかに上記各項に規定する事由に該当しない。」
過去問・解説
(R4 司法 第2問 ウ)
最高裁判所は、下級裁判所が、一定の集団に属する者の全体に対して人種差別的な発言をした者に対し、人種差別撤廃条約並びに同条約に照らして解釈される憲法第13条及び第14条第1項は私人相互の関係にも直接適用されるとして、民法第709条の規定により高額の損害賠償を命じた事例において、上告を棄却した。