現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください

引き続き問題が発生する場合は、 お問い合わせ までご連絡ください。

憲法 入会権者資格差別事件 最二小判平成18年3月17日

概要
入会権を男子孫に限るとした慣例は合理性を有さず、公序良俗に反して無効である。
判例
事案:入会権者の資格を世帯主及び男子孫に限り、A部落民以外の男性と結婚した女子孫は離婚して旧姓に復しない限り資格を認めないとする部分が公序良俗に反して無効であるかが問題となった。

判旨:「入会権は、一般に、一定の地域の住民が一定の山林原野等において共同して雑草、まぐさ、薪炭用雑木等の採取をする慣習上の権利であり(民法263条、294条)、この権利は、権利者である入会部落の構成員全員の総有に属し、個々の構成員は、共有におけるような持分権を有するものではなく、入会権そのものの管理処分については入会部落の一員として参与し得る資格を有するのみである。他方、入会権の内容である使用収益を行う権能は、入会部落内で定められた規律に従わなければならないという拘束を受けるものの、構成員各自が単独で行使することができる。このような入会権の内容、性質等や、原審も説示するとおり、本件入会地の入会権が家の代表ないし世帯主としての部落民に帰属する権利として当該入会権者からその後継者に承継されてきたという歴史的沿革を有するものであることなどにかんがみると、各世帯の構成員の人数にかかわらず各世帯の代表者にのみ入会権者の地位を認めるという慣習は、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権行使における各世帯間の平等という点からも、不合理ということはできず、現在においても、本件慣習のうち、世帯主要件を公序良俗に反するものということはできない。しかしながら、本件慣習のうち、男子孫要件は、専ら女子であることのみを理由として女子を男子と差別したものというべきであり、遅くとも本件で補償金の請求がされている平成4年以降においては、性別のみによる不合理な差別として民法90条の規定により無効であると解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。男子孫要件は、世帯主要件とは異なり、入会団体の団体としての統制の維持という点からも、入会権の行使における各世帯間の平等という点からも、何ら合理性を有しない。このことは、A部落民会の会則においては、会員資格は男子孫に限定されていなかったことや、被上告人と同様に杣山について入会権を有する他の入会団体では会員資格を男子孫に限定していないものもあることからも明らかである。…本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。」
過去問・解説
(H28 共通 第1問 ウ)
長期間にわたり形成された地方の慣習に根ざした権利である入会権については、その慣習が存続しているときは最大限尊重すべきであるから、権利者の資格を原則として男子孫に限る旨の特定の地域団体における慣習も、直ちに公序良俗に反するとはいえない。

(正答)  

(解説)
入会権者資格差別事件判決(最判平18.3.17)は、入会権者を男子孫に限るとする慣習が、「本件入会地の入会権の歴史的沿革等の事情を考慮しても、男子孫要件による女子孫に対する差別を正当化することはできない。」としており、公序良俗に反し無効とされた。
総合メモ
前の判例 次の判例