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行政法 大阪府公文書公開等条例に基づく請求に対してされた同府知事の交際費に関する公文書の非公開決定の適否 最一小判平成6年1月27日
概要
大阪府知事の交際費に係る債権者の請求書、領収書、歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなどを除き、大阪府公文書公開等条例昭和59年大阪府条例第2号一)において公文書の非公開事由を定めた8条4号又は5号により公開しないことができる文書に該当する。
判例
事案:大阪府知事の交際費に係る公文書の公開を請求した事案において、当該文書が、公文書の非公開事由を定めた8条4号又は5号により公開しないことができる文書に該当するか問題となった。
判旨:「知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を行うのに要する経費である。このような知事の交際は、懇談については本件条例8条4号の企画調整等事務又は同条5号の交渉等事務に、その余の慶弔等については同号の交渉等事務にそれぞれ該当すると解されるから、これらの事務に関する情報を記録した文書を公開しないことができるか否かは、これらの情報を公にすることにより、当該若しくは同種の交渉等事務としての交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるか否か、又は当該若しくは同種の企画調整等事務や交渉等事務としての交際事務を公正かつ適正に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かによって決定されることになる。 本件においては、知事の交際事務のうち懇談については、歳出額現金出納簿に懇談の相手方と支出金額が逐一記録されており、また、債権者請求書等の中にも府の担当者によって懇談会の出席者の氏名がメモ書きの形で記録されているものがあることは前記のとおりであり、これ以外にも、一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって懇談の相手方が識別され得るようなものが含まれていることも当然に予想される。また、懇談以外の知事の交際については、歳出額現金出納簿及び支出証明書に交際の相手方や金額等が逐一記録されていることは前記のとおりである。 ところで、知事の交際事務には、懇談、慶弔、見舞い、賛助、協賛、餞別などのように様々なものがあると考えられるが、いずれにしても、これらは、相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的して行われるものである。そして、相手方の氏名等の公表、披露が当然予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような前記文書の公開によって相手方の氏名等が明らかにされることになれば、懇談については、相手方に不快、不信の感情を抱かせ、今後府の行うこの種の会合への出席を避けるなどの事態が生ずることも考えられ、また、一般に、交際費の支出の要否、内容等は、府の相手方とのかかわり等をしん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるというべきである。さらに、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、裁量によって決定すべきものであるところ、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、知事の交際事務を適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるといわなければならない。したがって、本件文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の氏名等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、懇談に係る文書については本件条例8条4号又は5号により、その余の慶弔等に係る文書については同条5号により、公開しないことができる文書に該当するというべきである。
また、本件における知事の交際は、それが知事の職務としてされるものであっても、私人である相手方にとっては、私的な出来事といわなければならない。本件条例9条1号は、私事に関する情報のうち性質上公開に親しまないような個人情報が記録されている文書を公開してはならないとしているものと解されるが、知事の交際の相手方となった私人としては、懇談の場合であると、慶弔等の場合であるとを問わず、その具体的な費用、金額等までは一般に他人に知られたくないと望むものであり、そのことは正当であると認められる。そうすると、このような交際に関する情報は、その交際の性質、内容等からして交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと予定されているものを除いては、同号に該当するというべきである。 したがって、本件文書のうち私人である相手方に係るものは、相手方が識別できるようなものであれば、原則として、同号により公開してはならない文書に該当するというべきである。」
判旨:「知事の交際費は、都道府県における行政の円滑な運営を図るため、関係者との懇談や慶弔等の対外的な交際事務を行うのに要する経費である。このような知事の交際は、懇談については本件条例8条4号の企画調整等事務又は同条5号の交渉等事務に、その余の慶弔等については同号の交渉等事務にそれぞれ該当すると解されるから、これらの事務に関する情報を記録した文書を公開しないことができるか否かは、これらの情報を公にすることにより、当該若しくは同種の交渉等事務としての交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるか否か、又は当該若しくは同種の企画調整等事務や交渉等事務としての交際事務を公正かつ適正に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるか否かによって決定されることになる。 本件においては、知事の交際事務のうち懇談については、歳出額現金出納簿に懇談の相手方と支出金額が逐一記録されており、また、債権者請求書等の中にも府の担当者によって懇談会の出席者の氏名がメモ書きの形で記録されているものがあることは前記のとおりであり、これ以外にも、一般人が通常入手し得る関連情報と照合することによって懇談の相手方が識別され得るようなものが含まれていることも当然に予想される。また、懇談以外の知事の交際については、歳出額現金出納簿及び支出証明書に交際の相手方や金額等が逐一記録されていることは前記のとおりである。 ところで、知事の交際事務には、懇談、慶弔、見舞い、賛助、協賛、餞別などのように様々なものがあると考えられるが、いずれにしても、これらは、相手方との間の信頼関係ないし友好関係の維持増進を目的して行われるものである。そして、相手方の氏名等の公表、披露が当然予定されているような場合等は別として、相手方を識別し得るような前記文書の公開によって相手方の氏名等が明らかにされることになれば、懇談については、相手方に不快、不信の感情を抱かせ、今後府の行うこの種の会合への出席を避けるなどの事態が生ずることも考えられ、また、一般に、交際費の支出の要否、内容等は、府の相手方とのかかわり等をしん酌して個別に決定されるという性質を有するものであることから、不満や不快の念を抱く者が出ることが容易に予想される。そのような事態は、交際の相手方との間の信頼関係あるいは友好関係を損なうおそれがあり、交際それ自体の目的に反し、ひいては交際事務の目的が達成できなくなるおそれがあるというべきである。さらに、これらの交際費の支出の要否やその内容等は、支出権者である知事自身が、個別、具体的な事例ごとに、裁量によって決定すべきものであるところ、交際の相手方や内容等が逐一公開されることとなった場合には、知事においても前記のような事態が生ずることを懸念して、必要な交際費の支出を差し控え、あるいはその支出を画一的にすることを余儀なくされることも考えられ、知事の交際事務を適切に行うことに著しい支障を及ぼすおそれがあるといわなければならない。したがって、本件文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の氏名等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、懇談に係る文書については本件条例8条4号又は5号により、その余の慶弔等に係る文書については同条5号により、公開しないことができる文書に該当するというべきである。
また、本件における知事の交際は、それが知事の職務としてされるものであっても、私人である相手方にとっては、私的な出来事といわなければならない。本件条例9条1号は、私事に関する情報のうち性質上公開に親しまないような個人情報が記録されている文書を公開してはならないとしているものと解されるが、知事の交際の相手方となった私人としては、懇談の場合であると、慶弔等の場合であるとを問わず、その具体的な費用、金額等までは一般に他人に知られたくないと望むものであり、そのことは正当であると認められる。そうすると、このような交際に関する情報は、その交際の性質、内容等からして交際内容等が一般に公表、披露されることがもともと予定されているものを除いては、同号に該当するというべきである。 したがって、本件文書のうち私人である相手方に係るものは、相手方が識別できるようなものであれば、原則として、同号により公開してはならない文書に該当するというべきである。」
過去問・解説
(R4 予備 第17問 ウ)
A県公文書公開等条例は、「県の機関等が行う交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものが記録されている公文書は公開しないことができる。」と定めるところ、A県知事が懇談会で外部の飲食店を利用した際の請求書、領収書、歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、公表予定のない懇談会出席者の氏名が記録されてはいるものの懇談の内容が全く記録されていないものについては、同条例により公開しないことができる文書に該当しない。
A県公文書公開等条例は、「県の機関等が行う交渉、渉外、争訟等の事務に関する情報であって、公にすることにより、当該若しくは同種の事務の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務の公正かつ適切な執行に著しい支障を及ぼすおそれのあるものが記録されている公文書は公開しないことができる。」と定めるところ、A県知事が懇談会で外部の飲食店を利用した際の請求書、領収書、歳出額現金出納簿及び支出証明書のうち、公表予定のない懇談会出席者の氏名が記録されてはいるものの懇談の内容が全く記録されていないものについては、同条例により公開しないことができる文書に該当しない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平6.1.27)は、本肢と同種の事案において、「文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の氏名等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、懇談に係る文書については本件条例8条4号又は5号により、その余の慶弔等に係る文書については同条5号により、公開しないことができる文書に該当するというべきである。」としている。
したがって、懇談の内容が全く記録されていないものについても、同条例により公開しないことができる文書に該当する。
判例(最判平6.1.27)は、本肢と同種の事案において、「文書のうち交際の相手方が識別され得るものは、相手方の氏名等が外部に公表、披露されることがもともと予定されているものなど、相手方の氏名等を公表することによって前記のようなおそれがあるとは認められないようなものを除き、懇談に係る文書については本件条例8条4号又は5号により、その余の慶弔等に係る文書については同条5号により、公開しないことができる文書に該当するというべきである。」としている。
したがって、懇談の内容が全く記録されていないものについても、同条例により公開しないことができる文書に該当する。