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憲法 週刊文春記事差止事件 東京高決平成16年3月31日
概要
プライバシー侵害を理由とする出版物の頒布等の事前差止めの要件は、①本件記事が「公共の利害に関する事項に係るものといえないこと、②本件記事が「専ら公益を図る目的のものでないことが明白であること、③本件記事によって「被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること」の3つである。
判例
事案:有名政治家の娘の離婚の顛末に関する週刊誌の記事について、その娘が差止仮処分を申請し、東京地裁が仮処分決定を下した。出版社は、地裁に対して仮処分異議申立を行い、さらに、高裁に対して地裁の仮処分決定認可決定に対する保全抗告を行った。
判旨:原審は、プライバシー侵害を理由とする出版物の頒布等の事前差止めについて、名誉権侵害を理由とする出版物の事前差止目に関する「北方ジャーナル」事件判決(最大判昭和61年6月11日)の判例理論を転用し、「プライバシーは極めて重大な保護法益であり、人格権としてのプライバシー権は物権の場合と同様に排他性を有する権利として、その侵害行為の差止めを求めることができるものと解するのが相当である」として、その要件として、①本件記事が「公共の利害に関する事項に係るものといえないこと、②本件記事が「専ら公益を図る目的のものでないことが明白であること、③本件記事によって「被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること」という3要件を挙げているところ、本決定は原審の判断枠組みを維持している。
過去問・解説
(H24 予備 第2問 ア)
国会議員の娘の離婚記事の出版差止めを認めた仮処分の保全異議に対する決定(東京地決平成16年3月19日)と、その抗告審決定(東京高決平成16年3月31日)は、いずれも、差止めの実質的要件について、「北方ジャーナル」事件(最大判昭和61年6月11日))を参照し、公共性、公益性、重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれ、という3要件を用いた。
国会議員の娘の離婚記事の出版差止めを認めた仮処分の保全異議に対する決定(東京地決平成16年3月19日)と、その抗告審決定(東京高決平成16年3月31日)は、いずれも、差止めの実質的要件について、「北方ジャーナル」事件(最大判昭和61年6月11日))を参照し、公共性、公益性、重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれ、という3要件を用いた。
(正答) 〇
(解説)
週刊文春記事差止事件決定(東京地決平16.3.19)は、この点について、「〔1〕本件記事が「公共の利害に関する事項に係るものといえないこと」、〔2〕本件記事が「専ら公益を図る目的のものでないことが明白であること」、〔3〕本件記事によって「被害者が重大にして著しく回復困難な損害を被るおそれがあること」、という三つの要件を挙げている。」。そして、国会議員の娘の離婚記事の出版差止めを認めた仮処分の保全異議に対する決定(東京地決平16.3.19)は「当裁判所としても、本件保全抗告事件においては、上記3要件を判断の枠組みとするところに沿って判断するのが相当であると解する。」と同様の枠組みを用いている。したがって、本肢と同様の枠組みを用いた判示がなされているといえる。
(H24 予備 第2問 イ)
国会議員の娘の離婚記事の出版差止めを認めた仮処分の保全異議に対する決定(東京地決平成16年3月19日)と、その抗告審決定(東京高決平成16年3月31日)は、記事内容の公共性について判断を異にした。抗告審は、婚姻や離婚という出来事自体は私事であるが、娘は政治家一家の長女であって後継者となる可能性があることを理由に、記事内容の公共性を認めた。
国会議員の娘の離婚記事の出版差止めを認めた仮処分の保全異議に対する決定(東京地決平成16年3月19日)と、その抗告審決定(東京高決平成16年3月31日)は、記事内容の公共性について判断を異にした。抗告審は、婚姻や離婚という出来事自体は私事であるが、娘は政治家一家の長女であって後継者となる可能性があることを理由に、記事内容の公共性を認めた。
(正答) ✕
(解説)
週刊文春記事差止事件決定(東京地決平16.3.19)は、公共性を否定しているところ、抗告審においても「同相手方をAR松子衆議院議員あるいはAR竹夫参議院議員の後継者視して、同相手方の婚姻・離婚を「公共の利害に関する事項に係るもの」とみるのは相当とはいえないというべき」としている。したがって、いずれにおいても記事内容の公共性が否定されている。
週刊文春記事差止事件決定(東京地決平16.3.19)は、公共性を否定しているところ、抗告審においても「同相手方をAR松子衆議院議員あるいはAR竹夫参議院議員の後継者視して、同相手方の婚姻・離婚を「公共の利害に関する事項に係るもの」とみるのは相当とはいえないというべき」としている。したがって、いずれにおいても記事内容の公共性が否定されている。
(H24 予備 第2問 ウ)
両決定は、損害の程度の評価をめぐって判断を異にした。抗告審は、本件記事で取り上げられた私事自体は人格に対する評価に常につながるものではないし、日常的にどうということなく見聞する情報の一つにすぎない、と判断した。
両決定は、損害の程度の評価をめぐって判断を異にした。抗告審は、本件記事で取り上げられた私事自体は人格に対する評価に常につながるものではないし、日常的にどうということなく見聞する情報の一つにすぎない、と判断した。
(正答) 〇
(解説)
週刊文春記事差止事件決定(東京高決平16.3.31)は、「離婚は…人格に対する評価に常につながるものではないし…日常生活上、人はどうということもなく耳にし、目にする情報の一つにすぎない。」としている。
週刊文春記事差止事件決定(東京高決平16.3.31)は、「離婚は…人格に対する評価に常につながるものではないし…日常生活上、人はどうということもなく耳にし、目にする情報の一つにすぎない。」としている。