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行政法 源泉徴収による所得税についての納税の告知 最一小判昭和45年12月24日
概要
源泉徴収による所得税についての納税の告知は、確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(国政通則法(以下「法」という。)76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうる。
判例
事案:納税告知処分により納付した源泉徴収所得税について、源泉徴収義務者(支払者)の納税義務者(受給者)に対する支払の請求が認容された。
判旨:「一般に、納税の告知は、法36条所定の場合に(なお、資産再評価法71条4項参照)、国税徴収手続の第1段階をなすものとして要求され、滞納処分の不可欠の前提となるものであり、また、その性質は、税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって(ただし、賦課課税方式による場合において法32条1項1号に該当するときは、納税の告知が、同時に賦課決定の通知として、税額確定の効果をあわせもつ例外の場合にあたる)、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができるものと解される。けだし、右の納税の告知に先だって、税額の確定(およびその前提となる納税義務の成立の確認)が、納税者の申告または税務署長の処分によってなされるわけではなく、支払者が納税義務の存否または範囲を争ううえで、障害となるべきものは存しないからである。 以上のとおり、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、課税処分ではなく徴収処分であって、支払者の納税義務の存否・範囲は右処分の前提問題たるにすぎないから、支払者においてこれに対する不服申立てをせず、または不服申立てをしてそれが排斥されたとしても、受給者の源泉納税義務の存否・範囲にはいかなる影響も及ぼしうるものではない。したがって、受給者は、源泉徴収による所得税を徴収されまたは期限後に納付した支払者から、その税額に相当する金額の支払を請求されたときは、自己において源泉納税義務を負わないことまたはその義務の範囲を争って、支払者の請求の全部または一部を拒むことができるものと解される(支払者が右の徴収または納付の時以後において受給者に支払うべき金額から右税額相当額を控除したときは、その全部または一部につき源泉納税義務のないことを主張する受給者は、支払者において法律上許容されえない控除をなし、その残額のみを支払ったのは債務の一部不履行であるとして、当該控除額に相当する債務の履行を請求することができる)。 支払者は、一方、納税の告知に対する抗告訴訟において、その前提問題たる納税義務の存否または範囲を争って敗訴し、他方、受給者に対する税額相当額の支払請求訴訟(または受給者より支払者に対する控除額の支払請求訴訟)において敗訴することがありうるが、それは、納税の告知が課税処分ではなく、これに対する抗告訴訟が支払者の納税義務また従って受給者の源泉納税義務の存否・範囲を訴訟上確定させうるものでない故であって、支払者は、かかる不利益を避けるため、右の抗告訴訟にあわせて、またはこれと別個に、納税の告知を受けた納税義務の全部または一部の不存在の確認の訴えを提起し、受給者に訴訟告知をして、自己の納税義務(受給者の源泉納税義務)の存否・範囲の確認について、受給者とその責任を分かつことができる。 本件において原判決の確定した事実関係中、中川税務署長が被上告会社に対し、昭和39年3月10日、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損を上告人らに対する役員賞与と認定して、源泉徴収による所得税の本税ならびに不納付加算税(旧源泉徴収加算税)および旧利子税の支払方を請求し、また、同年8月14日新利子税の支払方を請求したというのは、以下、本税の関係のみについていえば(その余の関係については後述)、所轄税務署長が被上告会社に対し、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損につき上告人らより徴収して納付すべき所得税の納付がないとして、これを被上告会社より徴収するため、納税の告知(法36条)をしたことをいうのであり、原判決がこれを指して(課税決定)といい、また(所得税の決定)というのは、納税の告知の法律的性質を誤解したものといわなければならない。 しかしながら、支払者たる被上告会社が納税の告知(徴収処分)に対して、行政上の不服申立てを適切に行なわず、また、抗告訴訟を提起しなかったとしても、それが受給者たる上告人らの源泉納税義務の存否および範囲いかんにつき、なんら影響を及ぼすものでないことは、前記に説示するところによって明らかであって、上告人らは、被上告会社に対する納税の告知の行政処分としての確定と無関係に、上告人らの源泉納税義務(また従って被上告会社の納税義務)の不存在を主張して、被上告会社の本訴請求を争うことができるのである。現に、上告人らは原審において、源泉納税義務の不存在を主張して排斥されたものであり、被上告会社が納税の告知を受けながら、これを上告人らに知らせることのないまま行政処分として確定させたとしても、なんら上告人らの権利・利益を侵害したものということはできないのである。」
判旨:「一般に、納税の告知は、法36条所定の場合に(なお、資産再評価法71条4項参照)、国税徴収手続の第1段階をなすものとして要求され、滞納処分の不可欠の前提となるものであり、また、その性質は、税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって(ただし、賦課課税方式による場合において法32条1項1号に該当するときは、納税の告知が、同時に賦課決定の通知として、税額確定の効果をあわせもつ例外の場合にあたる)、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができるものと解される。けだし、右の納税の告知に先だって、税額の確定(およびその前提となる納税義務の成立の確認)が、納税者の申告または税務署長の処分によってなされるわけではなく、支払者が納税義務の存否または範囲を争ううえで、障害となるべきものは存しないからである。 以上のとおり、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、課税処分ではなく徴収処分であって、支払者の納税義務の存否・範囲は右処分の前提問題たるにすぎないから、支払者においてこれに対する不服申立てをせず、または不服申立てをしてそれが排斥されたとしても、受給者の源泉納税義務の存否・範囲にはいかなる影響も及ぼしうるものではない。したがって、受給者は、源泉徴収による所得税を徴収されまたは期限後に納付した支払者から、その税額に相当する金額の支払を請求されたときは、自己において源泉納税義務を負わないことまたはその義務の範囲を争って、支払者の請求の全部または一部を拒むことができるものと解される(支払者が右の徴収または納付の時以後において受給者に支払うべき金額から右税額相当額を控除したときは、その全部または一部につき源泉納税義務のないことを主張する受給者は、支払者において法律上許容されえない控除をなし、その残額のみを支払ったのは債務の一部不履行であるとして、当該控除額に相当する債務の履行を請求することができる)。 支払者は、一方、納税の告知に対する抗告訴訟において、その前提問題たる納税義務の存否または範囲を争って敗訴し、他方、受給者に対する税額相当額の支払請求訴訟(または受給者より支払者に対する控除額の支払請求訴訟)において敗訴することがありうるが、それは、納税の告知が課税処分ではなく、これに対する抗告訴訟が支払者の納税義務また従って受給者の源泉納税義務の存否・範囲を訴訟上確定させうるものでない故であって、支払者は、かかる不利益を避けるため、右の抗告訴訟にあわせて、またはこれと別個に、納税の告知を受けた納税義務の全部または一部の不存在の確認の訴えを提起し、受給者に訴訟告知をして、自己の納税義務(受給者の源泉納税義務)の存否・範囲の確認について、受給者とその責任を分かつことができる。 本件において原判決の確定した事実関係中、中川税務署長が被上告会社に対し、昭和39年3月10日、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損を上告人らに対する役員賞与と認定して、源泉徴収による所得税の本税ならびに不納付加算税(旧源泉徴収加算税)および旧利子税の支払方を請求し、また、同年8月14日新利子税の支払方を請求したというのは、以下、本税の関係のみについていえば(その余の関係については後述)、所轄税務署長が被上告会社に対し、本件簿外定期預金の払出しおよび売却損につき上告人らより徴収して納付すべき所得税の納付がないとして、これを被上告会社より徴収するため、納税の告知(法36条)をしたことをいうのであり、原判決がこれを指して(課税決定)といい、また(所得税の決定)というのは、納税の告知の法律的性質を誤解したものといわなければならない。 しかしながら、支払者たる被上告会社が納税の告知(徴収処分)に対して、行政上の不服申立てを適切に行なわず、また、抗告訴訟を提起しなかったとしても、それが受給者たる上告人らの源泉納税義務の存否および範囲いかんにつき、なんら影響を及ぼすものでないことは、前記に説示するところによって明らかであって、上告人らは、被上告会社に対する納税の告知の行政処分としての確定と無関係に、上告人らの源泉納税義務(また従って被上告会社の納税義務)の不存在を主張して、被上告会社の本訴請求を争うことができるのである。現に、上告人らは原審において、源泉納税義務の不存在を主張して排斥されたものであり、被上告会社が納税の告知を受けながら、これを上告人らに知らせることのないまま行政処分として確定させたとしても、なんら上告人らの権利・利益を侵害したものということはできないのである。」
過去問・解説
(R4 予備 第19問 ア)
税務署長が源泉徴収による所得税について国税通則法第36条第1項の規定に基づいてする納税の告知は、法令の規定に従い自動的に税額が確定した国税債権につき納期限を指定して履行を請求する行為であり、税額を確定する効力を有するものではないが、法令の規定によって確定した税額がいくらであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであって、処分性が認められる。
【参照条文】国税通則法
(納税の告知)
第36条 税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞納処分費を除く。次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない。
一 (略)
二 源泉徴収等による国税でその法定納期限までに納付されなかったもの
三、四 (略)
2 前項の規定による納税の告知は、税務署長が、政令で定めるところにより、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行う。ただし、担保として提供された金銭をもって消費税等を納付させる場合その他政令で定める場合には、納税告知書の送達に代え、当該職員に口頭で当該告知をさせることができる。
税務署長が源泉徴収による所得税について国税通則法第36条第1項の規定に基づいてする納税の告知は、法令の規定に従い自動的に税額が確定した国税債権につき納期限を指定して履行を請求する行為であり、税額を確定する効力を有するものではないが、法令の規定によって確定した税額がいくらであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであって、処分性が認められる。
【参照条文】国税通則法
(納税の告知)
第36条 税務署長は、国税に関する法律の規定により次に掲げる国税(その滞納処分費を除く。次条において同じ。)を徴収しようとするときは、納税の告知をしなければならない。
一 (略)
二 源泉徴収等による国税でその法定納期限までに納付されなかったもの
三、四 (略)
2 前項の規定による納税の告知は、税務署長が、政令で定めるところにより、納付すべき税額、納期限及び納付場所を記載した納税告知書を送達して行う。ただし、担保として提供された金銭をもって消費税等を納付させる場合その他政令で定める場合には、納税告知書の送達に代え、当該職員に口頭で当該告知をさせることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭45.12.24)は、「一般に、納税の告知は、…税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって…、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができる…。」としている。
判例(最判昭45.12.24)は、「一般に、納税の告知は、…税額の確定した国税債権につき、納期限を指定して納税義務者等に履行を請求する行為、すなわち徴収処分であって…、それ自体独立して国税徴収権の消滅時効の中断事由となるもの(法73条1項)であるが、源泉徴収による所得税についての納税の告知は、前記により確定した税額がいくばくであるかについての税務署長の意見が初めて公にされるものであるから、支払者がこれと意見を異にするときは、当該税額による所得税の徴収を防止するため、異議申立てまたは審査請求(法76条、79条)のほか、抗告訴訟をもなしうるものと解すべきであり、この場合、支払者は、納税の告知の前提となる納税義務の存否または範囲を争って、納税の告知の違法を主張することができる…。」としている。