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行政法 法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をした場合 東京高裁平成11年3月31日

概要
法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。
判例
事案:Xが営業するパチンコ店につき、営業許可取消処分が行われたことについて、Xが処分の取消を求めた事案において、①風営法8条が公安委員会に裁量権を認めているか否か、及び②処分に裁量権の行使又は不行使について違法があるか否かが問題となった。

判旨:①「風営法8条は、風俗営業者らが当該営業に関し法令等に違反した場合等に制裁措置としての行政処分の1つとして法26条1項により当該許可が取り消されるのとは異なり、風俗営業の許可がなされた後に、当該許可を行うべきでなかったことが事後になって判明したとき(1号、2号)、あるいは、事後に不許可の事由に該当する事情が生じるなど事情の変化により許可を存続させることが公共の利益に適合しないような事情に立ち至ったとき若しくは許可を受けた者が許可に基づく営業をせず許可を無意味ならしめているとき(2ないし4号)等の場合の一般的取消事由を定めているところ、特に後者の場合にはその取消しはいったん有効に成立した営業許可を将来に向かって廃止するもので講学上『撤回』に当たるものと解される。そして、そのような行政処分の撤回(法文上は『取消し』)がどのような場合に許されるか、またその撤回が必要的か裁量的かなどについては、それぞれの法令の規定、趣旨、目的に従って判断されるべきである。ところで、 1の風俗営業者が複数の営業所についてそれぞれ公安委員会の許可を受けて風俗営業を営む場合、1営業所について風営法26条項に基づき風俗営業の許可の取消しがされたときは、元来そのようなことは法4条の許可の基準においては当該取消しの日から5年間の欠格事由となるものであり、一般には風俗営業の営業主体としてふさわしくない人的悪性を示すものといえるから、公安委員会…としては、これを契機として当該1営業所のみならず当該風俗営業者の営む者の営業所に係る風俗営業の許可についても見直す必要があり、場合によっては当該営業所にかかる許可を取り消す(撤回)必要が生ずることは当然考えられるところであり、法8条2号は、このような場合に、公安委員会に、管轄する当該風俗営業者の他の営業所の風俗営業の許可について取消し(撤回)の権限を付与した規定であるとみることができる。 しかし、このことは、法8条2号による許可取消しについて、公安委員会に裁量の余地を認めないことを必ずしも意味するものではない。たしかに、風俗営業の性格、同一の営業主体による複数の営業所での営業の一体性などから、1営業所について法26条1項により営業許可の取消しが行われたという場合には、当該風俗営業者の営む他の営業所についても風俗営業を営むにふさわしくない人的悪性が示されたものとみて、多くの場分他の営業所についても風俗営業の許可が取り消されることになったとしてもやむを得ないであろうが、一般的に、法26条により1営業所についての許可取消しがされる場合でも、それぞれの違反事由ごとに営業者の悪性の程度、同一の違反が他の営業所においても繰り返されることの危険性は異なる場合があり得るし、許可後の取消し(撤回)の場合には、当初の許可の是非の判断と異なり、当初の許可を前提として新たな法律秩序が次々と形成されているから、違反行為の性質、態様などに伴う取消し(撤回)の必要性、取消し(撤回)による相手方への影響の程度も比較考量の上、取消し(撤回)の是非を判断するのが相当であると解される。また、法8条の法文は『取り消すことができる。』という規定となっているところ、法8条各号のうち、特に3、4号の取消原因(許可を受けた者が『許可を受けてから6月以内に営業を開始せず、又は引き続き6月以上営業を休止し、現に営業を営んでいないこと』、『3月以上所在不明であること』が判明したとき)については、公安委員会の適切な裁量による取消権の行使が期待されていると考えられ(右要件については、昭和59年改正前の風営法の下でも、各都道府県条例において同旨の規定が設けられていたが、これらの各例においては『正当な理由がなく』許可の日から6月以内に開業せず、又は引き続き6月以上休業したときを取消事由とするのが一般であった経過に照らせば、『正当の事由』の文言の有無にかかわらず、現行法においても、右3、4号の要件については、正当な理由の有無等について公安委員会の適切な裁量を予定しているとみるべきである。)、法8条の他の号についても、同条の『取り消すことができる。』との規定振りは公安委員会の権限を示すのみでなくその裁量の余地を示した規定とみることが相当である。なお、現行質屋営業法225条2項は、『2以上の営業所を有する質屋が、1の営業所につき、前項の規定により質屋の許可を取り消され、又は質屋営業の停止を命じられた場合においては、他の営業所についても、その所在地を管轄する公安委員会は、情状により、その質屋の許可を取消し、又はその質屋営業の停止を命ずることができる。この場合においては、前者の所在地が当該公安委員会の管轄に属すると否とを問わない。』旨規定しているところ(平成7年改正前の『古物営業法』24条2項にも同様の規定があった。)、風営法の場合にもこれと同様営業所ごとの許可制が採用されており、1の営業所において法26条の許可取消しがされた場合の他の営業所の許可の是非については、質屋営業法の場合と同様に、他の営業所を管轄する公安委員会を含む公安委員会の適切な裁量による取消し(撤回)の運用による立法目的の達成が期待されているとみても不合理とはいえない。以上のとおりであるから、法8条2号の場合には必要的取消しであって、公安委員会に営業許可を取り消すべきかどうかについて裁量の余地はないとの控訴人の主張は採用できない。」
 ②「行政事件訴訟法30条は、『行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。』と定めている。ところで、法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならないというべきである。 換言すれば、行政庁が処分に当たり、裁量の余地があるのに裁量の余地がないものとして一定の処分をしたという場合においても、当該処分が行政庁の権限行使の一環として行われたことに変わりはない以上、処分の取消しを求める者は、行政庁が与えられた裁景権を行使しなかったというだけでは処分の取消し事由としては十分でなく、その不行使の結果としての当該処分が、裁量権あるものとして行われたとしても実質的に裁量の範囲を超え、又は裁量権の濫用に当たることを主張、立証しなければならないというべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第31問 ウ)
行政処分を行う行政庁に裁量が法律上認められているにもかかわらず、行政庁が裁量の余地はないと判断して行政処分を行った場合、行政庁が裁量権を行使したわけではない。したがって、この場合において、裁判所が、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することはできない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判平11.3.31)は、「法が行政庁の側に処分の裁量の余地を認めているのに行政庁の側が一定の要件がある場合に一定の行政行為を行うにつき裁量の余地がないものとして法を解釈し、当該処分をしたという場合においても、当該処分が客観的にみて法が予定した裁量の範囲内と認められる限り、(当該処分が不正な動機に基づいていたり、処分の性質上考慮すべき事項を考慮せず、若しくは考慮すべきでない事項を考慮して処分理由の有無が判断されるなど裁量権の濫用と目すべき事由が認められる場合は別として)当該裁量権の有無に関する法解釈自体は、直ちに処分の違法をもたらす事由とはならない…。」としている。
したがって、裁判所は、行政庁が裁量権の行使に当たり考慮すべき事項を考慮していないことを理由に挙げて、行政処分を違法と判断することができる。
総合メモ
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