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憲法 東京電力塩山営業所事件 最二小判昭和63年2月5日
概要
企業が職員に共産党員であるか否かを問いただし、党員で無いことを書面で提出させることは、精神的自由を侵害するものではない。
判例
事案:不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、企業秘密の漏えいに絡んだ調査活動の一環として、女子職員に共産党か否かを問いただし、かつ、党員でない旨を書面で提出するよう求めた営業所長の行為が、職員の精神的自由を侵害するものであったかが問題となった。
判旨:「右事実関係によれば、亡斎藤が本件話合いをするに至った動機、目的は、本件営業所の公開されるべきでないとされていた情報が外部に漏れ、共産党の機関紙「赤旗」紙上に報道されたことから、当時、本件営業所の所長であった亡斎藤が、その取材源ではないかと疑われていた上告人から事情を聴取することにあり、本件話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから、亡斎藤が本件話合いを持つに至ったことの必要性、合理性は、これを肯認することができる。右事実関係によれば、亡斎藤は、本件話合いの比較的冒頭の段階で、上告人に対し本件質問をしたのであるが、右調査目的との関連性を明らかにしないで、上告人に対して共産党員であるか否かを尋ねたことは、調査の方法として、その相当性に欠ける面があるものの、前記赤旗の記事の取材源ではないかと疑われていた上告人に対し、共産党との係わりの有無を尋ねることには、その必要性、合理性を肯認することができないわけではなく、また、本件質問の態様は、返答を強要するものではなかったというのであるから、本件質問は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。さらに、前記事実関係によれば、本件話合いの中で、上告人が本件質問に対し共産党員ではない旨の返答をしたところ、亡斎藤は、上告人に対し本件書面交付の要求を繰り返したというのであるが、企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることにかんがみると、亡斎藤が、本件書面交付の要求と右調査目的との関連性を明らかにしないで、右要求を繰り返したことは、このような調査に当たる者として慎重な配慮を欠いたものというべきであり、調査方法として不相当な面があるといわざるを得ない。しかしながら、前記事実関係によれば、本件書面交付の要求は、上告人が共産党員ではない旨の返答をしたことから、亡斎藤がその旨を書面にするように説得するに至ったものであり、右要求は強要にわたるものではなく、また、本件話合いの中で、亡斎藤が、上告人に対し、上告人が本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆したり、右要求に応じることによって有利な取扱いを受け得る旨の発言をした事実はなく、さらに、上告人は右要求を拒否した、というのであって、右事実関係に照らすと、亡斎藤がした本件書面交付の要求は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない。
したがって、右確定事実の下において、上告人につき所論の不法行為に基づく損害賠償請求権が認められないとした原審の判断は、これを正当として是認することができる。」
判旨:「右事実関係によれば、亡斎藤が本件話合いをするに至った動機、目的は、本件営業所の公開されるべきでないとされていた情報が外部に漏れ、共産党の機関紙「赤旗」紙上に報道されたことから、当時、本件営業所の所長であった亡斎藤が、その取材源ではないかと疑われていた上告人から事情を聴取することにあり、本件話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから、亡斎藤が本件話合いを持つに至ったことの必要性、合理性は、これを肯認することができる。右事実関係によれば、亡斎藤は、本件話合いの比較的冒頭の段階で、上告人に対し本件質問をしたのであるが、右調査目的との関連性を明らかにしないで、上告人に対して共産党員であるか否かを尋ねたことは、調査の方法として、その相当性に欠ける面があるものの、前記赤旗の記事の取材源ではないかと疑われていた上告人に対し、共産党との係わりの有無を尋ねることには、その必要性、合理性を肯認することができないわけではなく、また、本件質問の態様は、返答を強要するものではなかったというのであるから、本件質問は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。さらに、前記事実関係によれば、本件話合いの中で、上告人が本件質問に対し共産党員ではない旨の返答をしたところ、亡斎藤は、上告人に対し本件書面交付の要求を繰り返したというのであるが、企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることにかんがみると、亡斎藤が、本件書面交付の要求と右調査目的との関連性を明らかにしないで、右要求を繰り返したことは、このような調査に当たる者として慎重な配慮を欠いたものというべきであり、調査方法として不相当な面があるといわざるを得ない。しかしながら、前記事実関係によれば、本件書面交付の要求は、上告人が共産党員ではない旨の返答をしたことから、亡斎藤がその旨を書面にするように説得するに至ったものであり、右要求は強要にわたるものではなく、また、本件話合いの中で、亡斎藤が、上告人に対し、上告人が本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆したり、右要求に応じることによって有利な取扱いを受け得る旨の発言をした事実はなく、さらに、上告人は右要求を拒否した、というのであって、右事実関係に照らすと、亡斎藤がした本件書面交付の要求は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない。
したがって、右確定事実の下において、上告人につき所論の不法行為に基づく損害賠償請求権が認められないとした原審の判断は、これを正当として是認することができる。」
過去問・解説
(H26 司法 第4問 ア)
企業が従業員に対して特定政党の党員か否かを調査することは、当該調査の必要性があり、不利益な取扱いのおそれがあることを示唆せず、強要にわたらない限り、許容される。
企業が従業員に対して特定政党の党員か否かを調査することは、当該調査の必要性があり、不利益な取扱いのおそれがあることを示唆せず、強要にわたらない限り、許容される。
(正答) 〇
(解説)
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、①「本件話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから、亡斎藤が本件話合いを持つに至ったことの必要性、合理性は、これを肯認することができる。右事実関係によれば、亡斎藤は、本件話合いの比較的冒頭の段階で、上告人に対し本件質問をしたのであるが、右調査目的との関連性を明らかにしないで、上告人に対して共産党員であるか否かを尋ねたことは、調査の方法として、その相当性に欠ける面があるものの、前記赤旗の記事の取材源ではないかと疑われていた上告人に対し、共産党との係わりの有無を尋ねることには、その必要性、合理性を肯認することができないわけではなく、また、本件質問の態様は、返答を強要するものではなかったというのであるから、本件質問は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」、②「本件書面交付の要求は、上告人が共産党員ではない旨の返答をしたことから、亡斎藤がその旨を書面にするように説得するに至ったものであり、右要求は強要にわたるものではなく、また、本件話合いの中で、亡斎藤が、上告人に対し、上告人が本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆したり、右要求に応じることによって有利な取扱いを受け得る旨の発言をした事実はなく、さらに、上告人は右要求を拒否した、というのであって、右事実関係に照らすと、亡斎藤がした本件書面交付の要求は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない。」としている。
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、①「本件話合いは企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為の調査をするために行われたことが明らかであるから、亡斎藤が本件話合いを持つに至ったことの必要性、合理性は、これを肯認することができる。右事実関係によれば、亡斎藤は、本件話合いの比較的冒頭の段階で、上告人に対し本件質問をしたのであるが、右調査目的との関連性を明らかにしないで、上告人に対して共産党員であるか否かを尋ねたことは、調査の方法として、その相当性に欠ける面があるものの、前記赤旗の記事の取材源ではないかと疑われていた上告人に対し、共産党との係わりの有無を尋ねることには、その必要性、合理性を肯認することができないわけではなく、また、本件質問の態様は、返答を強要するものではなかったというのであるから、本件質問は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」、②「本件書面交付の要求は、上告人が共産党員ではない旨の返答をしたことから、亡斎藤がその旨を書面にするように説得するに至ったものであり、右要求は強要にわたるものではなく、また、本件話合いの中で、亡斎藤が、上告人に対し、上告人が本件書面交付の要求を拒否することによって不利益な取扱いを受ける虞のあることを示唆したり、右要求に応じることによって有利な取扱いを受け得る旨の発言をした事実はなく、さらに、上告人は右要求を拒否した、というのであって、右事実関係に照らすと、亡斎藤がした本件書面交付の要求は、社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるということはできない。」としている。
(R2 共通 第4問 ア)
企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることに鑑みると、企業がその労働者に対して特定政党への所属の有無を確認するだけでなく、当該政党に所属しない旨の書面を要求する行為は、それが企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為に関する調査の一環として行われたとしても、労働者の思想・信条の自由に対する直接的制約であるから、その経緯や調査方法の相当性にかかわらず、違法性が認められる。
企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることに鑑みると、企業がその労働者に対して特定政党への所属の有無を確認するだけでなく、当該政党に所属しない旨の書面を要求する行為は、それが企業秘密の漏えいという企業秩序違反行為に関する調査の一環として行われたとしても、労働者の思想・信条の自由に対する直接的制約であるから、その経緯や調査方法の相当性にかかわらず、違法性が認められる。
(正答) ✕
(解説)
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、企業秘密の漏えいに絡んだ調査活動の一環として、女子職員に共産党か否かを問いただし、かつ、党員でない旨を書面で提出するよう求めた営業所長の行為が、職員の精神的自由を侵害するものであったかが問題となった事案において、いずれの行為についても「社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」としている。
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、企業秘密の漏えいに絡んだ調査活動の一環として、女子職員に共産党か否かを問いただし、かつ、党員でない旨を書面で提出するよう求めた営業所長の行為が、職員の精神的自由を侵害するものであったかが問題となった事案において、いずれの行為についても「社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」としている。
(R5 司法 第2問 ウ)
企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることから、 企業が労働者に対し、その者が特定の政党に所属するかどうかに関する書面の提出を求めることは、それがたとえ企業の組織秩序の維持を目的とする調査の一環であり、強要にわたるような態様のものでなかったとしても、社会的に許容し得る限界を超えて労働者の精神的自由を侵害した違法行為である。
企業内においても労働者の思想、信条等の精神的自由は十分尊重されるべきであることから、 企業が労働者に対し、その者が特定の政党に所属するかどうかに関する書面の提出を求めることは、それがたとえ企業の組織秩序の維持を目的とする調査の一環であり、強要にわたるような態様のものでなかったとしても、社会的に許容し得る限界を超えて労働者の精神的自由を侵害した違法行為である。
(正答) ✕
(解説)
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、企業秘密の漏えいに絡んだ調査活動の一環として、女子職員に共産党か否かを問いただし、かつ、党員でない旨を書面で提出するよう求めた営業所長の行為が、職員の精神的自由を侵害するものであったかが問題となった事案において、いずれの行為についても「社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」としている。
東京電力塩山営業所事件判決(最判昭63.2.5)は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟において、企業秘密の漏えいに絡んだ調査活動の一環として、女子職員に共産党か否かを問いただし、かつ、党員でない旨を書面で提出するよう求めた営業所長の行為が、職員の精神的自由を侵害するものであったかが問題となった事案において、いずれの行為についても「社会的に許容し得る限界を超えて上告人の精神的自由を侵害した違法行為であるとはいえない。」としている。