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憲法 軽犯罪法違反事件 最大判昭和45年6月17日

概要
①軽犯罪法1条33号前段は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限であって、憲法21条1項に違反しない。
②軽犯罪法1条33号前段にいう「みだりに」とは、他人の家屋その他の工作物にはり札をするにつき、社会通念上正当な理由があると認められない場合を指称するものと解するのが相当であり、その文言があいまいであるとか、犯罪の構成要件が明確でないとは認められないから、憲法31条にも違反しない。
判例
事案:軽犯罪法1条33号前段は、「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし…た者」は「拘留又は科料に処する。」と定めているところ、法条33号前段が憲法21条1項及び憲法31条に違反するかが問題となった。
 
判旨:①「論旨はまず、原判決は、軽犯罪法1条33号前段は、結局公共の福祉を保持することを目的とするものであるから、右法条が憲法21条1項に違反するものということはできない旨判断しているが、軽犯罪法の右法条をもこのように解釈すべきものとすれば、国民の表現の自由の正当な行使であり、かつ、労働者の正当な権利の行使である本件のごときビラはり行為も一律に禁止されることになるから、右法条は憲法21条1項に違反すると主張する。
 よつて、右論旨を検討すると、軽犯罪法1条33号前段は、主として他人の家屋その他の工作物に関する財産権、管理権を保護するために、みだりにこれらの物にはり札をする行為を規制の対象としているものと解すべきところ、たとい思想を外部に発表するための手段であつても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。したがつて、この程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限であつて、右法条を憲法21条1項に違反するものということはできず…、右と同趣旨に出た原判決の判断は正当であつて、論旨は理由がない。」
 ②「次に論旨は、軽犯罪法1条33号前段は憲法31条に違反すると主張するが、右法条にいう「みだりに」とは、他人の家屋その他の工作物にはり札をするにつき、社会通念上正当な理由があると認められない場合を指称するものと解するのが相当であつて、所論のように、その文言があいまいであるとか、犯罪の構成要件が明確でないとは認められないから、所論違憲の主張は、その前提を欠き、採用することができない。」
過去問・解説
(R1 司法 第5問 ア)
軽犯罪法1条33号は「みだりに他人の家屋その他の工作物にはり札をし」た者を処罰の対象としているところ、はり札をする行為自体は思想を外部に発表する手段の1つであると認められるものの、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害することは許されないから、この程度の規制は、公共の福祉のため、許された必要かつ合理的な制限であるというべきである。

(正答)  

(解説)
軽犯罪法違反事件判決(最大判昭45.6.17)は、「たとい思想を外部に発表するための手段であつても、その手段が他人の財産権、管理権を不当に害するごときものは、もとより許されないところであるといわなければならない。」との理由から、軽犯罪法1条33号前段について、「この程度の規制は、公共の福祉のため、表現の自由に対し許された必要かつ合理的な制限であって、右法条を憲法21条1項に違反するものということはできず…ない。」としている。
総合メモ
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