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処分性

ごみ焼却場の設置 最一小判昭和39年10月29日

概要
行政庁の処分とは、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によつて、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものである。
判例
事案:都がごみ焼却場を設置した行為の取消訴訟において、その行為が行政庁の処分に当たるか否かが問題となった。

判旨:「行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいうものであることは、当裁判所の判例とするところである (昭和28年(オ)第1362号、同30年2月24日第1小法廷判決、民集9巻2号217頁)。そして、かかる行政庁の行為は、公共の福祉の維持、増進のために、法の内容を実現することを目的とし、正当の権限ある行政庁により、法に準拠してなされるもので、社会公共の福祉に極めて関係の深い事柄であるから、法律は、行政庁の右のような行為の特殊性に鑑み、一方このような行政目的を可及的速かに達成せしめる必要性と、他方これによって権利、利益を侵害された者の法律上の救済を図ることの必要性とを勘案して、行政庁の右のような行為は仮りに違法なものであっても、それが正当な権限を有する機関により取り消されるまでは、一応適法性の推定を受け有効として取り扱われるものであることを認め、これによって権利、利益を侵害された者の救済については、通常の民事訴訟の方法によることなく、特別の規定によるべきこととしたのである。従ってまた、行政庁の行為によって権利、利益を侵害された者が、右行為を当然無効と主張し、行政事件訴訟特例法によって救済を求め得るには、当該行為が前叙のごとき性質を有し、その無効が正当な権限のある機関により確認されるまでは事実上有効なものとして取り扱われている場合でなければならない。
 ところで、原判決の確定した事実によれば、本件ごみ焼却場は、被上告人都がさきに私人から買収した都所有の土地の上に、私人との間に対等の立場に立って締結した私法上の契約により設置されたものであるというのであり、原判決が被上告人都において本件ごみ焼却場の設置を計画し、その計画案を都議会に提出した行為は被上告人都自身の内部的手続行為に止まると解するのが相当であるとした判断は、是認できる。それ故、仮りに右設置行為によって上告人らが所論のごとき不利益を被ることがあるとしても、右設置行為は、被上告人都が公権力の行使により直接上告人らの権利義務を形成し、またはその範囲を確定することを法律上認められている場合に該当するものということを得ず、原判決がこれをもつて行政事件訴訟特例法にいう『行政庁の処分』にあたらないからその無効確認を求める上告人らの本訴請求を不適法であるとしたことは、結局正当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第26問 イ)
行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、相手方の権利を制限し、又は義務を課する行為でなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.10.29)は、「行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう…。」としている。
したがって、「行政庁の処分」が、必ずしも相手方の権利を制限したり義務を課すとは限らない。

(H19 司法 第26問 ウ)
行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、行政手続法にいう「不利益処分」又は「申請に対する処分」に該当する行為でなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.10.29)は、「行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう…。」としている。
したがって、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」は行政手続法にいう「不利益処分」又は「申請に対する処分」に該当する行為以外も含まれる。

(H19 司法 第26問 エ)
行政事件訴訟法第3条第2項にいう「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」とは、国又は地方公共団体以外の者を名宛人とする行為でなければならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭39.10.29)は、「行政庁の処分とは、所論のごとく行政庁の法令に基づく行為のすべてを意味するものではなく、公権力の主体たる国または公共団体が行う行為のうち、その行為によって、直接国民の権利義務を形成しまたはその範囲を確定することが法律上認められているものをいう…。」としている。
したがって、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」は、国又は地方公共団体以外の者を名宛人とする行為でなくても足りる。
総合メモ

通達の処分性 最三小判昭和43年12月24日

概要
通達は、法規としての性質を持つものではなく、一般国人は直接これに拘束されるものではないから、国民の権利義務や法律上の地位に直接具体的な影響を及ぼすものではなく、処分性が認められない。
判例
事案:上告人が、本件通達中、宗教団体の経営する墓地についてその管理者が、埋葬又は埋蔵の請求者が他の宗教団体の信者であることを理由に、これを拒むことは「正当の理由」(墓地、埋葬等に関する法律13条)とは認められないであろうという趣旨の取消しを求めた事例において、通達に処分性が認められるか問題となった。

判旨:「元来、通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎないから、これらのものがその通達に拘束されることはあっても、一般の国民は直接これに拘束されるものではなく、このことは、通達の内容が、法令の解釈や取扱いに関するもので、国民の権利義務に重大なかかわりをもつようなものである場合においても別段異なるところはない。このように、通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。また、裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。
 このような通達一般の性質、前述した本件通達の形式、内容および原判決の引用する1審判決認定の事実…その他原審の適法に確定した事実ならびに墓地、埋葬等に関する法律の規定を併せ考えれば、本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それはもっぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従って、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない。また、墓地、埋葬等に関する法律21条違反の有無に関しても、裁判所は本件通達における法律解釈等に拘束されるものではないのみならず、同法13条にいわゆる正当の理由の判断にあたっては、本件通達に示されている事情以外の事情をも考慮すべきものと解せられるから、本件通達が発せられたからといって直ちに上告人において刑罰を科せられるおそれがあるともいえず、さらにまた、原審において上告人の主張するような損害、不利益は、原判示のように、直接本件通達によって被ったものということもできない。
 そして、現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。」
過去問・解説
(H18 司法 第26問 ア)
通達は上級機関が関係下級機関・職員に対してその職務権限の行使を指揮する等のために発するものであるから、当該職務権限の行使を規律する法令の中に通達を発することができる旨の規定がない場合には、上級機関はこれを発することはできない。

(正答)

(解説)
法律の留保原則は、国民の権利を制約したり、義務を課したりする場合に法律の根拠を要求するものであるところ、通達は、国民の法的地位に直接影響を及ぼすものではなく、下級行政機関の権限行使に制限を加えるのみである。
したがって、当該職務権限の行使を規律する法令の中に通達を発することができる旨の規定がない場合であっても、上級機関はこれを発することができる。

(H18 司法 第26問 イ)
裁判所は、法令の解釈適用に際しては、通達に示された法令の解釈に拘束されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、「裁判所がこれらの通達に拘束されることのないことはもちろんで、裁判所は、法令の解釈適用にあたっては、通達に示された法令の解釈とは異なる独自の解釈をすることができ、通達に定める取扱いが法の趣旨に反するときは独自にその違法を判定することもできる筋合である。」としている。
したがって、裁判所は、法令の解釈適用に際しては、通達に示された法令の解釈に拘束されない。

(H20 司法 第26問 ウ)
墓地、埋葬等に関する法律第13条に関して、他の宗教団体信者であることだけを理由とする埋葬拒否は「正当の理由」によるものとは認められないと解釈した通達について、この解釈を誤りと考える寺院は、通達に従わず、同条違反を理由に起訴された後に、刑事訴訟で通達の適法性を争うことができるが、それでは公訴を提起され、有罪判決を受ける危険を負わざるを得ないため、取消訴訟で当該通達の適法性を争うことができる。

【参照条文】墓地、埋葬等に関する法律
第13条 墓地、納骨堂又は火葬場の管理者は、埋葬、埋蔵、収蔵又は火葬の求めを受けたときは、正当の理由がなければこれを拒んではならない。
第21条 左の各号の一に該当する者は、これを1000円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
 一 第3条、第4条、第5条第1項又は第12条から第17条までの規定に違反した者
 二 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、「本件通達は従来とられていた法律の解釈や取扱いを変更するものではあるが、それはもっぱら知事以下の行政機関を拘束するにとどまるもので、これらの機関は右通達に反する行為をすることはできないにしても、国民は直接これに拘束されることはなく、従って、右通達が直接に上告人の所論墓地経営権、管理権を侵害したり、新たに埋葬の受忍義務を課したりするものとはいいえない。」とした上で、「現行法上行政訴訟において取消の訴の対象となりうるものは、国民の権利義務、法律上の地位に直接具体的に法律上の影響を及ぼすような行政処分等でなければならないのであるから、本件通達中所論の趣旨部分の取消を求める本件訴は許されないものとして却下すべきものである。」としている。
したがって、通達に処分性は認められないから、取消訴訟で当該通達の適法性を争うことはできない。

(H27 予備 第13問 ウ)
下級行政機関は上級行政機関の発する通達に拘束されるから、行政機関が通達に反する処分をした場合、当該処分は権限を逸脱して行われたものとして無効となる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、「通達は、元来、法規の性質をもつものではないから、行政機関が通達の趣旨に反する処分をした場合においても、そのことを理由として、その処分の効力が左右されるものではない。」としている。
したがって、行政機関が通達に反する処分をした場合も、当該処分は有効である。

(R3 予備 第13問 ウ)
各省大臣の発する通達は、その機関の所掌事務についての所管の諸機関及び職員に対する拘束力を有する命令又は示達であり、法規としての性質を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭43.12.24)は、「通達は、原則として、法規の性質をもつものではなく、上級行政機関が関係下級行政機関および職員に対してその職務権限の行使を指揮し、職務に関して命令するために発するものであり、このような通達は右機関および職員に対する行政組織内部における命令にすぎない…。」としている。
したがって、通達は、法規としての性質を有しない。
総合メモ

通知の処分性 最一小判平成16年4月26日

概要
検疫所長が食品等の輸入の届出をした者に対して行う当該食品等が同法に違反する旨の通知は、(改正前)食品衛生法16条に基づくものであるといえる。また、同通知により、当該食品について、関税法70条2項の「検査の完了又は条件の具備」を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなるという法的効力を有することから、同通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:Xが冷凍スモークマグロ切り身100kgを輸入しようとしたところ、検疫所長から食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。)6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか問題となった。

判旨:「法は、飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止することなどを目的とし、この目的を達成するために、厚生労働大臣に対し、食品等に関し、基準及び規格の設定、販売等の禁止、検査命令及び廃棄命令の発令等についての権限を付与している(法4条の2、7条、10条、15条、平成14年法律第104号による改正前の食品衛生法22条等)。このように、法は厚生労働大臣に対して食品等の安全を確保する責任と権限を付与しているところ、法16条は、販売の用に供し、又は営業上使用する食品等を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、その都度厚生労働大臣に輸入届出をしなければならないと規定しているのであるから、同条は、厚生労働大臣に対し輸入届出に係る食品等が法に違反するかどうかを認定判断する権限を付与していると解される。そうであるとすれば、法16条は、厚生労働大臣が、輸入届出をした者に対し、その認定判断の結果を告知し、これに応答すべきことを定めていると解するのが相当である。
 ところで、食品衛生法施行規則15条は、法16条の輸入届出は所轄の検疫所長に対して輸入届出書を提出して行うべきことを規定しているが、検疫所において実施する法に基づく輸入食品等監視指導業務の取扱基準を定めた前記輸入食品等監視指導業務基準によると、検疫所長は、食品等を輸入しようとする者に対し、当該食品等が、法の規定に適合すると判断したときは食品等輸入届出済証を交付し、これに違反すると判断したときは食品衛生法違反通知書を交付することとされている。このような食品等輸入届出済証の交付は厚生労働大臣の委任を受けて検疫所長が行う当該食品等が法に違反しない旨の応答であり、食品衛生法違反通知書の交付はこれに違反する旨の応答であって、これらは、前記…の法16条が定める輸入届出をした者に対する応答が具体化されたものであると解される。
 一方、関税法70条2項は、『他の法令の規定により輸出又は輸入に関して検査又は条件の具備を必要とする貨物については、第67条(輸出又は輸入の許可)の検査その他輸出申告又は輸入申告に係る税関の審査の際、当該法令の規定による検査の完了又は条件の具備を税関に証明し、その確認を受けなければならない。』と規定しているところ、ここにいう『当該法令の規定による検査の完了又は条件の具備』は、食品等の輸入に関していえば、法16条の規定による輸入届出を行い、法の規定に違反しないとの厚生労働大臣の認定判断を受けて、輸入届出の手続を完了したことを指すと解され、税関に対して同条の輸入届出の手続が完了したことを証明し、その確認を受けなければ、関税法70条3項の規定により、当該食品等の輸入は許可されないものと解される。関税法基本通達70-3-1が、関税法70条2項の規定の適用に関し、法6条等の規定については、『第16条の規定により厚生労働省、食品衛生監視員が交付する "食品等輸入届出書" の届出済証』により、関税法70条2項に規定する『検査の完了又は条件の具備』を証明させるとし、関税法基本通達67-3-6、67-1-9が、輸入申告書に食品等輸入届出済証等の証明書類の添付がないときは、輸入申告書の受理を行わず、申告者に返却すると規定しているのも、上記解釈と同じ趣旨を明らかにしたものである。
 そうすると、食品衛生法違反通知書による本件通知は、法16条に根拠を置くものであり、厚生労働大臣の委任を受けた被上告人が、上告人に対し、本件食品について、法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。そして、本件通知により、上告人は、本件食品について、関税法70条2項の『検査の完了又は条件の具備』を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなるのであり、上記関税法基本通達に基づく通関実務の下で、輸入申告書を提出しても受理されずに返却されることとなるのである。したがって、本件通知は、上記のような法的効力を有するものであって、取消訴訟の対象となると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第30問 ア)
食品会社であるXが、食品を輸入しようとしたところ、検疫所長Yから食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。以下「法」という。)第6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについて判断を示した最高裁判所平成16年4月26日第一小法廷判決(民集58巻4号989頁)の次の判示を読み、後記の正誤を答えなさい。 

【判示】
 「食品衛生法違反通知書による本件通知は、法16条に根拠を置くものであり、厚生労働大臣の委任を受けたYが、Xに対し、本件食品について、法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。そして、本件通知により、Xは、本件食品について、関税法70条2項の「検査の完了又は条件の具備」を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなるのであり、(中略)関税法基本通達に基づく通関実務の下で、輸入申告書を提出しても受理されずに返却されることとなるのである。」

【参照条文】食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの)
第6条 人の健康を損なうおそれのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食に供されている物であつて添加物として使用されるものを除く。)並びにこれを含む製剤及び食品は、これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、若しくは陳列してはならない。
第16条 販売の用に供し、又は営業上使用する食品、添加物、器具又は容器包装を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、そのつど厚生労働大臣に届け出なければならない。

【参照条文】関税法
第67条 貨物を輸出し、又は輸入しようとする者は、政令で定めるところにより、当該貨物の品名並びに数量及び価格(中略)その他必要な事項を税関長に申告し、貨物につき必要な検査を経て、その許可を受けなければならない。
第70条 (略)
2 他の法令の規定により輸出又は輸入に関して検査又は条件の具備を必要とする貨物については、第67条(輸出又は輸入の許可)の検査その他輸出申告又は輸入申告に係る税関の審査の際、当該法令の規定による検査の完了又は条件の具備を税関に証明し、その確認を受けなければならない。
3 第1項の証明がされず、又は前項の確認を受けられない貨物については、輸出又は輸入を許可しない。

【記述】
この判決は、行政庁の行為は、法律の根拠を有しない場合であっても抗告訴訟の対象となる処分に当たり得ることを明らかにしたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.4.26)は、「食品衛生法違反通知書による本件通知は、法16条に根拠を置くものであり、厚生労働大臣の委任を受けた被上告人が、上告人に対し、本件食品について、法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。…したがって、本件通知は、上記のような法的効力を有するものであって、取消訴訟の対象となると解するのが相当である。」として、本件通知について法律上の根拠を示したうえで処分性を認定している。
したがって、本判例は、法律の根拠を有しない場合であっても抗告訴訟の対象となる処分に当たり得ることを明らかにしたとはいえない。

(H22 司法 第30問 イ)
食品会社であるXが、食品を輸入しようとしたところ、検疫所長Yから食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。以下「法」という。)第6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについて判断を示した最高裁判所平成16年4月26日第一小法廷判決(民集58巻4号989頁)の次の判示を読み、後記の正誤を答えなさい。 

*【判示】【記述】は、(H22 司法 第30問 ア)を参照。

【記述】
この判決によれば、法第16条は、「届け出なければならない」と規定しているが、厚生労働大臣に法第6条違反の有無を認定判断する権限を付与していることになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.4.26)は、「法は厚生労働大臣に対して食品等の安全を確保する責任と権限を付与しているところ、法16条は、販売の用に供し、又は営業上使用する食品等を輸入しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、その都度厚生労働大臣に輸入届出をしなければならないと規定しているのであるから、同条は、厚生労働大臣に対し輸入届出に係る食品等が法に違反するかどうかを認定判断する権限を付与している…。」としている。

(H22 司法 第30問 ウ)
食品会社であるXが、食品を輸入しようとしたところ、検疫所長Yから食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。以下「法」という。)第6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについて判断を示した最高裁判所平成16年4月26日第一小法廷判決(民集58巻4号989頁)の次の判示を読み、後記の正誤を答えなさい。 

*【判示】【記述】は、(H22 司法 第30問 ア)を参照。

【記述】
この判決は、検疫所長による本件通知に法的効力を認めたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.4.26)は、「本件通知により、上告人は、本件食品について、関税法70条2項の『検査の完了又は条件の具備』を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなるのであり、上記関税法基本通達に基づく通関実務の下で、輸入申告書を提出しても受理されずに返却されることとなるのである。したがって、本件通知は、上記のような法的効力を有するものであって、取消訴訟の対象となる…。」としている。

(H22 司法 第30問 エ)
食品会社であるXが、食品を輸入しようとしたところ、検疫所長Yから食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。以下「法」という。)第6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについて判断を示した最高裁判所平成16年4月26日第一小法廷判決(民集58巻4号989頁)の次の判示を読み、後記の正誤を答えなさい。 

*【判示】【記述】は、(H22 司法 第30問 ア)を参照。

【記述】
この判決によれば、税関長は、本件通知の時点で、関税法第70条第3項に基づき輸入を許可しないという処分をしたことになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.4.26)は、「食品衛生法違反通知書による本件通知は、法16条に根拠を置くものであり、厚生労働大臣の委任を受けた被上告人が、上告人に対し、本件食品について、法6条の規定に違反すると認定し、したがって輸入届出の手続が完了したことを証する食品等輸入届出済証を交付しないと決定したことを通知する趣旨のものということができる。」としている。

(H22 司法 第30問 オ)
食品会社であるXが、食品を輸入しようとしたところ、検疫所長Yから食品衛生法(平成15年法律第55号による改正前のもの。以下「法」という。)第6条に違反する旨の通知(以下「本件通知」という。)を受けたため、その取消しを求めた事案において、本件通知が抗告訴訟の対象となる処分に当たるかどうかについて判断を示した最高裁判所平成16年4月26日第一小法廷判決(民集58巻4号989頁)の次の判示を読み、後記の正誤を答えなさい。 

*【判示】【記述】は、(H22 司法 第30問 ア)を参照。

【記述】
この判決の考え方に立っても、輸入申告に対する税関長の拒否行為について取消訴訟を提起することは許されると解し得るが、同訴訟においては、法第16条の届出の対象となる食品等が法第6条に適合するか否かについては争うことができないとされる可能性がある。

(正答)

(解説)
判例(最判平16.4.26)は、「本件通知により、上告人は、本件食品について、関税法70条2項の『検査の完了又は条件の具備』を税関に証明し、その確認を受けることができなくなり、その結果、同条3項により輸入の許可も受けられなくなる…。」としており、この輸入拒否処分についても取消訴訟を提起しうる。
他方で、取消訴訟の排他的管轄により、輸入拒否処分の取消訴訟において、通知の違法性を主張できなくなる可能性がある。
総合メモ

労働者災害補償保険法23条1項2号に基づく労災就学援護費を支給しない旨の決定の処分性 最一小判平成15年9月4日

概要
労災就学援護費の支給要綱を定めた通達を根拠としてなされた労働基準監督署長の労災就学援護費の不支給決定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:労災就学援護費の支給要綱を定めた通達を根拠としてなされた労働基準監督署長の労災就学援護費の不支給決定の取消訴訟において、本決定が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか問題となった。

判旨:「法23条1項2号は、政府は、労働福祉事業として、遺族の就学の援護等、被災労働者及びその遺族の援護を図るために必要な事業を行うことができると規定し、同条2項は、労働福祉事業の実施に関して必要な基準は労働省令で定めると規定している。これを受けて、労働省令である労働者災害補償保険法施行規則(平成12年労働省令第2号による改正前のもの)1条3項は、労災就学援護費の支給に関する事務は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長が行うと規定している。そして、『労災就学援護費の支給について』と題する労働省労働基準局長通達(昭和45年10月27日基発第774号)は、労災就学援護費は法23条の労働福祉事業として設けられたものであることを明らかにした上、その別添『労災就学等援護費支給要綱』において、労災就学援護費の支給対象者、支給額、支給期間、欠格事由、支給手続等を定めており、所定の要件を具備する者に対し、所定額の労災就学援護費を支給すること、労災就学援護費の支給を受けようとする者は、労災就学等援護費支給申請書を業務災害に係る事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければならず、同署長は、同申請書を受け取ったときは、支給、不支給等を決定し、その旨を申請者に通知しなければならないこととされている。 このような労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、法第3章の規定に基づいて行う保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。そして、被災労働者又はその遺族は、上記のとおり、所定の支給要件を具備するときは所定額の労災就学援護費の支給を受けることができるという抽象的な地位を与えられているが、具体的に支給を受けるためには、労働基準監督署長に申請し、所定の支給要件を具備していることの確認を受けなければならず、労働基準監督署長の支給決定によって初めて具体的な労災就学援護費の支給請求権を取得するものといわなければならない。 そうすると、労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H30 予備 第20問 イ)
労災就学援護費について、労働者災害補償保険法及び同法施行規則は、その支給の実体的及び手続的な要件や金額について何ら定めていないから、労災就学援護費を支給しない旨の決定は、行政庁が公権力の行使として一方的に決定し、取消訴訟によらなければその判断を覆すことができないとの効力が法律上与えられたものとはいえず、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。

(正答)

(解説)
判例(最判平15.9.4)は、「このような労災就学援護費に関する制度の仕組みにかんがみれば、法は、労働者が業務災害等を被った場合に、政府が、法第3章の規定に基づいて行う保険給付を補完するために、労働福祉事業として、保険給付と同様の手続により、被災労働者又はその遺族に対して労災就学援護費を支給することができる旨を規定しているものと解するのが相当である。」とした上で、「労働基準監督署長の行う労災就学援護費の支給又は不支給の決定は、法を根拠とする優越的地位に基づいて一方的に行う公権力の行使であり、被災労働者又はその遺族の上記権利に直接影響を及ぼす法的効果を有するものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。
したがって、労災就学援護費を支給しない旨の決定は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
総合メモ

公共施設の運営者募集に応募した者に対してなされた不決定の通知の処分性 最三小判平成23年6月14日

概要
市営の老人福祉施設の民間事業者への移管に当たり、その相手方となる事業者の選考のための公募に提案書を提出して応募した者が、市長から、その者を相手方として上記移管の手続を進めることは好ましくないと判断したので提案について決定に至らなかった旨の通知を受けた場合において、上記移管は市と相手方となる事業者との間で契約を締結することにより行うことが予定されていたものであり、上記公募は法令の定めに基づくものではなく上記移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行われたものであったという事情の下では、上記通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:市営の老人福祉施設の移管先の公募に提案書を提出して応募した事業者が市長から受けた、提案につき決定に至らなかった旨の通知の取消訴訟において、通知が、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「前記事実関係によれば、本件民間移管は、上告人と受託事業者との間で、上告人が受託事業者に対し本件建物等を無償で譲渡し本件土地を貸し付け、受託事業者が移管条件に従い当該施設を老人福祉施設として経営することを約する旨の契約(以下『本件契約』という。)を締結することにより行うことが予定されていたものというべきである。本件募集要綱では、上告人は受託事業者の決定後においても移管条件が遵守される見込みがないと判断するときはその決定を取り消すことができるとされており、本件契約においても、これと同様の条項が定められれば解除権が留保されるほか、本件土地の貸付けには、公益上の理由による解除権が留保されており(地方自治法238条の5第4項、238条の4第5項)、本件土地の貸付け及び本件建物等の無償譲渡には、用途指定違反を理由とする解除権が留保され得るが(同法238条の5第6項、7項)、本件契約を締結するか否かは相手方の意思に委ねられているのであるから、そのような留保によって本件契約の契約としての性格に本質的な変化が生ずるものではない。そして、本件契約は、上告人が価格の高低のみを比較することによって本件民間移管に適する相手方を選定することができる性質のものではないから、地方自治法施行令167条の2第1項2号にいう『その他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないもの』として、随意契約の方法により締結することができるものである。また、紋別市公の施設に係る指定管理者の指定手続に関する条例及び同条例施行規則は、上告人の設置する公の施設に係る地方自治法244条の2第3項所定の指定管理者の指定の手続について定めたものであって(同条例1条参照)、本件契約の締結及びその手続につき適用されるものではない。そうすると、本件募集は、法令の定めに基づいてされたものではなく、上告人が本件民間移管に適する事業者を契約の相手方として選考するための手法として行ったものである。以上によれば、紋別市長がした本件通知は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである…。」
過去問・解説
(H26 司法 第26問 ア)
市が市営の老人福祉施設を民間事業者に移管するために、施設の資産の譲渡先としてその運営を引き継ぐ事業者を公募したが、応募者に対して市長が「決定に至らなかった」旨の通知を行った場合、当該通知は、法令に基づかずに行った公募の応募者に対し、その者を相手方として契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎないから、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない。

(正答)

(解説)
判例(最判平23.6.14)は、本肢と同種の事案において、「決定に至らなかった旨の通知…は、上告人が、契約の相手方となる事業者を選考するための手法として法令の定めに基づかずに行った事業者の募集に応募した者に対し、その者を相手方として当該契約を締結しないこととした事実を告知するものにすぎず、公権力の行使に当たる行為としての性質を有するものではないと解するのが相当である。したがって、本件通知は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない…。」としている。
総合メモ

大蔵大臣による物納財産の払下げの処分性 最三小判昭和35年7月12日

概要
大蔵大臣による物納財産の払下げは、私法上の売買であって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:大蔵大臣が物納土地をXに払い下げる物納財産払下許可処分の取消訴訟において、大蔵大臣による物納財産の払下げが抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「国有普通財産の払下を私法上の売買と解すべきことは原判決の説明するとおりであって、右払下が売渡申請書の提出、これに対する払下許可の形式をとっているからといって、右払下行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。論旨は独自の見解に立つものであって到底採用できない。論旨は上告人は本件土地について借地権を有するから、本件払下によって財産権が侵害され、本件払下は憲法29条に反する旨を主張するのであるが、上告人の借地権が侵されるかどうかは借地権の効力の問題であって本件払下とは直接に関係がない…。」
過去問・解説
(H24 司法 第31問 イ)
国有普通財産の払下げは、売渡申請書の提出及びこれに対する払下許可の形式が採られており、国が優越的地位に立って私人との間の法律関係を定めるものであるから、処分性が認められるものといえる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.7.12)は、本肢と同種の事案において、「国有普通財産の払下を私法上の売買と解すべきことは原判決の説明するとおりであって、右払下が売渡申請書の提出、これに対する払下許可の形式をとっているからといって、右払下行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。」として、処分性を否定している。

(H29 予備 第19問 ウ)
国有の普通財産の売払いは、取消訴訟の対象となる処分に当たる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭35.7.12)は、「国有普通財産の払下を私法上の売買と解すべきことは原判決の説明するとおりであって、右払下が売渡申請書の提出、これに対する払下許可の形式をとっているからといって、右払下行為の法律上の性質に影響を及ぼすものではない。」として、国有の普通財産の売払いの処分性を否定している。
総合メモ

弁済供託における供託金取戻請求の供託官による却下の処分性 最大判昭和45年7月15日

概要
弁済供託は、寄託契約の性質を有するものであるが、供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を供託官に与えたものと解される。
したがって、右のような実定法が存するかぎりにおいては、供託官が供託物取戻請求を理由がないと認めて却下した行為には、処分性が認められる。
判例
事案:弁済供託において、供託官が弁済者から供託物の取戻しの請求を受けた場合にこれを理由がないと認めて却下する行為の取消訴訟において、この行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか問題となった。

判旨:「もともと、弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために供託物を受け入れ管理するもので、民法上の寄託契約の性質を有するものであるが、供託により弁済者は債務を免れることとなるばかりでなく、金銭債務の弁済供託事務が大量で、しかも、確実かつ迅速な処理を要する関係上、法律秩序の維持、安定を期するという公益上の目的から、法は、国家の後見的役割を果たすため、国家機関である供託官に供託事務を取り扱わせることとしたうえ、供託官が弁済者から供託物取戻の請求を受けたときには、単に、民法上の寄託契約の当事者的地位にとどまらず、行政機関としての立場から右請求につき理由があるかどうかを判断する権限を供託官に与えたものと解するのが相当である。
 したがって、右のような実定法が存するかぎりにおいては、供託官が供託物取戻請求を理由がないと認めて却下した行為は行政処分であり、弁済者は右却下行為が権限のある機関によって取り消されるまでは供託物を取り戻すことができないものといわなければならず、供託関係が民法上の寄託関係であるからといって、供託官の右却下行為が民法上の履行拒絶にすぎないものということは到底できないのである。」
過去問・解説
(R2 予備 第18問 ア)
弁済供託は、民法上の寄託契約の性質を有するものであるが、供託官が弁済者から供託物の取戻しの請求を受けた場合において、これを理由がないと認めて却下する行為は、処分性が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.7.15)は、「弁済供託は、弁済者の申請により供託官が債権者のために供託物を受け入れ管理するもので、民法上の寄託契約の性質を有するものである…。」とした上で、「供託官が供託物取戻請求を理由がないと認めて却下した行為は行政処分であ…る。」としている。
総合メモ

関税定率法21条3項に基づく輸入禁制品該当通知 最三小判昭和54年12月25日

概要
関税定率法による通知は「観念の通知」であるとしつつ、「もともと法律の規定に準拠してされたもの」であること、輸入既製品については税関長による輸入の許可を得ることができず(関税法67条、70条、71条、73条、関税定率法21条等)、輸入の許可を受けていない貨物の輸入は法律上禁止されている(関税法111条参照)から、輸入申告者に対し当該貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものであるという理由から、処分性を肯定した。
判例
事案: 関税定率法21条3項の規定による税関長の通知又は同条5項の規定による税関長の決定及びその通知の取消訴訟において、それらの行為が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」に該当するかが問題となった。

判旨:「輸入禁制品について税関長がその輸入を許可するものでないことは、関税法67条、70条、71条、73条、関税定率法21条等の規定に徴し明らかである。そして、税関長において、輸入申告者に対し、関税定率法21条3項の規定による通知をし、又は、更に、輸入申告者からの異議の申出にかかわらず先の通知に示された判断を変更することなく維持し、同条5項の規定による決定及びその通知をした場合においては、当該貨物につき輸入の許可の得られるべくもないことが明らかとなったものということができると同時に、関税定率法21条の規定の趣旨からみて、税関長において同条1項3号に該当すると認めるのに相当の理由がある貨物について、税関長が同条3項及び5項に定める措置をとる以外に当該輸入申告に対し何らかの応答的行政処分をすることは、およそ期待され得ないところであり、他方、輸入申告者は輸入の許可を受けないで貨物を輸入することを法律上禁止されている(関税法11条参照)のであるから、輸入申告者は、当該貨物を適法に輸入する道を閉ざされるに至ったものといわなければならない。そして、輸入申告者の被るこのような制約は、輸入申告に対する税関長の応答的行政処分が未了である場合に輸入申告者がその間申告にかかる貨物を適法に輸入することができないという、行政事務処理手続に伴う一般的・経過的な状態下におけるものとは異なり、関税定率法21条3項の規定による通知又は同条5項の規定による決定及びその通知(以下『関税定率法による通知等』という。)によって生ずるに至った法律上の効果である、とみるのが相当である(なお、前記のとおり税関長の判断の結果の表明である関税定率法による通知等により、輸入申告者が、それまで関税法67条の規定により負っていた義務、すなわち、貨物の輸入については税関長の許可を受けなければならないという一般的な義務を免れ、許可なしで当該貨物を輸入することができることとなると解しうべき合理的根拠は、これを見出し難い。また、税関長において関税法138条ないし140条の規定によって通告及び告発の措置を採ったとしても、これにつき刑事手続が必ず開始されるとは断定し得ず、ひいて当該貨物が輸入禁制品に該当するかどうかが右刑事手続において確定されるという保障はないのであるから、このことをもって原審の判示するように関税定率法による通知等の処分性を否定する1根拠とすることもできない。)。
 そうすると、被上告人の関税定率法による通知等は、その法律上の性質において被上告人の判断の結果の表明、すなわち観念の通知であるとはいうものの、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつ、これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものというべきであるから、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に該当するもの、と解するのが相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第27問 ア)
税関長が輸入業者に対してした、輸入書籍が関税定率法(当時)所定の輸入禁制品に該当するとの通知は、その法律上の性質において税関長の判断の結果の表明、すなわち観念の通知であって、行政指導にすぎず、抗告訴訟の対象とはならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭54.12.25.)は、「関税定率法による通知等は、…観念の通知であるとはいうものの、もともと法律の規定に準拠してされたものであり、かつ、これにより上告人に対し申告にかかる本件貨物を適法に輸入することができなくなるという法律上の効果を及ぼすものというべきであるから、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に該当する…。」として、行政指導にも処分性を認めている。
総合メモ

公共施設の管理者である行政機関等が都市計画法32条所定の同意を拒否する行為 最一小判平成7年3月23日

概要
同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえず、開発行為を行おうとする者が、その同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえない。したがって、公共施設の管理者である国若しくは地方公共団体又はその機関が都市計画法32条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分に当たらない。
判例
事案:公共施設の管理者である国若しくは地方公共団体又はその機関が都市計画法32条所定の同意を拒否する行為の取消訴訟において、その行為が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」に当たるかが問題となった。

判旨:「都市計画法(以下『法』という。)32条は、開発行為の許可(以下『開発許可』という)を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者の同意を得なければならない旨を規定する。そして、法30条2項は、開発許可の申請書に、右の同意を得たことを証する書面を添付することを要することを法33条1項は申請に係る開発行為が同項各号の定める基準に適合しており、かつ、その申請の手続が法又は法に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならないことを規定している。
 右のような定めは、開発行為が、開発区域内に存する道路、下水道等の公共施設に影響を与えることはもとより、開発区域の周辺の公共施設についても、変更、廃止などが必要となるような影響を与えることが少なくないことにかんがみ事前に、開発行為による影響を受けるこれらの公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件とすることによって、開発行為の円滑な施行と公共施設の適正な管理の実現を図ったものと解されるそして国若しくは地方公共団体又はその機関(以下『行政機関等』という)が公共施設の管理権限を有する場合には、行政機関等が法32条の同意を求める相手方となり行政機関等が右の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。したがって、開発行為を行おうとする者が、右の同意を得ることができず、開発行為を行うことができなくなったとしても、その権利ないし法的地位が侵害されたものとはいえないから、右の同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない。もとより、このような公法上の判断について、立法政策上、一定の者に右判断を求める権利を付与し、これに係る行為を抗告訴訟の対象とすることも可能ではあるが、その場合には、それに相応する法令の定めが整備されるべきところ、法及びその関係法令には、法32条の同意に関し、手続、基準ないし要件、通知等に関する規定が置かれていないのみならず、法の定める各種処分に対する不服申立て及び争訟について規定する法50条、51条も、右の同意やこれを拒否する行為については何ら規定するところがないのである。
 そうしてみると、公共施設の管理者である行政機関等が法32条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分には当たらない。」
過去問・解説
(H21 司法 第31問 ア)
公共施設の管理権限を有する行政機関が都市計画法に基づく開発行為の許可を申請しようとする者に対して同法第32条第1項の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為といえるところ、この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことができないことからすると、上記の同意を拒否する行為は、それ自体が開発行為を禁止し、又は制限する効果を持つものといえるから、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものとして、処分性が認められるものといえる。

【参照条文】都市計画法
第30条 前条第1項又は第2項の許可(以下「開発許可」という。)を受けようとする者は、(中略)次に掲げる事項を記載した申請書を都道府県知事に提出しなければならない。
 一~五 (略)
2 前項の申請書には、第32条第1項に規定する同意を得たことを証する書面(中略)を添付しなければならない。
第32条 開発許可を申請しようとする者は、あらかじめ、開発行為に関係がある公共施設の管理者と協議し、その同意を得なければならない。
2、3 (略)
第33条 都道府県知事は、開発許可の申請があった場合において、当該申請に係る開発行為が、次に掲げる基準(中略)に適合しており、かつ、その申請の手続がこの法律又はこの法律に基づく命令の規定に違反していないと認めるときは、開発許可をしなければならない。
 一~十四 (略)
2~8 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平7.3.23)は、「行政機関等が右の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。」とした上で、「同意を拒否する行為が、国民の権利ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものであると解することはできない。」として、処分性を否定している。

(H27 予備 第19問 イ)
都市計画法は開発行為による影響を受ける公共施設の管理者の同意を得ることを開発許可申請の要件としているが、公共施設の管理者が同意を拒否する行為自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえず、当該同意を拒否する行為には処分性は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最判平7.3.23)、「行政機関等が右の同意を拒否する行為は、公共施設の適正な管理上当該開発行為を行うことは相当でない旨の公法上の判断を表示する行為ということができる。この同意が得られなければ、公共施設に影響を与える開発行為を適法に行うことはできないが、これは、法が前記のような要件を満たす場合に限ってこのような開発行為を行うことを認めた結果にほかならないのであって、右の同意を拒否する行為それ自体は、開発行為を禁止又は制限する効果をもつものとはいえない。」とした上で、「公共施設の管理者である行政機関等が法32条所定の同意を拒否する行為は、抗告訴訟の対象となる処分には当たらない。」としている。
総合メモ

登記等を受けた者が登録免許税法31条2項に基づいてした請求に対する登記機関の拒否通知 最一小判平成17年4月14日

概要
登記等を受けた者が登録免許税法31条2項に基づいてした請求に対する登記機関の拒否通知は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができるという手続上の地位を否定する法的効果を有するから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:登記等を受けた者が登録免許税法31条2項に基づいてした請求に対する登記機関の拒否通知は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか。

判旨:「登録免許税については、納税義務は登記の時に成立し、納付すべき税額は納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで確定する(国税通則法(平成11年法律第10号による改正前のもの。以下同じ。)15条2項14号、3項6号)。そこで、登録免許税の納税義務者は、過大に登録免許税を納付して登記等を受けた場合には、そのことによって当然に還付請求権を取得し、同法56条、74条により5年間は過誤納金の還付を受けることができるのであり(登録免許税法31条6項4号参照)、その還付がされないときは、還付金請求訴訟を提起することができる。 この点につき登録免許税法31条1項は、同項各号のいずれかに該当する事実があるときは、登記機関が職権で遅滞なく所轄税務署長に過誤納金の還付に関する通知をしなければならないことを規定している。これは、登録免許税については、登記等をするときに登記機関がその課税標準及び税額の認定をして登録免許税の額の納付の事実の確認を行うこととしていることに対応する規定であり、登記機関が職権で所轄税務署長に対して過誤納金の存在及びその額を通知することとし、これにより登録免許税の過誤納金の還付が円滑かつ簡便に行われるようにすることを目的とする。そして、同条2項は、登記等を受けた者が登記機関に申し出て上記の通知をすべき旨の請求をすることができることとし、登記等を受けた者が職権で行われる上記の通知の手続を利用して簡易迅速に過誤納金の還付を受けることができるようにしている。 同条1項及び2項の趣旨は、上記のとおり、過誤納金の還付が円滑に行われるようにするために簡便な手続を設けることにある。同項が上記の請求につき1年の期間制限を定めているのも、登記等を受けた者が上記の簡便な手続を利用するについてその期間を画する趣旨であるにすぎないのであって、当該期間経過後は還付請求権が存在していても一切その行使をすることができず、登録免許税の還付を請求するには専ら同項所定の手続によらなければならないこととする手続の排他性を定めるものであるということはできない。  このように解さないと、税務署長が登記等を受けた者から納付していない登録免許税の納付不足額を徴収する場合には、国税通則法72条所定の国税の徴収権の消滅時効期間である5年間はこれを行うことが可能であるにもかかわらず、登録免許税の還付については、同法74条所定の還付金の消滅時効期間である5年間が経過する前に、1年の期間の経過によりその還付を受けることができなくなることとなり、納付不足額の徴収と権衡を失するものといわざるを得ない。 なお、申告納税方式の国税については、納税義務者が、自己の管理、支配下において生じた課税の根拠等となる事実に基づき、自己の責任で行う確定申告により納付すべき税額が確定するという原則が採られているため、納税申告書に記載した課税標準等若しくは税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと又は当該計算に誤りがあったことにより、当該申告書の提出により納付すべき税額が過大であるときなどには、当該申告書に係る国税の法定申告期限から1年以内に限り、税務署長に対し、更正をすべき旨の請求をすることができるのであって、上記期間を超えて上記の請求をすることができるのはやむを得ない理由がある場合に限られることとされている(国税通則法23条1項及び2項)。これは、申告納税方式の下では、自己の責任において確定申告をするために、その誤りを是正するについて法的安定の要請に基づき短期の期間制限を設けられても、納税義務者としてはやむを得ないことであるということができるからである。これに対し、登録免許税は、納税義務は登記の時に成立し、納付すべき税額は納税義務の成立と同時に特別の手続を要しないで確定するのであるから、登録免許税法31条2項所定の請求は、申告納税方式の国税について定める国税通則法23条所定の更正の請求とはその前提が異なるといわざるを得ず、これらを同列に論ずることはできない。 ちなみに、同法70条は、申告納税方式の国税について行うことがある更正、決定等について所定の場合に応じた期間制限を定めているのであり、更正については、偽りその他不正の行為により税額を免れたような場合を除くと、その更正に係る国税の法定申告期限から3年を経過した日以後においては、更正をすることができないこととしている(同条1項)。 以上のとおり、登録免許税法31条2項は、登録免許税の還付を請求するには専ら上記の請求の手続によるべきであるとする手続の排他性を規定するものということはできない。したがって、登記等を受けた者は、過大に登録免許税を納付した場合には、同項所定の請求に対する拒否通知の取消しを受けなくても、国税通則法56条に基づき、登録免許税の過誤納金の還付を請求することができるものというべきである。 そうすると、同項が登録免許税の過誤納金の還付につき排他的な手続を定めていることを理由に、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解することはできないといわざるを得ない。 しかしながら、上述したところにかんがみると、登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 司法 第31問 ウ)
過大に登録免許税を納付して登記等を受けた者が、登録免許税法に基づいて、登記機関に対し税務署長への還付通知を行うよう請求した事例において、登記機関が当該請求を拒否する旨の通知を行った場合、当該拒否通知は、登記等を受けた者に対して簡易迅速に還付を受ける手続を利用することができる地位を否定する法的効果を有するから、処分性が認められるものといえる。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.4.14)は、「登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。

(H29 予備 第19問 エ)
国に対して過誤納金の還付に係る請求権の存在を主張して給付の訴えを提起することができる場合であっても、当該請求権に係る手続上の地位を否定する内容の行政庁の拒否通知を対象とする取消訴訟を提起して、当該請求権の存否を争えることがある。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.4.14)は、「登録免許税の納税義務者は、過大に登録免許税を納付して登記等を受けた場合には、そのことによって当然に還付請求権を取得し、同法56条、74条により5年間は過誤納金の還付を受けることができるのであり(登録免許税法31条6項4号参照)、その還付がされないときは、還付金請求訴訟を提起することができる。」として、給付の訴えを提起することができる場合であることを示した上で、「登録免許税法31条2項は、登記等を受けた者に対し、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができる地位を保障しているものと解するのが相当である。そして、同項に基づく還付通知をすべき旨の請求に対してされた拒否通知は、登記機関が還付通知を行わず、還付手続を執らないことを明らかにするものであって、これにより、登記等を受けた者は、簡易迅速に還付を受けることができる手続を利用することができなくなる。そうすると、上記の拒否通知は、登記等を受けた者に対して上記の手続上の地位を否定する法的効果を有するものとして、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」として、行政庁の拒否通知の処分性を肯定している。
総合メモ

薬事法の承認 最二小判平成11年10月22日

概要
薬事法の承認は、医薬品の有効性、安全性を公認する行政庁の行為であるが、これによって、その承認の申請者に製造業等の許可を受け得る地位を与えるものであるから、申請者に対する行政処分としての性質を有するものということができる。また、承認の効力は、特別の定めがない限り、当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に発生すると解するのが相当である。
判例
事案:特許権を有するXが、その特許の承認事項一部変更の申請をしてから承認されるまでの約2年について、発明の実施をすることができなかったことを理由に、その期間分、上記特許権の期間の延長登録出願をしたが、拒絶査定を受けた。この拒絶査定の取消訴訟において、行政行為としての薬事法の承認の効力が生じる時期が問題となった。

判旨:「特許制度は、特許権者に業として特許発明を実施する権利を専有することを認めるとともに、特許権の存続期間を法定しているところ、旧法67条3項は、特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による処分を受けることが必要であるためにその特許発明の実施をすることが2年以上できなかったときは、5年を限度として特許権の存続期間を延長することを認めている。 同項の延長登録の理由となる処分は政令で定めるものに限られるところ、薬事法所定の医薬品の製造承認及び輸入承認並びにこれらの承認事項一部変更承認(以下、これらを『承認』という。)はこれに当たる(特許法施行令1条の3)。
 医薬品の製造又は輸入を業として行うためには、薬事法に基づく許可を受けなければならないが(薬事法12条、22条)、その許可の申請者が、製造又は輸入しようとする医薬品につき、承認を受けていないときは、その品目について右許可を受けることができない(同法13条1項、23条)。承認は、医薬品の有効性、安全性を公認する行政庁の行為であるが、これによって、その承認の申請者に製造業等の許可を受け得る地位を与えるものであるから、申請者に対する行政処分としての性質を有するものということができる。そうすると、承認の効力は、特別の定めがない限り、当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に発生すると解するのが相当である。 そして、関係法令を検討しても承認の告知方法を定めた規定は存在しないが、薬事法14条1項、13条1項等の文理からすれば、告知に関する規定がないことをもって、同法が、承認について申請者への告知を不要としているものとは解されず、他に申請者への到達なしに承認の効力が生ずることをうかがわせる定めはない。 また、特許権の存続期間の延長に関する特許法の諸規定(旧法67条3項、67条の2第3項等)も、延長登録の理由となる処分はその処分が相手方に到達した時に効力を生ずることを前提としているものと解される。 したがって、延長登録の理由となる処分としての承認は、申請者に到達した時にその効力が発生するものというべきである。 右のように、延長登録の理由となる処分である薬事法所定の承認が申請者に到達した時に、承認の効力が生じ、承認を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができない状態が解除されることになるから、その効力が生じた日は、旧法67条3項、67条の3第1項4号所定の処分を受けることが必要であるために特許発明の実施をすることができなかった期間には含まれず、右期間の終期は、承認が申請者に到達した日の前日となる。 以上のとおりであるから、旧法67条の3第1項4号にいう『特許発明の実施をすることができなかった期間』は、医薬品に関しては、承認を受けるのに必要な試験を開始した日又は特許権の設定登録の日のうちのいずれか遅い方の日から、承認が申請者に到達することにより処分の効力が発生した日の前日までの期間であると解すべきものである。  したがって、本件承認がサンド薬品株式会社に到達した日を確定することなく、本件承認書に記載された日付である平成3年6月28日の前日をもって本件特許発明の実施をすることができなかった期間の終期と解し、本件出願が旧法67条の3第1項4号に該当することを理由に本件出願を拒絶した本件審決は、違法であって、取り消されるべきものである。」
過去問・解説
(R1 予備 第14問 ア)
行政行為の効力が生ずるのは、特段の定めのない限り、相手方が現実に当該行政行為を了知したか、当該行政行為が相手方の了知し得べき状態に置かれたときである。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.10.22)は、「承認は、医薬品の有効性、安全性を公認する行政庁の行為であるが、これによって、その承認の申請者に製造業等の許可を受け得る地位を与えるものであるから、申請者に対する行政処分としての性質を有する…。」とした上で、「承認の効力は、特別の定めがない限り、当該承認が申請者に到達した時、すなわち申請者が現実にこれを了知し又は了知し得べき状態におかれた時に発生する…。」としている。
総合メモ

源泉徴収による所得税についての納税の告知 最一小判昭和45年12月24日

概要
源泉徴収による所得税についての納税の告知は、確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(国政通則法(以下「法」という。)76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうる。
判例
事案:納税告知処分により納付した源泉徴収所得税について、源泉徴収義務者(支払者)の納税義務者(受給者)に対する支払の請求が認容された。

判旨:「一般に、納税の告知は、法36条所定の場合に(なお、資産再評価法71条4項参照)、国税徴収手続の第1段階をなすものとして要求され、滞納処分の不可欠の前提となるものであり、また、その性質は、税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって(ただし、賦課課税方式による場合において法32条1項1号に該当するときは、納税の告知が、同時に賦課決定の通知として、税額確定の効果をあわせもつ例外の場合にあたる)、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができるものと解される。けだし、右の納税の告知に先だって、税額の確定(およびその前提となる納税義務の成立の確認)が、納税者の申告または税務署長の処分によってなされるわけではなく、支払者が納税義務の存否または範囲を争ううえで、障害となるべきものは存しないからである。 以上のとおり、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、課税処分ではなく徴収処分であって、支払者の納税義務の存否・範囲は右処分の前提問題たるにすぎないから、支払者においてこれに対する不服申立てをせず、または不服申立てをしてそれが排斥されたとしても、受給者の源泉納税義務の存否・範囲にはいかなる影響も及ぼしうるものではない。したがって、受給者は、源泉徴収による所得税を徴収されまたは期限後に納付した支払者から、その税額に相当する金額の支払を請求されたときは、自己において源泉納税義務を負わないことまたはその義務の範囲を争って、支払者の請求の全部または一部を拒むことができるものと解される(支払者が右の徴収または納付の時以後において受給者に支払うべき金額から右税額相当額を控除したときは、その全部または一部につき源泉納税義務のないことを主張する受給者は、支払者において法律上許容されえない控除をなし、その残額のみを支払ったのは債務の一部不履行であるとして、当該控除額に相当する債務の履行を請求することができる)。 支払者は、一方、納税の告知に対する抗告訴訟において、その前提問題たる納税義務の存否または範囲を争って敗訴し、他方、受給者に対する税額相当額の支払請求訴訟(または受給者より支払者に対する控除額の支払請求訴訟)において敗訴することがありうるが、それは、納税の告知が課税処分ではなく、これに対する抗告訴訟が支払者の納税義務また従って受給者の源泉納税義務の存否・範囲を訴訟上確定させうるものでない故であって、支払者は、かかる不利益を避けるため、右の抗告訴訟にあわせて、またはこれと別個に、納税の告知を受けた納税義務の全部または一部の不存在の確認の訴えを提起し、受給者に訴訟告知をして、自己の納税義務(受給者の源泉納税義務)の存否・範囲の確認について、受給者とその責任を分かつことができる。 本件において原判決の確定した事実関係中、中川税務署長が被上告会社に対し、昭和39年3月10日、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損を上告人らに対する役員賞与と認定して、源泉徴収による所得税の本税ならびに不納付加算税(旧源泉徴収加算税)および旧利子税の支払方を請求し、また、同年8月14日新利子税の支払方を請求したというのは、以下、本税の関係のみについていえば(その余の関係については後述)、所轄税務署長が被上告会社に対し、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損につき上告人らより徴収して納付すべき所得税の納付がないとして、これを被上告会社より徴収するため、納税の告知(法36条)をしたことをいうのであり、原判決がこれを指して(課税決定)といい、また(所得税の決定)というのは、納税の告知の法律的性質を誤解したものといわなければならない。 しかしながら、支払者たる被上告会社が納税の告知(徴収処分)に対して、行政上の不服申立てを適切に行なわず、また、抗告訴訟を提起しなかったとしても、それが受給者たる上告人らの源泉納税義務の存否および範囲いかんにつき、なんら影響を及ぼすものでないことは、前記に説示するところによって明らかであって、上告人らは、被上告会社に対する納税の告知の行政処分としての確定と無関係に、上告人らの源泉納税義務(また従って被上告会社の納税義務)の不存在を主張して、被上告会社の本訴請求を争うことができるのである。現に、上告人らは原審において、源泉納税義務の不存在を主張して排斥されたものであり、被上告会社が納税の告知を受けながら、これを上告人らに知らせることのないまま行政処分として確定させたとしても、なんら上告人らの権利・利益を侵害したものということはできないのである。」
過去問・解説
(R4 予備 第19問 ア)
税務署長が源泉徴収による所得税について国税通則法第36条第1項の規定に基づいてする納税の告知は、法令の規定に従い自動的に税額が確定した国税債権につき納期限を指定して履行を請求する行為であり、税額を確定する効力を有するものではないが、法令の規定によって確定した税額がいくらであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであって、処分性が認められる。

【参照条文】国税通則法
(納税の告知)
第36条 税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞納処分費を除く。次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない。
 一 (略)
 二 源泉徴収等による国税でその法定納期限までに納付されなかったもの
 三、四 (略)
2 前項の規定による納税の告知は、税務署長が、政令で定めるところにより、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行う。ただし、担保として提供された金銭をもって消費税等を納付させる場合その他政令で定める場合には、納税告知書の送達に代え、当該職員に口頭で当該告知をさせることができる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭45.12.24)は、「一般に、納税の告知は、…税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって…、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができる…。」としている。
総合メモ

道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告 最一小判昭和57年7月15日

概要
道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告があっても、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、その者が任意に反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。したがって、当該通告は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であって、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するということを内容とする、道路交通法127条1項の規定に基づく反則金納付の通告の取消訴訟において、当該通告が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であって、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものであり、これによって、大量に発生する車両等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化を図ろうとしたものである。 このような見地から、道路交通法は、反則行為に関する処理手続の特例として、警察官において、反則者があると認めるときは、その者に対し、すみやかに反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別等を告知し(126条1項)、警察官から報告を受けた警察本部長は、告知を受けた者が当該告知に係る種別に属する反則行為をした反則者であると認めるときは、その者に対し、当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付を書面で通告し(127条1項)、通告を受けた者は、反則行為に関する処理手続の特例の適用を受けようとする場合には、当該通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に通告に係る反則金を国に対して納付しなければならず(128条1項、125条3項)、右反則金を納付した者は、当該通告の理由となった行為に係る事件について、公訴を提起されないことになり(128条2項)、反則者は、当該反則行為についてその者が当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付の通告を受け、かつ、前記10日の期間が経過した後でなければ、当該反則行為に係る事件について、公訴を提起されないこと(130条)等を定めている。 右のような交通反則通告制度の趣旨とこれを具体化した道路交通法の諸規定に徴すると、反則行為は本来犯罪を構成する行為であり、したがってその成否も刑事手続において審判されるべきものであるが、前記のような大量の違反事件処理の迅速化の目的から行政手続としての交通反則通告制度を設け、反則者がこれによる処理に服する途を選んだときは、刑事手続によらないで事案の終結を図ることとしたものと考えられる。道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下『通告』という。)があっても、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。してみると、道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によってその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによって開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。もしそうでなく、右のような抗告訴訟が許されるものとすると、本来刑事手続における審判対象として予定されている事項を行政訴訟手続で審判することとなり、また、刑事手続と行政訴訟手続との関係について複雑困難な問題を生ずるのであって、同法がこのような結果を予想し、これを容認しているものとは到底考えられない。」
過去問・解説
(H21 司法 第26問 ア)
道路交通法第125条第1項に定める反則行為は、本来犯罪を構成する行為であり、その成否は刑事手続において審判されるべきものであるが、法は、大量の違反事件を迅速に処理する目的から、交通反則通告制度を設けている。

【参照条文】道路交通法
第125条 この章(注1)において「反則行為」とは、前章(注2)の罪に当たる行為のうち別表第二の上欄に掲げるものであつて、車両等(中略)の運転者がしたものをいい、その種別は、政令で定める。
 (注1)第9章「販促行為に関する処理手続きの特例」を指す。
 (注2)第8章「罰則」を指す。
2 この章において「反則者」とは、反則行為をした者であって、次の各号のいずれかに該当する者以外のものをいう。
 一~三 (略)
3 この章において「反則金」とは、反則者がこの章の規定の適用を受けようとする場合に国に納付すべき金銭をいい、その額は、別表第2に定める金額の範囲内において、反則行為の種別に応じ政令で定める。
第126条 警察官は、反則者があると認めるときは、次に掲げる場合を除き、その者に対し、速やかに、反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別並びにその者が次条第1項前段の規定による通告を受けるための出頭の期日及び場所を書面で告知するものとする。(以下略)
 一、二 (略)
2 (略)
3 警察官は、第1項の規定による告知をしたときは、当該告知に係る反則行為が行われた地を管轄する都道府県警察の警察本部長に速やかにその旨を報告しなければならない。(以下略)
4 (略)
第127条 警察本部長は、前条第3項又は第4項の報告を受けた場合において、当該報告に係る告知を受けた者が当該告知に係る種別に属する反則行為をした反則者であると認めるときは、その者に対し、理由を明示して当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付を書面で通告するものとする。(以下略)
2、3 (略)
第128条 前条第1項又は第2項後段の規定による通告に係る反則金(中略)の納付は、当該通告を受けた日の翌日から起算して10日以内(中略)に、政令で定めるところにより、国に対してしなければならない。
2 前項の規定により反則金を納付した者は、当該通告の理由となった行為に係る事件について、公訴を提起されず、又は家庭裁判所の審判に付されない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.7.17)は、「交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であって、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものであり、これによって、大量に発生する車両等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化を図ろうとしたものである。」としている。

(H21 司法 第26問 イ)
道路交通法第127条第1項に定める反則金の納付を通告する手続は、行政手続である。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.7.17)は、「交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であって、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかったときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものであり、これによって、大量に発生する車両等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化を図ろうとしたものである。」として、道路交通法第127条第1項に定める反則金の納付を通告する手続が刑事手続ではないことを示している。

(H21 司法 第26問 ウ)
道路交通法第127条第1項の規定による通告があった場合、これを受けた者は反則金を支払う法的義務を負うことになる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.7.17)は、「道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下『通告』という。)があっても、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。」としている。
したがって、道路交通法第127条第1項の規定による通告があったとしても、反則金を支払う法的義務を負うことにはならない。

(H21 司法 第26問 エ)
道路交通法第127条第1項の規定による通告を受けた者は、当該通告の理由となった反則行為の不成立を主張しようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときに、これによって開始された刑事手続において裁判所の審判を求めるべきである。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.7.17)は、「道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によってその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによって開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしている…。」としている。

(R2 予備 第18問 イ)
行政庁が相手方に対して一定の事項を通知する行為につき、処分性が認められることがある。例えば、道路交通法に基づく反則金の納付の通告は、これに従わない場合には刑事手続が開始され、実際上反則金の納付を余儀なくされることから、処分性が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.7.15)は、「道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下『通告』という。)があっても、これにより通告を受けた者において通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によって刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となった反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。してみると、道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となった反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によってその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによって開始された刑事手続の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしている…。」として、通告の処分性を否定している。
したがって、実際上反則金の納付を余儀なくされることはないから、処分性は認められない。
総合メモ

市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為 最一小判平成11年1月21日

概要
市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為について、住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼすものではなく、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:市町村長が住民票に世帯主との続柄を記載する行為の取消訴訟、及びそれを原因とする損害賠償請求訴訟において、市町村長の上記行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「市町村長が住民基本台帳法7条に基づき住民票に同条各号に掲げる事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない。もっとも、同法15条1項は、選挙人名簿の登録は住民基本台帳に記載されている者で選挙権を有するものについて行うと規定し、公職選挙法21条1項も、右登録は住民票が作成された日から引き続き3箇月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うと規定しており、これらの規定によれば、住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為は、その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを決定付けるものであって、その者は選挙人名簿に登録されない限り原則として投票をすることができない(同法42条1項)のであるから、これに法的効果が与えられているということができる。しかし、住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼさないことが明らかであり、住民票に右続柄を記載する行為が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はない。したがって、住民票に世帯主との続柄を記載する行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第31問 イ)
市町村長が住民票に住民基本台帳法所定の事項を記載する行為は、元来、いわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではないが、同法及び公職選挙法の規定によれば、住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為は、その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを決定付けるものであって、その者は選挙人名簿に登録されない限り原則として投票することができないのであるから、同行為には法的効果が与えられているといえる。そして、住民票上、住民の氏名等の記載と世帯主との続柄の記載とが一体となっていることからすると、住民票に世帯主との続柄を記載する行為についても、処分性が認められるものといえる。

(正答)

(解説)
判例(最判平11.1.21)は、「市町村長が住民基本台帳法7条に基づき住民票に同条各号に掲げる事項を記載する行為は、元来、公の権威をもって住民の居住関係に関するこれらの事項を証明し、それに公の証拠力を与えるいわゆる公証行為であり、それ自体によって新たに国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定する法的効果を有するものではない。もっとも、同法15条1項は、選挙人名簿の登録は住民基本台帳に記載されている者で選挙権を有するものについて行うと規定し、公職選挙法21条1項も、右登録は住民票が作成された日から引き続き3箇月以上当該市町村の住民基本台帳に記録されている者について行うと規定しており、これらの規定によれば、住民票に特定の住民の氏名等を記載する行為は、その者が当該市町村の選挙人名簿に登録されるか否かを決定付けるものであって、その者は選挙人名簿に登録されない限り原則として投票をすることができない(同法42条1項)のであるから、これに法的効果が与えられているということができる。」としている。
しかし、本判例は続けて、「住民票に特定の住民と世帯主との続柄がどのように記載されるかは、その者が選挙人名簿に登録されるか否かには何らの影響も及ぼさないことが明らかであり、住民票に右続柄を記載する行為が何らかの法的効果を有すると解すべき根拠はない。」として、記載行為の処分性を否定している。
したがって、住民票に世帯主との続柄を記載する行為については、処分性が認められない。
総合メモ

子の住民票の記載を求める申出に対する記載しない旨の応答 最二小判平成21年4月17日

概要
出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
判例
事案:出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し特別区の区長がした上記記載をしない旨の応答は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか。

判旨:「上告人子につき住民票の記載をすることを求める上告人父の申出は、住民基本台帳法(以下『法』という。)の規定による届出があった場合に市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長にこれに対する応答義務が課されている(住民基本台帳法施行令(以下『令』という。)11条参照)のとは異なり、申出に対する応答義務が課されておらず、住民票の記載に係る職権の発動を促す法14条2項所定の申出とみるほかないものである。したがって、本件応答は、法令に根拠のない事実上の応答にすぎず、これにより上告人子又は上告人父の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しないと解される…。そうすると、本件応答の取消しを求める上告人子の訴えは不適法として却下すべきである。」
過去問・解説
(H24 司法 第31問 ア)
市町村の長が住民基本台帳法に基づき同法所定の氏名等の事項を住民票に記載する行為には、処分性が認められるから、出生した子につき住民票の記載を求める親からの申出に対し市町村の長がした当該記載をしない旨の応答には、処分性が認められるものといえる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.4.17)は、「上告人子につき住民票の記載をすることを求める上告人父の申出は、住民基本台帳法(以下『法』という。)の規定による届出があった場合に市町村(特別区を含む。以下同じ。)の長にこれに対する応答義務が課されている(住民基本台帳法施行令(以下『令』という。)11条参照)のとは異なり、申出に対する応答義務が課されておらず、住民票の記載に係る職権の発動を促す法14条2項所定の申出とみるほかないものである。したがって、本件応答は、法令に根拠のない事実上の応答にすぎず、これにより上告人子又は上告人父の権利義務ないし法律上の地位に直接影響を及ぼすものではないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当しないと解される…。そうすると、本件応答の取消しを求める上告人子の訴えは不適法として却下すべき…。」としており、市町村の長がした当該記載をしない旨の応答に処分性が認められないことを示しているものの、氏名等の事項を住民票に記載する行為の処分性には言及していない。
総合メモ

医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告 最二小判平成17年7月15日

概要
行政指導であっても、これに従わない場合に、相当程度の確実さをもって不利益な後続処分が予定されている場合には、抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる場合がある。そして、医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告は、「行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為」に当たる。
判例
事案:医療法(平成9年法律第125号による改正前のもの)30条の7の規定に基づき都道府県知事が病院を開設しようとする者に対して行う病院開設中止の勧告の取消訴訟において、当該勧告が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。
 なお、事件当時は、医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止勧告について、通達により、勧告不服従が健康保険法43条の3第2項の規定する保険医療機関の指定の拒否事由に該当すると定められていたが、平成10年の健康保険法改正により、勧告に従わずに開設された病院について保健医療機関の指定を拒否できる旨が明文化された。
判旨:「医療法は、病院を開設しようとするときは、開設地の都道府県知事の許可を受けなければならない旨を定めているところ(7条1項)、都道府県知事は、一定の要件に適合する限り、病院開設の許可を与えなければならないが(同条3項)、医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合には、都道府県医療審議会の意見を聴いて、病院開設申請者等に対し、病院の開設、病床数の増加等に関し勧告することができる(30条の7)。そして、医療法上は、上記の勧告に従わない場合にも、そのことを理由に病院開設の不許可等の不利益処分がされることはない。 他方、健康保険法(平成10年法律第109号による改正前のもの)43条の3第2項は、都道府県知事は、保険医療機関等の指定の申請があった場合に、一定の事由があるときは、その指定を拒むことができると規定しているが、この拒否事由の定めの中には、『保険医療機関等トシテ著シク不適当ト認ムルモノナルトキ』との定めがあり、昭和62年保険局長通知において、『医療法第30条の7の規定に基づき、都道府県知事が医療計画達成の推進のため特に必要があるものとして勧告を行ったにもかかわらず、病院開設が行われ、当該病院から保険医療機関の指定申請があった場合にあっては、健康保険法43条の3第23項に規定する "著シク不適当ト認ムルモノナルトキ" に該当するものとして、地方社会保険医療協議会に対し、指定拒否の諮問を行うこと』とされていた(なお、平成10年法律第109号による改正後の健康保険法(平成11年法律第87号による改正前のもの)43条の3第4項2号は、医療法30条の7の規定による都道府県知事の勧告を受けてこれに従わない場合には、その申請に係る病床の全部又は一部を除いて保険医療機関の指定を行うことができる旨を規定するに至った。)。 上記の医療法及び健康保険法の規定の内容やその運用の実情に照らすと、医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。このような医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告の保険医療機関の指定に及ぼす効果及び病院経営における保険医療機関の指定の持つ意義を併せ考えると、この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たると解するのが相当である。後に保険医療機関の指定拒否処分の効力を抗告訴訟によって争うことができるとしても、そのことは上記の結論を左右するものではない。 したがって、本件勧告は、行政事件訴訟法3条2項の『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たるというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第25問 イ)
判例(最判平17.7.15)によれば、ある行政機関の行為が、これを規定する法律において相手方が任意に従うことを期待してされる行政指導として定められている場合には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解されることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.7.15)は、「医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。」とした上で、「本件勧告は、行政事件訴訟法3条2項の『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たる…。」として、行政指導であっても処分性が認められうることを示している。

(H25 共通 第31問 ア)
医療法に基づく病院開設中止の勧告(以下「中止勧告」という。)が抗告訴訟の対象としての行政処分に当たるかどうかについて判示した最高裁判所平成17年7月15日第二小法廷判決(民集59巻6号1661頁)は、中止勧告は行政指導に当たるが、これに従わない場合には事実上病院開設の許可が受けられなくなることを、その処分性を認める根拠の一つとしている。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.7.15)は、「医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。」とした上で、「いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。」としている。
そうすると、中止勧告に従わない場合、保険医療機関の指定を受けることができないため、開設しようとする者は、自主的にその開設を断念せざるを得なくなるが、病院開設の許可を得ることは妨げられない。

(H25 共通 第31問 イ)
医療法に基づく病院開設中止の勧告(以下「中止勧告」という。)が抗告訴訟の対象としての行政処分に当たるかどうかについて判示した最高裁判所平成17年7月15日第二小法廷判決(民集59巻6号1661頁)は、中止勧告に従わないことなどを保険医療機関の指定の拒否事由とする通達があり、中止勧告に従わない場合には相当程度の確実さをもって保険医療機関の指定を受けることができなくなること、その結果、国民皆保険制度の下では、病院の開設自体を断念せざるを得なくなることを考慮して、中止勧告の処分性を認めたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.7.15)は、「病院開設中止の勧告…に従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。」とした上で、「この勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たる…。」としている。

(H25 共通 第31問 ウ)
医療法に基づく病院開設中止の勧告(以下「中止勧告」という。)が抗告訴訟の対象としての行政処分に当たるかどうかについて判示した最高裁判所平成17年7月15日第二小法廷判決(民集59巻6号1661頁)によれば、中止勧告に処分性が認められ、抗告訴訟の対象とすることができる以上、中止勧告後にされた保険医療機関の指定拒否処分を抗告訴訟の対象とすることはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.7.15)は、「勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たる…。」とした上で、「後に保険医療機関の指定拒否処分の効力を抗告訴訟によって争うことができるとしても、そのことは上記の結論を左右するものではない。」としている。
したがって、保険医療機関の指定拒否処分も抗告訴訟の対象とすることができうる。

(H30 予備 第20問 ウ)
病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているものの、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものであり、その結果、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになるから、上記勧告は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.7.15)は、「医療法30条の7の規定に基づく病院開設中止の勧告は、医療法上は当該勧告を受けた者が任意にこれに従うことを期待してされる行政指導として定められているけれども、当該勧告を受けた者に対し、これに従わない場合には、相当程度の確実さをもって、病院を開設しても保険医療機関の指定を受けることができなくなるという結果をもたらすものということができる。そして、いわゆる国民皆保険制度が採用されている我が国においては、健康保険、国民健康保険等を利用しないで病院で受診する者はほとんどなく、保険医療機関の指定を受けずに診療行為を行う病院がほとんど存在しないことは公知の事実であるから、保険医療機関の指定を受けることができない場合には、実際上病院の開設自体を断念せざるを得ないことになる。」とした上で、「本件勧告は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たる…。」としている。
総合メモ

町営水道事業の水道料金を改定する条例の制定行為 最二小判平成18年7月14日

概要
①普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。
②普通地方公共団体の住民ではないが、その区域内に事務所、事業所、家屋敷等を有し、当該普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用について、当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、地方自治法244条3項に違反する。
③普通地方公共団体が営む水道事業の水道料金を定めた条例の改正により、当該普通地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金の3.57倍を超える金額とすることなどを内容とする水道料金の増額改定が行われた場合において、上記の別荘に係る給水契約者の基本料金が、当該給水に要する個別原価に基づいて定められたものではなく、給水契約者の水道使用量に大きな格差があるにもかかわらず、別荘以外の給水契約者(ホテル等の大規模施設に係る給水契約者を含む。)の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘に係る給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて定められたものであることなど判示の事情の下では、上記の水道料金の改定をした条例のうち別荘に係る給水契約者の基本料金を改定した部分は、地方自治法244条3項に違反するものとして無効である。
判例
事案:水道料金を改定する条例に対して、別荘給水契約者を差別するものであるとしてその行為の無効確認の訴え、差額分の不当利得または不法行為に基づく請求、未払の者に対する給水停止の禁止を求めた事案において、①普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか、②普通地方公共団体の住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用についての不当な差別的取扱いは地方自治法244条3項に違反するか、③普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例のうち当該普通地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金の3.57倍を超える金額に改定した部分が地方自治法244条3項に違反するかなどが問題となった。

判旨:①「抗告訴訟の対象となる行政処分とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいうものである。本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらないというべきである。」
 ②「普通地方公共団体が経営する簡易水道事業の施設は地方自治法244条1項所定の公の施設に該当するところ、同条3項は、普通地方公共団体は住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならない旨規定している。ところで、普通地方公共団体が設置する公の施設を利用する者の中には、当該普通地方公共団体の住民ではないが、その区域内に事務所、事業所、家屋敷、寮等を有し、その普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる 地位にある者が存在することは当然に想定されるところである。そして、同項が憲法14条1項が保障する法の下の平等の原則を公の施設の利用関係につき具体的に規定したものであることを考えれば、上記のような住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用関係に地方自治法244条3項の規律が及ばないと解するのは相当でなく、これらの者が公の施設を利用することについて、当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは、同項に違反するものというべきである。」
 ③「一般的に、水道事業においては、様々な要因により水道使用量が変動し得る中で最大使用量に耐え得る水源と施設を確保する必要があるのであるから、夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に対し年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるために、別荘給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定すること自体は、水道事業者の裁量として許されないものではない。しかしながら、前記事実関係等によれば、旧高根町の簡易水道事業においては、平成8年度において、水道料金を年間50万円以上支払っている大口需用者が29件あり(記録によれば、これらの大口需用者はいずれも別荘以外の給水契 約者であることがうかがわれる。)、その年間水道使用量は同町の簡易水道事業における総水道使用量の約20.3%に当たり、一方、別荘給水契約者の件数は1324件であり、その年間水道使用量は同町の簡易水道事業における総水道使用量の約4.7%を占めるにすぎないというのである。このように給水契約者の水道使用量に大きな格差があるにもかかわらず、上告人の主張によれば、本件改正条例による水道料金の改定においては、ホテル等の大規模施設に係る給水契約者を含む別荘 以外の給水契約者の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて別荘給水契約者の基本料金が定められたというのである。公営企業として営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきものであり、このような原則に照らせば、上告人の主張に係る本件改正条例における水道料金の設定方法は、本件別表における別荘給水契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではない。また、同町において簡易水道事業のため一 般会計から毎年多額の繰入れをしていたことなど論旨が指摘する諸事情は、上記の 基本料金の大きな格差を正当化するに足りるものではない。 そうすると、本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定は、地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるというほかはない。以上によれば、本件改正条例のうち別荘給水契約者の基本料金を改定した部分は、地方自治法244条3項に違反するものとして無効というべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第31問 ウ)
地方公共団体の水道事業に関して、水道料金の値上げを内容とする「水道事業給水条例」が制定された場合、水道需要者は、同条例の施行によって、その後にされる個別的行政処分を経ることなく、同条例に従って値上げされた水道料金の支払義務を負わされることになるから、同条例の制定行為には、処分性が認められるものといえる。

(正答)

(解説)
判例(最判平18.7.14)は、本肢と同種の事案において、「本件改正条例は、旧高根町が営む簡易水道事業の水道料金を一般的に改定するものであって、そもそも限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく、本件改正条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないから、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分には当たらない…。」としている。
したがって、本条例の施行によっても、その後にされる個別的行政処分を経て、値上げされた水道料金の支払義務を負わされるのであるから、同条例の制定行為には、処分性が認められない。

(H26 司法 第26問 ウ)
水道事業を経営する地方公共団体が水道料金を定めるに当たり、当該地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者とそれ以外の給水契約者との間で基本料金に差異を設けることは、平等原則に反し、許されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平18.7.14)は、「水道事業においては、様々な要因により水道使用量が変動し得る中で最大使用量に耐え得る水源と施設を確保する必要があるのであるから、夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に対し年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるために、別荘給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定すること自体は、水道事業者の裁量として許されないものではない。」とした上で、「公営企業として営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきものであり、このような原則に照らせば、上告人の主張に係る本件改正条例における水道料金の設定方法は、本件別表における別荘給水契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではない。」とした上で、「本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定は、地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるというほかはない。」としている。
したがって、別荘に係る給水契約者とそれ以外の給水契約者との間で基本料金に差異を設けること自体は平等原則に反しない。
総合メモ

建築基準法42条2項所定のいわゆる二項道路の一括指定 最一小判平成14年1月17日

概要
個別的な方法でなく一括指定の方法によるみなし道路の指定であっても、個別の土地に具体的な私権の制限が生ずるため、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:建築基準法42条2項に基づく告示による一括指定の方法によるみなし道路の指定の無効等確認訴訟において、この指定が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「法42条2項は、同条1項各号の道路に該当しない道であっても、法第3章の規定が適用されるに至った時点において、現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁の指定したものは、同項の道路とみなし、その中心線から水平距離2mの線を道路の境界とみなすものとしている。 同条2項の特定行政庁の指定は、同項の要件を満たしている道について、個別具体的に対象となる道を2項道路に指定するいわゆる個別指定の方法でされることがある一方で、本件告示のように、一定の条件に合致する道について一律に2項道路に指定するいわゆる一括指定の方法でされることがある。同項の文言のみからは、一括指定の方法をも予定しているか否かは必ずしも明らかではないが、法の前身というべき市街地建築物法の建築線制度における行政官庁による指定建築線については行政官庁の制定する細則による一括指定もされていたこと、同項の規定は法の適用時点において多数存在していた幅員4m未満の道に面する敷地上の既存建築物を救済する目的を有すること、現に法施行直後から多数の特定行政庁において一括指定の方法による2項道路の指定がされたが、このような指定方法自体が法の運用上問題とされることもなかったことなどを勘案すれば、同項はこのような一括指定の方法による特定行政庁の指定も許容しているものと解することができる。 本件告示は、幅員4m未満1.8m以上の道を一括して2項道路として指定するものであるが、これによって、法第3章の規定が適用されるに至った時点において現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道のうち、本件告示の定める幅員1.8m以上の条件に合致するものすべてについて2項道路としての指定がされたこととなり、当該道につき指定の効果が生じるものと解される。原判決は、特定の土地について個別具体的に2項道路の指定をするものではない本件告示自体によって直ちに私権制限が生じるものではない旨をいう。しかしながら、それが、本件告示がされた時点では2項道路の指定の効果が生じていないとする趣旨であれば、結局、本件告示の定める条件に合致する道であっても、個別指定の方法による指定がない限り、特定行政庁による2項道路の指定がないことに帰することとなり、そのような見解は相当とはいえない。 そして、本件告示によって2項道路の指定の効果が生じるものと解する以上、このような指定の効果が及ぶ個々の道は2項道路とされ、その敷地所有者は当該道路につき道路内の建築等が制限され(法44条)、私道の変更又は廃止が制限される(法45条)等の具体的な私権の制限を受けることになるのである。そうすると、特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。 したがって、本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解すべきである。 そして、本件訴えは、本件通路部分について、本件告示による2項道路の指定の不存在確認を求めるもので、行政事件訴訟法3条4項にいう処分の存否の確認を求める抗告訴訟であり、同法36条の要件を満たすものということができる。」
過去問・解説
(H29 予備 第19問 イ)
森林法に基づく保安林の指定など、人ではなく物を対象とする行政庁の決定は、特定の者を名宛人とするものではないから、取消訴訟の対象となる処分に当たることはない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.9.9)は、森林法に基づく保安林指定解除処分という対物処分について、処分性が認められることを前提として、原告適格及び訴えの利益について判断している。また、別の判例(最判平14.1.17)は、2項道路一括指定という対物処分について、「本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。
したがって、森林法に基づく保安林の指定など、人ではなく物を対象とする行政庁の決定は、特定の者を名宛人とするものではないが、取消訴訟の対象となる処分に当たることがある。

(H30 予備 第20問 ア)
告示により一定の条件に合致する道を一括して道路に指定する方法でされた建築基準法第42条第2項所定のいわゆるみなし道路の指定は、特定の土地について個別具体的にこれを指定するものではなく、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないのであって、これによって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものでないから、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。

【参照条文】建築基準法
(道路の定義)
第42条 (略)
2 この章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員4メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離2メートル(中略)の線をその道路の境界線とみなす。(以下略)
3~6 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.1)は、「特定行政庁による2項道路の指定は、それが一括指定の方法でされた場合であっても、個別の土地についてその本来的な効果として具体的な私権制限を発生させるものであり、個人の権利義務に対して直接影響を与えるものということができる。したがって、本件告示のような一括指定の方法による2項道路の指定も、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。
したがって、不特定多数の者に対して一般的抽象的な基準を定立するものにすぎないとはいえない。また、みなし道路の指定によって直ちに建築制限等の私権制限が生じるものであるから、抗告訴訟の対象となる行政処分に該当する。
総合メモ

土地区画整理事業の事業計画の決定 最大判平成20年9月10日

概要
土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定の後には、換地処分という後続処分が予定されているが、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定の時点でその法的地位に直接的な影響が生ずる。また、換地処分の段階で取消訴訟を提起しても宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難いから、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:土地区画整理法に基づく土地区画整理事業計画の決定そのものには、決定を受けた者の権利を制約する効果が伴わず、後に換地処分があって初めて権利制約が生じるところ、土地区画整理事業計画の決定そのものが抗告訴訟の対象としての行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「市町村は、土地区画整理事業を施行しようとする場合においては、施行規程及び事業計画を定めなければならず(法52条1項)、事業計画が定められた場合においては、市町村長は、遅滞なく、施行者の名称、事業施行期間、施行地区その他国土交通省令で定める事項を公告しなければならない(法55条9項)。そして、この公告がされると、換地処分の公告がある日まで、施行地区内において、土地区画整理事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更若しくは建築物その他の工作物の新築、改築若しくは増築を行い、又は政令で定める移動の容易でない物件の設置若しくはたい積を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならず(法76条1項)、これに違反した者がある場合には、都道府県知事は、当該違反者又はその承継者に対し、当該土地の原状回復等を命ずることができ(同条4項)、この命令に違反した者に対しては刑罰が科される(法140条)。このほか、施行地区内の宅地についての所有権以外の権利で登記のないものを有し又は有することとなった者は、書面をもってその権利の種類及び内容を施行者に申告しなければならず(法85条1項)、施行者は、その申告がない限り、これを存しないものとみなして、仮換地の指定や換地処分等をすることができることとされている(同条5項)。 また、土地区画整理事業の事業計画は、施行地区(施行地区を工区に分ける場合には施行地区及び工区)、設計の概要、事業施行期間及び資金計画という当該土地区画整理事業の基礎的事項を一般的に定めるものであるが(法54条、6条1項)、事業計画において定める設計の概要については、設計説明書及び設計図を作成して定めなければならず、このうち、設計説明書には、事業施行後における施行地区内の宅地の地積(保留地の予定地積を除く。)の合計の事業施行前における施行地区内の宅地の地積の合計に対する割合が記載され(これにより、施行地区全体でどの程度の減歩がされるのかが分かる。)、設計図(縮尺1200分の1以上のもの)には、事業施行後における施行地区内の公共施設等の位置及び形状が、事業施行により新設され又は変更される部分と既設のもので変更されない部分とに区別して表示されることから(平成17年国土交通省令第102号による改正前の土地区画整理法施行規則6条)、事業計画が決定されると、当該土地区画整理事業の施行によって施行地区内の宅地所有者等の権利にいかなる影響が及ぶかについて、一定の限度で具体的に予測することが可能になるのである。そして、土地区画整理事業の事業計画については、いったんその決定がされると、特段の事情のない限り、その事業計画に定められたところに従って具体的な事業がそのまま進められ、その後の手続として、施行地区内の宅地について換地処分が当然に行われることになる。前記の建築行為等の制限は、このような事業計画の決定に基づく具体的な事業の施行の障害となるおそれのある事態が生ずることを防ぐために法的強制力を伴って設けられているのであり、しかも、施行地区内の宅地所有者等は、換地処分の公告がある日まで、その制限を継続的に課され続けるのである。 そうすると、施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。 もとより、換地処分を受けた宅地所有者等やその前に仮換地の指定を受けた宅地所有者等は、当該換地処分等を対象として取消訴訟を提起することができるが、換地処分等がされた段階では、実際上、既に工事等も進ちょくし、換地計画も具体的に定められるなどしており、その時点で事業計画の違法を理由として当該換地処分等を取り消した場合には、事業全体に著しい混乱をもたらすことになりかねない。それゆえ、換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。 以上によれば、市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ、実効的な権利救済を図るという観点から見ても、これを対象とした抗告訴訟の提起を認めるのが合理的である。したがって、上記事業計画の決定は、行政事件訴訟法3条2項にいう『行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為』に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H21 司法 第30問 ア)
最高裁判所の従来の判例は、言わば事業の青写真たるにすぎない一般的抽象的な単なる計画にとどまるなどとして土地区画整理事業計画の決定の処分性を否定していたが、本判決は、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的抽象的なものにすぎなくとも抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるとして判例を変更した。

(正答)

(解説)
従来の判例(最大判平41.2.23)は、「事業計画そのものとしては、…特定個人に向けられた具体的な処分ではなく、いわば当該土地区画整理事業の青写真たるにすぎない一般的・抽象的な単なる計画にとどまるものであって、…争訟の成熟性ないし具体的事件性を欠くものといわなければならない。」として、土地区画整理事業計画の決定の処分性を否定していた。
他方、判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、…土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」として、土地区画整理事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、本判決は、事業計画の決定に伴う法的効果について、一般的抽象的なものにすぎないと捉えていない。

(H21 司法 第30問 イ)
都市計画法に基づき都市計画決定の一つとしてされる工業地域指定の決定の処分性を否定した最高裁判所の判例があるが、本判決の理由に従えば、同指定の決定についても、当該地域内において建築物の建築が制約されるという法的効果が発生するから、処分性が肯定されることになる。

(正答)

(解説)
従来の判例(最判昭57.4.22)は、「都市計画区域内において工業地域を指定する決定…が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。…なお、右地域内の土地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、…右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地域指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとっても格別の不都合は生じないというべきである。」として、工業地域指定の決定の処分性を否定している。
他方、判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」という理由に加え、「換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。」という理由で、土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、後者の判例に従えば、工業地域指定の決定についても、当該地域内において建築物の建築が制約されるという法的効果に加え、その後の処分がなされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難いといえて初めて、処分性が肯定されうる。

(H21 司法 第30問 ウ)
土地改良法に基づく国営又は都道府県営の土地改良事業の事業計画の決定について行政上の不服申立てが認められていることを根拠の一つとして、市町村営の土地改良事業に関し都道府県知事が行う事業施行の認可の処分性を認めた最高裁判所の判例があるが、本判決も、土地区画整理事業計画の決定に行政上の不服申立てが認められていることを理由に処分性を認めた。

(正答)

(解説)
判例(最大判平20.9.10)は、「施行地区内の宅地所有者等は、事業計画の決定がされることによって、前記のような規制を伴う土地区画整理事業の手続に従って換地処分を受けるべき地位に立たされるものということができ、その意味で、その法的地位に直接的な影響が生ずるものというべきであり、事業計画の決定に伴う法的効果が一般的、抽象的なものにすぎないということはできない。」とした上で、「換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。そうすると、事業計画の適否が争われる場合、実効的な権利救済を図るためには、事業計画の決定がされた段階で、これを対象とした取消訴訟の提起を認めることに合理性があるというべきである。」としており、この2つを根拠として土地区画整理事業計画の決定の処分性を肯定している。

(H21 司法 第30問 エ)
都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業の施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされるなど、その法的地位に直接的な影響を受けるとして、当該事業に係る事業計画の決定の処分性を認めた最高裁判所の判例があるが、本判決も、土地区画整理事業の事業計画の施行地区内の宅地所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすとの理由で同事業計画の決定の処分性を認めた。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.11.26)は、「再開発事業計画の決定は、その公告の日から、土地収用法上の事業の認定と同一の法律効果を生ずるものであるから(同法26条4項)、市町村は、右決定の公告により、同法に基づく収用権限を取得するとともに、その結果として、施行地区内の土地の所有者等は、特段の事情のない限り、自己の所有地等が収用されるべき地位に立たされることとなる。…そうであるとすると、公告された再開発事業計画の決定は、施行地区内の土地の所有者等の法的地位に直接的な影響を及ぼすものであって、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」として、都市再開発法に基づく第二種市街地再開発事業に係る事業計画の決定の処分性を肯定している。
そして、その後の判例(最大判平20.9.10)も、「市町村の施行に係る土地区画整理事業の事業計画の決定は、施行地区内の宅地所有者等の法的地位に変動をもたらすものであって、抗告訴訟の対象とするに足りる法的効果を有するものということができ…る。」として、土地区画整理事業の事業計画の処分性を肯定している。

(R2 予備 第18問 ウ)
行政計画に基づき将来具体的な事業が施行されることが予定されている、いわゆる非完結型の計画につき、土地区画整理事業の事業計画の決定は、後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき、事件の成熟性が欠けることから、処分性は認められない。

(正答)

(解説)
非完結型の計画(計画決定後に特定の事業を施行することを予定している計画)について、判例(最判平20.9.10)は、「事業計画決定によって、建築制限を伴う土地区画整理事業の手続に従って、換地処分を受けるべき地位に立たされるという意味で、法的地位に直接具体的な影響が生じる。」とした上で、「換地処分等の取消訴訟において、宅地所有者等が事業計画の違法を主張し、その主張が認められたとしても、当該換地処分等を取り消すことは公共の福祉に適合しないとして事情判決(行政事件訴訟法31条1項)がされる可能性が相当程度あるのであり、換地処分等がされた段階でこれを対象として取消訴訟を提起することができるとしても、宅地所有者等の被る権利侵害に対する救済が十分に果たされるとはいい難い。」として、土地区画整理事業の事業計画の決定の処分性を肯定している。
したがって、後続の仮換地指定や換地処分の取消訴訟によって権利救済の目的が十分達成でき、事件の成熟性が欠けるとはいえず、土地区画整理事業の事業計画の決定にも処分性が認められる。
総合メモ

都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定(用途地域指定)の決定 最一小判昭和57年4月22日

概要
都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定の決定は、抗告訴訟の対象とならない。
判例
事案:都市計画法8条1項1号に基づく工業地域指定の決定の取消訴訟において、当該決定が抗告訴訟の対象となる「行政庁の処分」に当たるかが問題となった。

判旨:「都市計画区域内において工業地域を指定する決定は、都市計画法8条1項1号に基づき都市計画決定の1つとしてされるものであり、右決定が告示されて効力を生ずると、当該地域内においては、建築物の用途、容積率、建ぺい率等につき従前と異なる基準が適用され(建築基準法48条7項、52条1項3号、53条1項2号等)、これらの基準に適合しない建築物については、建築確認を受けることができず、ひいてその建築等をすることができないこととなるから(同法6条4項、5項)、右決定が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。もっとも、右のような法状態の変動に伴い将来における土地の利用計画が事実上制約されたり、地価や土地環境に影響が生ずる等の事態の発生も予想されるが、これらの事由は未だ右の結論を左右するに足りるものではない。なお、右地区内の上地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地区指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されていると解されるから、前記のような解釈をとっても格別の不都合は生じないというべきである。
 右の次第で、本件高度地区指定の決定は、抗告訴訟の対象となる処分にはあたらないと解するのが相当であり、これと同旨の原審の判断は正当であって、原判決に所論の違法はない。」
過去問・解説
(R1 予備 第17問 ア)
都市計画決定としての用途地域の指定は抗告訴訟の対象となる処分には当たらないため、用途地域指定を前提とする建築確認拒否処分に対して建築主が取消訴訟を提起した場合、建築主は当該取消訴訟において当該用途地域指定が違法であることを主張することはできない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.4.22)は、「右地区内の上地上に現実に前記のような建築の制限を超える建物の建築をしようとしてそれが妨げられている者が存する場合には、その者は現実に自己の土地利用上の権利を侵害されているということができるが、この場合右の者は右建築の実現を阻止する行政庁の具体的処分をとらえ、前記の地区指定が違法であることを主張して右処分の取消を求めることにより権利救済の目的を達する途が残されている…。」としている。
したがって、用途地域指定を前提とする建築確認拒否処分に対して建築主が取消訴訟を提起した場合、建築主は当該取消訴訟において当該用途地域指定が違法であることを主張しうる。

(R2 予備 第18問 エ)
当該計画に基づき将来具体的な事業が施行されることが予定されていない、いわゆる完結型の計画につき、都市計画法に基づく用途地域の指定は、当該地域内の土地所有者等に建築制限等の制約を課し、その法的地位に変動をもたらすものであることから、処分性が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判昭57.4.22)は、「都市計画区域内において工業地域を指定する決定…が、当該地域内の土地所有者等に建築基準法上新たな制約を課し、その限度で一定の法状態の変動を生ぜしめるものであることは否定できないが、かかる効果は、あたかも新たに右のような制約を課する法令が制定された場合におけると同様の当該地域内の不特定多数の者に対する一般的抽象的なそれにすぎず、このような効果を生ずるということだけから直ちに右地域内の個人に対する具体的な権利侵害を伴う処分があったものとして、これに対する抗告訴訟を肯定することはできない。」として、処分性を否定している。
したがって、同指定は、その法的地位に変動をもたらすものではなく、処分性が認められない。
総合メモ

市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為 最一小判平成21年11月26日

概要
市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為は、当該保育所の利用関係が保護者の選択に基づき保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり、現に保育を受けている児童及びその保護者は当該保育所において保育の実施期間が満了するまでの間保育を受けることを期待し得る法的地位を有すること、同条例が、他に行政庁の処分を待つことなくその施行により当該保育所廃止の効果を発生させ、入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、上記法的地位を奪う結果を生じさせるものであることなどの事情の下では、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。
判例
事案:Yがその設置する保育所を廃止する条例を制定したことについて、当該保育所で保育を受けていた児童又はその保護者であるXらが、上記条例の制定行為はXらが選択した保育所において保育を受ける権利を違法に侵害するものであるなどと主張して、その取消し等を求めた事案において、市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるかが問題となった。

判旨:「市町村は、保護者の労働又は疾病等の事由により、児童の保育に欠けるところがある場合において、その児童の保護者から入所を希望する保育所等を記載した申込書を提出しての申込みがあったときは、希望児童のすべてが入所すると適切な保育の実施が困難になるなどのやむを得ない事由がある場合に入所児童を選考することができること等を除けば、その児童を当該保育所において保育しなければならないとされている(児童福祉法24条1項~3項)。平成9年法律第74号による児童福祉法の改正がこうした仕組みを採用したのは、女性の社会進出や就労形態の多様化に伴って、乳児保育や保育時間の延長を始めとする多様なサービスの提供が必要となった状況を踏まえ、その保育所の受入れ能力がある限り、希望どおりの入所を図らなければならないこととして、保護者の選択を制度上保障したものと解される。そして、前記のとおり、被上告人においては、保育所への入所承諾の際に、保育の実施期間が指定されることになっている。このように、被上告人における保育所の利用関係は、保護者の選択に基づき、保育所及び保育の実施期間を定めて設定されるものであり、保育の実施の解除がされない限り(同法33条の4参照)、保育の実施期間が満了するまで継続するものである。そうすると、特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。 ところで、公の施設である保育所を廃止するのは、市町村長の担任事務であるが(地方自治法149条7号)、これについては条例をもって定めることが必要とされている(同法244条の2)。条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが、本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得るものということができる。 また、市町村の設置する保育所で保育を受けている児童又はその保護者が、当該保育所を廃止する条例の効力を争って、当該市町村を相手に当事者訴訟ないし民事訴訟を提起し、勝訴判決や保全命令を得たとしても、これらは訴訟の当事者である当該児童又はその保護者と当該市町村との間でのみ効力を生ずるにすぎないから、これらを受けた市町村としては当該保育所を存続させるかどうかについての実際の対応に困難を来すことにもなり、処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。  以上によれば、本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 司法 第28問 イ)
最高裁判所の判例によれば、C市が特定の市立保育所を廃止する条例(以下「条例」という。)を制定した場合において、廃止される保育所で保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間満了まで当該保育所で保育を受けることを期待し得る法的地位を条例により違法に侵害されたと主張して、条例制定行為に対する取消訴訟を適法に提起することができる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「特定の保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者は、保育の実施期間が満了するまでの間は当該保育所における保育を受けることを期待し得る法的地位を有するものということができる。」とした上で、「本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る…。」として、条例制定行為の処分性を肯定している。

(H28 予備 第21問 エ)
最高裁判所は、市の設置する特定の保育所を廃止する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たると判断した根拠の一つとして、取消判決には第三者効が認められていることを挙げている。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「処分の取消判決や執行停止の決定に第三者効(行政事件訴訟法32条)が認められている取消訴訟において当該条例の制定行為の適法性を争い得るとすることには合理性がある。」とした上で、「本件改正条例の制定行為は、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる…。」としている。

(H29 予備 第19問 ア)
条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するが、条例の内容によっては、その制定行為が行政庁の処分と実質的に同視し得るものとして取消訴訟の対象となる。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、「条例の制定は、普通地方公共団体の議会が行う立法作用に属するから、一般的には、抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるものでないことはいうまでもないが、本件改正条例は、本件各保育所の廃止のみを内容とするものであって、他に行政庁の処分を待つことなく、その施行により各保育所廃止の効果を発生させ、当該保育所に現に入所中の児童及びその保護者という限られた特定の者らに対して、直接、当該保育所において保育を受けることを期待し得る上記の法的地位を奪う結果を生じさせるものであるから、その制定行為は、行政庁の処分と実質的に同視し得る…。」として、条例制定行為の処分性を肯定している。

(R4 予備 第18問 イ)
C市がその設置している特定の保育所を廃止する旨の条例を制定したことに対し、当該保育所で現に保育を受けている児童及びその保護者であるDらが当該条例制定行為について取消訴訟を提起したところ、その係属中に、Dらに係る保育の実施期間が満了した場合であっても、当該取消訴訟については、訴えの利益は失われない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.11.26)は、本肢と同種の事案において、「現時点においては、上告人らに係る保育の実施期間がすべて満了していることが明らかであるから、本件改正条例の制定行為の取消しを求める訴えの利益は失われた…。」としている。
したがって、本判例によれば、Dらに係る保育の実施期間が満了した場合、Dらの訴えの利益は消滅する。
総合メモ