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取消訴訟の審理(違法性の承継)
安全認定と建築確認の間における違法性の承継 最一小判平成21年12月17日
概要
安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために東京都建築安全条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許される。
判例
事案:東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合に、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるかが問題となった。
判旨:「本件条例4条1項は、大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより、避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり、これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。 平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では、同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は、建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが、この改正により、建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは、平成10年法律第100号により建築基準法が改正され、建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(法6条の2、7条の2、7条の4、77条の18以下参照)に伴う措置であり、上記のとおり判断機関が分離されたのは、接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり、建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが、安全上の支障の有無は、専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり、知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。 以上のとおり、建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。 他方、安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し、建築確認については、工事の施工者は、法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても、その者において、安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく、建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて、その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。 以上の事情を考慮すると、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」
判旨:「本件条例4条1項は、大規模な建築物の敷地が道路に接する部分の長さを一定以上確保することにより、避難又は通行の安全を確保することを目的とするものであり、これに適合しない建築物の計画について建築主は建築確認を受けることができない。同条3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。 平成11年東京都条例第41号による改正前の本件条例4条3項の下では、同条1項所定の接道要件を満たしていなくても安全上支障がないかどうかの判断は、建築確認をする際に建築主事が行うものとされていたが、この改正により、建築確認とは別に知事が安全認定を行うこととされた。これは、平成10年法律第100号により建築基準法が改正され、建築確認及び検査の業務を民間機関である指定確認検査機関も行うことができるようになったこと(法6条の2、7条の2、7条の4、77条の18以下参照)に伴う措置であり、上記のとおり判断機関が分離されたのは、接道要件充足の有無は客観的に判断することが可能な事柄であり、建築主事又は指定確認検査機関が判断するのに適しているが、安全上の支障の有無は、専門的な知見に基づく裁量により判断すべき事柄であり、知事が一元的に判断するのが適切であるとの見地によるものと解される。 以上のとおり、建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮するのである。 他方、安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない(これに対し、建築確認については、工事の施工者は、法89条1項に従い建築確認があった旨の表示を工事現場にしなければならない。)。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても、その者において、安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく、建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて、その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。 以上の事情を考慮すると、安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」
過去問・解説
(H24 共通 第22問 ア)
この判決は、安全認定に処分性が認められないことを前提として、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
この判決は、安全認定に処分性が認められないことを前提として、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平21.12.17)は、「本件条例4条…3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。」としており、これは、安全認定の処分性を肯定していると解されている。その上で、「安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許される…。」としている。
したがって、この判決は、安全認定に処分性が認められることを前提として、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものであるといえる。
判例(最判平21.12.17)は、「本件条例4条…3項に基づく安全認定は、同条1項所定の接道要件を満たしていない建築物の計画について、同項を適用しないこととし、建築主に対し、建築確認申請手続において同項所定の接道義務の違反がないものとして扱われるという地位を与えるものである。」としており、これは、安全認定の処分性を肯定していると解されている。その上で、「安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許される…。」としている。
したがって、この判決は、安全認定に処分性が認められることを前提として、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものであるといえる。
(H24 共通 第22問 イ)
この判決は、周辺住民には安全認定の取消訴訟の原告適格が認められないことを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
この判決は、周辺住民には安全認定の取消訴訟の原告適格が認められないことを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平21.12.17)は、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
したがって、この判決は、周辺住民等に安全認定の取消訴訟の原告適格が認められないことを考慮したのではなく、安全認定の適否を争うための手続的保障が周辺住民等これを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難であること等を考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
判例(最判平21.12.17)は、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
したがって、この判決は、周辺住民等に安全認定の取消訴訟の原告適格が認められないことを考慮したのではなく、安全認定の適否を争うための手続的保障が周辺住民等これを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難であること等を考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
(H24 共通 第22問 ウ)
この判決は、建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものであることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
この判決は、建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものであることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平21.12.17)は、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、…避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
判例(最判平21.12.17)は、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、…避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
(H24 共通 第22問 エ)
この判決は、安全認定の適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難であることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
この判決は、安全認定の適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難であることを考慮して、建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することができるとしたものである。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平21.12.17)は、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
判例(最判平21.12.17)は、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。」とした上で、「建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としている。
(H25 共通 第32問 ア)
マンションの新築の計画に関し建築基準法上の指定確認検査機関Aがした建築確認(以下「本件確認」という。)につき、同マンションの敷地の周辺に居住する者がAを被告としてその取消しを求めて訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。本件訴訟において、いわゆる違法性の承継を肯定した最高裁判所平成21年12月17日第一小法廷判決(民集63巻10号2631頁)の判示したところに従うと、本件確認に先立って東京都の特別区の区長Bが条例の規定に基づいてした接道義務についての安全認定(以下「先行処分」という。)の違法を主張することができるとされる場合の本件訴訟の審理等に関して記述として、次の記述は正しいか。
【記述】
本件訴訟において、Aが本件確認をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたことが認められる場合は、先行処分が違法であることは、本件確認の取消事由とならない。
マンションの新築の計画に関し建築基準法上の指定確認検査機関Aがした建築確認(以下「本件確認」という。)につき、同マンションの敷地の周辺に居住する者がAを被告としてその取消しを求めて訴訟(以下「本件訴訟」という。)を提起した。本件訴訟において、いわゆる違法性の承継を肯定した最高裁判所平成21年12月17日第一小法廷判決(民集63巻10号2631頁)の判示したところに従うと、本件確認に先立って東京都の特別区の区長Bが条例の規定に基づいてした接道義務についての安全認定(以下「先行処分」という。)の違法を主張することができるとされる場合の本件訴訟の審理等に関して記述として、次の記述は正しいか。
【記述】
本件訴訟において、Aが本件確認をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたことが認められる場合は、先行処分が違法であることは、本件確認の取消事由とならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平21.12.17)は、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮する…。」という点や、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても、その者において、安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく、建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて、その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。」という点を指摘した上で、「安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としており、行政庁が後行処分をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたかどうかについては、違法性の承継の肯否の判断資料としていない。
したがって、同判例に従えば、本件訴訟において、Aが本件確認をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたことが認められる場合であっても、先行処分が違法であることは、本件確認の取消事由となりうる。
判例(最判平21.12.17)は、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。そして、前記のとおり、安全認定は、建築主に対し建築確認申請手続における一定の地位を与えるものであり、建築確認と結合して初めてその効果を発揮する…。」という点や、「安全認定があっても、これを申請者以外の者に通知することは予定されておらず、建築確認があるまでは工事が行われることもないから、周辺住民等これを争おうとする者がその存在を速やかに知ることができるとは限らない…。そうすると、安全認定について、その適否を争うための手続的保障がこれを争おうとする者に十分に与えられているというのは困難である。仮に周辺住民等が安全認定の存在を知ったとしても、その者において、安全認定によって直ちに不利益を受けることはなく、建築確認があった段階で初めて不利益が現実化すると考えて、その段階までは争訟の提起という手段は執らないという判断をすることがあながち不合理であるともいえない。」という点を指摘した上で、「安全認定が行われた上で建築確認がされている場合、安全認定が取り消されていなくても、建築確認の取消訴訟において、安全認定が違法であるために本件条例4条1項所定の接道義務の違反があると主張することは許されると解するのが相当である。」としており、行政庁が後行処分をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたかどうかについては、違法性の承継の肯否の判断資料としていない。
したがって、同判例に従えば、本件訴訟において、Aが本件確認をするに当たり先行処分の適法性につき審査を尽くしたことが認められる場合であっても、先行処分が違法であることは、本件確認の取消事由となりうる。
総合メモ
事業認定と収用裁決の間における違法性の承継 札幌地判平成9年3月27日
概要
収用裁決の取消訴訟において、事業認定の違法性を主張することができる。
判例
事案:土地収用法に基づく事業認定(先行行為)と収用裁決(後行行為)との間で、違法性の承継が認められるかが問題となった。
判旨:「1 前記のとおり、本件事業認定については出訴期間内に取消しの訴えが提起されることなく、現在に至っているところ、原告らは、本件事業認定が土地収用法20条3号、4号の要件を欠き、その違法が本件収用裁決に承継される旨主張し、これに対し、被告は、違法の承継そのものを争うので、本件収用裁決の適法性を検討するに当たり、出訴期間を経過し、いわば形式的に確定した本件事業認定に関する違法性を本件収用裁決の取消訴訟である本件において争い得るのかどうかについて判断する。また、争い得るとした場合、先行処分の違法性をどの時点を基準に判断すべきであるのかが問題となるので、この点についても検討することとする。
2 土地収用法に基づく事業認定と収用裁決は、両処分の主体、法律要件及び法律効果は異なるものの、両処分が相結合して、当該事業において必要とされる土地を取得するという法的効果を完成させる一連の行政行為となっているものであり、このような場合には、先行処分たる事業認定が適法になされることが、後行処分たる収用裁決の要件となり、先行処分に違法があった場合には、その違法は当然に後行処分に承継されると解するのが相当である。なぜなら、土地収用手続における法的効果の完成は、最終処分である収用裁決に留保されており、事業認定が独立の争訟の対象となっているとしても、それは、行政上の法律関係の早期確定を意図して事業認定段階で争わなければ後の収用裁決段階で争うことを排除するという趣旨によるものではなく、国民の権利利益に大きな影響を与える行政行為について、各段階に争訟の機会を設けることにより、その手続を慎重ならしめ、もって、その手続及び内容の適正を確保しようとした趣旨であると解されるからである。また、事業認定をするのが建設大臣又は都道府県知事であるのに対し、収用又は使用の裁決をするのは収用委員会であって、この収用委員会に事業認定の適否を審査する権限がないが、これは被収用者からすれば行政庁相互間の権限分配の問題にすぎないし、仮に、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有するのであれば、事業認定が違法であるにもかかわらず収用委員会がこれを適法であるとして裁決した場合、その収用裁決自体にも固有の瑕疵があるということになるので違法性の承継を認める必要がないのであって、むしろ、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有していないからこそ、違法性の承継が認められなければならないのである。このように違法性の承継が認められることによって、前記のような法の趣旨が全うされるものである。
被告は、事業認定がなされると、土地所有者等が自己の権利に係る土地が起業地の範囲に含まれることが容易に判断できる起業地表示図が長期間縦覧されること、補償に関する事項について周知措置がとられていること、起業者が用地の大半を取得してから事業認定の申請をする実情等から、事業認定に際して権利者が不服申立ての機会を失することはほとんど考えられないことを理由に、服用裁決取消訴訟において事業認定の瑕疵を主張させる必要はない旨主張する。しかしながら、法の趣旨が事業認定段階で争わなければ後の収用裁決段階で争うことを排除するというものでないことは前記のとおりであるし、事業認定は土地所有者等に個別の通知がなされることなく、単に官報に告示されるだけであり、しかもその告示内容も、起業地として字名が表示される程度であって地番等の表示はなく、また起業地表示図が縦覧に供されるとしてもその場所は市町村役場にすぎず、土地所有者等が実際に縦覧する可能性は乏しいと考えられるのである。加えて一般的に土地所有者等は自己の所有する土地等について個別に収用又は使用裁決を受けて初めてその事態の深刻さを認識するのが通常であると考えられる。これらの諸点に照らすと、実際的にも収用裁決取消訴訟において出訴期間を経過した事業認定の取消事由を主張することができるとする必要があるというべきである。被告の主張は理由がない。
3 右2のように、後行処分が先行処分の違法性を承継すると解した場合、先行処分についていつの時点を基準にして違法性を判断すべきか、すなわち先行処分時か、それとも承継した後行処分時かが検討されなければならない。なぜなら、本件の場合は、事業認定が昭和61年12月16日になされているのに対し、収用裁決は平成元年2月3日になされ、その間に約2年3か月の期間の経過があり、事実関係等が変化していることも考えられるからである。
抗告訴訟が行政庁の処分の事後審査を本質とするものであり、本件のように事業認定と収用裁決の場合、後行の収用裁決を行う収用委員会には先行する事業認定の適否について審査する権限がないのであるから、先行処分の適否は、その処分当時の、いわば塩漬けされた状態で後行処分の適否の要素となっていると考えることができる。したがって、先行処分の適否は先行処分がなされた当時を基準として判断すべきものである。このように考えないと、先行処分時に存在せず、行政庁において考慮し得なかった事実関係に基づいて裁判所が先行処分の適法性を判断することとなり、行政庁の第一次判断権を奪うことになり、相当でない。右説示のとおりであるから、本件において先行する本件事業認定の違法判断の基準時は、本件事業認定時と解するのが相当である。
したがって、本件事業認定の適否を判断するに際しては、右認定処分時に存在していた事実等を基礎とし、右処分後の事実は、その処分当時の事情を推認する間接事実等として役立つ限りにおいて斟酌することとなる。
4 右のとおり、収用裁決に事業認定段階における違法性が承継されるから収用裁決取消訴訟である本件において、本件事業認定段階における違法性を争い得るし、その違法性は本件事業認定時を基準として判断されることになる。」
判旨:「1 前記のとおり、本件事業認定については出訴期間内に取消しの訴えが提起されることなく、現在に至っているところ、原告らは、本件事業認定が土地収用法20条3号、4号の要件を欠き、その違法が本件収用裁決に承継される旨主張し、これに対し、被告は、違法の承継そのものを争うので、本件収用裁決の適法性を検討するに当たり、出訴期間を経過し、いわば形式的に確定した本件事業認定に関する違法性を本件収用裁決の取消訴訟である本件において争い得るのかどうかについて判断する。また、争い得るとした場合、先行処分の違法性をどの時点を基準に判断すべきであるのかが問題となるので、この点についても検討することとする。
2 土地収用法に基づく事業認定と収用裁決は、両処分の主体、法律要件及び法律効果は異なるものの、両処分が相結合して、当該事業において必要とされる土地を取得するという法的効果を完成させる一連の行政行為となっているものであり、このような場合には、先行処分たる事業認定が適法になされることが、後行処分たる収用裁決の要件となり、先行処分に違法があった場合には、その違法は当然に後行処分に承継されると解するのが相当である。なぜなら、土地収用手続における法的効果の完成は、最終処分である収用裁決に留保されており、事業認定が独立の争訟の対象となっているとしても、それは、行政上の法律関係の早期確定を意図して事業認定段階で争わなければ後の収用裁決段階で争うことを排除するという趣旨によるものではなく、国民の権利利益に大きな影響を与える行政行為について、各段階に争訟の機会を設けることにより、その手続を慎重ならしめ、もって、その手続及び内容の適正を確保しようとした趣旨であると解されるからである。また、事業認定をするのが建設大臣又は都道府県知事であるのに対し、収用又は使用の裁決をするのは収用委員会であって、この収用委員会に事業認定の適否を審査する権限がないが、これは被収用者からすれば行政庁相互間の権限分配の問題にすぎないし、仮に、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有するのであれば、事業認定が違法であるにもかかわらず収用委員会がこれを適法であるとして裁決した場合、その収用裁決自体にも固有の瑕疵があるということになるので違法性の承継を認める必要がないのであって、むしろ、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有していないからこそ、違法性の承継が認められなければならないのである。このように違法性の承継が認められることによって、前記のような法の趣旨が全うされるものである。
被告は、事業認定がなされると、土地所有者等が自己の権利に係る土地が起業地の範囲に含まれることが容易に判断できる起業地表示図が長期間縦覧されること、補償に関する事項について周知措置がとられていること、起業者が用地の大半を取得してから事業認定の申請をする実情等から、事業認定に際して権利者が不服申立ての機会を失することはほとんど考えられないことを理由に、服用裁決取消訴訟において事業認定の瑕疵を主張させる必要はない旨主張する。しかしながら、法の趣旨が事業認定段階で争わなければ後の収用裁決段階で争うことを排除するというものでないことは前記のとおりであるし、事業認定は土地所有者等に個別の通知がなされることなく、単に官報に告示されるだけであり、しかもその告示内容も、起業地として字名が表示される程度であって地番等の表示はなく、また起業地表示図が縦覧に供されるとしてもその場所は市町村役場にすぎず、土地所有者等が実際に縦覧する可能性は乏しいと考えられるのである。加えて一般的に土地所有者等は自己の所有する土地等について個別に収用又は使用裁決を受けて初めてその事態の深刻さを認識するのが通常であると考えられる。これらの諸点に照らすと、実際的にも収用裁決取消訴訟において出訴期間を経過した事業認定の取消事由を主張することができるとする必要があるというべきである。被告の主張は理由がない。
3 右2のように、後行処分が先行処分の違法性を承継すると解した場合、先行処分についていつの時点を基準にして違法性を判断すべきか、すなわち先行処分時か、それとも承継した後行処分時かが検討されなければならない。なぜなら、本件の場合は、事業認定が昭和61年12月16日になされているのに対し、収用裁決は平成元年2月3日になされ、その間に約2年3か月の期間の経過があり、事実関係等が変化していることも考えられるからである。
抗告訴訟が行政庁の処分の事後審査を本質とするものであり、本件のように事業認定と収用裁決の場合、後行の収用裁決を行う収用委員会には先行する事業認定の適否について審査する権限がないのであるから、先行処分の適否は、その処分当時の、いわば塩漬けされた状態で後行処分の適否の要素となっていると考えることができる。したがって、先行処分の適否は先行処分がなされた当時を基準として判断すべきものである。このように考えないと、先行処分時に存在せず、行政庁において考慮し得なかった事実関係に基づいて裁判所が先行処分の適法性を判断することとなり、行政庁の第一次判断権を奪うことになり、相当でない。右説示のとおりであるから、本件において先行する本件事業認定の違法判断の基準時は、本件事業認定時と解するのが相当である。
したがって、本件事業認定の適否を判断するに際しては、右認定処分時に存在していた事実等を基礎とし、右処分後の事実は、その処分当時の事情を推認する間接事実等として役立つ限りにおいて斟酌することとなる。
4 右のとおり、収用裁決に事業認定段階における違法性が承継されるから収用裁決取消訴訟である本件において、本件事業認定段階における違法性を争い得るし、その違法性は本件事業認定時を基準として判断されることになる。」
過去問・解説
(H27 予備 第14問 イ)
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、事業認定が都道府県知事により行われた場合に、収用裁決の取消訴訟において原告は事業認定の違法性を主張できるという考え方を採るとしても、事業認定が国土交通大臣により行われた場合には、そのような違法性の主張を認めることはできない。
なお、ここでいう「事業認定の違法性」は、事業認定の無効事由には当たらない違法事由を指すものとする。
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、事業認定が都道府県知事により行われた場合に、収用裁決の取消訴訟において原告は事業認定の違法性を主張できるという考え方を採るとしても、事業認定が国土交通大臣により行われた場合には、そのような違法性の主張を認めることはできない。
なお、ここでいう「事業認定の違法性」は、事業認定の無効事由には当たらない違法事由を指すものとする。
(正答)✕
(解説)
確かに、平成21年判決(最判平21.12.17)は、安全認定と建築確認の間における違法性の承継を認める際に、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。」として、判断機関の同一性ないし一体性を考慮している。
しかし他方で、平成9年判決(札幌地判平9.3.27)は、事業認定と収用裁決の間における違法性の承継を認める際に、「事業認定をするのが建設大臣又は都道府県知事であるのに対し、収用又は使用の裁決をするのは収用委員会であって、この収用委員会に事業認定の適否を審査する権限がないが、これは被収用者からすれば行政庁相互間の権限分配の問題にすぎないし、仮に、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有するのであれば、事業認定が違法であるにもかかわらず収用委員会がこれを適法であるとして裁決した場合、その収用裁決自体にも固有の瑕疵があるということになるので違法性の承継を認める必要がないのであって、むしろ、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有していないからこそ、違法性の承継が認められなければならないのである。このように違法性の承継が認められることによって、前記のような法の趣旨が全うされるものである。」と述べている。
したがって、事業認定が国土交通大臣により行われた場合には、収用裁決の取消訴訟において原告は事業認定の違法性を主張できるという考え方を採ることができる。
確かに、平成21年判決(最判平21.12.17)は、安全認定と建築確認の間における違法性の承継を認める際に、「建築確認における接道要件充足の有無の判断と、安全認定における安全上の支障の有無の判断は、異なる機関がそれぞれの権限に基づき行うこととされているが、もともとは一体的に行われていたものであり、避難又は通行の安全の確保という同一の目的を達成するために行われるものである。」として、判断機関の同一性ないし一体性を考慮している。
しかし他方で、平成9年判決(札幌地判平9.3.27)は、事業認定と収用裁決の間における違法性の承継を認める際に、「事業認定をするのが建設大臣又は都道府県知事であるのに対し、収用又は使用の裁決をするのは収用委員会であって、この収用委員会に事業認定の適否を審査する権限がないが、これは被収用者からすれば行政庁相互間の権限分配の問題にすぎないし、仮に、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有するのであれば、事業認定が違法であるにもかかわらず収用委員会がこれを適法であるとして裁決した場合、その収用裁決自体にも固有の瑕疵があるということになるので違法性の承継を認める必要がないのであって、むしろ、収用委員会が事業認定の適否を審査する権限を有していないからこそ、違法性の承継が認められなければならないのである。このように違法性の承継が認められることによって、前記のような法の趣旨が全うされるものである。」と述べている。
したがって、事業認定が国土交通大臣により行われた場合には、収用裁決の取消訴訟において原告は事業認定の違法性を主張できるという考え方を採ることができる。
(H27 予備 第14問 ウ)
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できるという考え方を採る場合には、都道府県知事による事業認定の処分性を認めることはできない。なお、ここでいう「事業認定の違法性」は、事業認定の無効事由には当たらない違法事由を指すものとする。
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できるという考え方を採る場合には、都道府県知事による事業認定の処分性を認めることはできない。なお、ここでいう「事業認定の違法性」は、事業認定の無効事由には当たらない違法事由を指すものとする。
(正答)✕
(解説)
収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できる場合には、①事業認定と収用裁決の双方に処分性が認められるとした上で、違法性の承継を認める場合と、②事業認定の処分性が認められないとして、違法性の承継を問題とするまでもなく、収用裁決の取消訴訟において事業認定の違法性を主張できるとなる場合の2つがある。このように、事業認定に処分性が認められる場合であっても、違法性の承継を認めることにより、収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できるという考え方を採ることが可能である。
なお、裁判例(札幌地判平9.3.27)では、事業認定に処分性が認められることを前提として、事業認定と収用裁決の間における違法性の承継を認めている。
収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できる場合には、①事業認定と収用裁決の双方に処分性が認められるとした上で、違法性の承継を認める場合と、②事業認定の処分性が認められないとして、違法性の承継を問題とするまでもなく、収用裁決の取消訴訟において事業認定の違法性を主張できるとなる場合の2つがある。このように、事業認定に処分性が認められる場合であっても、違法性の承継を認めることにより、収用裁決の取消訴訟において原告は都道府県知事による事業認定の違法性を主張できるという考え方を採ることが可能である。
なお、裁判例(札幌地判平9.3.27)では、事業認定に処分性が認められることを前提として、事業認定と収用裁決の間における違法性の承継を認めている。