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憲法 加持祈祷事件 最大判昭和38年5月15日
概要
精神異常者の平癒を祈願するために宗教行為として加持祈祷行為がなされた場合でも、違法な有形力の行使に当るものであり、それにより被害者を死に致したものである以上、反社会的なものであることは否定し得ないから、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものである。
判例
事案:真言宗の僧侶であり病人等の求めに応じその平癒のため加持祈禱することを業としていたXは、Aの精神障害平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈禱を行ったところ、祈禱開始から4時間後Aが急性心臓麻痺により死亡したため、刑法205条の傷害致死罪として起訴された事案において、憲法20条1項の信教の自由の保障の効果として刑事責任が否定されないかが問題となった。
判旨:「憲法20条1項は信教の自由を何人に対してもこれを保障することを、同2項は何人も宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されないことを規定しており、信教の自由が基本的人権の一として極めて重要なものであることはいうまでもない。しかし、およそ基本的人権は、国民はこれを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うべきことは憲法12条の定めるところであり、また同13条は、基本的人権は、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする旨を定めており、これら憲法の規定は、決して所論のような教訓的規定というべきものではなく、従つて、信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。
…被告人Xの本件行為は、被害者Aの精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人Xの右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによつて被害者Aの生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人Xの本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであつたとしても、それが前記各判決の認定したような他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者Xを死に致したものである以上、被告人Xの右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであつて、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはなく、これを刑法205条に該当するものとして処罰したことは、何ら憲法の右条項に反するものではない。」
過去問・解説
(H26 共通 第5問 イ)
僧侶がその業務として遂行した行為の結果、刑法上の犯罪構成要件に該当することになった場合、その行為の目的や内容に宗教上の意義が認められるときは、たとえそれが著しく社会的妥当性を欠くものであっても、正当な業務行為として処罰の対象とはならない。
僧侶がその業務として遂行した行為の結果、刑法上の犯罪構成要件に該当することになった場合、その行為の目的や内容に宗教上の意義が認められるときは、たとえそれが著しく社会的妥当性を欠くものであっても、正当な業務行為として処罰の対象とはならない。
(正答) ✕
(解説)
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。
(H28 司法 第5問 イ)
僧侶が病者の平癒を祈願して加持祈祷を行うに当たり、病者の手足を縛って線香の火に当てるなどして同人を死亡させることは、医療上一般に承認された治療行為とは到底認められず、信教の自由の保障の限界を逸脱したものであって許されない。
僧侶が病者の平癒を祈願して加持祈祷を行うに当たり、病者の手足を縛って線香の火に当てるなどして同人を死亡させることは、医療上一般に承認された治療行為とは到底認められず、信教の自由の保障の限界を逸脱したものであって許されない。
(正答) 〇
(解説)
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。
加持祈祷事件判決(最大判昭38.5.15)は、「信教の自由の保障も絶対無制限のものではない。…被告人の本件行為は、被害者…の精神異常平癒を祈願するため、線香護摩による加持祈祷の行としてなされたものであるが、被告人の右加持祈祷行為の動機、手段、方法およびそれによって…被害者の生命を奪うに至つた暴行の程度等は、医療上一般に承認された精神異常者に対する治療行為とは到底認め得ないというのである。しからば、被告人の本件行為は、所論のように一種の宗教行為としてなされたものであったとしても、…他人の生命、身体等に危害を及ぼす違法な有形力の行使に当るものであり、これにより被害者を死に致したものである以上、被告人の右行為が著しく反社会的なものであることは否定し得ないところであって、憲法20条1項の信教の自由の保障の限界を逸脱したものというほかはな…い」としているから、宗教上の意義が認められる行為であっても、社会的妥当性を欠くものであれば、正当な業務行為とはえず、違法行為として処罰の対象となる。