①所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)63条及び70条10号に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、憲法35条の法意に反するものではない。
②所得税法(昭和40年法律第33号による改正前のもの)63条、70条10号及び12号に規定する質問・検査は、憲法38条1項にいう「自己に不利益な供述」の「強要」にあたらない。
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行政調査
旧所得税法の規定の合憲性 最大判昭和47年11月22日
概要
判例
事案:食肉販売業を営みA県民主商工会B支部に属する団体に加入する被告人が、税務署収税官吏が被告人に対する所得税確定申告調査のため帳簿書類等の検査をしようとするに際し事前通知がなければ調査に応じられない等と大声を上げるなどして右検査を拒み、所得税法違反の有罪判決が言い渡された事案において、①旧所得税法63条に基づく収税官吏の質問・検査について裁判所の令状を要するか、②旧所得税法は、同法63条に基づく収税官吏の「検査を拒み、妨げ又は忌避した者」や「質問に対し答弁をなさない者」に対する罰則として1年以下の懲役又は20万円以下の罰金を定めているところ、質問に対する不答弁をも罰則の対象とすることは、憲法38条1項に違反するかなどが問題となった。
判旨:①「所論のうち、憲法35条違反をいう点は、旧所得税法70条10号、63条の規定が裁判所の令状なくして強制的に検査することを認めているのは違憲である旨の主張である。 たしかに、旧所得税法70条10号の規定する検査拒否に対する罰則は、同法63条所定の収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものであるが、同法63条所定の収税官吏の検査は、もっぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。 また、右検査の結果過少申告の事実が明らかとなり、ひいて所得税逋脱の事実の発覚にもつながるという可能性が考えられないわけではないが、そうであるからといって、右検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。けだし、この場合の検査の範囲は、前記の目的のため必要な所得税に関する事項にかぎられており、また、その検査は、同条各号に列挙されているように、所得税の賦課徴収手続上一定の関係にある者につき、その者の事業に関する帳簿その他の物件のみを対象としているのであって、所得税の逋脱その他の刑事責任の嫌疑を基準に右の範囲が定められているのではないからである。 さらに、この場合の強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、同法70条所定の刑罰を加えることによって、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであり、かつ、右の刑罰が行政上の義務違反に対する制裁として必ずしも軽微なものとはいえないにしても、その作用する強制の度合いは、それが検査の相手方の自由な意思をいちじるしく拘束して、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたいところである。国家財政の基本となる徴税権の適正な運用を確保し、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために収税官吏による実効性のある検査制度が欠くべからざるものであることは、何人も否定しがたいものであるところ、その目的、必要性にかんがみれば、右の程度の強制は、実効性確保の手段として、あながち不均衡、不合理なものとはいえないのである。 憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、前に述べた諸点を総合して判断すれば、旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはできず、前記規定を違憲であるとする所論は、理由がない。」
②「所論のうち、憲法38条違反をいう点は、旧所得税法70条10号、12号、63条の規定に基づく検査、質問の結果、所得税逋脱(旧所得税法69条)の事実が明らかになれば、税務職員は右の事実を告発できるのであり、右検査、質問は、刑事訴追をうけるおそれのある事項につき供述を強要するもので違憲である旨の主張である。 しかし、同法70条10号、63条に規定する検査が、もっぱら所得税の公平確実な賦課徴収を目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、また、そのための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもないこと、および、このような検査制度に公益上の必要性と合理性の存することは、前示のとおりであり、これらの点については、同法70条12号、63条に規定する質問も同様であると解すべきである。そして、憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例…とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。しかし、旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはできず、この点の所論も理由がない。」
判旨:①「所論のうち、憲法35条違反をいう点は、旧所得税法70条10号、63条の規定が裁判所の令状なくして強制的に検査することを認めているのは違憲である旨の主張である。 たしかに、旧所得税法70条10号の規定する検査拒否に対する罰則は、同法63条所定の収税官吏による当該帳簿等の検査の受忍をその相手方に対して強制する作用を伴なうものであるが、同法63条所定の収税官吏の検査は、もっぱら、所得税の公平確実な賦課徴収のために必要な資料を収集することを目的とする手続であって、その性質上、刑事責任の追及を目的とする手続ではない。 また、右検査の結果過少申告の事実が明らかとなり、ひいて所得税逋脱の事実の発覚にもつながるという可能性が考えられないわけではないが、そうであるからといって、右検査が、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものと認めるべきことにはならない。けだし、この場合の検査の範囲は、前記の目的のため必要な所得税に関する事項にかぎられており、また、その検査は、同条各号に列挙されているように、所得税の賦課徴収手続上一定の関係にある者につき、その者の事業に関する帳簿その他の物件のみを対象としているのであって、所得税の逋脱その他の刑事責任の嫌疑を基準に右の範囲が定められているのではないからである。 さらに、この場合の強制の態様は、収税官吏の検査を正当な理由がなく拒む者に対し、同法70条所定の刑罰を加えることによって、間接的心理的に右検査の受忍を強制しようとするものであり、かつ、右の刑罰が行政上の義務違反に対する制裁として必ずしも軽微なものとはいえないにしても、その作用する強制の度合いは、それが検査の相手方の自由な意思をいちじるしく拘束して、実質上、直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達しているものとは、いまだ認めがたいところである。国家財政の基本となる徴税権の適正な運用を確保し、所得税の公平確実な賦課徴収を図るという公益上の目的を実現するために収税官吏による実効性のある検査制度が欠くべからざるものであることは、何人も否定しがたいものであるところ、その目的、必要性にかんがみれば、右の程度の強制は、実効性確保の手段として、あながち不均衡、不合理なものとはいえないのである。 憲法35条1項の規定は、本来、主として刑事責任追及の手続における強制について、それが司法権による事前の抑制の下におかれるべきことを保障した趣旨であるが、当該手続が刑事責任追及を目的とするものでないとの理由のみで、その手続における一切の強制が当然に右規定による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。しかしながら、前に述べた諸点を総合して判断すれば、旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはできず、前記規定を違憲であるとする所論は、理由がない。」
②「所論のうち、憲法38条違反をいう点は、旧所得税法70条10号、12号、63条の規定に基づく検査、質問の結果、所得税逋脱(旧所得税法69条)の事実が明らかになれば、税務職員は右の事実を告発できるのであり、右検査、質問は、刑事訴追をうけるおそれのある事項につき供述を強要するもので違憲である旨の主張である。 しかし、同法70条10号、63条に規定する検査が、もっぱら所得税の公平確実な賦課徴収を目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、また、そのための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもないこと、および、このような検査制度に公益上の必要性と合理性の存することは、前示のとおりであり、これらの点については、同法70条12号、63条に規定する質問も同様であると解すべきである。そして、憲法38条1項の法意が、何人も自己の刑事上の責任を問われるおそれのある事項について供述を強要されないことを保障したものであると解すべきことは、当裁判所大法廷の判例…とするところであるが、右規定による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。しかし、旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはできず、この点の所論も理由がない。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 ア)
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
Aは、Cに対し、裁判官の発した令状の提示を求めることができ、令状の提示がない場合にはCの立入りを拒否することができる。
【参照条文】公衆浴場法
第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
第6条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該吏員に公衆浴場に立ち入り、第2条第4項の規定により付した条件の遵守若しくは第3条第1項の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。
2 当該吏員が前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第9条 第6条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを2000円以下の罰金に処する。
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
Aは、Cに対し、裁判官の発した令状の提示を求めることができ、令状の提示がない場合にはCの立入りを拒否することができる。
【参照条文】公衆浴場法
第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
第6条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該吏員に公衆浴場に立ち入り、第2条第4項の規定により付した条件の遵守若しくは第3条第1項の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。
2 当該吏員が前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第9条 第6条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを2000円以下の罰金に処する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭47.11.22)は、旧所得税法63条に基づく収税官吏の質問・検査について裁判所の令状を要するか問題となった事案において、「旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはでき…ない。」としている。
公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査についても、上記判例と同様、令状によることを要件としていないことをもって憲法35条に反するとはいえない。
したがって、Aは、令状の呈示がない場合にもCの立入りを拒否することができない。
判例(最判昭47.11.22)は、旧所得税法63条に基づく収税官吏の質問・検査について裁判所の令状を要するか問題となった事案において、「旧所得税法70条10号、63条に規定する検査は、あらかじめ裁判官の発する令状によることをその一般的要件としないからといって、これを憲法35条の法意に反するものとすることはでき…ない。」としている。
公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査についても、上記判例と同様、令状によることを要件としていないことをもって憲法35条に反するとはいえない。
したがって、Aは、令状の呈示がない場合にもCの立入りを拒否することができない。
(H19 司法 第28問 エ)
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
後日、AはBから営業に関する報告をするように求められた。Aは、ありのままを報告すると、売上げが明らかになって課税面で不利益を受ける可能性があると考えた。この場合、最高裁判所の判例によれば、Aは憲法第38条第1項に基づき報告を拒否できる。
【参照条文】公衆浴場法
第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
第6条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該吏員に公衆浴場に立ち入り、第2条第4項の規定により付した条件の遵守若しくは第3条第1項の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。
2 当該吏員が前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第9条 第6条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを2000円以下の罰金に処する。
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
後日、AはBから営業に関する報告をするように求められた。Aは、ありのままを報告すると、売上げが明らかになって課税面で不利益を受ける可能性があると考えた。この場合、最高裁判所の判例によれば、Aは憲法第38条第1項に基づき報告を拒否できる。
【参照条文】公衆浴場法
第3条 営業者は、公衆浴場について、換気、採光、照明、保温及び清潔その他入浴者の衛生及び風紀に必要な措置を講じなければならない。
2 (略)
第6条 都道府県知事は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、又は当該吏員に公衆浴場に立ち入り、第2条第4項の規定により付した条件の遵守若しくは第3条第1項の規定による措置の実施の状況を検査させることができる。
2 当該吏員が前項の規定により立入検査をする場合においては、その身分を示す証票を携帯し、且つ、関係人の請求があるときは、これを呈示しなければならない。
第9条 第6条第1項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は当該吏員の立入検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者は、これを2000円以下の罰金に処する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭47.11.22)は、旧所得税法63条に基づく収税官吏の質問・検査が憲法38条1項に反しないかが問題となった事案で、「憲法38条1項…による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。」とした上で、「旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはでき…ない。」としている。
公衆衛生法6条に基づく質問・検査は、公衆浴場の衛生及び風紀の確保を目的とするものであるから、刑事責任の追及を目的としておらず、「自己に不利益な供述」を強要するものとはいえない。
したがって、Aは報告を拒否できない。
判例(最判昭47.11.22)は、旧所得税法63条に基づく収税官吏の質問・検査が憲法38条1項に反しないかが問題となった事案で、「憲法38条1項…による保障は、純然たる刑事手続においてばかりではなく、それ以外の手続においても、実質上、刑事責任追及のための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有する手続には、ひとしく及ぶものと解するのを相当とする。」とした上で、「旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはでき…ない。」としている。
公衆衛生法6条に基づく質問・検査は、公衆浴場の衛生及び風紀の確保を目的とするものであるから、刑事責任の追及を目的としておらず、「自己に不利益な供述」を強要するものとはいえない。
したがって、Aは報告を拒否できない。
(H23 予備 第16問 エ)
所得税法による検査については、法律上、裁判官の発する令状が要件とされていないが、このことが憲法第35条に違反するかどうかが争われた事例において、最高裁判所は、強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の1つとして、憲法違反ではないという判断を下している。
【参照条文】食品衛生法
第28条 厚生労働大臣、内閣総理大臣又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、当該職員に営業の場所、事務所、倉庫その他の場所に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装、営業の施設、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。
2 (略)
3 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
4 (略)
第75条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを50万円以下の罰金に処する。
一 第28条第1項(中略)の規定による当該職員の臨検検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第28条第1項(中略)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三、四 (略)
所得税法による検査については、法律上、裁判官の発する令状が要件とされていないが、このことが憲法第35条に違反するかどうかが争われた事例において、最高裁判所は、強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の1つとして、憲法違反ではないという判断を下している。
【参照条文】食品衛生法
第28条 厚生労働大臣、内閣総理大臣又は都道府県知事等は、必要があると認めるときは、営業者その他の関係者から必要な報告を求め、当該職員に営業の場所、事務所、倉庫その他の場所に臨検し、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装、営業の施設、帳簿書類その他の物件を検査させ、又は試験の用に供するのに必要な限度において、販売の用に供し、若しくは営業上使用する食品、添加物、器具若しくは容器包装を無償で収去させることができる。
2 (略)
3 第1項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
4 (略)
第75条 次の各号のいずれかに該当する者は、これを50万円以下の罰金に処する。
一 第28条第1項(中略)の規定による当該職員の臨検検査又は収去を拒み、妨げ、又は忌避した者
二 第28条第1項(中略)の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をした者
三、四 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭47.11.22)は、「検査が、もっぱら所得税の公平確実な賦課徴収を目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、また、そのための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもないこと、および、このような検査制度に公益上の必要性と合理性の存することは、前示のとおりであり、これらの点については、同法70条12号、63条に規定する質問も同様であると解すべきである。」とした上で、「旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはでき…ない。」としている。
したがって、本判例は、強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の1つとしているといえる。
判例(最判昭47.11.22)は、「検査が、もっぱら所得税の公平確実な賦課徴収を目的とする手続であって、刑事責任の追及を目的とする手続ではなく、また、そのための資料の取得収集に直接結びつく作用を一般的に有するものでもないこと、および、このような検査制度に公益上の必要性と合理性の存することは、前示のとおりであり、これらの点については、同法70条12号、63条に規定する質問も同様であると解すべきである。」とした上で、「旧所得税法70条10号、12号、63条の検査、質問の性質が上述のようなものである以上、右各規定そのものが憲法38条1項にいう『自己に不利益な供述』を強要するものとすることはでき…ない。」としている。
したがって、本判例は、強制の程度が直接的物理的な強制と同視すべき程度にまで達していないことを考慮要素の1つとしているといえる。
総合メモ
所得税法234条1項の質問検査におけるその理由及び必要性を相手方に告知することの要否 最三小判昭和48年7月10日
概要
所得税法234条1項の質問検査は、諸般の具体的事情に鑑み、質問検査の客観的な必要性があると判断される場合に認められるものであって、この場合の法律上特段の定めがない実施の細目については、質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある職員の合理的な選択に委ねられている。
判例
事案:国税局員が確定申告調査のため、被告人に質問するとともに帳簿書類の呈示を求めたが、被告人が拒絶したことを理由に処罰された事案において、所得税法234条1項の質問検査において、質問検査がいかなる場合に認められるか問題となった。
判旨:「所得税の終局的な賦課徴収にいたる過程においては、原判示の更正、決定の場合のみではなく、ほかにも予定納税額減額申請(所得税法113条1項)または青色申告承認申請(同法145条)の承認、却下の場合、純損失の繰戻による還付(同法142条2項)の場合、延納申請の許否(同法133条2項)の場合、繰上保全差押(国税通則法38条3項)の場合等、税務署その他の税務官署による一定の処分のなされるべきことが法令上規定され、そのための事実認定と判断が要求される事項があり、これらの事項については、その認定判断に必要な範囲内で職権による調査が行なわれることは法の当然に許容するところと解すべきものであるところ、所得税法234条1項の規定は、国税庁、国税局または税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。そして、質問検査制度の目的が適正公平な課税の実現を図ることにあり、かつ、前記法令上の職権調査事項には当然に確定申告期間または暦年の終了の以前において調査の行なわれるべきものも含まれていることを考慮し、なお所得税法5条においては、将来において課税要件の充足があるならばそれによって納税義務を現実に負担することとなるべき範囲の者を広く『所得税を納める義務がある』との概念で規定していることにかんがみれば、同法234条1項にいう『納税義務がある者』とは、以上の趣意を承けるべく、既に法定の課税要件が充たされて客観的に所得税の納税義務が成立し、いまだ最終的に適正な税額の納付を終了していない者のほか、当該課税年が開始して課税の基礎となるべき収入の発生があり、これによって将来終局的に納税義務を負担するにいたるべき者をもいい、『納税義務があると認められる者』とは、前記の権限ある税務職員の判断によって、右の意味での納税義務がある者に該当すると合理的に推認される者をいうと解すべきものである。」
判旨:「所得税の終局的な賦課徴収にいたる過程においては、原判示の更正、決定の場合のみではなく、ほかにも予定納税額減額申請(所得税法113条1項)または青色申告承認申請(同法145条)の承認、却下の場合、純損失の繰戻による還付(同法142条2項)の場合、延納申請の許否(同法133条2項)の場合、繰上保全差押(国税通則法38条3項)の場合等、税務署その他の税務官署による一定の処分のなされるべきことが法令上規定され、そのための事実認定と判断が要求される事項があり、これらの事項については、その認定判断に必要な範囲内で職権による調査が行なわれることは法の当然に許容するところと解すべきものであるところ、所得税法234条1項の規定は、国税庁、国税局または税務署の調査権限を有する職員において、当該調査の目的、調査すべき事項、申請、申告の体裁内容、帳簿等の記入保存状況、相手方の事業の形態等諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられているものと解すべく、また、暦年終了前または確定申告期間経過前といえども質問検査が法律上許されないものではなく、実施の日時場所の事前通知、調査の理由および必要性の個別的、具体的な告知のごときも、質問検査を行なううえの法律上一律の要件とされているものではない。そして、質問検査制度の目的が適正公平な課税の実現を図ることにあり、かつ、前記法令上の職権調査事項には当然に確定申告期間または暦年の終了の以前において調査の行なわれるべきものも含まれていることを考慮し、なお所得税法5条においては、将来において課税要件の充足があるならばそれによって納税義務を現実に負担することとなるべき範囲の者を広く『所得税を納める義務がある』との概念で規定していることにかんがみれば、同法234条1項にいう『納税義務がある者』とは、以上の趣意を承けるべく、既に法定の課税要件が充たされて客観的に所得税の納税義務が成立し、いまだ最終的に適正な税額の納付を終了していない者のほか、当該課税年が開始して課税の基礎となるべき収入の発生があり、これによって将来終局的に納税義務を負担するにいたるべき者をもいい、『納税義務があると認められる者』とは、前記の権限ある税務職員の判断によって、右の意味での納税義務がある者に該当すると合理的に推認される者をいうと解すべきものである。」
過去問・解説
(R4 予備 第16問 ア)
国税通則法第74条の2第1項に基づく質問検査は、諸般の具体的事情に鑑み、質問検査の客観的な必要性があると判断される場合に認められるものであって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等法律上特段の定めのない実施の細目については、上記のような質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある職員の合理的な選択に委ねられている。
【参照条文】国税通則法
(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
第74条の2 国税庁、国税局若しくは税務署(中略)又は税関の当該職員(中略)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(中略)を検査し、又は当該物件(中略)の提示若しくは提出を求めることができる。
1~4 (略)
2~5 (略)
国税通則法第74条の2第1項に基づく質問検査は、諸般の具体的事情に鑑み、質問検査の客観的な必要性があると判断される場合に認められるものであって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等法律上特段の定めのない実施の細目については、上記のような質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまる限り、権限ある職員の合理的な選択に委ねられている。
【参照条文】国税通則法
(当該職員の所得税等に関する調査に係る質問検査権)
第74条の2 国税庁、国税局若しくは税務署(中略)又は税関の当該職員(中略)は、所得税、法人税、地方法人税又は消費税に関する調査について必要があるときは、次の各号に掲げる調査の区分に応じ、当該各号に定める者に質問し、その者の事業に関する帳簿書類その他の物件(中略)を検査し、又は当該物件(中略)の提示若しくは提出を求めることができる。
1~4 (略)
2~5 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.7.10)は、本肢と同種の事案において、「所得税法234条1項の規定は、…諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている…。」としている。
判例(最判昭48.7.10)は、本肢と同種の事案において、「所得税法234条1項の規定は、…諸般の具体的事情にかんがみ、客観的な必要性があると判断される場合には、前記職権調査の一方法として、同条1項各号規定の者に対し質問し、またはその事業に関する帳簿、書類その他当該調査事項に関連性を有する物件の検査を行なう権限を認めた趣旨であって、この場合の質問検査の範囲、程度、時期、場所等実定法上特段の定めのない実施の細目については、右にいう質問検査の必要があり、かつ、これと相手方の私的利益との衡量において社会通念上相当な限度にとどまるかぎり、権限ある税務職員の合理的な選択に委ねられている…。」としている。
総合メモ
国税犯則取締法に基づく調査を行った場合において、収集された資料を課税処分及び青色申告承認取消処分を行うために利用することの可否 最一小判昭和63年3月31日
総合メモ
税務調査としての質問検査権行使により収集された証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定される場合における質問検査権行使の適法性 最二小判平成16年1月20日
概要
法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が同法156条に反して犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない。
判例
事案:砂利の採取や販売等を目的とする被告人2社の代表取締役である被告人が、売上の一部を除外し、架空経費を計上するなどの方法により、被告人2社の所得を秘匿し、両社について延べ5事業年度に渡って法人税をほ脱した事案において、税務調査としての質問検査権行使により収集された証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できる場合における質問検査権行使の適法性が問題となった。
判旨:「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。 原判決は、本件の事実関係の下で、上記質問又は検査の権限が、犯則事件の調査を担当する者から依頼されるか、その調査に協力する意図の下に、証拠資料を保全するために行使された可能性を排除できず、一面において、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものと評することができる旨判示している。しかしながら、原判決の認定及び記録によると、本件では、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたにとどまり、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものとみるべき根拠はないから、その権限の行使に違法はなかったというべきである。」
判旨:「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならないというべきである。 原判決は、本件の事実関係の下で、上記質問又は検査の権限が、犯則事件の調査を担当する者から依頼されるか、その調査に協力する意図の下に、証拠資料を保全するために行使された可能性を排除できず、一面において、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものと評することができる旨判示している。しかしながら、原判決の認定及び記録によると、本件では、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたにとどまり、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたものとみるべき根拠はないから、その権限の行使に違法はなかったというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第28問 ウ)
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
公衆浴場法には、「第6条第1項の規定に基づく立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という趣旨の規定はない。したがって、この立入検査の権限は犯罪捜査のために用いてよい。
Aは、公衆浴場法の許可を行政庁Bから得て公衆浴場を経営している。あるとき、Bの職員CがAの公衆浴場に現れ、公衆浴場法第6条第1項に基づく立入検査を実施するとAに告げた。
公衆浴場法には、「第6条第1項の規定に基づく立入検査の権限は犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」という趣旨の規定はない。したがって、この立入検査の権限は犯罪捜査のために用いてよい。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.1.20)は、「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない…。」としている。
このように、行政調査の権限を犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない。
したがって、行政調査の権限である公衆浴場法6条1項に基づく立入検査の権限を犯罪捜査のために用いることは許されない。
判例(最判平16.1.20)は、「法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの)156条によると、同法153条ないし155条に規定する質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない…。」としている。
このように、行政調査の権限を犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されない。
したがって、行政調査の権限である公衆浴場法6条1項に基づく立入検査の権限を犯罪捜査のために用いることは許されない。
(H26 司法 第28問 イ)
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。
最高裁判所の判例によれば、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することは認められない。
【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の1に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の1に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
二・三 (略)
Aは、海岸保全区域に当たる海岸で、海岸管理者であるB県知事の許可を受けずに、レジャー施設(以下「本件施設」という。)を設置しており、更に本件施設を拡張しようとしている。これに対し、B県知事は、海岸法(以下「法」という。)第12条により本件施設の除却を求める処分(以下「本件監督処分」という。)、及びAが本件監督処分に従わない場合の代執行(以下「本件代執行」という。)を含めて、様々な措置を執ることを検討している。
最高裁判所の判例によれば、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することは認められない。
【参照条文】海岸法
第7条 海岸管理者以外の者が海岸保全区域(中略)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下(中略)第12条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、(中略)海岸管理者の許可を受けなければならない。
2 (略)
第11条 海岸管理者は、(中略)第7条第1項(中略)の規定による許可を受けた者から占用料(中略)を徴収することができる。(以下略)
第12条 海岸管理者は、次の各号の1に該当する者に対して(中略)他の施設等の(中略)除却(中略)を命ずることができる。
一 第7条第1項(中略)の規定に違反した者
二・三 (略)
2~10 (略)
第41条 次の各号の1に該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
一 第7条第1項の規定に違反して海岸保全区域を占用した者
二・三 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.1.20)は、「質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、質問検査権の行使により取得収集される証拠資料を後に犯則事件の証拠として利用することができないとまではいえないから、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することも許容されうる。
判例(最判平16.1.20)は、「質問又は検査の権限は、犯罪の証拠資料を取得収集し、保全するためなど、犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使することは許されないと解するのが相当である。しかしながら、上記質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、質問検査権の行使により取得収集される証拠資料を後に犯則事件の証拠として利用することができないとまではいえないから、本件監督処分を準備する調査を担当して本件施設に係る情報を収集したB県の職員が、Aを法第41条第1号の罪について刑事告発することも許容されうる。
(R4 予備 第16問 イ)
国税通則法の定める税務調査は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないから、当該調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるときは、質問検査の権限を行使することは許されない。
国税通則法の定める税務調査は犯罪捜査のために認められたものと解してはならないから、当該調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるときは、質問検査の権限を行使することは許されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平16.1.20)は、法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの。)153条ないし155条の質問検査について、「質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、行政調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるにとどまる場合には、質問検査の権限が許容されうる。
判例(最判平16.1.20)は、法人税法(平成13年法律第129号による改正前のもの。)153条ないし155条の質問検査について、「質問又は検査の権限の行使に当たって、取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定できたとしても、そのことによって直ちに、上記質問又は検査の権限が犯則事件の調査あるいは捜査のための手段として行使されたことにはならない…。」としている。
したがって、行政調査により取得収集される証拠資料が後に犯則事件の証拠として利用されることが想定されるにとどまる場合には、質問検査の権限が許容されうる。
総合メモ
行政手続への憲法31条の適用 最大判平成4年7月1日
概要
行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではない。
判例
事案:運輸大臣Yが空港建設反対団体Xに対して、新東京国際空港の安全確保に関する緊急措置法3条に基づいてした工作物等使用禁止命令について、Xがその取消を求めた事案において、憲法31条が行政手続においても適用されるかどうか問題となった。
判旨:「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。 本法3条1項に基づく工作物使用禁止命令により制限される権利利益の内容、性質は、前記のとおり当該工作物の三態様における使用であり、右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、前記のとおり、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合較量すれば、右命令をするに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、本法3条1項が憲法31条の法意に反するものということはできない。また、本法3条1項1、2号の規定する要件が不明確なものであるといえないことは、前記のとおりである。」
判旨:「憲法31条の定める法定手続の保障は、直接には刑事手続に関するものであるが、行政手続については、それが刑事手続ではないとの理由のみで、そのすべてが当然に同条による保障の枠外にあると判断することは相当ではない。 しかしながら、同条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、一般に、行政手続は、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。 本法3条1項に基づく工作物使用禁止命令により制限される権利利益の内容、性質は、前記のとおり当該工作物の三態様における使用であり、右命令により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等は、前記のとおり、新空港の設置、管理等の安全という国家的、社会経済的、公益的、人道的見地からその確保が極めて強く要請されているものであって、高度かつ緊急の必要性を有するものであることなどを総合較量すれば、右命令をするに当たり、その相手方に対し事前に告知、弁解、防御の機会を与える旨の規定がなくても、本法3条1項が憲法31条の法意に反するものということはできない。また、本法3条1項1、2号の規定する要件が不明確なものであるといえないことは、前記のとおりである。」
過去問・解説
(R4 予備 第14問 イ)
いわゆる成田新法事件に係る最高裁判所平成4年7月1日大法廷判決(民集46巻5号437頁)は、行政庁が不利益処分をする場合に、その名宛人に対し当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を定める法令が存しなくても、当該不利益処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、当該不利益処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量した結果に基づき、当該不利益処分の理由の提示が憲法上要請される場合があると判示している。
いわゆる成田新法事件に係る最高裁判所平成4年7月1日大法廷判決(民集46巻5号437頁)は、行政庁が不利益処分をする場合に、その名宛人に対し当該不利益処分の理由を示さなければならない旨を定める法令が存しなくても、当該不利益処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、当該不利益処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量した結果に基づき、当該不利益処分の理由の提示が憲法上要請される場合があると判示している。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.7.1)は、「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」としているものの、事前の告知、弁解、防御の機会に関する法令がない場合については判断していない。
判例(最判平4.7.1)は、「行政処分の相手方に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるかどうかは、行政処分により制限を受ける権利利益の内容、性質、制限の程度、行政処分により達成しようとする公益の内容、程度、緊急性等を総合較量して決定されるべきものであって、常に必ずそのような機会を与えることを必要とするものではないと解するのが相当である。」としているものの、事前の告知、弁解、防御の機会に関する法令がない場合については判断していない。