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原告適格

既存の公衆浴場営業者 最二小判昭和37年1月19日

概要
既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴えの利益を有する。
判例
事案:公衆浴場行者Xが、Aに対する公衆浴場営業許可処分によって自己の営業権が侵害されるとして、当該処分の無効等確認を求めた事案において、既存の公衆浴場営業者は、第三者に対する公衆浴場営業許可処分の無効確認を求める訴えの利益を有するかが問題となった。

判旨:「公衆浴場法は、公衆浴場の経営につき許可制を採用し、第2条において、『設置の場所が配置の適正を欠く』と認められるときは許可を拒み得る旨を定めているが、その立法趣旨は、『公衆浴場は、多数の国民の日常生活に必要欠くべからざる、多分に公共性を伴う厚生施設である。そして、若しその設立を業者の自由に委せて、何等その偏在及び濫立を防止する等その配置の適正を保つために必要な措置が講ぜられないときは、その偏在により、多数の国民が日常容易に公衆浴場を利用しようとする場合に不便を来たすおそれを保し難く、また、その濫立により、浴場経営に無用の競争を生じその経営を経済的に不合理ならしめ、ひいて浴場の衛生設備の低下等好ましからざる影響を来たすおそれなきを保し難い。このようなことは、上記公衆浴場の性質に鑑み、国民保健及び環境衛生の上から、出来る限り防止することが望ましいことであり、従って、公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠き、その偏在乃至濫立を来たすに至るがごときことは、公共の福祉に反するものであって、この理由により公衆浴場の経営の許可を与えないことができる旨の規定を設け』たのであることは当裁判所大法廷判決の判示するところである…。そして、同条はその第3項において右設置場所の配置の基準については都道府県条例の定めるところに委任し、京都府公衆浴場法施行条例は各公衆浴場との最短距離は250米間隔とする旨を規定している。 これら規定の趣旨から考えると公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定を設けたのは、主として『国民保健及び環境衛生』という公共の福祉の見地から出たものであることはむろんであるが、他面、同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところであって、適正な許可制度の運用によって保護せらるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解するを相当とする。」
過去問・解説
(R3 予備 第18問 イ)
公衆浴場法が設置場所の「配置の適正」を公衆浴場営業許可の要件とする趣旨は、国民保健及び環境衛生の確保のほか、濫立の防止により既存業者の利益を保護する目的をも有するから、既存の公衆浴場業者は、近隣において新規参入を求めてきた第三者に対する上記許可につき、その取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭37.1.19)は、「公衆浴場法が許可制を採用し前述のような規定を設けたのは、主として『国民保健及び環境衛生』という公共の福祉の見地から出たものであることはむろんであるが、他面、同時に、無用の競争により経営が不合理化することのないように濫立を防止することが公共の福祉のため必要であるとの見地から、被許可者を濫立による経営の不合理化から守ろうとする意図をも有するものであることは否定し得ないところであって、適正な許可制度の運用によって保護せらるべき業者の営業上の利益は、単なる事実上の反射的利益というにとどまらず公衆浴場法によって保護せられる法的利益と解する…。」として、既存の公衆浴場業者の原告適格を肯定している。
総合メモ

風営法の委任条例所定の風俗営業制限地区内の居住者 最一小判平成10年12月17日

概要
風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令6条1号イの定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可処分の取消しを求める原告適格を有しない。
判例
事案:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項に基づいてなされたパチンコ屋の営業許可処分について、近隣住民であるXがその取消を求めてした取消訴訟において、風俗営業制限地域居住者に原告適格が認められるかが問題となった。

判旨:「法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする(法1条)。右の目的規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは、困難である。
 また、風俗営業の許可の基準を定める法4条2項2号は、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内に営業所があるときは、風俗営業の許可をしてはならないと規定している。右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。
 ところで、右の法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下『施行令』という。)6条1号ロ及び2号は、特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある特定の施設に着目して、当該施設の周囲おおむね100メートルの区域内の地域を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。この規定は、当該特定の施設の設置者の有する個別的利益を特に保護しようとするものと解されるから、法4条2項2号を受けて右基準に従って定められた風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和59年東京都条例第128号)(以下『施行条例』という。)3条1項2号は、同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保護していると解すべきである(最高裁平成4年(行ツ)第109号同6年9月27日第三小法廷判決・裁判集民事173号111頁参照)。
 これに対し、施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。
 したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」
過去問・解説
(H26 共通 第30問 イ)
①の法令に関する説明を前提にした場合に、②の記述が最高裁判所の判例の内容として正しいものに〇、誤っているものに×を付した場合の組合せを、選びなさい。

①風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第4条第2項第2号は、風俗営業の許可の基準につき、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例(以下「施行条例」という。)で定める地域内に営業所があるときは風俗営業の許可をしてはならないと定め、法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下「施行令」という。)第6条第1号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。

②これらの規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは困難であり、施行令第6条第1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、上記の基準に従って規定された施行条例が定める地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.12.17)は、「右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。」とした上で、「施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めている…。…したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。

(R5 予備 第19問 ウ)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく風俗営業の許可については、同法の委任を受けて定められた政令が「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を条例で風俗営業の制限地域とすべき基準として定めており、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含むと解されるから、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平10.12.17)は、「施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。
したがって、政令は、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含まず、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有しない。
総合メモ

既に一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可又はその更新を受けている者 最三小判平成26年1月28日

概要
市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可又はその更新を受けている者は、当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可処分又は許可更新処分について、その取消訴訟の原告適格を有する。
判例
事案:一般廃棄物収集運搬業又は一般廃棄物処分業の許可処分又は許可更新処分について、既に同許可を受けて事業を営んでいる者が提起した取消訴訟において、当該処分の対象とされた区域につき既にその許可又は許可の更新を受けている者の原告適格が認められるかが問題となった。

判旨:「行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項、最高裁平成16年(行ヒ)第114号同17年12月7日大法廷判決・民集59巻10号2645頁参照)。
 …廃棄物処理法は、廃棄物の適正な収集運搬、処分等の処理をし、生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的として、廃棄物の処理について規制を定めている(同法1条)。市町村は、一般廃棄物について、その区域内における収集運搬及び処分に関する事業の実施をその責務とし、計画的に事業を遂行するために一般廃棄物処理計画を定め、これに従って一般廃棄物の処理を自ら行い、又は市町村以外の者に委託し若しくは許可を与えて行わせるものとされており(廃棄物処理法4条1項、6条、6条の2、7条1項)、市町村以外の者に対する市町村長の一般廃棄物処理業の許可又はその更新については、当該市町村による一般廃棄物の収集運搬又は処分が困難であること(同法7条5項1号、10項1号)が要件とされている。
 上記の一般廃棄物処理計画には、一般廃棄物の発生量及び処理量の見込み(同法6条2項1号)、一般廃棄物の適正な処理及びこれを実施する者に関する基本的事項(同項4号)等を定めるものとされており、一般廃棄物処理業の許可又はその更新については、その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること(同法7条5項2号、10項2号)が要件とされているほか、一般廃棄物の収集運搬及び処分に関する政令で定める基準に従って処理が行われるべきこと(同法6条の2第2項、7条13項)や、施設及び申請者の能力がその事業を的確にかつ継続して行うに足りるものとして環境省令で定める経理的基礎その他の基準に適合するものであること(同法7条5項3号、10項3号、同法施行規則2条の2及び2条の4)が要件とされている。加えて、一般廃棄物処理業の許可又はその更新がされる場合においても、市町村長は、これらの処分の際に生活環境の保全上必要な条件を付すことができ(廃棄物処理法7条11項)、許可業者が同法の規定又は上記の条件に違反したとき等には事業停止命令や許可取消処分をする権限を有しており(同法7条の3、7条の4)、また、許可業者が廃業するには市町村長に届出をしなければならず(同法7条の2第3項)、許可業者が行う事業の料金は、市町村が自ら行う事業と競合する場合には条例で定める上限を超えることはできない(同法7条12項)とされるなど、許可業者は、市町村による所定の規制に服するものとされている。一般廃棄物処理業は、市町村の住民の生活に必要不可欠な公共性の高い事業であり、その遂行に支障が生じた場合には、市町村の区域の衛生や環境が悪化する事態を招来し、ひいては一定の範囲で市町村の住民の健康や生活環境に被害や影響が及ぶ危険が生じ得るものであって、その適正な運営が継続的かつ安定的に確保される必要がある上、一般廃棄物は人口等に応じておおむねその発生量が想定され、その業務量には一定の限界がある。廃棄物処理法が、業務量の見込みに応じた計画的な処理による適正な事業の遂行の確保についての統括的な責任を市町村に負わせているのは、このような事業の遂行に支障を生じさせないためである。
 そして、既存の許可業者によって一般廃棄物の適正な処理が行われており、これを踏まえて一般廃棄物処理計画が作成されている場合には、市町村長は、それ以外の者からの一般廃棄物処理業の許可又はその更新の申請につき、一般廃棄物の適正な処理を継続的かつ安定的に実施させるためには既存の許可業者のみに引き続きこれを行わせるのが相当であり、当該申請の内容が当該一般廃棄物処理計画に適合するものであるとは認められないとして不許可とすることができるものと解される(最高裁平成14年(行ヒ)第312号同16年1月15日第一小法廷判決・裁判集民事213号241頁参照)。このように、市町村が市町村以外の者に許可を与えて事業を行わせる場合においても、一般廃棄物の発生量及び処理量の見込みに基づいてこれを適正に処理する実施主体等を定める一般廃棄物処理計画に適合すること等の許可要件に関する市町村長の判断を通じて、許可業者の濫立等によって事業の適正な運営が害されることのないよう、一般廃棄物処理業の需給状況の調整が図られる仕組みが設けられているものといえる。そして、許可業者が収集運搬又は処分を行うことができる区域は当該市町村又はその一部の区域内(廃棄物処理法7条11項)に限定されていることは、これらの区域を対象として上記の需給状況の調整が図られることが予定されていることを示すものといえる。
 また、市町村長が一般廃棄物処理業の許可を与え得るのは、当該市町村による一般廃棄物の処理が困難である場合に限られており、これは、一般廃棄物の処理が本来的には市町村がその責任において自ら実施すべき事業であるため、その処理能力の限界等のために市町村以外の者に行わせる必要がある場合に初めてその事業の許可を与え得るとされたものであると解されること、上記のとおり一定の区域内の一般廃棄物の発生量に応じた需給状況の下における適正な処理が求められること等からすれば、廃棄物処理法において、一般廃棄物処理業は、専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業とは位置付けられていないものといえる。
 そして、市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物処理業の許可又はその更新を受けている者がある場合に、当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物処理業の許可又はその更新が、当該区域における需給の均衡及びその変動による既存の許可業者の事業への影響についての適切な考慮を欠くものであるならば、許可業者の濫立により需給の均衡が損なわれ、その経営が悪化して事業の適正な運営が害され、これにより当該区域の衛生や環境が悪化する事態を招来し、ひいては一定の範囲で当該区域の住民の健康や生活環境に被害や影響が及ぶ危険が生じ得るものといえる。一般廃棄物処理業の許可又はその更新の許否の判断に当たっては、上記のように、その申請者の能力の適否を含め、一定の区域における一般廃棄物の処理がその発生量に応じた需給状況の下において当該区域の全体にわたって適正に行われることが確保されるか否かを審査することが求められるのであって、このような事柄の性質上、市町村長に一定の裁量が与えられていると解されるところ、廃棄物処理法は、上記のような事態を避けるため、前記のような需給状況の調整に係る規制の仕組みを設けているのであるから、一般廃棄物処理計画との適合性等に係る許可要件に関する市町村長の判断に当たっては、その申請に係る区域における一般廃棄物処理業の適正な運営が継続的かつ安定的に確保されるように、当該区域における需給の均衡及びその変動による既存の許可業者の事業への影響を適切に考慮することが求められるものというべきである。
 以上のような一般廃棄物処理業に関する需給状況の調整に係る規制の仕組み及び内容、その規制に係る廃棄物処理法の趣旨及び目的、一般廃棄物処理の事業の性質、その事業に係る許可の性質及び内容等を総合考慮すると、廃棄物処理法は、市町村長から一定の区域につき一般廃棄物処理業の許可又はその更新を受けて市町村に代わってこれを行う許可業者について、当該区域における需給の均衡が損なわれ、その事業の適正な運営が害されることにより前記のような事態が発生することを防止するため、上記の規制を設けているものというべきであり、同法は、他の者からの一般廃棄物処理業の許可又はその更新の申請に対して市町村長が上記のように既存の許可業者の事業への影響を考慮してその許否を判断することを通じて、当該区域の衛生や環境を保持する上でその基礎となるものとして、その事業に係る営業上の利益を個々の既存の許可業者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。
 したがって、市町村長から一定の区域につき既に廃棄物処理法7条に基づく一般廃棄物処理業の許可又はその更新を受けている者は、当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物処理業の許可処分又は許可更新処分について、その取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。」
過去問・解説
(H30 予備 第21問 ウ)
市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物収集運搬業の許可を受けてこれを営んでいるXが、当該区域を対象としてAに対してされた一般廃棄物収集運搬業の許可処分の取消訴訟を提起した事案において、廃棄物の処理及び清掃に関する法律は、他の者からの一般廃棄物処理業(一般廃棄物収集運搬業を含む。)の許可の申請に対して市町村長が既存の許可業者の事業への影響を考慮してその許否を判断することを通じて、当該区域の衛生や環境を保持する上でその基礎となるものとして、その事業に係る営業上の利益を個々の既存の許可業者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解されるから、XはAに対する上記許可の取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平26.1.28)は、本肢と同種の事案において、「廃棄物処理法は、…他の者からの一般廃棄物処理業の許可又はその更新の申請に対して市町村長が上記のように既存の許可業者の事業への影響を考慮してその許否を判断することを通じて、当該区域の衛生や環境を保持する上でその基礎となるものとして、その事業に係る営業上の利益を個々の既存の許可業者の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含む…。」とした上で、「市町村長から一定の区域につき既に廃棄物処理法7条に基づく一般廃棄物処理業の許可又はその更新を受けている者は、当該区域を対象として他の者に対してされた一般廃棄物処理業の許可処分又は許可更新処分について、その取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する…。」としている。
したがって、Xは、Aに対する一般廃棄物収集運搬業の許可処分の取消を求める原告適格を有するといえる。

(R2 予備 第14問 ウ)
廃棄物の処理及び清掃に関する法律において、一般廃棄物処理業は、専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業とは位置付けられていないものであり、一般廃棄物処理業の許可をするか否かの判断に当たっては、その申請者の能力だけではなく、一定の区域における一般廃棄物の処理がその発生量に応じた需給状況の下において、当該区域の全体にわたって適正に行われることが確保されるか否かを審査することが求められていることから、行政庁には一定の裁量が与えられていると解される。

(正答)

(解説)
判例(最判平26.1.28)は、「廃棄物処理法において、一般廃棄物処理業は、専ら自由競争に委ねられるべき性格の事業とは位置付けられていない…。」とした上で、「一般廃棄物処理業の許可又はその更新の許否の判断に当たっては、…市町村長に一定の裁量が与えられていると解されるところ、廃棄物処理法は、上記のような事態を避けるため、前記のような需給状況の調整に係る規制の仕組みを設けているのであるから、一般廃棄物処理計画との適合性等に係る許可要件に関する市町村長の判断に当たっては、その申請に係る区域における一般廃棄物処理業の適正な運営が継続的かつ安定的に確保されるように、当該区域における需給の均衡及びその変動による既存の許可業者の事業への影響を適切に考慮することが求められる…。」としている。

(R6 予備 第16問 イ)
収用委員会には、土地収用法に基づく権利取得裁決において損失補償について裁決するに際し、補償の範囲及びその額の決定に当たって専門技術的かつ政策的な見地からの裁量権が認められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平9.1.28)は、「同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを『補償額』という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としている。
総合メモ

公有水面埋立法2条の埋立免許及び同法22条の竣功認可がされた当該公用水面の周辺の水面において漁業権を有する者 最三小判昭和60年12月17日

概要
公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)2条の埋立免許及び同法22条の竣功認可の取消訴訟において、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有する者は原告適格を有する。
判例
事案:公有水面埋立法(昭和48年法律第84号による改正前のもの)2条に基づく埋立免許及び同法22条の竣功認可の取消訴訟において、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有する者は原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「行政処分の取消訴訟は、その取消判決の効力によって処分の法的効果を遡及的に失わしめ、処分の法的効果として個人に生じている権利利益の侵害状態を解消させ、右権利利益の回復を図ることをその目的とするものであり、行政事件訴訟法9条が処分の取消しを求めるについての法律上の利益といっているのも、このような権利利益の回復を指すものである。したがって、処分の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限って、行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。そして、右にいう行政法規による行政権の行使の制約とは、明文の規定による制約に限られるものではなく、直接明文の規定はなくとも、法律の合理的解釈により当然に導かれる制約を含むものである。
 これを本件についてみるに、旧埋立法に基づく公有水面の埋立免許は、一定の公有水面の埋立てを排他的に行って土地を造成すべき権利を付与する処分であり、埋立工事の竣功認可は、埋立免許を受けた者に認可の日をもって埋立地の所有権を取消させる処分であるから、当該公有水面に関し権利利益を有する者は、右の埋立免許及び竣功認可により当該権利利益を直接奪われる関係にあり、その取消しを訴求することができる。しかしながら、原審の認定した前記事実関係に照らせば、上告人らは、本件公有水面に関し権利利益を有する者とはいえないのである。この点に関し、論旨は、漁業権変更の議決については、漁業法8条3項及び5項の規定により、特定区画漁業又は第1種共同漁業を営む者で地元地区又は関係地区の区域内に住所を有するものの3分の2以上の書面による事前の同意を必要とするところ、伊達漁協の前記漁業権変更の議決は右同意を欠き無効であるから、伊達漁協は本件公有水面において依然漁業権を有し、したがって上告人佐々木弘も本件公有水面において漁業を営む権利を有するというが、漁業権の変更につき漁業法8条3項及び5項の規定の適用はなく、また、これを類推適用すべきものともいうことができないから、伊達漁協の前記漁業権変更の議決を無効とすることはできない。さらに、論旨は、上告人野呂光男の所属する有珠漁協は、本件公有水面に近接する水面において漁業権を有しているから、本件公有水面から引水をなしこれに排水をなす者又はこれに準ずる者であるというが、近接する水面において漁業権を用しているからといって本件公有水面に関し引水又は排水の権利利益を有するとは到底いうことができない。 そうすると、上告人らは、本件公有水面の周辺の水面において漁業を営む権利を有するにすぎない者というべきであるが、本件埋立免許及び本件竣功認可が右の権利に対し直接の法律上の影響を与えるものでないことは明らかである。そして、旧埋立法には、当該公有水面の周辺の水面において漁業を営む者の権利を保護することを目的として埋立免許権又は竣功認可権の行使に制約を課している明文の規定はなく、また、同法の解釈からかかる制約を導くことも困難である。 以上のとおりであるから、上告人らは、本件埋立免許又は本件竣功認可の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者ということができず、その取消しを訴求する原告適格を有していないといわざるをえない。」
過去問・解説
(H18 司法 第34問 ア)
最高裁判所昭和60年12月17日第三小法廷判決(伊達火力発電所訴訟判決)の次の判示に関する記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

【判示】
「行政処分の取消訴訟は、その取消判決の効力によって処分の法的効果を遡及的に失わしめ、処分の法的効果として個人に生じている権利利益の侵害状態を解消させ、右権利利益の回復を図ることをその目的とするものであり、行政事件訴訟法9条が処分の取消しを求めるについての法律上の利益といっているのも、このような権利利益の回復を指すものである。したがつて、処分の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限って、行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである」。 
【記述】この判示は、行政処分の取消訴訟に関し、処分の本来的効果として権利利益を制限される者にのみ原告適格を認め、それ以外の者には原告適格を認めないという立場をとるものである。

(正答)

(解説)
判例(最判昭60.12.17)は、「処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、処分の本来的効果として権利利益を制限される者以外の者には原告適格を認めないという立場をとるものではない。

(H18 司法 第34問 イ)
最高裁判所昭和60年12月17日第三小法廷判決(伊達火力発電所訴訟判決)の次の判示に関する記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】は、(H18 司法 第34問 ア)を参照。

【記述】
この判示によれば、行政庁がある事業者の一定の行為について許可処分をした場合において、当該行為がされることにより不利益を受ける第三者が存在するとしても、事業者が当該行為を必ず行うとは限らないから、その第三者は、許可処分により自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者には当たらず、許可処分の取消訴訟の原告適格は認められない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭60.12.17)は、「処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。」として、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課しているのにそれに違反して処分が行われた場合に行政法規による権利利益の制約があることに着目して、そのような者に原告適格を認めている。
そうすると、事業者が当該行為を行うかどうかは関係なく、当該行為がされることにより不利益を受ける第三者は、許可処分の取消訴訟において、原告適格が認められる。

(H18 司法 第34問 ウ)
最高裁判所昭和60年12月17日第三小法廷判決(伊達火力発電所訴訟判決)の次の判示に関する記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】は、(H18 司法 第34問 ア)を参照。

【記述】
この判示は、法律の規定に基づく処分の効果として権利利益を制限される者はもちろん、法律の規定に基づかない処分により、その効果として重大な権利利益を制限される者にも、当該処分の取消訴訟の原告適格を肯定するという立場をとるものである。

(正答)

(解説)
判例(最判昭60.12.17)は、「処分の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限って、行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。」として、制限を受ける権利利益の重大性には言及していない。
したがって、本判決は、法律の規定に基づかない処分により、その効果として重大な権利利益を制限される者にも、当該処分の取消訴訟の原告適格を肯定するという立場をとるものではない。

(H18 司法 第34問 エ)
最高裁判所昭和60年12月17日第三小法廷判決(伊達火力発電所訴訟判決)の次の判示に関する記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】は、(H18 司法 第34問 ア)を参照。

【記述】
この判示からは、行政庁の許可に基づく事業者の行為によって第三者が不利益を受け、それが処分の法的効果としての権利利益の侵害に当たると解される場合に、その第三者は当該事業者に対してその行為の差止めを訴求することができることから許可処分の取消しを求める法律上の利益を有しないとの結論は導かれない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭60.12.17)は、「処分の法的効果として自己の権利利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者に限って、行政処分の取消訴訟の原告適格を有するものというべきであるが、処分の法律上の影響を受ける権利利益は、処分がその本来的効果として制限を加える権利利益に限られるものではなく、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている権利利益もこれに当たり、右の制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者も、当該処分の取消しを訴求することができると解すべきである。」としている。
したがって、行政庁の許可に基づく事業者の行為によって第三者が不利益を受けた場合であっても、行政法規が個人の権利利益を保護することを目的とする制約に違反して処分が行われ行政法規による権利利益の保護を無視されたとする者に当たるのであれば、原告適格を有するといえ、その行為の差止めを訴求することができるかどうかには言及していない。
総合メモ

定期航空運送事業免許がされた飛行場の周辺住民 最二小判平成元年2月17日

概要
定期航空運送事業免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる飛行場周辺住民は、当該免許の取消しを求める訴えの原告適格を有する。
判例
事案:新潟空港の周辺に居住する住民が、航空騒音により生活利益を侵害されているとして、運輸大臣に対し、同人が航空会社に対してした同空港の路線についての定期航空運送業の免許処分の取消しを求めた事案において、飛行場周辺住民が原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「取消訴訟の原告適格について規定する行政事件訴訟法9条にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであるが、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益をもっぱら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するということができる…。 そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規及びそれと目的を共通する関連法規の関係規定によって形成される法体系の中において、当該処分の根拠規定が、当該処分を通して右のような個々人の個別的利益をも保護すべきものとして位置付けられているとみることができるかどうかによって決すべきである。 右のような見地に立って、以下、航空法(以下『法』という。)100条、101条に基づく定期航空運送事業免許につき、飛行場周辺に居住する者が、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音により障害を受けることを理由として、その取消しを訴求する原告適格を有するか否かを検討する。  法は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠しているものであるが、航空機の航行に起因する障害の防止を図ることをその直接の目的の1つとしている(法1条)。この目的は、右条約の第16附属書として採択された航空機騒音に対する標準及び勧告方式に準拠して、法の一部改正(昭和50年法律第58号)により、航空機騒音の排出規制の観点から航空機の型式等に応じて定められた騒音の基準に適合した航空機につき運輸大臣がその証明を行う騒音基準適合証明制度に関する法20条以下の規定が新設された際に、新たに追加されたものであるから、右にいう航空機の航行に起因する障害に航空機の騒音による障害が含まれることは明らかである。 ところで、定期航空運送事業を経営しようとする者が運輸大臣の免許を受けるときに、免許基準の1つである、事業計画が経営上及び航空保安上適切なものであることについて審査を受けなければならないのであるが(法100条1項、2項、101条1項3号)、事業計画には、当該路線の起点、寄航地及び終点並びに当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時ほかの事項を定めるべきものとされている(法100条2項、航空法施行規則210条1項8号、2項6号)。そして、右免許を受けた定期航空運送事業者は、免許に係る事業計画に従って業務を行うべき義務を負い(法108条)、また、事業計画を変更しようとするときは、運輸大臣の認可を要するのである(法109条)。このように、事業計画は、定期航空運送事業者が業務を行ううえで準拠すべき基本的規準であるから、申請に係る事業計画についての審査は、その内容が法1条に定める目的に沿うかどうかという観点から行われるべきことは当然である。 更に、運輸大臣は、定期航空運送事業について公共の福祉を阻害している事実があると認めるときは、事業改善命令の1つとして、事業計画の変更を命ずることができるのであるが(法112条)、右にいう公共の福祉を阻害している事実に、飛行場周辺に居住する者に与える航空機騒音障害が1つの要素として含まれることは、航空機の航行に起因する障害の防止を図るという、前述した法1条に定める目的に照らし明らかである。また、航空運送事業の免許権限を有する運輸大臣は、他方において、公共用飛行場の周辺における航空機の騒音による障害の防止等を目的とする公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律3条に基づき、公共用飛行場周辺における航空機の騒音による障害の防止・軽減のために必要があるときは、航空機の航行方法の指定をする権限を有しているのであるが、同一の行政機関である運輸大臣が行う定期航空運送事業免許の審査は、関連法規である同法の航空機の騒音による障害の防止の趣旨をも踏まえて行われることが求められるといわなければならない。 以上のような航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法は、前記の目的を達成する1つの方法として、あらかじめ定期航空運送事業免許の審査の段階において、当該路線の使用飛行場、使用航空機の型式、運航回数及び発着日時など申請に係る事業計画の内容が、航空機の騒音による障害の防止の観点からも適切なものであるか否かを審査すべきものとしているといわなければならない。換言すれば、申請に係る事業計画が法101条1項3号にいう『経営上及び航空保安上適切なもの』であるかどうかは、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断されるべきものである。したがって、申請に係る事業計画に従って航空機が航行すれば、当該路線の航空機の航行自体により、あるいは従前から当該飛行場を使用している航空機の航行とあいまって、使用飛行場の周辺に居住する者に騒音障害をもたらすことになるにもかかわらず、当該事業計画が適切なものであるとして定期航空運送事業免許が付与されたときに、その騒音障害の程度及び障害を受ける住民の範囲など騒音障害の影響と、当該路線の社会的効用、飛行場使用の回数又は時間帯の変更の余地、騒音防止に関する技術水準、騒音障害に対する行政上の防止・軽減、補償等の措置等との比較衡量において妥当を欠き、そのため免許権者に委ねられた裁量の逸脱があると判断される場合がありうるのであって、そのような場合には、当該免許は、申請が法101条1項3号の免許基準に適合しないのに付与されたものとして、違法となるといわなければならない。 そして、航空機の騒音による障害の被害者は、飛行場周辺の一定の地域的範囲の住民に限定され、その障害の程度は居住地域が離着陸経路に接近するにつれて増大するものであり、他面、飛行場に航空機が発着する場合に常にある程度の騒音が伴うことはやむをえないところであり、また、航空交通による利便が政治、経済、文化等の面において今日の社会に多大の効用をもたらしていることにかんがみれば、飛行場周辺に居住する者は、ある程度の航空機騒音については、不可避のものとしてこれを甘受すべきであるといわざるをえず、その騒音による障害が著しい程度に至ったときに初めて、その防止・軽減を求めるための法的手段に訴えることを許容しうるような利益侵害が生じたものとせざるをえないのである。このような航空機の騒音による障害の性質等を踏まえて、前述した航空機騒音障害の防止の観点からの定期航空運送事業に対する規制に関する法体系をみると、法が、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、申請に係る事業計画が法101条1項3号にいう『経営上及び航空保安上適切なもの』であるかどうかを、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断すべきものとしているのは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。したがって、新たに付与された定期航空運送事業免許に係る路線の使用飛行場の周辺に居住していて、当該免許に係る事業が行われる結果、当該飛行場を使用する各種航空機の騒音の程度、当該飛行場の1日の離着陸回数、離着陸の時間帯等からして、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」
過去問・解説
(R3 予備 第18問 ウ)
航空法(平成11年法律第72号による改正前のもの)に基づく定期航空運送事業免許については、事業計画が「経営上及び航空保安上適切なもの」であることが免許基準とされており、これに飛行場周辺住民の個別的利益を保護する趣旨が含まれるものとは解し難いから、上記住民は、当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音により障害を受けることを理由として、その取消しを求める原告適格を有しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平元.2.17)は、本肢と同種の事案において、「法が、定期航空運送事業免許の審査において、航空機の騒音による障害の防止の観点から、申請に係る事業計画が法101条1項3号にいう『経営上及び航空保安上適切なもの』であるかどうかを、当該事業計画による使用飛行場周辺における当該事業計画に基づく航空機の航行による騒音障害の有無及び程度を考慮に入れたうえで判断すべきものとしているのは、単に飛行場周辺の環境上の利益を一般的公益として保護しようとするにとどまらず、飛行場周辺に居住する者が航空機の騒音によって著しい障害を受けないという利益をこれら個々人の個別的利益としても保護すべきとする趣旨を含むものと解することができるのである。したがって、…当該免許に係る路線を航行する航空機の騒音によって社会通念上著しい障害を受けることとなる者は、当該免許の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」としている。
したがって、飛行場周辺の住民にも、航空法に基づく定期航空運送事業免許の取消しを求める原告適格が認められる。
総合メモ

医療法に基づく病院開設許可がされた病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人、社会福祉法人及び医師並びに同市内の医師等の構成する医師会の取消訴訟の原告適格 最二小判平成19年10月19日

概要
医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)7条に基づく病院の開設許可の取消訴訟につき、同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人、社会福祉法人及び医師並びに同市内の医師等の構成する医師会は、原告適格を有しない。
判例
事案:医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの)7条に基づく病院の開設許可の取消訴訟において、同病院の開設地の付近において医療施設を開設し医療行為をする医療法人等が原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「法は、都道府県その他の7条の2第1項各号所定の者が申請した場合を除き、病院の開設許可については、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が21条及び23条の規定に基づく厚生労働省令の定める要件に適合するときは許可を与えなければならないこと(7条4項)、営利を目的として病院を開設しようとする者に対しては許可を与えないことができること(同条5項)を定めており、許可の要件を定めるこれらの規定は、病院開設の許否の判断に当たり、当該病院の開設地の付近で医療施設を開設している者等(以下『他施設開設者』という。)の利益を考慮することを予定していないことが明らかである。 法30条の3は、都道府県は医療を提供する体制の確保に関する計画(以下『医療計画』という。)を定めるものとし(同条1項)、そこに定める事項として『基準病床数に関する事項』を掲げており(同条2項3号)、法30条の7は、医療計画の達成の推進のために特に必要がある場合には、都道府県知事が病院開設の許可の申請者に対し病院の開設等に関し勧告することができるものとしているが、病院開設の許可の申請が医療計画に定められた『基準病床数に関する事項』に適合しない場合又は更に当該申請をした者が上記の勧告に従わない場合にも、そのことを理由に当該申請に対し不許可処分をすることはできないと解される…。また、法30条の3が都道府県において医療計画を定めることとした目的は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保することにあると解されるから…、同条が他施設開設者の利益を保護する趣旨を含むと解することもできない。  法の目的を定める法1条及び医師等の責務を定める法1条の4の規定からも、病院開設の許可に関する法の規定が他施設開設者の利益を保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることはできず、そのほか、上告人らが本件開設許可の取消しを求める法律上の利益を有すると解すべき根拠は見いだせない。 そうすると、上告人らは、本件開設許可の取消しを求める原告適格を有しないというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第29問 ア)
次の文章は、知事Yがした医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの。以下「法」という。)第7条に基づく病院の開設許可(以下「本件開設許可」という。)について、同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医師等であるX(上告人)らがその取消しを求めた事案について判断を示した最高裁判所平成19年10月19日第二小法廷判決の判示の一部である。この判決に関する後記の記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

【判示】
 「法は、(中略)病院の開設許可については、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が(中略)厚生労働省令の定める要件に適合するときは許可を与えなければならないこと(7条4項)、営利を目的として病院を開設しようとする者に対しては許可を与えないことができること(同条5項)を定めており、許可の要件を定めるこれらの規定は、病院開設の許否の判断に当たり、当該病院の開設地の付近で医療施設を開設している者等(以下「他施設開設者」という。)の利益を考慮することを予定していないことが明らかである。」「法の目的を定める法1条及び医師等の責務を定める法1条の4の規定からも、病院開設の許可に関する法の規定が他施設開設者の利益を保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることはできず、そのほか、上告人らが本件開設許可の取消しを求める法律上の利益を有すると解すべき根拠は見いだせない。」 

【参照条文】医療法
第1条 この法律は、病院、診療所及び助産所の開設及び管理に関し必要な事項並びにこれらの施設の整備を推進するために必要な事項を定めること等により、医療を提供する体制の確保を図り、もつて国民の健康の保持に寄与することを目的とする。
第1条の4 医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手は、第1条の2に規定する理念に基づき、医療を受ける者に対し、良質かつ適切な医療を行うよう努めなければならない。
2~4 (略)
第7条 病院を開設しようとするとき(中略)は、開設地の都道府県知事(中略)の許可を受けなければならない。
2、3 (略)
4 都道府県知事(中略)は、前3項の許可の申請があつた場合において、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が(中略)厚生労働省令の定める要件に適合するときは、前3項の許可を与えなければならない。
5 営利を目的として、病院、診療所又は助産所を開設しようとする者に対しては、前項の規定にかかわらず、第1項の許可を与えないことができる。

【記述】
この判決は、Xらの原告適格について、本件開設許可の根拠となる規定の趣旨にかかわらず、Xらの利益が保護すべきものであるかどうかによって判断すべきであるとの考え方に基づいている。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.10.19)は、「法は、都道府県その他の7条の2第1項各号所定の者が申請した場合を除き、病院の開設許可については、その申請に係る施設の構造設備及びその有する人員が21条及び23条の規定に基づく厚生労働省令の定める要件に適合するときは許可を与えなければならないこと(7条4項)、営利を目的として病院を開設しようとする者に対しては許可を与えないことができること(同条5項)を定めており、許可の要件を定めるこれらの規定は、病院開設の許否の判断に当たり、当該病院の開設地の付近で医療施設を開設している者等…の利益を考慮することを予定していないことが明らかである。」として、本件開設許可の根拠となる法7条の趣旨にも言及しつつ、Xらの原告適格を否定している。

(H21 司法 第29問 イ)
次の文章は、知事Yがした医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの。以下「法」という。)第7条に基づく病院の開設許可(以下「本件開設許可」という。)について、同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医師等であるX(上告人)らがその取消しを求めた事案について判断を示した最高裁判所平成19年10月19日第二小法廷判決の判示の一部である。この判決に関する後記の記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】【参照条文】は、(H21 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
この判決の考え方によれば、一般に、事業等の許可に関する限り、当該許可の名あて人たる事業者と競争関係に立つ事業者には当該許可の取消しを求める原告適格がないことになる。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.10.19)は、「許可の要件を定めるこれらの規定は、病院開設の許否の判断に当たり、当該病院の開設地の付近で医療施設を開設している者等(以下『他施設開設者』という。)の利益を考慮することを予定していないことが明らかである。」という理由や、「法30条の3が都道府県において医療計画を定めることとした目的は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保することにあると解されるから…、同条が他施設開設者の利益を保護する趣旨を含むと解することもできない。」という理由を挙げて、競争関係に立つ事業者に、事業等の許可取消しを求める原告適格を否定している。
したがって、一般に、事業等の許可に関する限り、当該許可の名あて人たる事業者と競争関係に立つ事業者には当該許可の取消しを求める原告適格がないとはいえない。

(H21 司法 第29問 ウ)
次の文章は、知事Yがした医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの。以下「法」という。)第7条に基づく病院の開設許可(以下「本件開設許可」という。)について、同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医師等であるX(上告人)らがその取消しを求めた事案について判断を示した最高裁判所平成19年10月19日第二小法廷判決の判示の一部である。この判決に関する後記の記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】【参照条文】は、(H21 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
この判決は、関係法令の趣旨に照らし、医療計画の策定の目的は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保することにあることから、他施設開設者の利益を保護する趣旨を含むものであるということを前提に、Xらの原告適格について判断したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.10.19)は、「法30条の3が都道府県において医療計画を定めることとした目的は、良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制を確保することにあると解されるから…、同条が他施設開設者の利益を保護する趣旨を含むと解することもできない。」としている。
したがって、他施設開設者の利益を保護する趣旨は含まれない。

(H21 司法 第29問 エ)
次の文章は、知事Yがした医療法(平成18年法律第84号による改正前のもの。以下「法」という。)第7条に基づく病院の開設許可(以下「本件開設許可」という。)について、同病院の開設地の市又はその付近において医療施設を開設し医療行為をする医師等であるX(上告人)らがその取消しを求めた事案について判断を示した最高裁判所平成19年10月19日第二小法廷判決の判示の一部である。この判決に関する後記の記述について、正しい場合には○を、誤っている場合には✕を選びなさい。

*【判示】【参照条文】は、(H21 司法 第29問 ア)を参照。

【記述】
この判決は、Xらが、本件開設許可により、自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者には該当しないとの判断を示したものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平19.10.19)は、病院開設許可の根拠規定(医療法7条)、関連規定(同30条の3、30条の7)及び目的規定(同1条)の解釈をした上で、「上告人らが本件開設許可の取消しを求める法律上の利益を有すると解すべき根拠は見いだせない。」として、周辺の医療法人等の原告適格を否定している。
したがって、本判例は、本肢が指摘するような法律上保護された利益説を前提としているといえる。
総合メモ

自転車競技法4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺に居住する者、文教施設又は医療施設を開設する者 最一小判平成21年10月15日

概要
①自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺に居住する者等は、いわゆる位置基準を根拠として上記許可の取消訴訟の原告適格を有するということはできない。
②自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺において文教施設又は医療施設を開設する者は、いわゆる位置基準を根拠として上記許可の取消訴訟の原告適格を有する。
③自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺において文教施設又は医療施設を開設する者が、自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)15条1項1号所定のいわゆる位置基準を根拠として上記許可の取消訴訟の原告適格を有するか否かについては、当該場外車券発売施設が設置、運営された場合にその規模、周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して、著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に当該文教施設又は医療施設が所在しているか否かを、当該場外車券発売施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきである。
④自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づく設置許可がされた場外車券発売施設の周辺に居住する者等は、いわゆる周辺環境調和基準を根拠として上記許可の取消訴訟の原告適格を有するということはできない。
判例
事案:自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)4条2項に基づいて場外車券発売施設の設置許可処分の取消訴訟事案において、①当該場外車券発売施設の周辺に居住する者、②当該場外車券発売施設の周辺において文教施設又は医療施設を開設する者、③当該場外車券発売施設の周辺において文教施設又は医療施設を開設する者が位置基準を根拠として、④場外車券発売施設の周辺に居住する者等が周辺環境調和基準を根拠として、それぞれ原告適格が認められるかが問題となった。

判旨:「行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである…。上記の見地に立って、被上告人らが本件許可の取消しを求める原告適格を有するか否かについて判断する。
 一般的に、場外施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、その設置、運営により、直ちに周辺住民等の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、その財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定し難いところである。そして、このような生活環境に関する利益は、基本的には公益に属する利益というべきであって、法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず、当然に、法が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない。
 位置基準は、場外施設が医療施設等から相当の距離を有し、当該場外施設において車券の発売等の営業が行われた場合に文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを、その設置許可要件の一つとして定めるものである。場外施設が設置、運営されることに伴う上記の支障は、基本的には、その周辺に所在する医療施設等を利用する児童、生徒、患者等の不特定多数者に生じ得るものであって、かつ、それらの支障を除去することは、心身共に健康な青少年の育成や公衆衛生の向上及び増進といった公益的な理念ないし要請と強くかかわるものである。そして、当該場外施設の設置、運営に伴う上記の支障が著しいものといえるか否かは、単に個々の医療施設等に着目して判断されるべきものではなく、当該場外施設の設置予定地及びその周辺の地域的特性、文教施設の種類・学区やその分布状況、医療施設の規模・診療科目やその分布状況、当該場外施設が設置、運営された場合に予想される周辺環境への影響等の事情をも考慮し、長期的観点に立って総合的に判断されるべき事柄である。規則が、場外施設の設置許可申請書に、敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図のほか、場外施設を中心とする交通の状況図及び場外施設の配置図を添付することを義務付けたのも、このような公益的見地からする総合的判断を行う上での基礎資料を提出させることにより、上記の判断をより的確に行うことができるようにするところに重要な意義があるものと解される。このように、法及び規則が位置基準によって保護しようとしているのは、第一次的には、上記のような不特定多数者の利益であるところ、それは、性質上、一般的公益に属する利益であって、原告適格を基礎付けるには足りないものであるといわざるを得ない。したがって、場外施設の周辺において居住し又は事業(医療施設等に係る事業を除く。)を営むにすぎない者や、医療施設等の利用者は、位置基準を根拠として場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有しないものと解される。
 もっとも、場外施設は、多数の来場者が参集することによってその周辺に享楽的な雰囲気や喧噪といった環境をもたらすものであるから、位置基準は、そのような環境の変化によって周辺の医療施設等の開設者が被る文教又は保健衛生にかかわる業務上の支障について、特に国民の生活に及ぼす影響が大きいものとして、その支障が著しいものである場合に当該場外施設の設置を禁止し当該医療施設等の開設者の行う業務を保護する趣旨をも含む規定であると解することができる。したがって、仮に当該場外施設が設置、運営されることに伴い、その周辺に所在する特定の医療施設等に上記のような著しい支障が生ずるおそれが具体的に認められる場合には、当該場外施設の設置許可が違法とされることもあることとなる。このように、位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。そして、このような見地から、当該医療施設等の開設者が上記の原告適格を有するか否かを判断するに当たっては、当該場外施設が設置、運営された場合にその規模、周辺の交通等の地理的状況等から合理的に予測される来場者の流れや滞留の状況等を考慮して、当該医療施設等が上記のような区域に所在しているか否かを、当該場外施設と当該医療施設等との距離や位置関係を中心として社会通念に照らし合理的に判断すべきものと解するのが相当である。なお、原審は、場外施設の設置許可申請書に、敷地の周辺から1000m以内の地域にある医療施設等の位置及び名称を記載した見取図等を添付すべきことを義務付ける定めがあることを一つの根拠として、上記地域において医療等の事業を営む者一般に上記の原告適格を肯定している。確かに、上記見取図は、これに記載された個々の医療施設等に前記のような業務上の支障が生ずるか否かを審査する際の資料の一つとなり得るものではあるが、場外施設の設置、運営が周辺の医療施設等に対して及ぼす影響はその周辺の地理的状況等に応じて一様ではなく、上記の定めが上記地域において医療等の事業を営むすべての者の利益を個別的利益としても保護する趣旨を含むとまでは解し難いのであるから、このような地理的状況等を一切問題とすることなく、これらの者すべてに一律に上記の原告適格が認められるとすることはできないものというべきである。これを本件について見ると、前記事実関係等によれば、本件敷地の周辺において医療施設を開設する被上告人らのうち、被上告人Xは、本件敷地の周辺から約800m離れた場所に医療施設を開設する者であり、本件敷地周辺の地理的状況等にかんがみると、当該医療施設が本件施設の設置、運営により保健衛生上著しい支障を来すおそれがあると位置的に認められる区域内に所在しているとは認められないから、同被上告人は、位置基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有しないと解される。これに対し、その余の被上告人X、同X及び同X(以下、併せて『被上告人Xら3名』という。)は、いずれも本件敷地の周辺から約120mないし200m離れた場所に医療施設を開設する者であり、前記の考慮要素を勘案することなく上記の原告適格を有するか否かを的確に判断することは困難というべきである。次に、周辺環境調和基準は、場外施設の規模、構造及び設備並びにこれらの配置が周辺環境と調和したものであることをその設置許可要件の一つとして定めるものである。同基準は、場外施設の規模が周辺に所在する建物とそぐわないほど大規模なものであったり、いたずらに射幸心をあおる外観を呈しているなどの場合に、当該場外施設の設置を不許可とする旨を定めたものであって、良好な風俗環境を一般的に保護し、都市環境の悪化を防止するという公益的見地に立脚した規定と解される。同基準が、場外施設周辺の居住環境との調和を求める趣旨を含む規定であると解したとしても、そのような観点からする規制は、基本的に、用途の異なる建物の混在を防ぎ都市環境の秩序ある整備を図るという一般的公益を保護する見地からする規制というべきである。また、『周辺環境と調和したもの』という文言自体、甚だ漠然とした定めであって、位置基準が上記のように限定的要件を明確に定めているのと比較して、そこから、場外施設の周辺に居住する者等の具体的利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を読み取ることは困難といわざるを得ない。したがって、被上告人らは、周辺環境調和基準を根拠として本件許可の取消しを求める原告適格を有するということはできないというべきである。」
過去問・解説
(H26 共通 第30問 ウ)
①の法令に関する説明を前提にした場合に、②の記述が最高裁判所の判例の内容として正しいものに〇、誤っているものに×を付した場合の組合せを選びなさい。

①自転車競技法(平成19年法律第82号による改正前のもの)第4条第2項は、場外車券発売施設につき、申請に係る施設の位置、構造及び設備が経済産業省令で定める基準に適合する場合に限りその許可をすることができる旨定め、これを受けて規定された自転車競技法施行規則(平成18年経済産業省令第126号による改正前のもの)第15条第1項第1号は、上記の基準として、学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設(以下、これらを併せて「医療施設等」という。)から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないこと(以下、この基準を「位置基準」という。)を定めている。

②一般に、場外車券発売施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、基本的には公益に属する利益というべきである。そうすると、医療施設等の開設者は、位置基準を根拠として当該施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.10.15)は、「一般的に、場外施設が設置、運営された場合に周辺住民等が被る可能性のある被害は、交通、風紀、教育など広い意味での生活環境の悪化であって、その設置、運営により、直ちに周辺住民等の生命、身体の安全や健康が脅かされたり、その財産に著しい被害が生じたりすることまでは想定し難いところである。そして、このような生活環境に関する利益は、基本的には公益に属する利益というべきであって、法令に手掛りとなることが明らかな規定がないにもかかわらず、当然に、法が周辺住民等において上記のような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護する趣旨を含むと解するのは困難といわざるを得ない。」としている。
他方、本判例は、「位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。」としている。
したがって、医療施設等の開設者は、位置基準を根拠として当該施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有する。

(R5 予備 第19問 イ)
自転車競技法に基づく場外車券発売施設の設置許可については、同法の規定を受けて、学校その他の文教施設及び病院その他の医療施設(以下、これらを併せて「医療施設等」という。)から相当の距離を有し、文教上又は保健衛生上著しい支障を来すおそれがないことを許可の基準として定めた同法施行規則の規定が、医療施設等の開設者が健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益をその個別的利益として保護する趣旨をも含むと解することはできないから、医療施設等の開設者が、当該許可の取消しを求める原告適格を有することはない。

(正答)

(解説)
判例(最判平21.10.15)は、「位置基準は、一般的公益を保護する趣旨に加えて、上記のような業務上の支障が具体的に生ずるおそれのある医療施設等の開設者において、健全で静穏な環境の下で円滑に業務を行うことのできる利益を、個々の開設者の個別的利益として保護する趣旨をも含む規定であるというべきであるから、当該場外施設の設置、運営に伴い著しい業務上の支障が生ずるおそれがあると位置的に認められる区域に医療施設等を開設する者は、位置基準を根拠として当該場外施設の設置許可の取消しを求める原告適格を有するものと解される。」としている。
したがって、医療施設等の開設者が、当該許可の取消しを求める原告適格を有することもある。
総合メモ

林地開発許可がされた開発区域の周辺住民 最三小判平成13年3月13日

概要
土砂の流出又は崩壊、水害等の災害により生命、身体等に直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、森林法(平成11年法律第87号による改正前のもの)10条の2による開発許可の取消訴訟の原告適格を有するが、開発区域内又はその周辺に所在する土地上に立木を所有し、川から取水して農業を営んでいるにすぎない者は原告適格を有しない。
判例
事案:ゴルフ場の造成を目的とした林地開発許可の取消訴訟において、開発区域の周辺住民は原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである…。
 …本件において、被上告人度會錦吾及び同後藤敏は、本件開発区域に近接する住居に居住しており、本件開発許可に基づく開発行為によって起こり得る土砂の流出又は崩壊その他の災害あるいは水害により、その生命、身体等を侵害されるおそれがあると主張している。そこで検討するのに、森林法10条の2第2項1号は、当該開発行為をする森林の現に有する土地に関する災害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域において土砂の流出又は崩壊その他の災害を発生させるおそれがないことを、また、同項1号の2は、当該開発行為をする森林の現に有する水害の防止の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水害を発生させるおそれがないことを開発許可の要件としている。これらの規定は、森林において必要な防災措置を講じないままに開発行為を行うときは、その結果、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害が発生して、人の生命、身体の安全等が脅かされるおそれがあることにかんがみ、開発許可の段階で、開発行為の設計内容を十分審査し、当該開発行為により土砂の流出又は崩壊、水害等の災害を発生させるおそれがない場合にのみ許可をすることとしているものである。そして、この土砂の流出又は崩壊、水害等の災害が発生した場合における被害は、当該開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民に直接的に及ぶことが予想される。以上のような上記各号の趣旨・目的、これらが開発許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば、これらの規定は、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害防止機能という森林の有する公益的機能の確保を図るとともに、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による被害が直接的に及ぶことが想定される開発区域に近接する一定範囲の地域に居住する住民の生命、身体の安全等を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者は、開発許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。 これを本件についてみると、前記…の事実によれば、本件開発区域は、過去に2度水害が発生している小里川の上流に位置し、その水源となっており、本件開発行為は、開発区域の面積が117.1044haに及ぶゴルフ場の造成を目的とするものであって、同川の流域では上記ゴルフ場を含め合計6箇所のゴルフ場建設が予定されているところ、被上告人度會錦吾及び同後藤敏は、小里川に臨む山の斜面上に位置している本件開発区域の下方で、同川に近接した高低差の小さい地点に所在する住居に居住していることが記録上明らかであるから、同被上告人らは、土砂の流出又は崩壊、水害等の災害による直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に居住する者と認めるのが相当である。原判決中、同被上告人らの原告適格を肯定した部分は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。この点に関する論旨は採用することができない。 しかし、森林法10条の2第2項1号及び同項1号の2の規定から、周辺住民の生命、身体の安全等の保護に加えて周辺土地の所有権等の財産権までを個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは困難である。また、同項2号は、当該開発行為をする森林の現に有する水源のかん養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがないことを、同項3号は、当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがないことを開発許可の要件としているけれども、これらの規定は、水の確保や良好な環境の保全という公益的な見地から開発許可の審査を行うことを予定しているものと解されるのであって、周辺住民等の個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むものと解することはできない。 本件においては、前記1の事実によれば、被上告人前川幸雄、同池野雅道、同永田智男及び同伊藤栄は、本件開発区域内又はその周辺に所在する土地上に立木を所有し、同山村晃三は、小里川から取水して農業を営んでいるにすぎないというのであるから、同被上告人らが本件開発許可の取消しを求める原告適格を有するということはできず、他に、同被上告人らが原告適格を有すると解すべき根拠は記録上も見当たらない。」
過去問・解説
(R5 予備 第19問 ア)
森林法に基づく林地開発許可について、同法の規定は、開発区域周辺の土地の所有権等の財産権を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むから、開発区域周辺の土地を所有する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平13.3.13)は、「森林法10条の2第2項1号及び同項1号の2の規定から、周辺住民の生命、身体の安全等の保護に加えて周辺土地の所有権等の財産権までを個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは困難である。また、同項2号は、当該開発行為をする森林の現に有する水源のかん養の機能からみて、当該開発行為により当該機能に依存する地域における水の確保に著しい支障を及ぼすおそれがないことを、同項3号は、当該開発行為をする森林の現に有する環境の保全の機能からみて、当該開発行為により当該森林の周辺の地域における環境を著しく悪化させるおそれがないことを開発許可の要件としているけれども、これらの規定は、水の確保や良好な環境の保全という公益的な見地から開発許可の審査を行うことを予定しているものと解されるのであって、周辺住民等の個々人の個別的利益を保護する趣旨を含むものと解することはできない。」としている。
したがって、林地開発許可の規定は、開発区域周辺の土地の所有権等の財産権を個々人の個別的利益として保護すべきものとする趣旨を含まず、開発区域周辺の土地を所有する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有しない。
総合メモ

建築基準法に基づく総合設計許可に係る建築物の周辺地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者 最三小判平成14年1月22日

概要
建築基準法に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の周辺地域に存する建築物に居住し又はこれを所有するXらは原告適格を有する。
判例
事案:建築基準法に基づくいわゆる総合設計許可の取消訴訟において、当該建築物の周辺地域に存する建築物に居住し又はこれを所有するXらが原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「建築基準法は、52条において建築物の容積率制限、55条及び56条において高さ制限を定めているところ、これらの規定は、本来、建築密度、建築物の規模等を規制することにより、建築物の敷地上に適度な空間を確保し、もって、当該建築物及びこれに隣接する建築物等における日照、通風、採光等を良好に保つことを目的とするものであるが、そのほか、当該建築物に火災その他の災害が発生した場合に、隣接する建築物等に延焼するなどの危険を抑制することをもその目的に含むものと解するのが相当である。そして、同法59条の2第1項は、上記の制限を超える建築物の建築につき、一定規模以上の広さの敷地を有し、かつ、敷地内に一定規模以上の空地を有する場合においては、安全、防火等の観点から支障がないと認められることなどの要件を満たすときに限り、これらの制限を緩和することを認めている。このように、同項は、必要な空間を確保することなどを要件として、これらの制限を緩和して大規模な建築物を建築することを可能にするものである。容積率制限や高さ制限の規定の上記の趣旨・目的等をも考慮すれば、同項が必要な空間を確保することとしているのは、当該建築物及びその周辺の建築物における日照、通風、採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに、地震、火災等により当該建築物が倒壊、炎上するなど万一の事態が生じた場合に、その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことがないようにするためであると解される。そして、同項は、特定行政庁が、以上の各点について適切な設計がされているかどうかなどを審査し、安全、防火等の観点から支障がないと認めた場合にのみ許可をすることとしているのである。以上のような同項の趣旨・目的、同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等に加え、同法が建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定めて国民の生命、健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ことにかんがみれば、同法59条の2第1項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第35問 ア)
建築確認について、建ぺい率や容積率、高度制限に違反するような違法がある場合に、当該マンション建築によって、日照を妨げられるなど、具体的な被害を受けるおそれのある者には原告適格が認められる余地があるが、単に周辺住民というだけで当然に原告適格が認められるわけではない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.22)は、「同法59条の2第1項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」としている。
したがって、単に周辺住民というだけでは、建築確認に建築基準法に違反する点があっても取消訴訟の提起はできない。

(H26 共通 第30問 ア)
①の法令に関する説明を前提にした場合に、②の記述は最高裁判所の判例の内容として正しいか。

①建築基準法第59条の2第1項は、建築物の容積率制限、高さ制限に関し、一定規模以上の広さの敷地を有し、かつ、敷地内に一定規模以上の空地を有する場合においては、安全、防火等の観点から支障がないと認められることなどの要件を満たすときに限り、これらの制限を緩和することを認めている。

②この規定は、建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解されるから、同条第1項の総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.22)は、「同法59条の2第1項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」としている。

(H30 予備 第21問 イ)
建築基準法に基づくいわゆる総合設計許可に係る建築物の周辺地域に存する建築物に居住し又はこれを所有するXらが、同許可の取消訴訟を提起した事案において、Xらのうち、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住する者は、上記許可の取消しを求める原告適格を有するが、同地域に存する建築物を所有するにすぎない者は、その原告適格を有しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.1.22)は、「同法59条の2第1項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物の倒壊、炎上等による被害が直接的に及ぶことが想定される周辺の一定範囲の地域に存する他の建築物についてその居住者の生命、身体の安全等及び財産としてのその建築物を、個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し又はこれを所有する者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」として、被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物を所有している者にも原告適格を認めている。
したがって、Xらのうち、総合設計許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物を所有するにすぎない者も、その原告適格を有する。
総合メモ

都市計画法に基づく都市計画事業認可がされた都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民 最大判平成17年12月7日

概要
都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有する。
判例
事案:小田急線に関する都市計画事業の認可の取消訴訟において、事業地の周辺住民は原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「⑴ 行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)。
 ⑵ 上記の見地に立って、まず、上告人らが本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。
 ア 都市計画法は、同法の定めるところにより同法59条の規定による認可等を受けて行われる都市計画施設の整備に関する事業等を都市計画事業と規定し(4条15項)、その事業の内容が都市計画に適合することを認可の基準の1つとしている(61条1号)。都市計画に関する都市計画法の規定をみると、同法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、もって国土の均衡ある発展と公共の福祉の増進に寄与することを目的とし(1条)、都市計画の基本理念の一つとして、健康で文化的な都市生活を確保すべきことを定めており(2条)、都市計画の基準に関して、当該都市について公害防止計画が定められているときは都市計画がこれに適合したものでなければならないとし(13条1項柱書き)、都市施設は良好な都市環境を保持するように定めることとしている(同項5号)。また、同法は、都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認められるときは、公聴会の開催等、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとし(16条1項)、都市計画を決定しようとする旨の公告があったときは、関係市町村の住民及び利害関係人は、縦覧に供された都市計画の案について意見書を提出することができるものとしている(17条1項、2項)。
 イ また、上記の公害防止計画の根拠となる法令である公害対策基本法は、国民の健康を保護するとともに、生活環境を保全することを目的とし(1条)、事業活動その他の人の活動に伴って生ずる相当範囲にわたる大気の汚染、水質の汚濁、土壌の汚染、騒音、振動等によって人の健康又は生活環境に係る被害が生ずることを公害と定義した上で(2条)、国及び地方公共団体が公害の防止に関する施策を策定し、実施する責務を有するとし(4条、5条)、内閣総理大臣が、現に公害が著しく、かつ、公害の防止に関する施策を総合的に講じなければ公害の防止を図ることが著しく困難であると認められる地域等について、公害防止計画の基本方針を示して関係都道府県知事にその策定を指示し、これを受けた関係都道府県知事が公害防止計画を作成して内閣総理大臣の承認を受けるものとしている(19条)(なお、同法は、環境基本法の施行に伴い平成5年11月19日に廃止されたが、新たに制定された環境基本法は、内閣総理大臣が上記と同様の地域について関係都道府県知事に公害防止計画の策定を指示し、これを受けた関係都道府県知事が公害防止計画を作成して内閣総理大臣の承認を受けなければならないとしている(17条)。
 さらに、同条の規定は、平成11年法律第87号及び第160号により改正され、現在は、環境大臣が同様の指示を行い、これを受けた関係都道府県知事が公害防止計画を作成し、環境大臣に協議し、その同意を得なければならないとしている。)。公害防止計画に関するこれらの規定は、相当範囲にわたる騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害が発生するおそれのある地域について、その発生を防止するために総合的な施策を講ずることを趣旨及び目的とするものと解される。そして、都市計画法13条1項柱書きが、都市計画は公害防止計画に適合しなければならない旨を規定していることからすれば、都市計画の決定又は変更に当たっては、上記のような公害防止計画に関する公害対策基本法の規定の趣旨及び目的を踏まえて行われることが求められるものというべきである。さらに、東京都においては、環境に著しい影響を及ぼすおそれのある事業の実施が環境に及ぼす影響について事前に調査、予測及び評価を行い、これらの結果について公表すること等の手続に関し必要な事項を定めることにより、事業の実施に際し公害の防止等に適正な配慮がされることを期し、都民の健康で快適な生活の確保に資することを目的として、本件条例が制定されている。本件条例は、被上告参加人が、良好な環境を保全し、都民の健康で快適な生活を確保するため、本件条例に定める手続が適正かつ円滑に行われるよう努めなければならない基本的責務を負うものとした上で(3条)、事業者から提出された環境影響評価書及びその概要の写しを対象事業に係る許認可権者(都市計画の決定又は変更の権限を有する者を含む。2条8号)に送付して(24条2項)、許認可等を行う際に評価書の内容に十分配慮するよう要請しなければならないとし(25条)、対象事業が都市計画法の規定により都市計画に定められる場合においては、本件条例による手続を都市計画の決定の手続に合わせて行うよう努めるものとしている(45条)。これらの規定は、都市計画の決定又は変更に際し、環境影響評価等の手続を通じて公害の防止等に適正な配慮が図られるようにすることも、その趣旨及び目的とするものということができる。
 ウ そして、都市計画事業の認可は、都市計画に事業の内容が適合することを基準としてされるものであるところ、前記…のような都市計画に関する都市計画法の規定に加えて、前記…の公害対策基本法等の規定の趣旨及び目的をも参酌し、併せて、都市計画法66条が、認可の告示があったときは、施行者が、事業の概要について事業地及びその付近地の住民に説明し、意見を聴取する等の措置を講ずることにより、事業の施行についてこれらの者の協力が得られるように努めなければならないと規定していることも考慮すれば、都市計画事業の認可に関する同法の規定は、事業に伴う騒音、振動等によって、事業地の周辺地域に居住する住民に健康又は生活環境の被害が発生することを防止し、もって健康で文化的な都市生活を確保し、良好な生活環境を保全することも、その趣旨及び目的とするものと解される。
 エ 都市計画法又はその関係法令に違反した違法な都市計画の決定又は変更を基礎として都市計画事業の認可がされた場合に、そのような事業に起因する騒音、振動等による被害を直接的に受けるのは、事業地の周辺の一定範囲の地域に居住する住民に限られ、その被害の程度は、居住地が事業地に接近するにつれて増大するものと考えられる。また、このような事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民が、当該地域に居住し続けることにより上記の被害を反復、継続して受けた場合、その被害は、これらの住民の健康や生活環境に係る著しい被害にも至りかねないものである。そして、都市計画事業の認可に関する同法の規定は、その趣旨及び目的にかんがみれば、事業地の周辺地域に居住する住民に対し、違法な事業に起因する騒音、振動等によってこのような健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるところ、前記のような被害の内容、性質、程度等に照らせば、この具体的利益は、一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。
 オ 以上のような都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的、これらの規定が都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば、同法は、これらの規定を通じて、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るなどの公益的見地から都市計画施設の整備に関する事業を規制するとともに、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。したがって、都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものといわなければならない。
 最高裁平成8年(行ツ)第76号同11年11月25日第一小法廷判決・裁判集民事195号387頁は、以上と抵触する限度において、これを変更すべきである。
 カ 以上の見解に立って、本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格についてみると、前記事実関係等によれば、別紙上告人目録1ないし3記載の上告人らは、いずれも本件鉄道事業に係る関係地域内である上記各目録記載の各住所地に居住しているというのである。そして、これらの住所地と本件鉄道事業の事業地との距離関係などに加えて、本件条例2条5号の規定する関係地域が、対象事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で当該対象事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがある地域として被上告参加人が定めるものであることを考慮すれば、上記の上告人らについては、本件鉄道事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たると認められるから、本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格を有するものと解するのが相当である。
 これに対し、別紙上告人目録4記載の上告人らは、本件鉄道事業に係る関係地域外に居住するものであり、前記事実関係等によっても、本件鉄道事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあるとはいえず、他に、上記の上告人らが原告適格を有すると解すべき根拠は記録上も見当たらないから、本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格を有すると解することはできない。
 ⑶ 次に、別紙上告人目録2記載の上告人らが別紙事業認可目録6記載の認可の、別紙上告人目録3記載の上告人らが別紙事業認可目録7記載の認可の、各取消しを求める原告適格を有するほかに、上記(2)の見解に立って、上告人らが本件各付属街路事業の実施により健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者に当たるとして、当該事業認可の取消しを求める原告適格を有するか否かについて検討する。
 前記事実関係等によれば、本件各付属街路事業に係る付属街路は、本件鉄道事業による沿線の日照への影響を軽減することのほか、沿線地域内の交通の処理や災害時の緊急車両の通行に供すること、地域の街づくりのために役立てること等をも目的として設置されるものであるというのであり、本件各付属街路事業は、本件鉄道事業と密接な関連を有するものの、これとは別個のそれぞれ独立した都市計画事業であることは明らかであるから、上告人らの本件各付属街路事業認可の取消しを求める上記の原告適格についても、個々の事業の認可ごとにその有無を検討すべきである。
 上告人らは、別紙上告人目録2及び3記載の各上告人らがそれぞれ別紙事業認可目録6及び7記載の各認可に係る事業の事業地内の不動産につき権利を有する旨をいうほかには、本件各付属街路事業に係る個々の事業の認可によって、自己のどのような権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがあるかについて、具体的な主張をしていない。そして、本件各付属街路事業に係る付属街路が、小田急小田原線の連続立体交差化に当たり、環境に配慮して日照への影響を軽減することを主たる目的として設置されるものであることに加え、これらの付属街路の規模等に照らせば、本件各付属街路事業の事業地内の不動産につき権利を有しない上告人らについて、本件各付属街路事業が実施されることにより健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれがあると認めることはできない。
 したがって、上告人らは、別紙上告人目録2記載の上告人らが別紙事業認可目録6記載の認可の、別紙上告人目録3記載の上告人らが別紙事業認可目録7記載の認可の、各取消しを求める原告適格を有するほかに、本件各付属街路事業認可の取消しを求める原告適格を有すると解することはできない。
 以上によれば、別紙上告人目録1ないし3記載の上告人らは、本件鉄道事業認可の取消しを求める原告適格を有するというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第35問 ア)
最高裁判所平成17年12月7日大法廷判決(小田急線連続立体交差事業認可処分取消請求事件)の次の判示を読み、同判決に関する下の記述について、その正誤を答えなさい。

【判示】
 「都市計画事業の認可に関する同法(注、都市計画法)の規定は、その趣旨及び目的にかんがみれば、事業地の周辺地域に居住する住民に対し、違法な事業に起因する騒音、振動等によってこのような健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるところ、前記のような被害の内容、性質、程度等に照らせば、この具体的利益は、一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。」

【記述】
都市計画事業の認可の取消訴訟における「処分の相手方以外の者」の原告適格の判断に当たって、「都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的」は、都市計画法の文言に基づいて解釈されなければならず、他の法令を参酌してはならない。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.12.7)は、「処分の相手方以外の者について上記の法律上保護された利益の有無を判断するに当たっては、当該処分の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮し、この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たっては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌し、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たっては、当該処分がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案すべきものである(同条2項参照)。」としている。
したがって、都市計画事業の認可の取消訴訟における「処分の相手方以外の者」の原告適格の判断に当たって、「都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的」は、他の法令を参酌することができる。

(H19 司法 第35問 イ)
最高裁判所平成17年12月7日大法廷判決(小田急線連続立体交差事業認可処分取消請求事件)の次の判示を読み、同判決に関する下の記述について、その正誤を答えなさい。

*【判示】は、(H19 司法 第35問 ア)を参照。

【記述】
都市計画事業の認可の取消訴訟における「処分の相手方以外の者」の原告適格が認められるためには、「都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益」が、公益的見地からのみならず、「個々人の個別的利益」としても保護されているものであることが必要である。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.12.7)は、「行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条1項にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。」としている。

(H19 司法 第35問 ウ)
最高裁判所17年12月7日大法廷判決(小田急線連続立体交差事業認可処分取消請求事件)の次の判示を読み、同判決に関する下の記述について、その正誤を答えなさい。

*【判示】は、(H19 司法 第35問 ア)を参照。

【記述】
都市計画事業の事業地の周辺地域に居住する者については、都市計画事業の認可が告示されることによって権利の制限を受ける事業地内の不動産につき権利を有していなくても、違法な事業に起因して侵害される利益の内容及び性質並びにその侵害の態様及び程度によっては、認可の取消訴訟における原告適格が認められることがある。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.12.7)は、「以上のような都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的、これらの規定が都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば、同法は、これらの規定を通じて、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るなどの公益的見地から都市計画施設の整備に関する事業を規制するとともに、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。したがって、都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち当該事業が実施されることにより騒音、振動等による健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある者は、当該事業の認可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有するものといわなければならない。」としている。

(H30 予備 第21問 ア)
鉄道の連続立体交差化を内容とする都市計画事業の事業地の周辺に居住する住民のうち、同事業に係る東京都環境影響評価条例所定の関係地域内に居住するXらが、都市計画法に基づいてされた同事業の認可の取消訴訟を提起した事案において、Xらの住所地と上記事業の事業地との距離関係などに加えて、上記条例の規定する関係地域が、対象事業を実施しようとする地域及びその周辺地域で当該対象事業の実施が環境に著しい影響を及ぼすおそれがある地域として知事が定めるものであることを考慮すれば、Xらは上記事業の認可の取消しを求める原告適格を有する。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.12.7)は、「このような事業に係る事業地の周辺地域に居住する住民が、当該地域に居住し続けることにより上記の被害を反復、継続して受けた場合、その被害は、これらの住民の健康や生活環境に係る著しい被害にも至りかねないものである。そして、都市計画事業の認可に関する同法の規定は、その趣旨及び目的にかんがみれば、事業地の周辺地域に居住する住民に対し、違法な事業に起因する騒音、振動等によってこのような健康又は生活環境に係る著しい被害を受けないという具体的利益を保護しようとするものと解されるところ、前記のような被害の内容、性質、程度等に照らせば、この具体的利益は、一般的公益の中に吸収解消させることが困難なものといわざるを得ない。以上のような都市計画事業の認可に関する都市計画法の規定の趣旨及び目的、これらの規定が都市計画事業の認可の制度を通して保護しようとしている利益の内容及び性質等を考慮すれば、同法は、これらの規定を通じて、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るなどの公益的見地から都市計画施設の整備に関する事業を規制するとともに、騒音、振動等によって健康又は生活環境に係る著しい被害を直接的に受けるおそれのある個々の住民に対して、そのような被害を受けないという利益を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むと解するのが相当である。」としている。
したがって、本肢におけるXらは事業の認可の取消しを求める原告適格を有する。

(R1 予備 第17問 イ)
都市計画法第13条第1項柱書きが、都市計画は公害防止計画に適合しなければならない旨を規定していることからすれば、都市計画の決定又は変更に当たっては、都市計画法の規定の趣旨及び目的に加えて、公害防止計画の根拠法令である環境基本法の公害防止計画に関する規定の趣旨及び目的を踏まえて行うことが求められる。

(正答)

(解説)
判例(最判平17.12.7)は、「公害防止計画に関するこれらの規定は、相当範囲にわたる騒音、振動等により健康又は生活環境に係る著しい被害が発生するおそれのある地域について、その発生を防止するために総合的な施策を講ずることを趣旨及び目的とするものと解される。そして、都市計画法13条1項柱書きが、都市計画は公害防止計画に適合しなければならない旨を規定していることからすれば、都市計画の決定又は変更に当たっては、上記のような公害防止計画に関する公害対策基本法の規定の趣旨及び目的を踏まえて行われることが求められるものというべきである。」としている。
総合メモ

建築基準法59条の2第1項に基づく総合建設許可に係る建築物により日照を阻害される近隣住民 最一小判平成14年3月28日

概要
建築基準法59条の2第1項に基づくいわゆる総合建設許可に係る建築物により日照を阻害される近隣住民は、総合建設許可の取消訴訟につき原告適格を有する。
判例
事案:建築基準法59条の2第1項に基づくいわゆる総合建設許可の取消訴訟において、当該建築物により日照を阻害される近隣住民は、総合建設許可の取消訴訟につき原告適格を有するかが問題となった。

判旨:「行政事件訴訟法9条は、取消訴訟の原告適格について規定するが、同条にいう当該処分の取消しを求めるにつき『法律上の利益を有する者』とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され、又は必然的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、かかる利益も上記の法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべきである。そして、当該行政法規が、不特定多数者の具体的利益をそれが帰属する個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むか否かは、当該行政法規の趣旨・目的、当該行政法規が当該処分を通して保護しようとしている利益の内容・性質等を考慮して判断すべきである…。
 上記の見地に立って、上告人らの本件総合設計許可の取消しを求める原告適格について検討する。 建築基準法は、建築物の敷地、構造等に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図ることなどを目的とするものである(1条)ところ、同法59条の2第1項は、同法52条の容積率制限、同法55条又は56条の高さ制限の特例として、一定規模以上の広さの敷地を有し、かつ、敷地内に一定規模以上の空地を有する場合に限り、安全、防火、衛生等の観点から支障がないと認められることなどの要件の下に、これらの制限を緩和することを認めている。容積率制限や高さ制限の規定の趣旨・目的等をも考慮すれば、同法59条の2第1項の規定は、これらの制限の緩和を認めて大規模な建築物を建築することを可能にする一方で、必要な空間を確保することにより、当該建築物及びその周辺の建築物における日照、通風、採光等を良好に保つなど快適な居住環境を確保することができるようにするとともに、当該建築物が地震、火災等により倒壊、炎上するなど万一の事態が生じた場合に、その周辺の建築物やその居住者に重大な被害が及ぶことのないよう適切な設計がされていることなどを審査し、安全、防火、衛生等の観点から支障がないと認められる場合にのみ許可をすることとしているものと解される…。
 以上のような同項の趣旨・目的、同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば、同項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。そうすると、総合設計許可に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物の居住者は、総合設計許可の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者として、その取消訴訟における原告適格を有すると解するのが相当である。」
過去問・解説
(R3 予備 第18問 エ)
建築基準法に基づくいわゆる総合設計許可について、同許可に係る建築物の倒壊、炎上等により直接的な被害を受けることが予想される範囲の地域に存する建築物に居住し、又はこれを所有する者は、その取消しを求める原告適格を有するが、同許可に係る建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者は、その原告適格を有しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平14.3.28)は、「以上のような同項の趣旨・目的、同項が総合設計許可を通して保護しようとしている利益の内容・性質等にかんがみれば、同項は、上記許可に係る建築物の建築が市街地の環境の整備改善に資するようにするとともに、当該建築物により日照を阻害される周辺の他の建築物に居住する者の健康を個々人の個別的利益としても保護すべきものとする趣旨を含むものと解すべきである。」として、日照を侵害される周辺の他の建造物に居住する者の原告適格を認めている。
総合メモ