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損失補償制度
財産権規制の根拠法令上に損失補償規定が存在しない場合における直接憲法29条3項を根拠とする損失補償請求の可否 最大判昭和43年11月27日
概要
財産権規制の根拠法令上の補償規定の不存在が一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されないことを前提に、直接憲法29条3項を根拠にして補償請求をする余地があるとして、損失補償規定がないことをもって同項に違反することにはならない
判例
事案:財産権規制の根拠法令である河川附近地制限令第4条第2号、10条の各規定について、補償規定が存在しないことを理由に憲法29条3項に反しないかが問題となった。
判旨:「河川附近地制限令4条2号の定める制限は、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止するため、単に所定の行為をしようとする場合には知事の許可を受けることが必要である旨を定めているにすぎず、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。このように、同令4条2号の定め自体としては、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、右の程度の制限を課するには損失補償を要件とするものではなく、したがって、補償に関する規定のない同令4条2号の規定が所論のように憲法29条3項に違反し無効であるとはいえない。
…もっとも、本件記録に現われたところによれば、被告人は、名取川の堤外民有地の各所有者に対し賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、従来から同所の砂利を採取してきたところ、昭和34年12月11日宮城県告示第643号により、右地域が河川附近地に指定されたため、河川附近地制限令により、知事の許可を受けることなくしては砂利を採取することができなくなり、従来、賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、相当の資本を投入して営んできた事業が営み得なくなるために相当の損失を被る筋合であるというのである。そうだとすれば、その財産上の犠牲は、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく、憲法29条3項の趣旨に照らし、さらに河川附近地制限令1条ないし3条および5条による規制について同令7条の定めるところにより損失補償をすべきものとしていることとの均衡からいって、本件被告人の被った現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある。したがって、仮りに被告人に損失があったとしても補償することを要しないとした原判決の説示は妥当とはいえない。しかし、同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」
判旨:「河川附近地制限令4条2号の定める制限は、河川管理上支障のある事態の発生を事前に防止するため、単に所定の行為をしようとする場合には知事の許可を受けることが必要である旨を定めているにすぎず、この種の制限は、公共の福祉のためにする一般的な制限であり、原則的には、何人もこれを受忍すべきものである。このように、同令4条2号の定め自体としては、特定の人に対し、特別に財産上の犠牲を強いるものとはいえないから、右の程度の制限を課するには損失補償を要件とするものではなく、したがって、補償に関する規定のない同令4条2号の規定が所論のように憲法29条3項に違反し無効であるとはいえない。
…もっとも、本件記録に現われたところによれば、被告人は、名取川の堤外民有地の各所有者に対し賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、従来から同所の砂利を採取してきたところ、昭和34年12月11日宮城県告示第643号により、右地域が河川附近地に指定されたため、河川附近地制限令により、知事の許可を受けることなくしては砂利を採取することができなくなり、従来、賃借料を支払い、労務者を雇い入れ、相当の資本を投入して営んできた事業が営み得なくなるために相当の損失を被る筋合であるというのである。そうだとすれば、その財産上の犠牲は、公共のために必要な制限によるものとはいえ、単に一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲をこえ、特別の犠牲を課したものとみる余地が全くないわけではなく、憲法29条3項の趣旨に照らし、さらに河川附近地制限令1条ないし3条および5条による規制について同令7条の定めるところにより損失補償をすべきものとしていることとの均衡からいって、本件被告人の被った現実の損失については、その補償を請求することができるものと解する余地がある。したがって、仮りに被告人に損失があったとしても補償することを要しないとした原判決の説示は妥当とはいえない。しかし、同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第22問 ア)
旧河川附近地制限令上の河川附近地に指定された民有地において無許可で砂利を採取した行為につき、同令違反として事業者が起訴された事件において、河川附近地制限令は損失補償の規定が置かれていないため憲法第29条第3項に違反するとした被告人の主張は、損失補償が必要な場合でも直接同項に基づき国に対してそれを請求できる可能性があるので、失当であるとされた。
旧河川附近地制限令上の河川附近地に指定された民有地において無許可で砂利を採取した行為につき、同令違反として事業者が起訴された事件において、河川附近地制限令は損失補償の規定が置かれていないため憲法第29条第3項に違反するとした被告人の主張は、損失補償が必要な場合でも直接同項に基づき国に対してそれを請求できる可能性があるので、失当であるとされた。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭43.11.27)は、本肢と同種の事案において、「同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」としている。
判例(最判昭43.11.27)は、本肢と同種の事案において、「同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」としている。
(H29 予備 第23問 ア)
国家賠償と比べた損失補償の特徴の一つとして、損失補償について定めた一般法は存在しないことが挙げられるところ、個別法に損失補償を認める規定が存在しない場合には、裁判を提起して損失補償を求めることはできないと解されている。
国家賠償と比べた損失補償の特徴の一つとして、損失補償について定めた一般法は存在しないことが挙げられるところ、個別法に損失補償を認める規定が存在しない場合には、裁判を提起して損失補償を求めることはできないと解されている。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭43.11.27)は、「同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」としている。
したがって、個別法に損失補償を認める規定が存在しなくても、裁判を提起して損失補償を求める余地がある。
判例(最判昭43.11.27)は、「同令4条2号による制限について同条に損失補償に関する規定がないからといって、同条があらゆる場合について一切の損失補償を全く否定する趣旨とまでは解されず、本件被告人も、その損失を具体的に主張立証して、別途、直接憲法29条3項を根拠にして、補償請求をする余地が全くないわけではないから、単に一般的な場合について、当然に受忍すべきものとされる制限を定めた同令4条2号およびこの制限違反について罰則を定めた同令10条の各規定を直ちに違憲無効の規定と解すべきではない。」としている。
したがって、個別法に損失補償を認める規定が存在しなくても、裁判を提起して損失補償を求める余地がある。
総合メモ
平和条約が締結された結果、同条約の規定により在外資格を喪失した者が国に対しその喪失による損害について補償を請求することの可否 最大判昭和43年11月27日
概要
平和条約が締結された結果、同条約第14条(a)項21の規定により在外資産を喪失した者は、国に対しその喪失による損害について補償を請求することはできない。
判例
事案:平和条約が締結された結果、同条約第14条(a)項21の規定により在外資産を喪失した者は、国に対しその喪失による損失について補償を請求することはできるかが問題となった。
判旨:「わが国は、敗戦に伴い、ポツダム宣言を受諾し、降伏文書に調印し、連合国の占領管理に服することとなり、わが国の主権は、不可避的に連合軍総司令部の完全な支配の下におかれざるを得なかった。わが国は、いわゆる平和条約の締結によって、この状態から脱却して、その主権の回復を図ることになったのであるが、同条約は、当時未だ連合軍総司令部の完全な支配下にあつて、わが国の主権が回復されるかどうかが正に同条約の成否にかかっていたという特殊異例の状態のもとに締結されたものであり、同条約の内容についても、日本国政府は、連合国政府と実質的に対等の立場において自由に折衝し、連合国政府の要求をむげに拒否することができるような立場にはなかったのみならず、右のような敗戦国の立場上、平和条約の締結にあたって、やむを得ない場合には憲法の枠外で問題の解決を図ることも避けがたいところであったのである。在外資産の賠償への充当ということも、このような経緯で締結された平和条約の1条項に基づくものにほかならないのである。
ところで、戦争中から戦後占領時代にかけての国の存亡にかかわる非常事態にあっては、国民のすべてが、多かれ少なかれ、その生命・身体・財産の犠牲を堪え忍ぶべく余儀なくされていたのであって、これらの犠牲は、いずれも、戦争犠牲または戦争損害として、国民のひとしく受忍しなければならなかったところであり、右の在外資産の賠償への充当による損害のごときも、一種の戦争損害として、これに対する補償は、憲法の全く予想しないところというべきである。
平和条約14条(a)項は、わが国の賠償義務について、いわゆる役務賠償のほか、在外資産の処分をあげているが、これらの在外資産の処分については、イタリア平和条約等に見られるような敗戦国において補償すべき旨の規定または補償するよう配慮すべき旨の規定を設けていない。その趣旨とするところは、補償問題については、少なくとも国際的に、日本国を拘束する必要はなく、日本国が国内問題として適当に処理するところに委ねようとするにあり、したがって、平和条約上、国の補償義務の生ずる余地はないといわなければならない。
ところで、平和条約14条(a)項2(1)には、各連合国は、日本国民の在外資産を『差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する』旨規定している。この規定の趣旨とするところは、もともと外国の主権に基づき当該国の法制の支配下におかれ、戦争中から戦後にかけて敵産として接収管理されてきたわが国民の所有に属する在外資産を右規定に基づいて当該国が処分し得べきものとするにあって、さきに述べた平和条約締結の経緯からいって、わが国が自主的な公権力の行使に基づいて、日本国民の所有に属する在外資産を戦争賠償に充当する処分をしたものということはできず、この場合、わが国は、日本国民の右資産が当該外国において不利益な取扱いを受けないようにするために有するいわゆる異議権ないし外交保護権を行使しないことを約せしめられたにすぎないものといわなければならない。平和条約は、もとより、日本国政府の責任において締結したものではあるが、同条約中の右条項のごときは、上述の経緯に基づき不可避的に承認せざるを得なかったところであって、その結果として上告人らが被った在外資産の喪失による損害も、敗戦という事実に基づいて生じた一種の戦争損害とみるほかはないのである。
これを要するに、このような戦争損害は、他の種々の戦争損害と同様、多かれ少なかれ、国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであって、その補償のごときは、さきに説示したように、憲法29条3項の全く予想しないところで、同条項の適用の余地のない問題といわなければならない。」
判旨:「わが国は、敗戦に伴い、ポツダム宣言を受諾し、降伏文書に調印し、連合国の占領管理に服することとなり、わが国の主権は、不可避的に連合軍総司令部の完全な支配の下におかれざるを得なかった。わが国は、いわゆる平和条約の締結によって、この状態から脱却して、その主権の回復を図ることになったのであるが、同条約は、当時未だ連合軍総司令部の完全な支配下にあつて、わが国の主権が回復されるかどうかが正に同条約の成否にかかっていたという特殊異例の状態のもとに締結されたものであり、同条約の内容についても、日本国政府は、連合国政府と実質的に対等の立場において自由に折衝し、連合国政府の要求をむげに拒否することができるような立場にはなかったのみならず、右のような敗戦国の立場上、平和条約の締結にあたって、やむを得ない場合には憲法の枠外で問題の解決を図ることも避けがたいところであったのである。在外資産の賠償への充当ということも、このような経緯で締結された平和条約の1条項に基づくものにほかならないのである。
ところで、戦争中から戦後占領時代にかけての国の存亡にかかわる非常事態にあっては、国民のすべてが、多かれ少なかれ、その生命・身体・財産の犠牲を堪え忍ぶべく余儀なくされていたのであって、これらの犠牲は、いずれも、戦争犠牲または戦争損害として、国民のひとしく受忍しなければならなかったところであり、右の在外資産の賠償への充当による損害のごときも、一種の戦争損害として、これに対する補償は、憲法の全く予想しないところというべきである。
平和条約14条(a)項は、わが国の賠償義務について、いわゆる役務賠償のほか、在外資産の処分をあげているが、これらの在外資産の処分については、イタリア平和条約等に見られるような敗戦国において補償すべき旨の規定または補償するよう配慮すべき旨の規定を設けていない。その趣旨とするところは、補償問題については、少なくとも国際的に、日本国を拘束する必要はなく、日本国が国内問題として適当に処理するところに委ねようとするにあり、したがって、平和条約上、国の補償義務の生ずる余地はないといわなければならない。
ところで、平和条約14条(a)項2(1)には、各連合国は、日本国民の在外資産を『差し押え、留置し、清算し、その他何らかの方法で処分する権利を有する』旨規定している。この規定の趣旨とするところは、もともと外国の主権に基づき当該国の法制の支配下におかれ、戦争中から戦後にかけて敵産として接収管理されてきたわが国民の所有に属する在外資産を右規定に基づいて当該国が処分し得べきものとするにあって、さきに述べた平和条約締結の経緯からいって、わが国が自主的な公権力の行使に基づいて、日本国民の所有に属する在外資産を戦争賠償に充当する処分をしたものということはできず、この場合、わが国は、日本国民の右資産が当該外国において不利益な取扱いを受けないようにするために有するいわゆる異議権ないし外交保護権を行使しないことを約せしめられたにすぎないものといわなければならない。平和条約は、もとより、日本国政府の責任において締結したものではあるが、同条約中の右条項のごときは、上述の経緯に基づき不可避的に承認せざるを得なかったところであって、その結果として上告人らが被った在外資産の喪失による損害も、敗戦という事実に基づいて生じた一種の戦争損害とみるほかはないのである。
これを要するに、このような戦争損害は、他の種々の戦争損害と同様、多かれ少なかれ、国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであって、その補償のごときは、さきに説示したように、憲法29条3項の全く予想しないところで、同条項の適用の余地のない問題といわなければならない。」
過去問・解説
(R3 予備 第23問 イ)
日本国が平和条約により連合国に対する賠償義務を承認し、日本国民の在外資産を賠償に充当することに対して国として異議を唱えず承認した結果、在外資産を喪失することになった国民は、憲法第29条第3項に基づき国に補償を求めることができる。
日本国が平和条約により連合国に対する賠償義務を承認し、日本国民の在外資産を賠償に充当することに対して国として異議を唱えず承認した結果、在外資産を喪失することになった国民は、憲法第29条第3項に基づき国に補償を求めることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭43.11.27)は、「戦争損害は、他の種々の戦争損害と同様、多かれ少なかれ、国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであって、その補償のごときは、さきに説示したように、憲法29条3項の全く予想しないところで、同条項の適用の余地のない問題といわなければならない。」としている。
判例(最判昭43.11.27)は、「戦争損害は、他の種々の戦争損害と同様、多かれ少なかれ、国民のひとしく堪え忍ばなければならないやむを得ない犠牲なのであって、その補償のごときは、さきに説示したように、憲法29条3項の全く予想しないところで、同条項の適用の余地のない問題といわなければならない。」としている。
総合メモ
昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失 最三小判平成17年11月1日
概要
昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失について憲法29条3項に基づく補償請求をすることはできない。
判例
事案:昭和13年に決定された都市計画に係る計画道路の区域内にその一部が含まれる土地に建築物の建築の制限が課せられることによる損失について憲法29条3項を直接の根拠として損失補償請求をすることができるかが問題となった。
判旨:「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」
判旨:「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第38問 ウ)
都市計画決定に基づく都市計画道路の区域内に土地及び建物を所有している者が、当該都市計画に係る事業が決定から60年以上にわたって着手されないことにより、その間、当該土地への建築物の建築につき都市計画法第53条の建築制限を受けてきた場合には、そのような長期間の建築制限による損失は、通常、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えた特別の犠牲に当たるから、憲法第29条第3項の損失補償を必要とする。
【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)
都市計画決定に基づく都市計画道路の区域内に土地及び建物を所有している者が、当該都市計画に係る事業が決定から60年以上にわたって着手されないことにより、その間、当該土地への建築物の建築につき都市計画法第53条の建築制限を受けてきた場合には、そのような長期間の建築制限による損失は、通常、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えた特別の犠牲に当たるから、憲法第29条第3項の損失補償を必要とする。
【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢のような場合、特別の犠牲に当たらず、憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求することはできない。
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢のような場合、特別の犠牲に当たらず、憲法29条3項を直接の根拠として損失補償を請求することはできない。
(R6 予備 第23問 ア)
都市計画法第53条により、同条の施行区域内の土地に対し長期間にわたって建築制限が課されてきた場合、当該建築制限による損失は、その内容や程度にかかわらず、特別の犠牲として補償の対象となる。
【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)
都市計画法第53条により、同条の施行区域内の土地に対し長期間にわたって建築制限が課されてきた場合、当該建築制限による損失は、その内容や程度にかかわらず、特別の犠牲として補償の対象となる。
【参照条文】都市計画法
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一~五 (略)
2、3 (略)
(正答)✕
(解説)
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢における建築制限による損失は、その内容や程度が一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えていなければ特別の犠牲とならず、補償の対象とならない。
判例(最判平17.11.1)は、本肢と同種の事案において、「上告人らが受けた上記の損失は、一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えて特別の犠牲を課せられたものということがいまだ困難であるから、上告人らは、直接憲法29条3項を根拠として上記の損失につき補償請求をすることはできないものというべきである。」としている。
したがって、本肢における建築制限による損失は、その内容や程度が一般的に当然に受忍すべきものとされる制限の範囲を超えていなければ特別の犠牲とならず、補償の対象とならない。
総合メモ
都有行政財産である土地についての使用許可の取消し 最三小判昭和49年2月5日
概要
都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向って取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。
判例
事案:都有行政財産である土地について使用許可を取り消されたため借地権の確認と土地の引渡等を請求した事案において、使用権者は土地使用権喪失について補償を求めることができるかが問題となった。
判旨:「本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和32年6月29日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法24条)、これを行政財産に準用していた(同法19条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であって、これは憲法29条3項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であっても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。もっとも、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4および5は普通財産について補償の規定をもうけているだけで、行政財産についてこれをもうけていないが、そのことは、いまだ前記類推適用を否定する根拠にはならないと解される。そして、原判決の前記判示によれば、本件使用許可は期間を定めないものではあるが建物所有を目的とするというのであるから、前叙のところに従い右類推適用が肯定されるべきである。したがって、本件損失補償については、これを直接憲法29条3項にもとづいて論ずるまでもないのである。 そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法24条2項は『これに因って生じた損失』につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであって、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。この点につき、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4は、行政財産はその用途または目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる旨規定したのであるが、同法施行前においては、右改正前の地方自治法213条1項が公有財産の管理、処分等については条例の定めに委ねていたところ、本件については、昭和23年1月13日東京都条例第3号東京都都有財産条例3条および同条例全部を改正した昭和29年3月31日東京都条例第17号東京都都有財産条例12条において前記改正後の地方自治法238条の4と同旨の定めがされ、さらに古くは昭和19年3月9日東京都規則第4号東京都都有財産規則3条において同旨の定めがされていたのである(なお、国有財産法18条参照)。したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきよう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。 それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によって使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もっとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもってあたかも借地権取得に際し権利金を支払ったのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもって被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。」
判旨:「本件取消を理由とする損失補償に関する法律および都条例についてみるに、本件取消がされた当時(昭和32年6月29日)の地方自治法および都条例にはこれに関する規定を見出すことができない。しかし、当時の国有財産法は、すでに、普通財産を貸し付けた場合における貸付期間中の契約解除による損失補償の規定をもうけ(同法24条)、これを行政財産に準用していた(同法19条)ところ、国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であって、これは憲法29条3項の趣旨にも合致するところである。そして、また、右規定は、貸付期間中の解除に関するものであるが、期間の定めのない場合であっても使用許可の目的、内容ないし条件に照らし一応の使用予定期間を認めうるときは、これを期間の定めのある場合と別異に扱う理由がないから、この場合にも前記規定の類推適用が肯定されてしかるべきである。もっとも、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4および5は普通財産について補償の規定をもうけているだけで、行政財産についてこれをもうけていないが、そのことは、いまだ前記類推適用を否定する根拠にはならないと解される。そして、原判決の前記判示によれば、本件使用許可は期間を定めないものではあるが建物所有を目的とするというのであるから、前叙のところに従い右類推適用が肯定されるべきである。したがって、本件損失補償については、これを直接憲法29条3項にもとづいて論ずるまでもないのである。 そこで、この見地から、被上告人の本件損失補償請求を一部認容した原判決を是認することができるかどうかについてみるに、前記国有財産法24条2項は『これに因って生じた損失』につき補償すべきことを定めているが、使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべきところ、原判決の前記判示によれば、被上告人は、上告人から上告人所有の行政財産たる土地につき使用期間を定めないで使用の許可を受けていたが、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じて右使用許可が取り消されたものということができる。このような公有行政財産たる土地は、その所有者たる地方公共団体の行政活動の物的基礎であるから、その性質上行政財産本来の用途または目的のために利用されるべきものであって、これにつき私人の利用を許す場合にその利用上の法律関係をいかなるものにするかは、立法政策に委ねられているところと解される。この点につき、昭和38年法律第99号によって改正された地方自治法238条の4は、行政財産はその用途または目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる旨規定したのであるが、同法施行前においては、右改正前の地方自治法213条1項が公有財産の管理、処分等については条例の定めに委ねていたところ、本件については、昭和23年1月13日東京都条例第3号東京都都有財産条例3条および同条例全部を改正した昭和29年3月31日東京都条例第17号東京都都有財産条例12条において前記改正後の地方自治法238条の4と同旨の定めがされ、さらに古くは昭和19年3月9日東京都規則第4号東京都都有財産規則3条において同旨の定めがされていたのである(なお、国有財産法18条参照)。したがって、本件のような都有行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。すなわち、当該行政財産に右の必要を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきよう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。 それゆえ、被上告人は、むしろ、上告人に対し、本件行政財産についての右の必要のもとにされたと認めうる本件取消によって使用権が消滅することを受忍すべき立場にあると解されるから、被上告人が本件取消により土地使用権の喪失という積極的損失を受け、この損失につき補償を必要とするとした原判決の判断は、さらに首肯しうべき事情のないかぎり、これを是認することができないのである。もっとも、原判決は、被上告人が本件使用許可を受けた際上告人の依頼により本件土地を整理、宅地化するため相当の費用を支出したことをもってあたかも借地権取得に際し権利金を支払ったのと対比することができる旨判示しているが、右の一事をもって被上告人の使用権を借地権に比することはできないというべく、右の事情もいまだ原判決の前記判断を是認するに足りるものではない。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 ウ)
行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体にこのような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当であるから、上記の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合、補償が必要となることはない。
行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体にこのような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当であるから、上記の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合、補償が必要となることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」とした上で、「使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」としている。
したがって、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合にも、本判例にいう「特別の事情」が認められるのであれば、補償が必要となる。
判例(最判昭49.2.5)は、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」とした上で、「使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」としている。
したがって、当該行政財産本来の用途又は目的上の必要が生じたことを理由として許可を撤回する場合にも、本判例にいう「特別の事情」が認められるのであれば、補償が必要となる。
(H23 共通 第37問 ア)
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。
【甲群】
市が卸売市場を開設する区域内の土地について、地方自治法第238条の4第7項によりXが期間の定めのない使用許可を受けて店舗を営業していたところ、市長が卸売市場を拡幅する計画に伴い使用許可を撤回したために、Xが当該店舗で営業できなくなることによる損失
【参照条文】地方自治法
第238条の4 1~6 (略)
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8、9 (略)
【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。
【甲群】
市が卸売市場を開設する区域内の土地について、地方自治法第238条の4第7項によりXが期間の定めのない使用許可を受けて店舗を営業していたところ、市長が卸売市場を拡幅する計画に伴い使用許可を撤回したために、Xが当該店舗で営業できなくなることによる損失
【参照条文】地方自治法
第238条の4 1~6 (略)
7 行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。
8、9 (略)
【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。
(正答)F
(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、【甲群】と同種の事案において、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」としており、利用権は、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていることを示している。
判例(最判昭49.2.5)は、【甲群】と同種の事案において、「行政財産たる土地につき使用許可によって与えられた使用権は、それが期間の定めのない場合であれば、当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」としており、利用権は、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていることを示している。
(H25 司法 第23問 ウ)
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴い将来に向かって撤回することが許されたとしても、撤回に伴う財産的損害の補償が当然に不要となるとは限らない。
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴い将来に向かって撤回することが許されたとしても、撤回に伴う財産的損害の補償が当然に不要となるとは限らない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、行政財産である土地について使用許可を取り消されたという事案において、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであ…る。」として、原則として内在的の制約の範囲内であり、特別の犠牲が認められないため、損失補償は不要であるとしている。
しかし、本判例は続けて、「その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、例外的に損失補償が必要となる場合もあることを示している。
判例(最判昭49.2.5)は、行政財産である土地について使用許可を取り消されたという事案において、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであ…る。」として、原則として内在的の制約の範囲内であり、特別の犠牲が認められないため、損失補償は不要であるとしている。
しかし、本判例は続けて、「その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払いをしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、例外的に損失補償が必要となる場合もあることを示している。
(R3 予備 第14問 ア)
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴って将来に向かって撤回することは、法令上直接明文の規定がなくとも可能であるが、それによって不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じない。
行政庁が適法に行った行政行為をその後の事情の変化に伴って将来に向かって撤回することは、法令上直接明文の規定がなくとも可能であるが、それによって不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭49.2.5)は、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、損失補償が必要な場合もあることを示している。
しかし、本判例は、不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じないとまではしていない。
判例(最判昭49.2.5)は、「当該行政財産本来の用途または目的上の必要…を生じたときに右使用権が消滅することを余儀なくされるのは、ひっきょう使用権自体に内在する前記のような制約に由来するものということができるから、右使用権者は、行政財産に右の必要を生じたときは、原則として、地方公共団体に対しもはや当該使用権を保有する実質的理由を失うに至るのであって、その例外は、使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じたとか、使用許可に際し別段の定めがされている等により、行政財産についての右の必要にかかわらず使用権者がなお当該使用権を保有する実質的理由を有すると認めるに足りる特別の事情が存する場合に限られるというべきである。」として、損失補償が必要な場合もあることを示している。
しかし、本判例は、不利益を被る者に生じる損失を補償しなければ当該撤回の効力は生じないとまではしていない。
総合メモ
国が地下道を新設したことにより、消防法の定める離隔距離規定違反の状態となり、ガソリンタンクの移動を余儀なくされたことによる損失 最二小判昭和58年2月18日
概要
道路法70条1項の定める損失の補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむをえない必要があってした通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られ、道路工事の施行の結果、危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことを内容とする技術上の基準を定めた警察法規に違反する状態を生じ、危険物保有者が右の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされたことによって被った損失は、右補償の対象には属しない。
判例
事案:国道の交差点に地下横断歩道が新設された結果、同交差点に面する土地でガソリンスタンドを経営していたXが、消防法等の警察法規上の規制により埋設されていたガソリンタンクを移転しなければならなくなったため、その移転費用相当額について損失補償等を請求した事案において、当該移転費用が道路法70条1項の補償の対象となるかどうかが問題となった。
判旨:「道路法70条1項の規定は、道路の新設又は改築のための工事の施行によって当該道路とその隣接地との間に高低差が生ずるなど土地の形状の変更が生じた結果として、隣接地の用益又は管理に障害を来し、従前の用法に従ってその用益又は管理を維持、継続していくためには、用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を新たに設置し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合において、道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならないものとしたものであって、その補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があってした前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られると解するのが相当である。したがって、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被つたとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」
判旨:「道路法70条1項の規定は、道路の新設又は改築のための工事の施行によって当該道路とその隣接地との間に高低差が生ずるなど土地の形状の変更が生じた結果として、隣接地の用益又は管理に障害を来し、従前の用法に従ってその用益又は管理を維持、継続していくためには、用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を新たに設置し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合において、道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならないものとしたものであって、その補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があってした前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られると解するのが相当である。したがって、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被つたとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」
過去問・解説
(H23 共通 第37問 イ)
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。
【甲群】
Xが埋設した石油の導管が、近隣に新たに建築物が建築されたために、石油パイプライン事業法に基づく石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令第13条第1号に違反する状態となり、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用
【参照条文】石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令
第13条 導管を地下に埋設する場合は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
一 導管は、その外面から建築物、地下街、隧道その他の告示で定める工作物に対し告示で定める水平距離を有すること。
二~七 (略)
【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。
【甲群】
Xが埋設した石油の導管が、近隣に新たに建築物が建築されたために、石油パイプライン事業法に基づく石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令第13条第1号に違反する状態となり、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用
【参照条文】石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令
第13条 導管を地下に埋設する場合は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
一 導管は、その外面から建築物、地下街、隧道その他の告示で定める工作物に対し告示で定める水平距離を有すること。
二~七 (略)
【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。
(正答)A
(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、【甲群】と同種の事案において、「警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被ったとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。」としている。
したがって、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用は、警察規制による損失であるから損失補償が不要であるとするのが最も適切な理由である。
判例(最判昭58.2.18)は、【甲群】と同種の事案において、「警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被ったとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。」としている。
したがって、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用は、警察規制による損失であるから損失補償が不要であるとするのが最も適切な理由である。
(R6 予備 第23問 ウ)
X社が自己所有地の地下にガソリンタンクを適法に設置したところ、その後、国が地下道を新設したため、上記ガソリンタンクの設置状況が消防法違反の状態となりその移転を余儀なくされた場合でも、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
【参照条文】道路法
第70条 土地収用法第93条第1項の規定による場合の外、道路を新設し、又は改築したことに因り、当該道路に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、道路管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(中略)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。(以下略)
2~4 (略)
X社が自己所有地の地下にガソリンタンクを適法に設置したところ、その後、国が地下道を新設したため、上記ガソリンタンクの設置状況が消防法違反の状態となりその移転を余儀なくされた場合でも、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
【参照条文】道路法
第70条 土地収用法第93条第1項の規定による場合の外、道路を新設し、又は改築したことに因り、当該道路に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、道路管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(中略)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。(以下略)
2~4 (略)
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、本肢と同種の事案において、「原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」としている。
したがって、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
判例(最判昭58.2.18)は、本肢と同種の事案において、「原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」としている。
したがって、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
総合メモ
破壊消防に伴う損失補償の要件 最三小判昭和47年5月30日
概要
消防法29条3項にいう延焼の防止のために緊急の必要があったといえるためには、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要する。
判例
事案:Y村の消防団による消防活動によってXら所有の建物及び動産が破壊されたことについて、Xらが、Y村に対し、国家賠償法1条により損害賠償を請求した事案において、消防法29条3項における「消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるとき」の意義が問題となった。
判旨:「消防法29条によれば、(1)火災が発生しようとし、または発生した消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防吏員または消防団員が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条1項の場合)および(2)延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認められるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条2項の場合)には、そのために損害を受けた者があっても、その損失を補償することを要しないが、(3)右(1)および(2)にかかげた消防対象物および土地以外の消防対象物および土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条3項の場合)には、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があれば、その損失を補償しなければならないことが明らかである。すなわち、火災の際の消防活動により損害を受けた者がその損失の補償を請求しうるためには、当該処分等が、火災が発生しようとし、もしくは発生し、または延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地以外の消防対象物および土地に対しなされたものであり、かつ、右処分等が消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要するものといわなければならない。 ところで、これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係、ことに、原判決添付図面表示のB建物の東方約30メートルの距離にあつた御母衣旅館ではほとんど延焼の危険がなかったこと、風向は南ないし南々西から北ないし北々東であったが、風速は4ないし6メートル位で弱かったこと、右図面表示のト建物とル建物との間隔は5メートルあり、同図面表示のト、チ、リ、ヌの各建物はほとんど間隙なく接続していたが、ト建物とヌ建物との距離は約30メートルあったこと、バラック建構造の右建物をブルトーザーで破壊するには1棟につき3分位しか要しなかったこと、しかし、右図面表示のイ建物から北方約50メートルに1箇所、それから更に北方約50メートルに1箇所ガソリンスタンドがあったこと等に徴すれば、本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」
判旨:「消防法29条によれば、(1)火災が発生しようとし、または発生した消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防吏員または消防団員が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条1項の場合)および(2)延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認められるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条2項の場合)には、そのために損害を受けた者があっても、その損失を補償することを要しないが、(3)右(1)および(2)にかかげた消防対象物および土地以外の消防対象物および土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条3項の場合)には、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があれば、その損失を補償しなければならないことが明らかである。すなわち、火災の際の消防活動により損害を受けた者がその損失の補償を請求しうるためには、当該処分等が、火災が発生しようとし、もしくは発生し、または延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地以外の消防対象物および土地に対しなされたものであり、かつ、右処分等が消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要するものといわなければならない。 ところで、これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係、ことに、原判決添付図面表示のB建物の東方約30メートルの距離にあつた御母衣旅館ではほとんど延焼の危険がなかったこと、風向は南ないし南々西から北ないし北々東であったが、風速は4ないし6メートル位で弱かったこと、右図面表示のト建物とル建物との間隔は5メートルあり、同図面表示のト、チ、リ、ヌの各建物はほとんど間隙なく接続していたが、ト建物とヌ建物との距離は約30メートルあったこと、バラック建構造の右建物をブルトーザーで破壊するには1棟につき3分位しか要しなかったこと、しかし、右図面表示のイ建物から北方約50メートルに1箇所、それから更に北方約50メートルに1箇所ガソリンスタンドがあったこと等に徴すれば、本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」
過去問・解説
(R6 予備 第23問 イ)
旅館Aで火災が発生し、消防団長が消火活動に当たり、旅館Aに隣接する建物Bを破壊した際、建物Bへの延焼のおそれはなかったものの、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象とならない。
旅館Aで火災が発生し、消防団長が消火活動に当たり、旅館Aに隣接する建物Bを破壊した際、建物Bへの延焼のおそれはなかったものの、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象とならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭47.5.30)は、本肢と同種の事案において、「本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」としている。
したがって、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象となる。
判例(最判昭47.5.30)は、本肢と同種の事案において、「本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」としている。
したがって、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象となる。
総合メモ
旧都市計画法16条1項に基づき土地を収用する場合に被収用者に補償すべき価格 最一小判昭和48年10月18日
概要
旧都市計画法(大正8年法律第36号)16条1項に基づき土地を収用する場合、被収用者に対し土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの)によって補償すべき相当な価格を定めるにあたっては、当該都市計画事業のため右土地に課せられた建築制限を斟酌してはならない。
判例
事案:Xの土地について土地収用がなされたことから、Xが損失補償を求めた事案において、土地を収用する場合に、被収用者に対し補償すべき相当な価格を定めるにあたって、当該都市計画事業のため当該土地に課せられた建築制限の影響を斟酌することができるかが問題となった。
判旨:「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもつて補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要するものというべく、土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの。以下同じ。)は右のような趣旨を明らかにした規定と解すべきである。そして、右の理は、土地が都市計画事業のために収用される場合であっても、何ら、異なるものではなく、この場合、被収用地については、街路計画等施設の計画決定がなされたときには建築基準法44条2項に定める建築制限が、また、都市計画事業決定がなされたときには旧都市計画法11条、同法施行令11条、12条等に定める建築制限が課せられているが、前記のような土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。なるほど、法律上右のような建築制限に基づく損失を補償する旨の明文の規定は設けられていないが、このことは、単に右の損失に対し独立に補償することを要しないことを意味するに止まるものと解すべきであり、損失補償規定の存在しないことから、右のような建築制限の存する土地の収用による損失を決定するにあたり、当該土地をかかる建築制限を受けた土地として評価算定すれば足りると解するのは、前記土地収用法の規定の立法趣旨に反し、被収用者に対し不当に低い額の補償を強いることになるのみならず、右土地の近傍にある土地の所有者に比しても著しく不平等な結果を招くことになり、到底許されないものというべきである。」
判旨:「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の財産価値を等しくならしめるような補償をなすべきであり、金銭をもつて補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することをうるに足りる金額の補償を要するものというべく、土地収用法72条(昭和42年法律第74号による改正前のもの。以下同じ。)は右のような趣旨を明らかにした規定と解すべきである。そして、右の理は、土地が都市計画事業のために収用される場合であっても、何ら、異なるものではなく、この場合、被収用地については、街路計画等施設の計画決定がなされたときには建築基準法44条2項に定める建築制限が、また、都市計画事業決定がなされたときには旧都市計画法11条、同法施行令11条、12条等に定める建築制限が課せられているが、前記のような土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。なるほど、法律上右のような建築制限に基づく損失を補償する旨の明文の規定は設けられていないが、このことは、単に右の損失に対し独立に補償することを要しないことを意味するに止まるものと解すべきであり、損失補償規定の存在しないことから、右のような建築制限の存する土地の収用による損失を決定するにあたり、当該土地をかかる建築制限を受けた土地として評価算定すれば足りると解するのは、前記土地収用法の規定の立法趣旨に反し、被収用者に対し不当に低い額の補償を強いることになるのみならず、右土地の近傍にある土地の所有者に比しても著しく不平等な結果を招くことになり、到底許されないものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第22問 イ)
都市計画街路予定地内にあることにより建築制限を受けていた土地の収用に際しての損失補償金額の多寡が争われた事件において、損失補償金額の算定に当たっては、建築制限を受けていた土地であるとしてその評価をすべきではなく、建築制限を受けていないものと想定してそれをすべきである、とされた。
都市計画街路予定地内にあることにより建築制限を受けていた土地の収用に際しての損失補償金額の多寡が争われた事件において、損失補償金額の算定に当たっては、建築制限を受けていた土地であるとしてその評価をすべきではなく、建築制限を受けていないものと想定してそれをすべきである、とされた。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用における損失補償の趣旨からすれば、被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
(R3 予備 第23問 ウ)
土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の保持する財産価値を等しくさせるような補償を求めることができる。
土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の保持する財産価値を等しくさせるような補償を求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、…被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
判例(最判昭48.10.18)は、本肢と同種の事案において、「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復をはかることを目的とするものであるから、…被収用者に対し土地収用法72条によって補償すべき相当な価格とは、被収用地が、右のような建築制限を受けていないとすれば、裁決時において有するであろうと認められる価格をいうと解すべきである。」としている。
総合メモ
事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条は憲法29条3項に違反するか 最三小判平成14年6月11日
概要
事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条は憲法29条3項に違反しない。
判例
事案:事業認定時点で価額を算定し、権利取得最決までの物価変動率を乗じて補償額とする算定方法を定めた土地収用法71条が憲法29条3項に違反するかが問題となった。
判旨:「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和25年(オ)第98号同28年12月23日大法廷判決・民集7巻13号1523頁)とするところである。土地収用法71条の規定が憲法29条3項に違反するかどうかも、この判例の趣旨に従って判断すべきものである。 土地の収用に伴う補償は、収用によって土地所有者等が受ける損失に対してされるものである(土地収用法68条)ところ、収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであり、その時に補償金の額が具体的に決定される(同法48条1項)のであるから、補償金の額は、同裁決の時を基準にして算定されるべきである。その具体的方法として、同法71条は、事業の認定の告示の時における相当な価格を近傍類地の取引価格等を考慮して算定した上で、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて、権利取得裁決の時における補償金の額を決定することとしている。 事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。しかしながら、上記の近傍類地の取引価格の変動は、一般的に当該事業による影響を受けたものであると考えられるところ、事業により近傍類地に付加されることとなった価値と同等の価値を収用地の所有者等が当然に享受し得る理由はないし、事業の影響により生ずる収用地そのものの価値の変動は、起業者に帰属し、又は起業者が負担すべきものである。また、土地が収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであるが、事業認定が告示されることにより、当該土地については、任意買収に応じない限り、起業者の申立てにより権利取得裁決がされて収用されることが確定するのであり、その後は、これが一般の取引の対象となることはないから、その取引価格が一般の土地と同様に変動するものとはいえない。そして、任意買収においては、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業認定の告示の時における相当な価格を基準として契約が締結されることが予定されているということができる。 なお、土地収用法は、事業認定の告示があった後は、権利取得裁決がされる前であっても、土地所有者等が起業者に対し補償金の支払を請求することができ、請求を受けた起業者は原則として2月以内に補償金の見積額を支払わなければならないものとしている(同法46条の2、46条の4)から、この制度を利用することにより、所有者が近傍において被収用地と見合う代替地を取得することは可能である。 これらのことにかんがみれば、土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」
判旨:「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和25年(オ)第98号同28年12月23日大法廷判決・民集7巻13号1523頁)とするところである。土地収用法71条の規定が憲法29条3項に違反するかどうかも、この判例の趣旨に従って判断すべきものである。 土地の収用に伴う補償は、収用によって土地所有者等が受ける損失に対してされるものである(土地収用法68条)ところ、収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであり、その時に補償金の額が具体的に決定される(同法48条1項)のであるから、補償金の額は、同裁決の時を基準にして算定されるべきである。その具体的方法として、同法71条は、事業の認定の告示の時における相当な価格を近傍類地の取引価格等を考慮して算定した上で、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて、権利取得裁決の時における補償金の額を決定することとしている。 事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。しかしながら、上記の近傍類地の取引価格の変動は、一般的に当該事業による影響を受けたものであると考えられるところ、事業により近傍類地に付加されることとなった価値と同等の価値を収用地の所有者等が当然に享受し得る理由はないし、事業の影響により生ずる収用地そのものの価値の変動は、起業者に帰属し、又は起業者が負担すべきものである。また、土地が収用されることが最終的に決定されるのは権利取得裁決によるのであるが、事業認定が告示されることにより、当該土地については、任意買収に応じない限り、起業者の申立てにより権利取得裁決がされて収用されることが確定するのであり、その後は、これが一般の取引の対象となることはないから、その取引価格が一般の土地と同様に変動するものとはいえない。そして、任意買収においては、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業認定の告示の時における相当な価格を基準として契約が締結されることが予定されているということができる。 なお、土地収用法は、事業認定の告示があった後は、権利取得裁決がされる前であっても、土地所有者等が起業者に対し補償金の支払を請求することができ、請求を受けた起業者は原則として2月以内に補償金の見積額を支払わなければならないものとしている(同法46条の2、46条の4)から、この制度を利用することにより、所有者が近傍において被収用地と見合う代替地を取得することは可能である。 これらのことにかんがみれば、土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」
過去問・解説
(H21 司法 第38問 ア)
土地収用法(以下「法」という。)第71条に基づく補償金の額の決定に際しては、事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までに近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも法第71条による修正率と一致するとはいえないから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるものとはいえないが、憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないから、法第71条の規定は憲法第29条第3項に違反するものではない。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
土地収用法(以下「法」という。)第71条に基づく補償金の額の決定に際しては、事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までに近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも法第71条による修正率と一致するとはいえないから、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるものとはいえないが、憲法第29条第3項にいう「正当な補償」とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないから、法第71条の規定は憲法第29条第3項に違反するものではない。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではない…。」とした上で、「事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」としている。
したがって、土地収用法71条により、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるといえる。
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではない…。」とした上で、「事業認定の告示の時から権利取得裁決の時までには、近傍類地の取引価格に変動が生ずることがあり、その変動率は必ずしも上記の修正率と一致するとはいえない。」としている。
そして、本判例は、続けて、「土地収用法71条が補償金の額について前記のように規定したことには、十分な合理性があり、これにより、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を受けられるものというべきである。」としている。
したがって、土地収用法71条により、被収用者は、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償を常に受けられるといえる。
(H29 予備 第23問 ウ)
損失補償に際しては「正当な補償」が必要であると解されているが、第二次世界大戦後の農地改革をめぐる最高裁判所の判例では、この「正当な補償」の額は、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格と完全に一致することを要しないとされている。
損失補償に際しては「正当な補償」が必要であると解されているが、第二次世界大戦後の農地改革をめぐる最高裁判所の判例では、この「正当な補償」の額は、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格と完全に一致することを要しないとされている。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例…とするところである。」としている。
判例(最判平14.6.11)は、「憲法29条3項にいう『正当な補償』とは、その当時の経済状態において成立すると考えられる価格に基づき合理的に算出された相当な額をいうのであって、必ずしも常に上記の価格と完全に一致することを要するものではないことは、当裁判所の判例…とするところである。」としている。
総合メモ
輪中堤(堤防)の敷地が収用された場合に当該輪中堤の文化財的価値が土地収用法88条による損失補償の対象となるか 最一小判昭和63年1月21日
概要
江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包している輪中堤(堤防)の文化財的価値は、その敷地の不動産としての市場価格の形成に影響を与えないものとして、土地収用法(昭和42年法律第74号による改正前のもの)88条による損失補償の対象となり得ない。
判例
事案:輪中堤(堤防)の敷地が収用された場合に、当該輪中堤の文化財的価値が土地収用法による損失補償の対象となるかが問題となった。
判旨:「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。もとより、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その市場価格を形成する1要素となる場合があることは否定できず、この場合には、かかる文化財的価値を反映した市場価格がその物件の補償されるべき相当な価格となることはいうまでもないが、これに対し、例えば、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・財産的価値を何ら高めるものではなく、その市場価格の形成に影響を与えることはないというべきであって、このような意味での文化財的価値なるものは、それ自体経済的評価になじまないものとして、右土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと解するのが相当である。 原審の認定によれば、本件輪中堤は江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包しているが、それ以上に本件堤防の不動産としての市場価格を形成する要素となり得るような価値を有するというわけでないことは明らかであるから、前示のとおり、かかる価値は本件補償の対象となり得ないというべきである。」
判旨:「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。もとより、由緒ある書画、刀剣、工芸品等のように、その美術性・歴史性などのいわゆる文化財的価値なるものが、当該物件の取引価格に反映し、その市場価格を形成する1要素となる場合があることは否定できず、この場合には、かかる文化財的価値を反映した市場価格がその物件の補償されるべき相当な価格となることはいうまでもないが、これに対し、例えば、貝塚、古戦場、関跡などにみられるような、主としてそれによって国の歴史を理解し往時の生活・文化等を知り得るという意味での歴史的・学術的な価値は、特段の事情のない限り、当該土地の不動産としての経済的・財産的価値を何ら高めるものではなく、その市場価格の形成に影響を与えることはないというべきであって、このような意味での文化財的価値なるものは、それ自体経済的評価になじまないものとして、右土地収用法上損失補償の対象とはなり得ないと解するのが相当である。 原審の認定によれば、本件輪中堤は江戸時代初期から水害より村落共同体を守ってきた輪中堤の典型の1つとして歴史的、社会的、学術的価値を内包しているが、それ以上に本件堤防の不動産としての市場価格を形成する要素となり得るような価値を有するというわけでないことは明らかであるから、前示のとおり、かかる価値は本件補償の対象となり得ないというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 イ)
土地収用法が補償を義務付けている「通常受ける損失」(同法第88条)とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であるから、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とはならない。
【参照条文】土地収用法
第88条 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第80条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因って土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
土地収用法が補償を義務付けている「通常受ける損失」(同法第88条)とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であるから、経済的価値でない特殊な価値については補償の対象とはならない。
【参照条文】土地収用法
第88条 第71条、第72条、第74条、第75条、第77条、第80条及び第80条の2に規定する損失の補償の外、離作料、営業上の損失、建物の移転による賃貸料の損失その他土地を収用し、又は使用することに因って土地所有者又は関係人が通常受ける損失は、補償しなければならない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭63.1.21)は、「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。」としている。
判例(最判昭63.1.21)は、「土地収用法88条にいう『通常受ける損失』とは、客観的社会的にみて収用に基づき被収用者が当然に受けるであろうと考えられる経済的・財産的な損失をいうと解するのが相当であって、経済的価値でない特殊な価値についてまで補償の対象とする趣旨ではないというべきである。」としている。
総合メモ
痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の発生と予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定 最二小判平成3年4月19日
概要
痘そうの予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則(昭和45年厚生省令第44号による改正前の昭和33年厚生省令第27号)4条の禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当する事由を発見することはできなかったこと、被接種者が右後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたものと推定すべきである。
判例
事案: 生後6か月のXが、保健所において予防接種法に基づく痘そうの予防接種を受けたところ、脳炎及び脊髄炎を発症し、下半身麻痺による運動障害及び知能障害の後遺症を残すに至ったことにつき、同後遺症は予防接種担当医の予診義務違反によるものであるなどとして、Xらが国、市等に対し国家賠償を求めた事案において、予防接種による後遺症について、予診の不十分と後遺障害の関係をどのように判断するかが問題となった。
判旨:「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
判旨:「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第38問 イ)
予防接種により重篤な後遺障害をもたらす事故が発生した場合には、伝染病から社会を防衛するという公共目的のために特定個人が特別の犠牲を被ったことから、予防接種により被害を受けた者に対して、最高裁判所は損失補償による救済を認めている。
予防接種により重篤な後遺障害をもたらす事故が発生した場合には、伝染病から社会を防衛するという公共目的のために特定個人が特別の犠牲を被ったことから、予防接種により被害を受けた者に対して、最高裁判所は損失補償による救済を認めている。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の問題について、当時の予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定を問題としており、同判例では予防接種による後遺症の問題について損失補償ではなく損害賠償により解決を図っている。他に損失補償による救済を認めた最高裁判例も存在しない。
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の問題について、当時の予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定を問題としており、同判例では予防接種による後遺症の問題について損失補償ではなく損害賠償により解決を図っている。他に損失補償による救済を認めた最高裁判例も存在しない。
(H25 共通 第38問 4)
次の例は、損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について、損害賠償を認めることにより解決される例として適切か。
【例】
市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に、接種した医師の過失が一部推定され、市が損害賠償責任を負う例。
次の例は、損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について、損害賠償を認めることにより解決される例として適切か。
【例】
市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に、接種した医師の過失が一部推定され、市が損害賠償責任を負う例。
(正答)〇
(解説)
損失補償請求権は、適法な公権力の行使によって財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をするという概念である。
予防接種によって個人に後遺障害が生じることは、適法な公権力の行使によってその治療費相当額の金銭という財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をする性質を有しているから、損失補償請求権として法律構成することが考えられる。
他方、判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、国家賠償請求という形での損害賠償請求が認めることで解決を図っている。
損失補償請求権は、適法な公権力の行使によって財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をするという概念である。
予防接種によって個人に後遺障害が生じることは、適法な公権力の行使によってその治療費相当額の金銭という財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をする性質を有しているから、損失補償請求権として法律構成することが考えられる。
他方、判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、国家賠償請求という形での損害賠償請求が認めることで解決を図っている。
(H29 予備 第23問 イ)
損失補償は、適法な公権力の行使により特別の犠牲が生じた場合に、公平負担の見地から認められるものであるところ、特別の犠牲は財産上の損害に限られるのかという議論がある。
予防接種による副作用被害が問題となった事案では、生命や身体に対する損害であっても損失補償の対象になり得ると主張されたが、このような損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例は存在しない。
損失補償は、適法な公権力の行使により特別の犠牲が生じた場合に、公平負担の見地から認められるものであるところ、特別の犠牲は財産上の損害に限られるのかという議論がある。
予防接種による副作用被害が問題となった事案では、生命や身体に対する損害であっても損失補償の対象になり得ると主張されたが、このような損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例は存在しない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平3.4.19)は、「予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、医師の過失を認定することで解決を図ろうとしている。
したがって、本判例は国家賠償による救済であり、他に損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例はない。
判例(最判平3.4.19)は、「予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、医師の過失を認定することで解決を図ろうとしている。
したがって、本判例は国家賠償による救済であり、他に損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例はない。
総合メモ
土地収用法133条所定の訴訟における補償額 最三小判平成9年1月28日
概要
①土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するのではなく、裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、これを違法とし、正当な補償額を確定すべきである。
②被収用者は、土地収用法123条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年5分の利率に相当する金員を請求することができる。
②被収用者は、土地収用法123条所定の損失補償に関する訴訟において、正当な補償額と権利取得裁決に定められた補償額との差額のみならず、右差額に対する裁決に定められた権利取得の時期からその支払済みまで民法所定の年5分の利率に相当する金員を請求することができる。
判例
事案:土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟において、①土地収用法133条所定の訴訟における補償額についての審理判断の方法はいかにすべきか、②被収用者は、土地収用法123条所定の訴訟において補償金増額分に対する収用の時期以降の法定利率相当の金員を請求することができるかなどが問題となった。
判旨:①「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することを可能にするに足りる金額の補償を要するものと解される…。同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを『補償額』という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。したがって、同法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補償額を確定すべきものと解するのが相当である。」
②「土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟は、裁決のうち損失補償に関する部分又は補償裁決に対する不服を実質的な内容とし、その適否を争うものであるが、究極的には、起業者と被収用者との間において、裁決時における同法所定の正当な補償額を確定し、これをめぐる紛争を終局的に解決し、正当な補償の実現を図ることを目的とするものということができる。右訴訟において、権利取得裁決において定められた補償額が裁決の当時を基準としてみても過少であったと判断される場合には、判決によって、裁決に定める権利取得の時期までに支払われるべきであった正当な補償額が確定されるものである。しかも、被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」
判旨:①「土地収用法における損失の補償は、特定の公益上必要な事業のために土地が収用される場合、その収用によって当該土地の所有者等が被る特別な犠牲の回復を図ることを目的とするものであるから、完全な補償、すなわち、収用の前後を通じて被収用者の有する財産価値を等しくさせるような補償をすべきであり、金銭をもって補償する場合には、被収用者が近傍において被収用地と同等の代替地等を取得することを可能にするに足りる金額の補償を要するものと解される…。同法による補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額(以下、これらを『補償額』という。)の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。したがって、同法133条所定の損失補償に関する訴訟において、裁判所は、収用委員会の補償に関する認定判断に裁量権の逸脱濫用があるかどうかを審理判断するものではなく、証拠に基づき裁決時点における正当な補償額を客観的に認定し、裁決に定められた補償額が右認定額と異なるときは、裁決に定められた補償額を違法とし、正当な補償額を確定すべきものと解するのが相当である。」
②「土地収用法133条所定の損失補償に関する訴訟は、裁決のうち損失補償に関する部分又は補償裁決に対する不服を実質的な内容とし、その適否を争うものであるが、究極的には、起業者と被収用者との間において、裁決時における同法所定の正当な補償額を確定し、これをめぐる紛争を終局的に解決し、正当な補償の実現を図ることを目的とするものということができる。右訴訟において、権利取得裁決において定められた補償額が裁決の当時を基準としてみても過少であったと判断される場合には、判決によって、裁決に定める権利取得の時期までに支払われるべきであった正当な補償額が確定されるものである。しかも、被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第22問 エ)
土地収用法による補償金額は「相当な価格」(同法第71条)等の不確定概念をもって定められているので、補償の範囲及びその額の決定については、収用委員会の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
土地収用法による補償金額は「相当な価格」(同法第71条)等の不確定概念をもって定められているので、補償の範囲及びその額の決定については、収用委員会の合理的な裁量にゆだねられているものと解される。
【参照条文】土地収用法
第71条 収用する土地又はその土地に関する所有権以外の権利に対する補償金の額は、近傍類地の取引価格等を考慮して算定した事業の認定の告示の時における相当な価格に、権利取得裁決の時までの物価の変動に応ずる修正率を乗じて得た額とする。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としており、収用委員会の広範な裁量に委ねていない。
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としており、収用委員会の広範な裁量に委ねていない。
(H24 司法 第38問 エ)
自己の所有する土地を収用されたDは、権利取得裁決に定められた補償額を不服として増額請求訴訟を提起して勝訴した場合には、正当な補償額と裁決で定められた補償額との差額のみならず、その差額に対する、裁決で定められた権利取得の時期からその支払済みに至るまでの民法所定の法定利率相当額を請求することができる。
自己の所有する土地を収用されたDは、権利取得裁決に定められた補償額を不服として増額請求訴訟を提起して勝訴した場合には、正当な補償額と裁決で定められた補償額との差額のみならず、その差額に対する、裁決で定められた権利取得の時期からその支払済みに至るまでの民法所定の法定利率相当額を請求することができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、本肢と同種の事案において、「被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」としている。
判例(最判平9.1.28)は、本肢と同種の事案において、「被収用者である土地所有者等は右の時期において収用土地に関する権利を失い、収用土地の利用ができなくなる反面、起業者は右の時期に権利を取得してこれを利用することができるようになっているのであるから、被収用者は、正当な補償額と裁決に定められていた補償額との差額のみならず、右差額に対する権利取得の時期からその支払済みに至るまで民法所定の年5分の法定利率に相当する金員を請求することができるものと解するのが相当である。」としている。
(H27 予備 第14問 エ)
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、最高裁判所の判例によれば、収用委員会が収用裁決において行う損失補償の範囲及び額の決定について、収用委員会に裁量権は認められない。
土地収用法による土地収用は、国土交通大臣又は都道府県知事が起業者(土地収用を必要とする事業を行う者)からの申請に対して行う事業認定と、それに続く都道府県の収用委員会による収用裁決とを経て行われるところ、最高裁判所の判例によれば、収用委員会が収用裁決において行う損失補償の範囲及び額の決定について、収用委員会に裁量権は認められない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としている。
判例(最判平9.1.28)は、「補償金の額は、『相当な価格』(同法71条参照)等の不確定概念をもって定められているものではあるが、右の観点から、通常人の経験則及び社会通念に従って、客観的に認定され得るものであり、かつ、認定すべきものであって、補償の範囲及びその額…の決定につき収用委員会に裁量権が認められるものと解することはできない。」としている。
総合メモ
憲法第29条第3項は、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されることまで保障しているのか 最大判昭和24年7月13日
概要
憲法29条3項は、国家の補償が私人の財産供与と同時になされるべきことを保障しているものではない。
判例
事案:損失補償が争われた事案において、憲法29条3項における補償金の支払時期が問題となった。
判旨:「憲法第29条は、財産権の不可侵を規定すると共に『私有財産権は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる』と定めている。従って、国家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによって私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相当な賠償をしなければならないことは言うまでもない。しかしながら、憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」
判旨:「憲法第29条は、財産権の不可侵を規定すると共に『私有財産権は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる』と定めている。従って、国家が私人の財産を公共の用に供するにはこれによって私人の破るべき損害を填補するに足りるだけの相当な賠償をしなければならないことは言うまでもない。しかしながら、憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」
過去問・解説
(R3 予備 第23問 ア)
憲法第29条第3項は「正当な補償」と規定しているだけで補償の時期については規定していないから、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではない。
憲法第29条第3項は「正当な補償」と規定しているだけで補償の時期については規定していないから、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭24.7.13)は、「憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」としている。
したがって、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではないといえる。
判例(最判昭24.7.13)は、「憲法は『正当な補償』と規定しているだけであって、補償の時期についてはすこしも言明していないのであるから、補償が財産の供与と交換的に同時に履行さるべきことについては、憲法の保障するところではないと言わなければならない。もっとも、補償が財産の供与より甚しく遅れた場合には、遅延による損害をも填補する問題を生ずるであらうが、だからといって、憲法は補償の同時履行までをも保障したものと解することはできない。」としている。
したがって、損失補償が私有財産の供与と交換的に同時履行されなくても、憲法に違反するものではないといえる。