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商号
自己名義をもつて薬局開設の登録申請をすることを他人に許容した者と商法第23条(現14条)の責任 最一小判昭和32年1月31日
概要
他人の依頼に基き、自己名義をもって薬局開設の登録申請をすることを他人に許容した者は、その登録がなくても、当該薬局の取引上の債務につき、商法23条(現:商法14条)による責任を負担するものと解すべきである。
判例
事案:他人の依頼に基づいて自己名義をもって薬局開設の登録申請をすることを他人に許容した者について、商法23条(現:商法14条)の責任が認められるかが問題となった。
判旨:「薬事法において、薬局開設に当り、開設者が薬局の登録を受けなければならないこととしたのは、薬局における業務が保健衛生に重要な関係のあるものであることに鑑み、その業務を規整しその適正を図るため、業務主体(その業務が営業である場合は営業主)を特定し、薬局の業務につきその責に任ぜしめようとしたものに外ならない。従って、自ら営業としてなす薬局の開設者として右登録の申請をした者は、上記の意味合において、薬局における営業主となることの意思を示したものというべく、また営業としてなす薬局開設の登録につき、開設者として自己の名義を使用することを他人に許容した者は、その他人が登録を申請したときは、その他人の登録申請を通じ、自己が当該薬局における営業主となることの意思を示したものというべきであって、このことは、その登録が未だ完了していない一事によって何ら異るところはない。そして、右後段の場合のように、営業としてなす薬局の開設者として自己の名義を使用することを他人に許容し、その他人が登録を申請した場合は、上記のとおり、その他人の申請を通じ、自己が当該薬局の営業者となることの意思を示したものと認むべきであるから、かかる場合は、商法23条(現:商法14条)の『自己ノ氏名ヲ使用シテ営業ヲ為スコトヲ他人ニ許容シタル』場合に該当するものと解すべきである。」
判旨:「薬事法において、薬局開設に当り、開設者が薬局の登録を受けなければならないこととしたのは、薬局における業務が保健衛生に重要な関係のあるものであることに鑑み、その業務を規整しその適正を図るため、業務主体(その業務が営業である場合は営業主)を特定し、薬局の業務につきその責に任ぜしめようとしたものに外ならない。従って、自ら営業としてなす薬局の開設者として右登録の申請をした者は、上記の意味合において、薬局における営業主となることの意思を示したものというべく、また営業としてなす薬局開設の登録につき、開設者として自己の名義を使用することを他人に許容した者は、その他人が登録を申請したときは、その他人の登録申請を通じ、自己が当該薬局における営業主となることの意思を示したものというべきであって、このことは、その登録が未だ完了していない一事によって何ら異るところはない。そして、右後段の場合のように、営業としてなす薬局の開設者として自己の名義を使用することを他人に許容し、その他人が登録を申請した場合は、上記のとおり、その他人の申請を通じ、自己が当該薬局の営業者となることの意思を示したものと認むべきであるから、かかる場合は、商法23条(現:商法14条)の『自己ノ氏名ヲ使用シテ営業ヲ為スコトヲ他人ニ許容シタル』場合に該当するものと解すべきである。」
過去問・解説
(H29 予備 第27問 1)
商人が営業としてする薬局の開設者として自己の称号を使用することを他人に許容し,当該他人が薬局開設の許可を申請した場合は,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に該当する。
商人が営業としてする薬局の開設者として自己の称号を使用することを他人に許容し,当該他人が薬局開設の許可を申請した場合は,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に該当する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭32.1.31)は、本肢と同種の事案において、「営業としてなす薬局の開設者として自己の名義を使用することを他人に許容し、その他人が登録を申請した場合は、上記のとおり、その他人の申請を通じ、自己が当該薬局の営業者となることの意思を示したものと認むべきであるから、かかる場合は、商法23条(現:商法14条)の『自己ノ氏名ヲ使用シテ営業ヲ為スコトヲ他人ニ許容シタル』場合に該当するものと解すべきである。」としている。
判例(最判昭32.1.31)は、本肢と同種の事案において、「営業としてなす薬局の開設者として自己の名義を使用することを他人に許容し、その他人が登録を申請した場合は、上記のとおり、その他人の申請を通じ、自己が当該薬局の営業者となることの意思を示したものと認むべきであるから、かかる場合は、商法23条(現:商法14条)の『自己ノ氏名ヲ使用シテ営業ヲ為スコトヲ他人ニ許容シタル』場合に該当するものと解すべきである。」としている。
総合メモ
手形行為につき自己の氏名商号をの使用を許可した者の商法23条(現行商法14条)に基づく責任 最判昭和43年6月6日
概要
銀行との当座預金取引および手形行為について自己の氏名商号の使用を許諾したにすぎない者は、右許諾を受けた者が許諾者名義で引き受けた為替手形につき、商法第23条(現:商法14条)による責任を負わない。
判例
事案:手形行為において自己の商号を使用することを許諾した者が、商法23条(現:商法14条)の責任を負うかが問題となった。
判旨:「商法23条(現:商法14条)にいう営業とは、事業を営むことをいい、単に手形行為をすることはこれに含まれないと解すべきところ、前記確定事実によれば、前記許諾は訴外会社の営業である繊維製品販売業についてなされたものでないことが明らかであるのみならず、同条は、他人の氏名商号等を用いて営業をした者(営業主)が第三者との取引において債務を負担した場合において、その氏名、商号等の使用を許諾した者に対しても、営業主の右債務につき連帯責任を負担させることを定めたものと解されるところ、手形行為の本質にかんがみれば、ある者が氏名、商号等の使用を許諾した者の名義で手形上に記名押印しても、その者自身としての手形行為が成立する余地はなく、したがってその者は手形上の債務を負担することはなく、その名義人がその者と連帯して手形上の債務を負担することもありえないから、この点からみても、手形行為上自己の氏名商号等を使用することを許諾したにすぎない者については、同条は適用されないものと解するのが相当である。」
判旨:「商法23条(現:商法14条)にいう営業とは、事業を営むことをいい、単に手形行為をすることはこれに含まれないと解すべきところ、前記確定事実によれば、前記許諾は訴外会社の営業である繊維製品販売業についてなされたものでないことが明らかであるのみならず、同条は、他人の氏名商号等を用いて営業をした者(営業主)が第三者との取引において債務を負担した場合において、その氏名、商号等の使用を許諾した者に対しても、営業主の右債務につき連帯責任を負担させることを定めたものと解されるところ、手形行為の本質にかんがみれば、ある者が氏名、商号等の使用を許諾した者の名義で手形上に記名押印しても、その者自身としての手形行為が成立する余地はなく、したがってその者は手形上の債務を負担することはなく、その名義人がその者と連帯して手形上の債務を負担することもありえないから、この点からみても、手形行為上自己の氏名商号等を使用することを許諾したにすぎない者については、同条は適用されないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H29 予備 第27問 2)
手形行為上自己の商号を使用することを許諾したにすぎない者であっても,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾したものということができる。
手形行為上自己の商号を使用することを許諾したにすぎない者であっても,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾したものということができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭43.6.6)は、「商法23条(現:商法14条)にいう営業とは、事業を営むことをいい、単に手形行為をすることはこれに含まれないと解すべき…。」とした上で、「同条は、他人の氏名商号等を用いて営業をした者(営業主)が第三者との取引において債務を負担した場合において、その氏名、商号等の使用を許諾した者に対しても、営業主の右債務につき連帯責任を負担させることを定めたものと解されるところ、…手形行為上自己の氏名商号等を使用することを許諾したにすぎない者については、同条は適用されないものと解するのが相当である。」としている。
したがって、手形行為上自己の商号を使用することを許諾したにすぎない者には、現行商法14条は適用されず、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾したものとはいえない。
判例(最判昭43.6.6)は、「商法23条(現:商法14条)にいう営業とは、事業を営むことをいい、単に手形行為をすることはこれに含まれないと解すべき…。」とした上で、「同条は、他人の氏名商号等を用いて営業をした者(営業主)が第三者との取引において債務を負担した場合において、その氏名、商号等の使用を許諾した者に対しても、営業主の右債務につき連帯責任を負担させることを定めたものと解されるところ、…手形行為上自己の氏名商号等を使用することを許諾したにすぎない者については、同条は適用されないものと解するのが相当である。」としている。
したがって、手形行為上自己の商号を使用することを許諾したにすぎない者には、現行商法14条は適用されず、自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾したものとはいえない。
総合メモ
商号の使用を許諾した者の営業とその許諾を受けた者の営業との業種が異なる場合と商法第23条(現14条)の責任 最判一小昭和43年6月13日
概要
他人に自己の商号を使用して営業を営むことを許諾した場合においても、その許諾を受けた者が当該商号を使用して業種の異なる営業を営むときは、特段の事情がないかぎり、商号許諾者は、商法23条(現:商法14条)の責任を負わない。
判例
事案:商号の使用を許諾した者の営業とその許諾を受けた者の営業との業種が異なる場合と商法23条(現:商法14条)の責任が問題となった。
判旨:「商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人を表わす名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示し、その信用の標的となる機能をいとなむものである。商法23条(現:商法14条)は、このような事実に基づいて、自己の商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認して取引した者に対し、同条所定の責任を負うべきものとしているのである。したがって、現に一定の商号をもって営業を営んでいるか、または、従来一定の商号をもって営業を営んでいた者が、その商号を使用して営業を営むことを他人に許諾した場合に右の責任を負うのは、特段の事情のないかぎり、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした者の営業と同種の営業であることを要するものと解するのが相当である。
ところで、本件において、原審の確定したところによれば、上告人は、その営んでいた電気器具商をやめるに際し、従前店舗に掲げていた『現金屋』という看板をそのままにするとともに、上告人名義のゴム印、印鑑、小切手帳等を店舗においたままにしておき、訴外篠崎が『現金屋』の商号で食料品店を経営することおよびその後経営していたことを了知していたこと、同訴外人は、本件売買取引の当時、右ゴム印および印鑑を用いて上告人名義で被上告人会社の前身である合資会社鵜ノ木商店にあてて約束手形を振出していたこと、上告人は、自己の営業当時、売上金を『現金屋』および上告人名義で銀行に普通預金にし、その預金の出し入れについて上告人名義の印鑑を使用していたが、訴外篠崎が食料品店を始めるに当たって、同訴外人に対して自己の右預金口座を利用することを承諾し、同訴外人もこれを利用して預金の出し入れをしていたこと、同訴外人は上告人の営業当時の使用人であり、かつ上告人の営業当時の店舗を使用した関係にあつたというのである。このような事実関係のもとにおいては、訴外篠崎が、上告人の廃業後に、上告人の商号および氏名を使用して上告人の従前の営業とは別種の営業を始めたとしても、同訴外人と取引をした被上告人の前身鵜ノ木商店がその取引をもって上告人との取引と誤認するおそれが十分あったものというべきであり、したがって、上告人の営業と訴外篠崎の営業とが業種を異にするにかかわらず、なお上告人において同訴外人の右取引につき商法23条(現:商法14条)所定の責任を負うべき特段の事情がある場合に当たるものと解するのが相当である。」
判旨:「商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人を表わす名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示し、その信用の標的となる機能をいとなむものである。商法23条(現:商法14条)は、このような事実に基づいて、自己の商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認して取引した者に対し、同条所定の責任を負うべきものとしているのである。したがって、現に一定の商号をもって営業を営んでいるか、または、従来一定の商号をもって営業を営んでいた者が、その商号を使用して営業を営むことを他人に許諾した場合に右の責任を負うのは、特段の事情のないかぎり、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした者の営業と同種の営業であることを要するものと解するのが相当である。
ところで、本件において、原審の確定したところによれば、上告人は、その営んでいた電気器具商をやめるに際し、従前店舗に掲げていた『現金屋』という看板をそのままにするとともに、上告人名義のゴム印、印鑑、小切手帳等を店舗においたままにしておき、訴外篠崎が『現金屋』の商号で食料品店を経営することおよびその後経営していたことを了知していたこと、同訴外人は、本件売買取引の当時、右ゴム印および印鑑を用いて上告人名義で被上告人会社の前身である合資会社鵜ノ木商店にあてて約束手形を振出していたこと、上告人は、自己の営業当時、売上金を『現金屋』および上告人名義で銀行に普通預金にし、その預金の出し入れについて上告人名義の印鑑を使用していたが、訴外篠崎が食料品店を始めるに当たって、同訴外人に対して自己の右預金口座を利用することを承諾し、同訴外人もこれを利用して預金の出し入れをしていたこと、同訴外人は上告人の営業当時の使用人であり、かつ上告人の営業当時の店舗を使用した関係にあつたというのである。このような事実関係のもとにおいては、訴外篠崎が、上告人の廃業後に、上告人の商号および氏名を使用して上告人の従前の営業とは別種の営業を始めたとしても、同訴外人と取引をした被上告人の前身鵜ノ木商店がその取引をもって上告人との取引と誤認するおそれが十分あったものというべきであり、したがって、上告人の営業と訴外篠崎の営業とが業種を異にするにかかわらず、なお上告人において同訴外人の右取引につき商法23条(現:商法14条)所定の責任を負うべき特段の事情がある場合に当たるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H29 予備 第27問 3)
商人が,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に,当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をしたものに対し当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うためには,特段の事情のない限り,商号使用の許諾を受けたものの営業がその許諾をした商人の営業と同種の営業であることを要する。
商人が,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合に,当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をしたものに対し当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負うためには,特段の事情のない限り,商号使用の許諾を受けたものの営業がその許諾をした商人の営業と同種の営業であることを要する。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭43.6.13)は、「商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人を表わす名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示し、その信用の標的となる機能をいとなむものである。商法23条(現:商法14条)は、このような事実に基づいて、自己の商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認して取引した者に対し、同条所定の責任を負うべきものとしているのである。したがって、現に一定の商号をもって営業を営んでいるか、または、従来一定の商号をもって営業を営んでいた者が、その商号を使用して営業を営むことを他人に許諾した場合に右の責任を負うのは、特段の事情のないかぎり、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした者の営業と同種の営業であることを要するものと解するのが相当である。」としている。
判例(最判昭43.6.13)は、「商号は、法律上は特定の営業につき特定の商人を表わす名称であり、社会的には当該営業の同一性を表示し、その信用の標的となる機能をいとなむものである。商法23条(現:商法14条)は、このような事実に基づいて、自己の商号を使用して営業をなすことを他人に許諾した者は、自己を営業主と誤認して取引した者に対し、同条所定の責任を負うべきものとしているのである。したがって、現に一定の商号をもって営業を営んでいるか、または、従来一定の商号をもって営業を営んでいた者が、その商号を使用して営業を営むことを他人に許諾した場合に右の責任を負うのは、特段の事情のないかぎり、商号使用の許諾を受けた者の営業がその許諾をした者の営業と同種の営業であることを要するものと解するのが相当である。」としている。
総合メモ
営業につき他人からその名義の使用を許された者が営業活動上惹起された交通事故に基づく損害賠償義務者であることを前提として被害者との間で示談契約を締結した場合の商法23条(現14条)の適用 最二小判昭和52年12月23日
概要
営業につき他人からその名義の使用を許された者が、営業活動上惹起された交通事故に基づく不法行為上の損害賠償義務者であることを前提とし、被害者との間で、単にその支払金額と支払方法を定めるにすぎない示談契約を締結した場合には、右契約の締結にあたり、被害者が名義貸与者をもって営業主と誤認した事実があったとしても、右示談契約に基づき支払うべきものとされた損害賠償債務は、商法23条にいう「其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務」(現:14条「当該取引によって生じた債務」)にあたらない。
判例
事案:営業につき他人からその名義の使用を許された者が営業活動上惹起された交通事故に基づく損害賠償義務者であることを前提として、被害者との間で示談契約を締結した場合に、商法23条(現:商法14条)の適用があるかが問題となった。
判旨:「商法23条(現:商法14条)の規定の趣旨は、第三者が名義貸与者を真実の営業主であると誤認して名義貸与を受けた者との間で取引をした場合に、名義貸与者が営業主であるとの外観を信頼した第三者の受けるべき不測の損害を防止するため、第三者を保護し取引の安全を期するということにあるというべきであるから、同条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』とは、第三者において右の外観を信じて取引関係に入ったため、名義貸与を受けた者がその取引をしたことによって負担することとなった債務を指称するものと解するのが相当である。それ故、名義貸与を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、右交通事故その他の不法行為が名義貸与者と同種の営業活動を行うにつき惹起されたものであっても右にいう債務にあたらないのはもとより、かようにしてすでに負担するに至った本来同条の規定の適用のない債務について、名義貸与を受けた者と被害者との間で、単にその支払金額と支払方法を定めるにすぎない示談契約が締結された場合に、右契約の締結にあたり、被害者が名義貸与者をもって営業主すなわち損害賠償債務の終局的な負担者であると誤認した事実があったとしても、右契約に基づいて支払うべきものとされた損害賠償債務をもって、前記法条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』にあたると解するのは相当でないというべきである。」
判旨:「商法23条(現:商法14条)の規定の趣旨は、第三者が名義貸与者を真実の営業主であると誤認して名義貸与を受けた者との間で取引をした場合に、名義貸与者が営業主であるとの外観を信頼した第三者の受けるべき不測の損害を防止するため、第三者を保護し取引の安全を期するということにあるというべきであるから、同条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』とは、第三者において右の外観を信じて取引関係に入ったため、名義貸与を受けた者がその取引をしたことによって負担することとなった債務を指称するものと解するのが相当である。それ故、名義貸与を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、右交通事故その他の不法行為が名義貸与者と同種の営業活動を行うにつき惹起されたものであっても右にいう債務にあたらないのはもとより、かようにしてすでに負担するに至った本来同条の規定の適用のない債務について、名義貸与を受けた者と被害者との間で、単にその支払金額と支払方法を定めるにすぎない示談契約が締結された場合に、右契約の締結にあたり、被害者が名義貸与者をもって営業主すなわち損害賠償債務の終局的な負担者であると誤認した事実があったとしても、右契約に基づいて支払うべきものとされた損害賠償債務をもって、前記法条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』にあたると解するのは相当でないというべきである。」
過去問・解説
(H29 予備 第27問 4)
商号使用の許諾を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人が責任を負う「当該取引によって生じた債務」に当たらない。
商号使用の許諾を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は,自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した商人が責任を負う「当該取引によって生じた債務」に当たらない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭52.12.23)は、「商法23条(現:商法14条)…にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』とは、第三者において右の外観を信じて取引関係に入ったため、名義貸与を受けた者がその取引をしたことによって負担することとなった債務を指称するものと解するのが相当である。」とした上で、「名義貸与を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、前記法条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』にあたると解するのは相当でないというべきである。」としている。
したがって、商号使用の許諾を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、現行商法14条にいう「当該取引によって生じた債務」に当たらない。
判例(最判昭52.12.23)は、「商法23条(現:商法14条)…にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』とは、第三者において右の外観を信じて取引関係に入ったため、名義貸与を受けた者がその取引をしたことによって負担することとなった債務を指称するものと解するのが相当である。」とした上で、「名義貸与を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、前記法条にいう『其ノ取引ニ因リテ生ジタル債務』にあたると解するのは相当でないというべきである。」としている。
したがって、商号使用の許諾を受けた者が交通事故その他の事実行為たる不法行為に起因して負担するに至った損害賠償債務は、現行商法14条にいう「当該取引によって生じた債務」に当たらない。
総合メモ
名板貸人を営業主と誤認するについて重大な過失があつた相手方に対する商法第23条(現14条)所定の名板貸人の責任の有無 最一小判昭和41年1月27日
概要
名板貸人は、自己を営業主と誤認するについて重大な過失があつた者に対しては、商法23条(現:商法14条)所定の責任を負わないと解するのが相当である。
判例
事案:名板貸人を営業主と誤認するについて重大な過失があった相手方に対する商法23条(現:商法14条)所定の名板貸人の責任の有無が争われた。
判旨:「商法23条の名義貸与者の責任は、その者を営業者なりと誤認して取引をなした者に対するものであって、たとえ誤認が取引をなした者の過失による場合であっても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をなした者に重大な過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れるものと解するのを相当とする。」
判旨:「商法23条の名義貸与者の責任は、その者を営業者なりと誤認して取引をなした者に対するものであって、たとえ誤認が取引をなした者の過失による場合であっても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をなした者に重大な過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れるものと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H29 予備 第27問 5)
商人が自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合において、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に重大な過失があるときは、当該商人は、その者に対し当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負わない。
商人が自己の商号を使用して営業を行うことを他人に許諾した場合において、当該商人が当該営業を行うものと誤認して当該他人と取引をした者に重大な過失があるときは、当該商人は、その者に対し当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負わない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭41.1.27)は、本肢と同種の事案において、「商法23条の名義貸与者の責任は、その者を営業者なりと誤認して取引をなした者に対するものであって、たとえ誤認が取引をなした者の過失による場合であっても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をなした者に重大な過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れる…。」としている。
判例(最判昭41.1.27)は、本肢と同種の事案において、「商法23条の名義貸与者の責任は、その者を営業者なりと誤認して取引をなした者に対するものであって、たとえ誤認が取引をなした者の過失による場合であっても、名義貸与者はその責任を免れ得ないものというべく、ただ重大な過失は悪意と同様に取り扱うべきものであるから、誤認して取引をなした者に重大な過失があるときは、名義貸与者はその責任を免れる…。」としている。
総合メモ
数種の独立した営業を行う証人が各営業につき異なる商号を使用することの可否 大決大正13年6月13日
概要
商人が数種の独立した営業を行うときは、その商人は、その各営業につき異なる商号を使用することができる。
判例
事案:商人が数種の独立した営業を行うときに、その商人は、その各営業につき異なる商号を使用することができるかが問題となった。
判旨:「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為シ又ハ数個ノ営業所ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ各営業又ハ営業所ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケスト雖同一営業ニ付同一営業所ニ於テ数箇ノ商号ヲ有スルコトハ之ヲ認許スヘカラサルモノト解スルヲ相当トス蓋斯ノ如キ商号単一ノ原則ハ商法ノ明文上之ヲ徴スヘキモノナシト雖若之ヲ是認セサルニ於テハ商人カ同一営業所ニ於ケル単一ノ営業ニ付幾多数箇ノ商号ヲ選定スルモ不可ナキニ至リ他人ノ商号選定ノ自由ヲ故ナク制限シ又取引上弊害ヲ生スルノ虞アルコト明白ナレハ之ヲ是認スルノ必要アルハ各人ノ氏名単一ノ原則ニ於ケルト異ルコトナケレハナリ」
判旨:「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為シ又ハ数個ノ営業所ヲ有スル場合ニ於テハ其ノ各営業又ハ営業所ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケスト雖同一営業ニ付同一営業所ニ於テ数箇ノ商号ヲ有スルコトハ之ヲ認許スヘカラサルモノト解スルヲ相当トス蓋斯ノ如キ商号単一ノ原則ハ商法ノ明文上之ヲ徴スヘキモノナシト雖若之ヲ是認セサルニ於テハ商人カ同一営業所ニ於ケル単一ノ営業ニ付幾多数箇ノ商号ヲ選定スルモ不可ナキニ至リ他人ノ商号選定ノ自由ヲ故ナク制限シ又取引上弊害ヲ生スルノ虞アルコト明白ナレハ之ヲ是認スルノ必要アルハ各人ノ氏名単一ノ原則ニ於ケルト異ルコトナケレハナリ」
過去問・解説
(H26 司法 第52問 2)
商人が数種の独立した営業を行うときは、その商人は、その各営業につき異なる商号を使用することができる。
商人が数種の独立した営業を行うときは、その商人は、その各営業につき異なる商号を使用することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(大決大13.6.13)は、「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為…スル場合ニ於テハ其ノ各営業…ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケス」として、商人が数種の独立した営業をする場合、営業ごとに異なる称号を有することを許容している。
判例(大決大13.6.13)は、「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為…スル場合ニ於テハ其ノ各営業…ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケス」として、商人が数種の独立した営業をする場合、営業ごとに異なる称号を有することを許容している。
(R6 予備 第27問 オ)
判例の趣旨によれば、商人は、数種の独立した営業を行い、又は数個の営業所を有する場合には、その各営業又は営業所につき別異の商号を有することができる。
判例の趣旨によれば、商人は、数種の独立した営業を行い、又は数個の営業所を有する場合には、その各営業又は営業所につき別異の商号を有することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(大決大13.6.13)は、「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為…スル場合ニ於テハ其ノ各営業…ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケス」として、商人が数種の独立した営業をする場合、営業ごとに異なる称号を有することを許容している。
判例(大決大13.6.13)は、「商人カ数種ノ独立シタル営業ヲ為…スル場合ニ於テハ其ノ各営業…ニ付別異ノ商号ヲ有スルコトヲ妨ケス」として、商人が数種の独立した営業をする場合、営業ごとに異なる称号を有することを許容している。