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憲法 予防接種ワクチン禍事件 最二小判平成3年4月19日

概要
予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。
判例
事案:予防接種の際、被接種者の一部の者について重篤な副反応が生じ、後遺障害が残ってしまった。そこで、後遺障害が残ったX及びその両親は、国を相手取って、主位的には、保健所の医師の問診不十分、種痘の接種強制を廃止しなかったこと、初痘年齢を1才以上としなかったこと、苗製造株の変更をしなかったことの違法を理由として。国家賠償請求請求をし、予備的には、公共の利益のために国民の一部の者が自己の責任によらず特別な犠牲を強いられたものにあたるとして、損失補償請求(憲法29条3項)をした。

解説:最高裁は、「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、本件について、「いまだXが禁忌者に該当していなかったと断定することはできない。」と判示し、Xの主位的請求について、「本件接種当時のXが予防接種に適した状態にあったとして、接種実施者の過失に関する上告人らの主張を直ちに排斥した原審の判断には審理不尽の違法があるというべきである。」と判示した。したがって、最高裁では、予備的請求については判断されていない。
過去問・解説
(H27 予備 第6問 ウ)
憲法第29条第3項に基づく損失補償は、国の正当な行為について行われるもので、物的財産だけでなく、身体に対してもなされるというのが最高裁判所の立場である。

(正答)  

(解説)
予防接種ワクチン禍事件判決(最判平3.4.19)は、主位的請求である国家賠償請求を認めているため、予備的請求である損失補償請求については判断を示していない。
総合メモ
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