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行政法 教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断と国家賠償法上の違法性判断 最三小判平成5年3月16日
概要
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等の判断は、文部大臣の合理的な裁量にゆだねられているが、文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、申請原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況等についての認識や、検定基準に違反するとの評価等に関して看過し難い過誤があり、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、その判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
判例
事案:日本史の学者であるXが執筆した高等学校用日本史教科書が1962年度の検定において不合格、1963年度の検定において条件付合格とされたため、教科書検定制度は憲法26条、23条、21条等及び教育基本法10条等に違反するとして、国家賠償法1条に基づき損害賠償を求めた事案において、高等学校用の教科用図書の検定における文部大臣の裁量的判断がどのような場合に国家賠償法上違法となるのか問題となった。
判旨:「本件検定の審査基準等を直接定めた法律はないが、文部大臣の検定権限は、前記…の憲法上の要請にこたえ、教育基本法、学校教育法の趣旨に合致するように行使されなければならないところ、前記のとおり、検定の具体的内容等を定めた旧検定規則、旧検定基準は右の要請及び各法条の趣旨を具現したものであるから、右検定権限は、これらの検定関係法規の趣旨にそって行使されるべきである。そして、これらによる本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。したがって、合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程(検定意見の付与を含む)に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 なお、検定意見は、原稿の個々の記述に対して旧検定基準の各必要条件ごとに具体的理由を付して欠陥を指摘するものであるから、各検定意見ごとに、その根拠となるべき学説状況や教育状況等も異なるものである。例えば、正確性に関する検定意見は、申請図書の記述の学問的な正確性を問題とするものであって、検定当時の学界における客観的な学説状況を根拠とすべきものであるが、検定意見には、その実質において、(1)原稿記述が誤りであるとして他説による記述を求めるものや、(2)原稿記述が一面的、断定的であるとして両説併記等を求めるものなどがある。そして、検定意見に看過し難い過誤があるか否かについては、右(1)の場合は、検定意見の根拠となる学説が通説、定説として学界に広く受け入れられており、原稿記述が誤りと評価し得るかなどの観点から、右(2)の場合は、学界においていまだ定説とされる学説がなく、原稿記述が一面的であると評価し得るかなどの観点から、判断すべきである。また、内容の選択や内容の程度等に関する検定意見は、原稿記述の学問的な正確性ではなく、教育的な相当性を問題とするものであって、取り上げた内容が学習指導要領に規定する教科の目標等や児童、生徒の心身の発達段階等に照らして不適切であると評価し得るかなどの観点から判断すべきものである。」
判旨:「本件検定の審査基準等を直接定めた法律はないが、文部大臣の検定権限は、前記…の憲法上の要請にこたえ、教育基本法、学校教育法の趣旨に合致するように行使されなければならないところ、前記のとおり、検定の具体的内容等を定めた旧検定規則、旧検定基準は右の要請及び各法条の趣旨を具現したものであるから、右検定権限は、これらの検定関係法規の趣旨にそって行使されるべきである。そして、これらによる本件検定の審査、判断は、申請図書について、内容が学問的に正確であるか、中立・公正であるか、教科の目標等を達成する上で適切であるか、児童、生徒の心身の発達段階に適応しているか、などの様々な観点から多角的に行われるもので、学術的、教育的な専門技術的判断であるから、事柄の性質上、文部大臣の合理的な裁量に委ねられるものというべきである。したがって、合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程(検定意見の付与を含む)に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となると解するのが相当である。 なお、検定意見は、原稿の個々の記述に対して旧検定基準の各必要条件ごとに具体的理由を付して欠陥を指摘するものであるから、各検定意見ごとに、その根拠となるべき学説状況や教育状況等も異なるものである。例えば、正確性に関する検定意見は、申請図書の記述の学問的な正確性を問題とするものであって、検定当時の学界における客観的な学説状況を根拠とすべきものであるが、検定意見には、その実質において、(1)原稿記述が誤りであるとして他説による記述を求めるものや、(2)原稿記述が一面的、断定的であるとして両説併記等を求めるものなどがある。そして、検定意見に看過し難い過誤があるか否かについては、右(1)の場合は、検定意見の根拠となる学説が通説、定説として学界に広く受け入れられており、原稿記述が誤りと評価し得るかなどの観点から、右(2)の場合は、学界においていまだ定説とされる学説がなく、原稿記述が一面的であると評価し得るかなどの観点から、判断すべきである。また、内容の選択や内容の程度等に関する検定意見は、原稿記述の学問的な正確性ではなく、教育的な相当性を問題とするものであって、取り上げた内容が学習指導要領に規定する教科の目標等や児童、生徒の心身の発達段階等に照らして不適切であると評価し得るかなどの観点から判断すべきものである。」
過去問・解説
(H30 予備 第15問 イ)
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等に係る文部科学大臣の判断について、教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、検定の基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部科学大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、上記判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
高等学校用の教科用図書の検定における合否の判定等に係る文部科学大臣の判断について、教科用図書検定調査審議会の判断の過程に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、検定の基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部科学大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、上記判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平5.3.16)は、「合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程…に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる…。」としている。
判例(最判平5.3.16)は、「合否の判定、条件付合格の条件の付与等についての教科用図書検定調査審議会の判断の過程…に、原稿の記述内容又は欠陥の指摘の根拠となるべき検定当時の学説状況、教育状況についての認識や、旧検定基準に違反するとの評価等に看過し難い過誤があって、文部大臣の判断がこれに依拠してされたと認められる場合には、右判断は、裁量権の範囲を逸脱したものとして、国家賠償法上違法となる…。」としている。