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訴えの利益(行政処分の失効)
自動車等運転免許証の有効期間の経過 最二小判昭和40年8月2日
概要
道路交通法105条が、免許証の有効期間の更新を受けなかったときは免許は効力を失うものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によって争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。したがって、自動車等運転免許の取消処分の取消を求める訴訟の継続中、当該運転免許証の有効期間が経過した場合でも、その訴えは利益を失われない。
判例
事案:自動車等運転免許の取消処分の取消訴訟の係属中に、当該運転免許証の有効期間が経過した場合、当該取消訴訟の訴えの利益は失われるかが問題となった。
判旨:「被上告人が道路交通法(以下道交法と称する。)101条の規定に従い、免許証の有効期間の更新を受けるために、その期間の満了する日の1月前から当該期間の満了の日までの間に上告人に対して適性検査を求めなかったのは、取消判決が確定しない以上、本件免許取消処分はなお効力を有し、右更新の手続をとりがたかったためと認められる。したがって、その免許取消処分が違法で取り消されるべきものであるかぎり、右更新のできなかったのは、これを上告人の違法処分に基づくものということができる。そして右道交法101条が、免許証有効期間満了にあたり適性検査を行ない、その結果自動車等の運転に支障がないと認められる者については免許証の有効期間を更新して免許を存続させることにし、同法105条が、免許証の有効期間の更新を受けなかったときは免許は効力を失うものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、その運転適性を維持しているかどうかについての定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、これら規定は、本件のように免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によって争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。むしろかような取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」
判旨:「被上告人が道路交通法(以下道交法と称する。)101条の規定に従い、免許証の有効期間の更新を受けるために、その期間の満了する日の1月前から当該期間の満了の日までの間に上告人に対して適性検査を求めなかったのは、取消判決が確定しない以上、本件免許取消処分はなお効力を有し、右更新の手続をとりがたかったためと認められる。したがって、その免許取消処分が違法で取り消されるべきものであるかぎり、右更新のできなかったのは、これを上告人の違法処分に基づくものということができる。そして右道交法101条が、免許証有効期間満了にあたり適性検査を行ない、その結果自動車等の運転に支障がないと認められる者については免許証の有効期間を更新して免許を存続させることにし、同法105条が、免許証の有効期間の更新を受けなかったときは免許は効力を失うものとしたのは、現に免許証を行使しつつある者に対し、その運転適性を維持しているかどうかについての定期検査を強行し、不適格者には適宜の処置をとる目的に出でたものであることにかんがみれば、これら規定は、本件のように免許が現在取り消されており、その取消しの適否が訴訟によって争われている場合についてまで適用を予定したものとは解しがたい。むしろかような取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 イ)
運転免許取消処分の取消訴訟の係属中に運転免許証の有効期間が経過したときは、もはや運転免許証の更新を受けることができないから、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
運転免許取消処分の取消訴訟の係属中に運転免許証の有効期間が経過したときは、もはや運転免許証の更新を受けることができないから、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭40.8.2)は、本肢と同種の事案において、「取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」としている。
したがって、有効期間の経過によっても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。
判例(最判昭40.8.2)は、本肢と同種の事案において、「取消処分の係争中の免許については、その取消処分の取消しが確定して免許証を行使しうる状態に復帰した際に、その適性検査の時期に至ったものとして取り扱うのが相当であり、道交法上もそのような取扱いを許されないとする根拠は認められない。してみれば、本件被上告人の免許証の有効期間の経過は、なんら本件訴の利益の存続に影響するところはないと解するのを相当とする。」としている。
したがって、有効期間の経過によっても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。
総合メモ
自動車運転免許効力停止処分後、無違反・無処分で1年を経過した場合 最三小判昭和55年11月25日
概要
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、免許の効力停止期間を経過し、かつ、右処分の日から無違反・無処分で1年を経過したときは、右処分の取消によって回復すべき法律上の利益を有しない。
判例
事案:自動車運転免許効力停止処分の取消訴訟において、当該処分の後、無違反・無処分で1年を経過した場合に、処分による不利益を受けるおそれが消滅したとして、かかる処分の取消しを求める訴えの利益は消滅するかが問題となった。
判旨:「原審が適法に確定したところによれば、福井県警察本部長は、昭和48年12月17日被上告人に対し自動車運転免許の効力を30日間停止する旨の処分(以下『本件原処分』という。)をしたが、同日免許の効力停止期間を29日短縮した、被上告人は、本件原処分の日から満1年間、無違反・無処分で経過した、というのである。右事実によると本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。この点に関して、原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」
判旨:「原審が適法に確定したところによれば、福井県警察本部長は、昭和48年12月17日被上告人に対し自動車運転免許の効力を30日間停止する旨の処分(以下『本件原処分』という。)をしたが、同日免許の効力停止期間を29日短縮した、被上告人は、本件原処分の日から満1年間、無違反・無処分で経過した、というのである。右事実によると本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。この点に関して、原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」
過去問・解説
(H19 司法 第34問 ア)
運転免許効力停止処分についてその効力停止期間が経過したときは、当該処分が前歴となって道路交通法上不利益を受けるおそれがあるとしても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
運転免許効力停止処分についてその効力停止期間が経過したときは、当該処分が前歴となって道路交通法上不利益を受けるおそれがあるとしても、処分の取消しを求める訴えの利益は失われる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」として、不利益を受けるおそれが消滅したことを根拠として訴えの利益を否定している。
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」として、不利益を受けるおそれが消滅したことを根拠として訴えの利益を否定している。
(H19 司法 第34問 ウ)
運転免許効力停止処分の前歴があることにより、名誉、感情、信用等を損なう可能性が継して存在するとしても、それは処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであるから、処分の取消しを求める訴えの利益があることの根拠とするのは相当でない。
運転免許効力停止処分の前歴があることにより、名誉、感情、信用等を損なう可能性が継して存在するとしても、それは処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであるから、処分の取消しを求める訴えの利益があることの根拠とするのは相当でない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。
(H28 予備 第19問 ア)
道路交通法に基づき、自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、無違反、無処分で法定の期間を経過し、以後、前歴のない者として取り扱われるに至ったとしても、当該処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在し、その程度は重大なものであって、それを排除することは法の保護に値する利益であるといえるから、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有する。
道路交通法に基づき、自動車運転免許の効力停止処分を受けた者は、無違反、無処分で法定の期間を経過し、以後、前歴のない者として取り扱われるに至ったとしても、当該処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在し、その程度は重大なものであって、それを排除することは法の保護に値する利益であるといえるから、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。
したがって、処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在するとしても、それを排除することは法の保護に値する利益とはいえず、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有しない。
判例(最判昭55.11.25)は、「原審は、被上告人には、本件原処分の記載のある免許証を所持することにより警察官に本件原処分の存した事実を覚知され、名誉、感情、信用等を損なう可能性が常時継続して存在するとし、その排除は法の保護に値する被上告人の利益であると解して本件裁決取消の訴を適法とした。しかしながら、このような可能性の存在が認められるとしても、それは本件原処分がもたらす事実上の効果にすぎないものであり、これをもって被上告人が本件裁決取消の訴によって回復すべき法律上の利益を有することの根拠とするのは相当でない。」としている。
したがって、処分の記載のある免許証を所持することにより、名誉、信用等を損なう可能性が継続して存在するとしても、それを排除することは法の保護に値する利益とはいえず、当該処分の取消しにつき、訴えの利益を有しない。
(R3 予備 第19問 イ)
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者について、その効力停止期間が経過しても、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。
自動車運転免許の効力停止処分を受けた者について、その効力停止期間が経過しても、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」としている。
したがって、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないといえる。
判例(最判昭55.11.25)は、「本件原処分の効果は右処分の日1日の期間の経過によりなくなったものであり、また、本件原処分の日から1年を経過した日の翌日以降、被上告人が本件原処分を理由に道路交通法上不利益を受ける虞がなくなったことはもとより、他に本件原処分を理由に被上告人を不利益に取り扱いうることを認めた法令の規定はないから、行政事件訴訟法9条の規定の適用上、被上告人は、本件原処分及び本件裁決の取消によって回復すべき法律上の利益を有しないというべきである。」としている。
したがって、当該処分を理由に道路交通法上不利益を受けるおそれがある期間が経過していないときは、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないといえる。
総合メモ
建築基準法6条1項による建築確認を受けた建築物の建築等の工事が完了した場合 最二小判昭和59年10月26日
概要
建築基準法6条1項による確認を受けた建築物の建築等の工事が完了したときは、右確認の取消を求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:建築を許可する旨の確認処分の取消訴訟において、工事が完了した場合にはその処分の取消しを求める訴えの利益が失われるかが問題となった。
判旨:「建築基準法によれば、建築主は、同法6条1項の建築物の建築等の工事をしようとする場合においては、右工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下『建築関係規定』という。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(6条1項。以下この確認を『建築確認』という。)、建築確認を受けない右建築物の建築等の工事は、することができないものとされ(6条5項)、また、建築主は、右工事を完了した場合においては、その旨を建築主事に届け出なければならず(7条1項)、建築主事が右届出を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを検査し(7条2項)、適合していることを認めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならないものとされている(7条3項)。そして、特定行政庁は、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については、建築主等に対し、当該建築物の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(9条1項。以下この命令を『違反是正命令』という。)、とされている。これらの一連の規定に照らせば、建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。しかしながら、右工事が完了した後における建築主事等の検査は、当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを基準とし、同じく特定行政庁の違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準とし、いずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準とするものでない上、違反是正命令を発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているから、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」
判旨:「建築基準法によれば、建築主は、同法6条1項の建築物の建築等の工事をしようとする場合においては、右工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下『建築関係規定』という。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(6条1項。以下この確認を『建築確認』という。)、建築確認を受けない右建築物の建築等の工事は、することができないものとされ(6条5項)、また、建築主は、右工事を完了した場合においては、その旨を建築主事に届け出なければならず(7条1項)、建築主事が右届出を受理した場合においては、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを検査し(7条2項)、適合していることを認めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならないものとされている(7条3項)。そして、特定行政庁は、建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に違反した建築物又は建築物の敷地については、建築主等に対し、当該建築物の除却その他これらの規定に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる(9条1項。以下この命令を『違反是正命令』という。)、とされている。これらの一連の規定に照らせば、建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。しかしながら、右工事が完了した後における建築主事等の検査は、当該建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを基準とし、同じく特定行政庁の違反是正命令は、当該建築物及びその敷地が建築基準法並びにこれに基づく命令及び条例の規定に適合しているかどうかを基準とし、いずれも当該建築物及びその敷地が建築確認に係る計画どおりのものであるかどうかを基準とするものでない上、違反是正命令を発するかどうかは、特定行政庁の裁量にゆだねられているから、建築確認の存在は、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H20 司法 第35問 エ)
建築確認の取消訴訟の係属中に、問題のマンションの建築工事が完了した場合であっても、建築確認が違法であるとして判決でそれが取り消されれば、その判決の拘束力によって、行政庁は、建築物に関する完了検査についての検査済証の交付を拒否することや違反是正命令を発することを義務付けられるから、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われない。
建築確認の取消訴訟の係属中に、問題のマンションの建築工事が完了した場合であっても、建築確認が違法であるとして判決でそれが取り消されれば、その判決の拘束力によって、行政庁は、建築物に関する完了検査についての検査済証の交付を拒否することや違反是正命令を発することを義務付けられるから、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
(H28 予備 第19問 ウ)
建築基準法に基づく建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法的効果が付与されているものにすぎないが、建築確認が違法であるとして判決で取り消されれば、相当程度の確実さをもって、工事完了後、建築主事等において検査済証の交付を拒否することになるか、又は特定行政庁において違反是正命令を発すべきことになるのであるから、当該工事が完了した場合においても、その取消しを求める訴えの利益は失われない。
建築基準法に基づく建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法的効果が付与されているものにすぎないが、建築確認が違法であるとして判決で取り消されれば、相当程度の確実さをもって、工事完了後、建築主事等において検査済証の交付を拒否することになるか、又は特定行政庁において違反是正命令を発すべきことになるのであるから、当該工事が完了した場合においても、その取消しを求める訴えの利益は失われない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、建築基準法6条1項に基づく建築確認に係る工事が完了した場合、建築確認の取消訴訟の訴えの利益が失われないかが問題となった事案において、「建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。」としている。
他方、本判決は続けて、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、工事が完了した場合には、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例(最判昭59.10.26)は、建築基準法6条1項に基づく建築確認に係る工事が完了した場合、建築確認の取消訴訟の訴えの利益が失われないかが問題となった事案において、「建築確認は、建築基準法6条1項の建築物の建築等の工事が着手される前に、当該建築物の計画が建築関係規定に適合していることを公権的に判断する行為であって、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果が付与されており、建築関係規定に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。」としている。
他方、本判決は続けて、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、工事が完了した場合には、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われる。
(R1 予備 第19問 ウ)
教員:建築基準法に基づく建築確認は、それがなければ適法に建築工事をすることができないという法的効果が付与されているところ、建築工事が完了して建築物が完成すると、建築確認が違法であるとして取り消されたとしても、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、当該建築物を除却することは不可能であると考えられるが、そのような事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄であって、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものではない。
教員:建築基準法に基づく建築確認は、それがなければ適法に建築工事をすることができないという法的効果が付与されているところ、建築工事が完了して建築物が完成すると、建築確認が違法であるとして取り消されたとしても、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、当該建築物を除却することは不可能であると考えられるが、そのような事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄であって、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものではない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、建物が完成した場合の事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄ではなく、訴えの利益の判断で考慮される事柄であり、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものである。
判例(最判昭59.10.26)は、「たとえ建築確認が違法であるとして判決で取り消されたとしても、検査済証の交付を拒否し又は違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずるものではない。したがって、建築確認は、それを受けなければ右工事をすることができないという法的効果を付与されているにすぎないものというべきであるから、当該工事が完了した場合においては、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない。」としている。
したがって、建物が完成した場合の事情は、事情判決に関する規定の適用に際して考慮されるべき事柄ではなく、訴えの利益の判断で考慮される事柄であり、建築確認の取消しを求める訴えの利益を消滅させるものである。
総合メモ
都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた場合 最二小判平成5年9月10日
概要
都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、右許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:都市計画法29条に基づく 開発許可処分の取消しを求めて提起した取消訴訟において、工事が完了し検査済証が交付された後においては訴えの利益が失われるかが問題となった。
判旨:「都市計画法29条ないし31条及び33条の規定するところによれば、同法29条に基づく許可(以下、この許可を『開発許可』という。)は、あらかじめ申請に係る開発行為が同法33条所定の要件に適合しているかどうかを公権的に判断する行為であって、これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないという法的効果を有するものであるが、許可に係る開発行為に関する工事が完了したときは、開発許可の有する右の法的効果は消滅するものというべきである。そこで、このような場合にも、なお開発許可の取消しを求める法律上の利益があるか否かについて検討するのに、同法81条1項1号は、建設大臣又は都道府県知事は、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反した者に対して、違反を是正するため必要な措置を採ることを命ずることができる(以下、この命令を『違反是正命令』という。)としているが、同法29条ないし31条及び33条の各規定に基づく開発行為に関する規制の趣旨、目的にかんがみると、同法は、33条所定の要件に適合する場合に限って開発行為を許容しているものと解するのが相当であるから、客観的にみて同法33条所定の要件に適合しない開発行為について過って開発許可がされ、右行為に関する工事がされたときは、右工事を行った者は、同法81条1項1号所定の『この法律に違反した者』に該当するものというべきである。したがって、建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」
判旨:「都市計画法29条ないし31条及び33条の規定するところによれば、同法29条に基づく許可(以下、この許可を『開発許可』という。)は、あらかじめ申請に係る開発行為が同法33条所定の要件に適合しているかどうかを公権的に判断する行為であって、これを受けなければ適法に開発行為を行うことができないという法的効果を有するものであるが、許可に係る開発行為に関する工事が完了したときは、開発許可の有する右の法的効果は消滅するものというべきである。そこで、このような場合にも、なお開発許可の取消しを求める法律上の利益があるか否かについて検討するのに、同法81条1項1号は、建設大臣又は都道府県知事は、この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこれらの規定に基づく処分に違反した者に対して、違反を是正するため必要な措置を採ることを命ずることができる(以下、この命令を『違反是正命令』という。)としているが、同法29条ないし31条及び33条の各規定に基づく開発行為に関する規制の趣旨、目的にかんがみると、同法は、33条所定の要件に適合する場合に限って開発行為を許容しているものと解するのが相当であるから、客観的にみて同法33条所定の要件に適合しない開発行為について過って開発許可がされ、右行為に関する工事がされたときは、右工事を行った者は、同法81条1項1号所定の『この法律に違反した者』に該当するものというべきである。したがって、建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」
過去問・解説
(H23 共通 第30問 ウ)
都市計画法第29条に基づく開発許可の取消しを求める訴訟の係属中に、許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付されたとしても、当該開発許可が判決で取り消された場合には、違法な開発行為であることが公権的に確定され、その拘束力により都道府県知事等は同法第81条に基づく違反是正命令を発すべき義務を負うことになるから、開発許可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
都市計画法第29条に基づく開発許可の取消しを求める訴訟の係属中に、許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、検査済証が交付されたとしても、当該開発許可が判決で取り消された場合には、違法な開発行為であることが公権的に確定され、その拘束力により都道府県知事等は同法第81条に基づく違反是正命令を発すべき義務を負うことになるから、開発許可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平5.9.10)は、「たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」としている。
判例(最判平5.9.10)は、「たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。そうすると、開発行為に関する工事が完了し、検査済証の交付もされた後においては、開発許可が有する前記のようなその本来の効果は既に消滅しており、他にその取消しを求める法律上の利益を基礎付ける理由も存しないことになるから、開発許可の取消しを求める訴えは、その利益を欠くに至るものといわざるを得ない。」としている。
(H28 予備 第21問 ウ)
都市計画法では、客観的にみて許可基準の要件に適合しない開発行為に関する工事がされたときは、都道府県知事は、当該工事を行った者に対して、違反是正命令を発することができるから、開発許可が判決で取り消されたときは、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることになる。
都市計画法では、客観的にみて許可基準の要件に適合しない開発行為に関する工事がされたときは、都道府県知事は、当該工事を行った者に対して、違反是正命令を発することができるから、開発許可が判決で取り消されたときは、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることになる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平5.9.10)は、「建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。」としている。
したがって、開発許可が判決で取り消されたとしても、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることにはならない。
判例(最判平5.9.10)は、「建設大臣又は都道府県知事は、右のような工事を行った者に対して、同法81条1項1号の規定に基づき違反是正命令を発することができるから、開発許可の存在は、違反是正命令を発する上において法的障害となるものではなく、また、たとえ開発許可が違法であるとして判決で取り消されたとしても、違反是正命令を発すべき法的拘束力を生ずるものでもないというべきである。」としている。
したがって、開発許可が判決で取り消されたとしても、当該取消判決に違反是正命令を発すべき法的拘束力が生ずることにはならない。
総合メモ
土地改良法による認可を受けた土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合 最二小判平成4年1月24日
概要
町営の土地改良事業の工事等が完了して原状回復が社会通念上不可能となった場合であっても、右事業の施行の認可の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
判例
事案:土地改良事業施工認可後、土地改良工事が完了し、換地計画の認可がなされ、換地処分が行われ、換地処分の登記の完了にまで至った。このような場合に、同認可の取消訴訟において、訴えの利益が失われるかが問題となった。
判旨:「本件認可処分は、本件事業の施行者である八鹿町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」
判旨:「本件認可処分は、本件事業の施行者である八鹿町に対し、本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。そして、本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第36問 ア)
本判決は、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、原状回復が不可能であるとの事情は、行政事件訴訟法第31条の事情判決の適用に関して考慮されるべき事柄であって、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟の訴えの利益を消滅させるものではないとしている。
本判決は、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、原状回復が不可能であるとの事情は、行政事件訴訟法第31条の事情判決の適用に関して考慮されるべき事柄であって、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟の訴えの利益を消滅させるものではないとしている。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
(H18 司法 第36問 イ)
本判決は、土地改良事業の施行認可処分が取り消されれば、同処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分の法的効力が影響を受けることを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。
本判決は、土地改良事業の施行認可処分が取り消されれば、同処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分の法的効力が影響を受けることを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。」として、訴えの利益を認めている。
判例(最判平4.1.24)は、「本件事業施行地域内の土地につき土地改良事業を施行することを認可するもの、すなわち、土地改良事業施行権を付与するものであり、本件事業において、本件認可処分後に行われる換地処分等の一連の手続及び処分は、本件認可処分が有効に存在することを前提とするものであるから、本件訴訟において本件認可処分が取り消されるとすれば、これにより右換地処分等の法的効力が影響を受けることは明らかである。」として、訴えの利益を認めている。
(H18 司法 第36問 ウ)
本判決は、社会通念上、原状回復が法的に不可能となった場合において、原告が採り得る手段は損害賠償請求のみであり、同請求の前提として、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。
本判決は、社会通念上、原状回復が法的に不可能となった場合において、原告が採り得る手段は損害賠償請求のみであり、同請求の前提として、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としている。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としており、社会通念上、原状回復が不可能となった場合に備えて土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことには言及していない。
したがって、本判決は、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としていない。
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としており、社会通念上、原状回復が不可能となった場合に備えて土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことには言及していない。
したがって、本判決は、土地改良事業の施行認可処分の取消訴訟を提起しておかなければならないことを、訴えの利益を根拠付ける理由としていない。
(H23 共通 第30問 ア)
町営土地改良事業の施行認可処分の取消しを求める訴訟の係属中に、事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会通念上事業施行以前の原状に回復することが不可能になったとしても、認可処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
町営土地改良事業の施行認可処分の取消しを求める訴訟の係属中に、事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会通念上事業施行以前の原状に回復することが不可能になったとしても、認可処分の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
(R3 予備 第19問 ア)
土地改良事業施行認可処分の取消訴訟の係属中にその事業計画に係る工事及び換地処分が完了したときは、事業施行地域を原状に回復することは社会通念上不可能であり、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。
土地改良事業施行認可処分の取消訴訟の係属中にその事業計画に係る工事及び換地処分が完了したときは、事業施行地域を原状に回復することは社会通念上不可能であり、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
したがって、原状回復が不可能であるとしても、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。
判例(最判平4.1.24)は、「本件訴訟において、本件認可処分が取り消された場合に、本件事業施行地域を本件事業施行以前の原状に回復することが、本件訴訟係属中に本件事業計画に係る工事及び換地処分がすべて完了したため、社会的、経済的損失の観点からみて、社会通念上、不可能であるとしても、右のような事情は、行政事件訴訟法31条の適用に関して考慮されるべき事柄であって、本件認可処分の取消しを求める上告人の法律上の利益を消滅させるものではないと解するのが相当である。」としている。
したがって、原状回復が不可能であるとしても、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しない。
総合メモ
市街化区域内にある土地を開発区域として改正前都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた場合 最三小判平成11年10月26日
概要
市街化区域内にある土地を開発区域として改正前都市計画法29条による許可を受けた開発行為に関する工事が完了し、当該工事の検査済証の交付がされた後においては、開発区域内において予定された建築物についていまだ建築基準法6条に基づく建築確認がされていないとしても、開発許可の取消しを求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:土地の開発行為についての許可処分がなされ、当該開発工事が完了し検査済証が交付された後になされた、当該処分の取消訴訟において、予定建築物につき建築確認がされていないとしても、開発許可の取消を求める訴えの利益が失われるかが問題となった。
判旨:「原審の適法に確定したところによれば、(1)被上告人株式会社パスコ(以下『パスコ』という。)は、昭和63年10月19日、被上告人福岡市長(以下『市長』という。)に対し、市街化区域内にある土地を開発区域として、都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条に基づく許可を申請し、被上告人市長は、同月25日付けでこれを許可(以下『本件許可』という。)した、(2)被上告人パスコは、本件許可に係る開発行為に関する工事を完了し、被上告人市長は、被上告人パスコに対し、同法36条2項に基づき、平成3年6月24日付けで検査済証を交付した、というのである。 右事実関係の下においては、本件許可に係る開発区域内において予定された建築物について、いまだ建築基準法6条に基づく確認がされていないとしても、本件許可の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきである…。」
判旨:「原審の適法に確定したところによれば、(1)被上告人株式会社パスコ(以下『パスコ』という。)は、昭和63年10月19日、被上告人福岡市長(以下『市長』という。)に対し、市街化区域内にある土地を開発区域として、都市計画法(平成4年法律第82号による改正前のもの)29条に基づく許可を申請し、被上告人市長は、同月25日付けでこれを許可(以下『本件許可』という。)した、(2)被上告人パスコは、本件許可に係る開発行為に関する工事を完了し、被上告人市長は、被上告人パスコに対し、同法36条2項に基づき、平成3年6月24日付けで検査済証を交付した、というのである。 右事実関係の下においては、本件許可に係る開発区域内において予定された建築物について、いまだ建築基準法6条に基づく確認がされていないとしても、本件許可の取消しを求める訴えの利益は失われたというべきである…。」
総合メモ
建築基準法9条1項に基づき除却命令を受けた建築物に対する代執行が完了した場合 最三小判昭和48年3月6日
概要
建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた建築物について代執行による除却工事が完了したときは、右除却命令および代執行令書発付処分の取消を求める訴えの利益は失われる。
判例
事案:建築基準法9条1項に基づき除却命令を受けた建築物に対する代執行の完了後における右除却命令および代執行令書発付処分の取消訴訟において、代執行による除却工事が完了した場合に訴えの利益が失われるのかが問題となった。
判旨:「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」
判旨:「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」
過去問・解説
(H19 司法 第32問 イ)
Aは、自己所有建物の増築について建築基準法による確認を受けたが、その内容と異なり建築基準法令の規定に違反する工事を行ったとして、B県知事から工事停止命令を受け、その後、更に違反建築部分についての除却命令を受けた。しかし、Aは、これらの命令に従わないで建築を続行している。隣地の自宅に居住するCは、上記工事により、自宅とその敷地への日照がほとんど遮断され、通風も悪くなり、生活条件が著しく悪化する被害を受けるに至ったと主張している。
Aが代執行の違法を主張してその実施を阻止するための取消訴訟を提起していた場合において、B県知事が代執行を実施してそれが終了し、原状回復が不可能となったときでも、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるから、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われない。
Aは、自己所有建物の増築について建築基準法による確認を受けたが、その内容と異なり建築基準法令の規定に違反する工事を行ったとして、B県知事から工事停止命令を受け、その後、更に違反建築部分についての除却命令を受けた。しかし、Aは、これらの命令に従わないで建築を続行している。隣地の自宅に居住するCは、上記工事により、自宅とその敷地への日照がほとんど遮断され、通風も悪くなり、生活条件が著しく悪化する被害を受けるに至ったと主張している。
Aが代執行の違法を主張してその実施を阻止するための取消訴訟を提起していた場合において、B県知事が代執行を実施してそれが終了し、原状回復が不可能となったときでも、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるから、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭48.3.6)は、本肢と同種の事案において、「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」としている。
したがって、Aが代執行の違法を主張してその取消訴訟を提起していても、Bによる代執行が終了した場合には、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるとしても、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われる。
判例(最判昭48.3.6)は、本肢と同種の事案において、「建築基準法9条1項の規定により除却命令を受けた違反建築物について代執行による除却工事が完了した以上、右除却命令および代執行令書発付処分の取消しを求める訴は、その利益を有しないものと解すべきであ…る。」としている。
したがって、Aが代執行の違法を主張してその取消訴訟を提起していても、Bによる代執行が終了した場合には、代執行により被った損害について金銭的な賠償を求める必要があるとしても、その取消訴訟に係る訴えの利益は失われる。
総合メモ
行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合における先行の処分の取消しを求める訴えの利益 最三小判平成27年3月3日
概要
行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分を受けた者は、将来において上記後行の処分の対象となり得るときは、上記先行の処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する。
判例
事案:先行処分の取消訴訟において、先行処分自体の効力は期間経過によりなくなっているものの、行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合に、先行の処分の取消しを求める訴えの利益が認められるかが問題となった。
判旨:「行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することをその目的とし(1条1項)、行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準である処分基準(2条8号ハ)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないものと規定している(12条1項)。上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと、同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は、単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず、不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し、その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって、行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され、この意味において、当該行政庁の後行の処分における裁量権は当該処分基準に従って行使されるべきことがき束されており、先行の処分を受けた者が後行の処分の対象となるときは、上記特段の事情がない限り当該処分基準の定めにより所定の量定の加重がされることになるものということができる。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」
判旨:「行政手続法は、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することをその目的とし(1条1項)、行政庁は、不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準である処分基準(2条8号ハ)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないものと規定している(12条1項)。上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと、同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は、単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず、不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し、その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって、行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され、この意味において、当該行政庁の後行の処分における裁量権は当該処分基準に従って行使されるべきことがき束されており、先行の処分を受けた者が後行の処分の対象となるときは、上記特段の事情がない限り当該処分基準の定めにより所定の量定の加重がされることになるものということができる。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H29 予備 第15問 ウ)
行政手続法の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合であっても、処分基準は行政機関の内部的な指針を定めた内規の性質を有するにとどまるものであるから、当該行政庁が処分基準に定めのない事項に係る事情を考慮して後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることは、当該処分基準の定めに拘束されるべき特段の事情のない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となるものではない。
行政手続法の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合であっても、処分基準は行政機関の内部的な指針を定めた内規の性質を有するにとどまるものであるから、当該行政庁が処分基準に定めのない事項に係る事情を考慮して後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることは、当該処分基準の定めに拘束されるべき特段の事情のない限り、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用として違法となるものではない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。
(R1 予備 第19問 イ)
行政手続法に基づいて公にされている処分基準が、先行する処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重するとの不利益な取扱いを定めている場合、通常は、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、当該処分基準に基づく不利益な取扱いがされると考えられるが、当該処分基準は法令には当たらず、事実上不利益な取扱いがされるにすぎないため、先行する営業停止命令の停止期間が経過すれば、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われる。
行政手続法に基づいて公にされている処分基準が、先行する処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重するとの不利益な取扱いを定めている場合、通常は、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、当該処分基準に基づく不利益な取扱いがされると考えられるが、当該処分基準は法令には当たらず、事実上不利益な取扱いがされるにすぎないため、先行する営業停止命令の停止期間が経過すれば、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行する営業停止命令の停止期間が経過しても、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われないと解している。
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行する営業停止命令の停止期間が経過しても、当該営業停止命令の取消しを求める訴えの利益は失われないと解している。
(R3 予備 第16問 イ)
行政庁が行政手続法第12条第1項に従い処分基準を定めて公にしたが、後に、特段の事情がないにもかかわらず、当該処分基準の定めと異なる内容の処分をしたときは、当該処分は、同項に違反するものとして取り消されるのであり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の問題は生じない。
行政庁が行政手続法第12条第1項に従い処分基準を定めて公にしたが、後に、特段の事情がないにもかかわらず、当該処分基準の定めと異なる内容の処分をしたときは、当該処分は、同項に違反するものとして取り消されるのであり、裁量権の範囲の逸脱又はその濫用の問題は生じない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。
判例(最判平27.3.3)は、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。」としている。
(R3 予備 第19問 ウ)
行政手続法により定められ公にされている処分基準において、先行処分を受けたことを理由として後行処分に係る量定を加重する定めがあっても、そのような量定の加重は先行処分の法的効果によるものとはいえないから、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後は、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。
行政手続法により定められ公にされている処分基準において、先行処分を受けたことを理由として後行処分に係る量定を加重する定めがあっても、そのような量定の加重は先行処分の法的効果によるものとはいえないから、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後は、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後も、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないと解している。
判例(最判平27.3.3)は、本肢と同種の事案において、「行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば、裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され…る。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。」として、先行処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後も、当該処分の取消しを求める法律上の利益は消滅しないと解している。