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行政法 厚生大臣の行政指導についての作為義務 東京高判昭和63年3月11日

概要
厚生大臣は、その職責上、製薬会社の行う医薬品の製造、販売に関し、随時、指導、勧告し得る立場にあるから、医薬品に関し国民の健康に被害を及ぼす危険性が顕著となり、同様な場合に従前の例によれば同大臣は適切な指導、勧告をしてきており、同種の措置を採ることが当然期待されるようなときには、状況のいかんによっては、製薬会社に対し被害回避のために指導、勧告をするとかその他適切な措置を採ることが、厚生大臣の権限となり同時に国民に対する義務となる。
判例
事案:クロロキン薬害訴訟において、厚生大臣に行政指導についての作為義務が生ずるかが問題となった。 

判旨:「行政指導は原則として行政庁の裁量に委ねられているばかりでなく、このような法令上直接の根拠規定を欠く指導、勧告は、製薬業者の営業の自由等とのかねあいから、慎重、かつ、控え目になされるべきであって、行政権力が正当な理由なく妄りに私人の行為に容喙し掣肘を加えることは厳に戒しめられるべきことであるから、行政指導をなさないことが厚生大臣の義務の懈怠となることは原則としてはないというべきであるが、しかし、医薬品に関し国民の健康に被害を及ぼす危険性が顕著となり、同様な場合に、従来の例によれば厚生大臣は適切な指導、勧告をしてきており、同種の措置をとることが当然期待されるようなときに、それにもかかわらず厚生大臣が何らの対策をとらず、放置しておくことは、前記のような厚生大臣の国民の健康保持の目的のために適切な行政措置をなすべき責務にもとるものであって、状況如何によっては、厚生大臣が製薬業者に対し被害回避のため必要最少限度の指導、勧告をなすとかその他適切な行政措置をとることが、例外的に、その権限ないしは国民に対する義務ともなり、それを怠るときは損害賠償義務を負うこととなるものというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第25問 ウ)
行政指導は、多様な行政需要に臨機に対応するためにされる事実的行為であるから、条理上も、行政機関に行政指導についての作為義務が生ずることはない。

(正答)

(解説)
裁判例(東京高判昭63.3.11)は、「状況如何によっては、厚生大臣が製薬業者に対し被害回避のため必要最少限度の指導、勧告をなすとかその他適切な行政措置をとることが、例外的に、その権限ないしは国民に対する義務ともなり、それを怠るときは損害賠償義務を負う…。」としている。
したがって、条理上も、行政機関に行政指導についての作為義務が生ずることがある。
総合メモ
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