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憲法 精神的原因による投票困難者の選挙権行使の機会の確保に関する立法不作為 最一小判平成18年7月13日

概要
精神的原因による投票困難者の選挙権行使の機会を確保するための立法措置については、今後国会において十分な検討がされるべきものであるが、その立法をしない立法不作為について、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などに当たるということはできないから、その立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではないというべきである。
判例
事案:精神的原因によって衆議院議員総選挙等における投票を棄権したXが、国会議員が精神的原因による投票困難者に対して選挙権行使の機会を確保していないことが違法であるとして、国家賠償請求等をした事案において、当該立法不作為の違法性が問題となった。

判旨:「国会議員の立法行為又は立法不作為が国家賠償法1条1項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であって、当該立法の内容又は立法不作為の違憲性の問題とは区別されるべきであり、仮に当該立法の内容又は立法不作為が憲法の規定に違反するものであるとしても、直ちに違法の評価を受けるものではないこと、しかし、立法の内容又は立法不作為が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白な場合や、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などには、例外的に、国会議員の立法行為又は立法不作為は、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けるものというべきであることは、当裁判所の判例とするところである(最高裁平成13年(行ツ)第82号、第83号、同年(行ヒ)第76号、第77号同17年9月14日大法廷判決・民集59巻7号2087頁)。
…憲法における選挙権保障の趣旨にかんがみれば、国民の選挙権の行使を制限することは原則として許されず、国には、国民が選挙権を行使することができない場合、そのような制限をすることなしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められるときでない限り、国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執るべき責務があるというべきである(上記大法廷判決参照)。このことは、国民が精神的原因によって投票所において選挙権を行使することができない場合についても当てはまる。しかし、精神的原因による投票困難者については、その精神的原因が多種多様であり、しかもその状態は必ずしも固定的ではないし、療育手帳に記載されている総合判定も、身体障害者手帳に記載されている障害の程度や介護保険の被保険者証に記載されている要介護状態区分等とは異なり、投票所に行くことの困難さの程度と直ちに結び付くものではない。したがって、精神的原因による投票困難者は、身体に障害がある者のように、既存の公的な制度によって投票所に行くことの困難性に結び付くような判定を受けているものではないのである。しかも、前記事実関係等によれば、身体に障害がある者の選挙権の行使については長期にわたって国会で議論が続けられてきたが、精神的原因による投票困難者の選挙権の行使については、本件各選挙までにおいて、国会でほとんど議論されたことはなく、その立法措置を求める地方公共団体の議会等の意見書も、本件訴訟の第1審判決後に初めて国会に提出されたというのであるから、少なくとも本件各選挙以前に、精神的原因による投票困難者に係る投票制度の拡充が国会で立法課題として取上げられる契機があったとは認められない。
…以上によれば、選挙権が議会制民主主義の根幹を成すものであること等にかんがみ(上記大法廷判決参照)、精神的原因による投票困難者の選挙権行使の機会を確保するための立法措置については、今後国会において十分な検討がされるべきものであるが、本件立法不作為について、国民に憲法上保障されている権利行使の機会を確保するために所要の立法措置を執ることが必要不可欠であり、それが明白であるにもかかわらず、国会が正当な理由なく長期にわたってこれを怠る場合などに当たるということはできないから、本件立法不作為は、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではないというべきである。」
過去問・解説
(R7 予備 第10問 ア)
最高裁判所は、国民の選挙権行使の制限は原則として許されず、国には、国民が選挙権を行使できない場合、そのような制限なしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難でない限り、選挙権行使を可能にするための所要の措置を執るべき責務があるというべきであり、このことは、精神的原因によって投票所に行くことが困難な有権者の選挙権についても当てはまるとした。

(正答)

(解説)
判例(最判平18.7.13)は、「国民の選挙権の行使を制限することは原則として許されず、国には、国民が選挙権を行使することができない場合、そのような制限をすることなしには選挙の公正の確保に留意しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不可能ないし著しく困難であると認められるときでない限り、国民の選挙権の行使を可能にするための所要の措置を執るべき責務があるというべきである…。このことは、国民が精神的原因によって投票所において選挙権を行使することができない場合についても当てはまる。」としている。
総合メモ
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