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行政法 原子炉設置許可処分 最一小判平成4年10月29日

概要
①基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない。
②原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理・判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤・欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
判例
事案: 核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和52年法律80号改正前)23条に基づき内閣総理大臣のした原子炉設置許可処分が違法であるとして、Xらが、同設置許可処分の取消しを求めた事案において、①旧原子力基本法等の設置規制手続に関する規定の憲法31条適合性、及び②原子炉設置許可処分の取消訴訟における審理・判断の方法が問題となった。

判旨:①「行政手続は、憲法31条による保障が及ぶと解すべき場合であっても、刑事手続とその性質においておのずから差異があり、また、行政目的に応じて多種多様であるから、常に必ず行政処分の相手方等に事前の告知、弁解、防御の機会を与えるなどの一定の手続を設けることを必要とするものではないと解するのが相当である。そして、原子炉設置許可の申請が規制法24条1項各号所定の基準に適合するかどうかの審査は、原子力の開発及び利用の計画との適合性や原子炉施設の安全性に関する極めて高度な専門技術的判断を伴うものであり、同条2項は、右許可をする場合に、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めている。このことにかんがみると、所論のように、基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。 また、規制法24条1項4号は、原子炉設置許可の基準として、原子炉施設の位置、構造及び設備が核燃料物質…、核燃料物質によって汚染された物…又は原子炉による災害の防止上支障がないものであることと規定しているが、それは、原子炉施設の安全性に関する審査が、後述のとおり、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づいてされる必要がある上、科学技術は不断に進歩、発展しているのであるから、原子炉施設の安全性に関する基準を具体的かつ詳細に法律で定めることは困難であるのみならず、最新の科学技術水準への即応性の観点からみて適当ではないとの見解に基づくものと考えられ、右見解は十分首肯し得るところである。しかも、設置許可に当たっては、申請に係る原子炉施設の位置、構造及び設備の安全性に関する審査の適正を確保するため、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を聴き、これを尊重するという、慎重な手続が定められていることを考慮すると、右規定が不合理、不明確であるとの非難は当たらないというべきである。したがって、右規定が不合理、不明確であることを前提とする所論憲法31条違反の主張は、その前提を欠く。」
 ②「技術的能力を含めた原子炉施設の安全性に関する審査は、当該原子炉施設そのものの工学的安全性、平常運転時における従業員、周辺住民及び周辺環境への放射線の影響、事故時における周辺地域への影響等を、原子炉設置予定地の地形、地質、気象等の自然的条件、人口分布等の社会的条件及び当該原子炉設置者の右技術的能力との関連において、多角的、総合的見地から検討するものであり、しかも、右審査の対象には、将来の予測に係る事項も含まれているのであって、右審査においては、原子力工学はもとより、多方面にわたる極めて高度な最新の科学的、専門技術的知見に基づく総合的判断が必要とされるものであることが明らかである。そして、規制法24条2項が、内閣総理大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条1項3号…及び4号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。 以上の点を考慮すると、右の原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。 原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」
過去問・解説
(H19 司法 第37問 エ)
取消訴訟における行政処分の違法判断の基準時は、行政処分がされた時点であると解すべきであるから、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見も、処分当時のものに限定される。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、処分の適法性の判断に用いられる科学的、専門技術的知見は、処分当時のものに限定されない。

(H20 司法 第28問 ア)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の違法性に関する司法審査の方式として、裁判所が処分要件について行政庁と同一の立場に立って判断を行い、それと行政庁の判断とを比較して、行政庁の判断の適否を審査するという方式を採用している。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、本肢のような方式を採用していない。

(H20 司法 第28問 イ)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分について、処分要件を満たした場合に、処分をするかどうか、するとしてどのような内容の処分をするかという点について、行政庁の裁量を認めたものである。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、…具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、本判例は、要件裁量について判断しているが、効果裁量については判断していない。

(H20 司法 第28問 ウ)
最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁・伊方原発訴訟判決)は、原子炉設置許可処分の取消訴訟においては、原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、行政庁の側がその判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきものとしている。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分についての右取消訴訟においては、右処分が前記のような性質を有することにかんがみると、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることの主張、立証責任は、本来、原告が負うべきものと解されるが、当該原子炉施設の安全審査に関する資料をすべて被告行政庁の側が保持していることなどの点を考慮すると、被告行政庁の側において、まず、その依拠した前記の具体的審査基準並びに調査審議及び判断の過程等、被告行政庁の判断に不合理な点のないことを相当の根拠、資料に基づき主張、立証する必要があり、被告行政庁が右主張、立証を尽くさない場合には、被告行政庁がした右判断に不合理な点があることが事実上推認されるものというべきである。」としている。
これは、立証責任の転換ではなく、立証責任の軽減であると解されている。
したがって、行政庁の側ではなく、原告が、その判断に不合理な点がないことの主張、立証責任を負うべきである。

(H29 予備 第16問 イ)
原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた行政庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであるから、その合理性の有無は当該設置許可処分時の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、合理性の有無は、当該設置許可処分時ではなく、現在の科学技術水準に照らして審理、判断されるべきである。

(R2 予備 第19問 イ)
取消訴訟の違法判断の基準時は処分時であるから、原子炉施設の安全性に関する判断の適否が争われる原子炉設置許可処分の取消訴訟において、裁判所の審理、判断は、当該処分当時の科学技術水準に照らして行われるべきである。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「原子炉設置許可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、…現在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合するとした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、…右判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。」としている。
したがって、裁判所の審理、判断は、当該処分当時ではなく、現在の科学技術水準に照らして行われるべきである。

(R4 予備 第14問 ウ)
伊方原発訴訟に係る最高裁判所平成4年10月29日第一小法廷判決(民集46巻7号1174頁)は、原子炉設置許可の申請に対して行政庁が処分をする際、憲法第31条に基づき、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求している。

(正答)

(解説)
判例(最判平4.10.29)は、「基本法及び規制法が、原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させる手続及び設置の申請書等の公開に関する定めを置いていないからといって、その一事をもって、右各法が憲法31条の法意に反するものとはいえず、周辺住民である上告人らが、本件原子炉設置許可処分に際し、告知、聴聞の機会を与えられなかったことが、同条の法意に反するものともいえない…。」としている。
したがって、本判決は原子炉設置予定地の周辺住民を原子炉設置許可手続に参加させることを要求していない。
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