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憲法 参議院非拘束名簿式比例代表並立制の合憲性 最大判平成16年1月14日
概要
公職選挙法が参議院議員選挙につき採用している非拘束名簿式比例代表制は、憲法15条、43条1項に違反するとはいえない。
判例
事案:拘束式名簿比例代表制では、有権者は政党名でのみ投票することができ、各政党が任意に決定した名簿順位に従って当選者が決定される。これに対し、非拘束名簿式比例代表制では、有権者は政党又は立候補者のいずれにも投票することができ、政党による名簿順位の決定はない。個人票の得票数に応じて順位付けがされ、当選者が決定するので、名簿順位の決定に有権者が参加することができる制度といえる。
原告側は、(ⅰ)「改正公選法が採用した…本件非拘束名簿式比例代表制…は、参議院名簿登載者個人には投票したいが、その者の所属する参議院名簿届出政党等には投票したくないという投票意思を認めず、選挙人の真意にかかわらず参議院名簿登載者個人に対する投票をその者の所属する参議院名簿届出政党等に対する投票と評価し、比例代表選出議員が辞職した場合等には、当該議員の所属する参議院名簿届出政党等に対する投票意思のみが残る結果となる点において、国民の選挙権を侵害し、憲法15条に違反するものであ」る、(ⅱ)「本件非拘束名簿式比例代表制の下では、超過得票に相当する票は、選挙人が投票した参議院名簿登載者以外の参議院名簿登載者に投票した選挙人の投票意思を実現するために用いられ、各参議院名簿届出政党等の届出に係る参議院名簿登載者の間における投票の流用が認められることになるから、直接選挙とはいえず、憲法43条1項に違反する」などと主張した。
判旨:①「代表民主制の下における選挙制度は、選挙された代表者を通じて、国民の利害や意見が公正かつ効果的に国政の運営に反映されることを目標とし、他方、政治における安定の要請をも考慮しながら、それぞれの国において、その国の実情に即して具体的に決定されるべきものであり、そこに論理的に要請される一定不変の形態が存在するわけではない。我が憲法もまた、上記の理由から、国会の両議院の議員の選挙について、議員は全国民を代表するものでなければならないという制約の下で、議員の定数、選挙区、投票の方法その他選挙に関する事項は法律で定めるべきものとし(43条、47条)、両議院の議員の各選挙制度の仕組みの具体的決定を原則として国会の裁量にゆだねているのである。このように、国会は、その裁量により、衆議院議員及び参議院議員それぞれについて公正かつ効果的な代表を選出するという目標を実現するために適切な選挙制度の仕組みを決定することができるものであるから、国会が新たな選挙制度の仕組みを採用した場合には、その具体的に定めたところが、国会の上記のような裁量権を考慮しても、上記制約や法の下の平等などの憲法上の要請に反するためその限界を超えており、これを是認することができない場合に、初めてこれが憲法に違反することになるものと解すべきである。」
②「名簿式比例代表制は、各名簿届出政党等の得票数に応じて議席が配分される政党本位の選挙制度であり、本件非拘束名簿式比例代表制も、各参議院名簿届出政党等の得票数に基づきその当選人数を決定する選挙制度であるから、本件改正前の拘束名簿式比例代表制と同様に、政党本位の名簿式比例代表制であることに変わりはない。憲法は、政党について規定するところがないが、政党の存在を当然に予定しているものであり、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である。したがって、国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決定するに当たり、政党の上記のような国政上の重要な役割にかんがみて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、その裁量の範囲に属することが明らかであるといわなければならない。そして、名簿式比例代表制は、政党の選択という意味を持たない投票を認めない制度であるから、本件非拘束名簿式比例代表制の下において、参議院名簿登載者個人には投票したいが、その者の所属する参議院名簿届出政党等には投票したくないという投票意思が認められないことをもって、国民の選挙権を侵害し、憲法15条に違反するものとまでいうことはできない。また、名簿式比例代表制の下においては、名簿登載者は、各政党に所属する者という立場で候補者となっているのであるから、改正公選法が参議院名簿登載者の氏名の記載のある投票を当該参議院名簿登載者の所属する参議院名簿届出政党等に対する投票としてその得票数を計算するものとしていることには、合理性が認められるのであって、これが国会の裁量権の限界を超えるものとは解されない。」
③「政党等にあらかじめ候補者の氏名を記載した参議院名簿を届け出させた上、選挙人が参議院名簿登載者の氏名又は参議院名簿届出政党等の名称等を記載して投票し、各参議院名簿届出政党等の得票数(当該参議院名簿届出政党等に係る参議院名簿登載者の得票数を含む。)の多寡に応じて各参議院名簿届出政党等の当選人数を定めた後、参議院名簿登載者の得票数の多寡に応じて各参議院名簿届出政党等の届出に係る参議院名簿登載者の間における当選人となるべき順位を定め、この順位に従って当選人を決定する方式は、投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。同一参議院名簿届出政党等内において得票数の同じ参議院名簿登載者が2人以上いる場合には、それらの者の間における当選人となるべき順位は選挙長のくじで定められることになるが、この場合も、当選人の決定に選挙人以外の者の意思が介在するものではないから、上記の点をもって本件非拘束名簿式比例代表制による比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項に違反するとはいえない。」
過去問・解説
(H22 司法 第15問 ウ)
名簿式比例代表制という選挙方法は、政党が作成した候補者名簿に有権者が投票するので、憲法が保障する直接選挙の原則に反するか否か問題となるが、最高裁判所は、選挙人の総意により当選人が決定される点において、直接選挙の原則に反しないと判示した。
名簿式比例代表制という選挙方法は、政党が作成した候補者名簿に有権者が投票するので、憲法が保障する直接選挙の原則に反するか否か問題となるが、最高裁判所は、選挙人の総意により当選人が決定される点において、直接選挙の原則に反しないと判示した。
(正答) 〇
(解説)
判例(最大判平16.1.14)は、名簿式比例代表制という選挙方法について、「投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。同一参議院名簿届出政党等内において得票数の同じ参議院名簿登載者が2人以上いる場合には、それらの者の間における当選人となるべき順位は選挙長のくじで定められることになるが、この場合も、当選人の決定に選挙人以外の者の意思が介在するものではないから、上記の点をもって本件非拘束名簿式比例代表制による比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項に違反するとはいえない。」としている。
判例(最大判平16.1.14)は、名簿式比例代表制という選挙方法について、「投票の結果すなわち選挙人の総意により当選人が決定される点において、選挙人が候補者個人を直接選択して投票する方式と異なるところはない。同一参議院名簿届出政党等内において得票数の同じ参議院名簿登載者が2人以上いる場合には、それらの者の間における当選人となるべき順位は選挙長のくじで定められることになるが、この場合も、当選人の決定に選挙人以外の者の意思が介在するものではないから、上記の点をもって本件非拘束名簿式比例代表制による比例代表選挙が直接選挙に当たらないということはできず、憲法43条1項に違反するとはいえない。」としている。
(R3 共通 第12問 ア)
憲法は、政党について規定するところがないが、政党の存在を当然に予定しており、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であるから、国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決めるに当たり、このような政党の国政上の重要な役割を踏まえて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、国会の裁量の範囲内である。
憲法は、政党について規定するところがないが、政党の存在を当然に予定しており、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であるから、国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決めるに当たり、このような政党の国政上の重要な役割を踏まえて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、国会の裁量の範囲内である。
(正答) 〇
(解説)
判例(最大平16.1.14)は、「憲法は、政党について規定するところがないが、政党の存在を当然に予定しているものであり、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である。したがって、国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決定するに当たり、政党の上記のような国政上の重要な役割にかんがみて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、その裁量の範囲に属することが明らかであるといわなければならない。」としている。
判例(最大平16.1.14)は、「憲法は、政党について規定するところがないが、政党の存在を当然に予定しているものであり、政党は、議会制民主主義を支える不可欠の要素であって、国民の政治意思を形成する最も有力な媒体である。したがって、国会が、参議院議員の選挙制度の仕組みを決定するに当たり、政党の上記のような国政上の重要な役割にかんがみて、政党を媒体として国民の政治意思を国政に反映させる名簿式比例代表制を採用することは、その裁量の範囲に属することが明らかであるといわなければならない。」としている。