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行政法 風営法の委任条例所定の風俗営業制限地区内の居住者 最一小判平成10年12月17日
概要
風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律施行令6条1号イの定める基準に従って規定された都道府県の条例所定の風俗営業制限地域に居住する者は、同地域内における風俗営業許可処分の取消しを求める原告適格を有しない。
判例
事案:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律3条1項に基づいてなされたパチンコ屋の営業許可処分について、近隣住民であるXがその取消を求めてした取消訴訟において、風俗営業制限地域居住者に原告適格が認められるかが問題となった。
判旨:「法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする(法1条)。右の目的規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは、困難である。
また、風俗営業の許可の基準を定める法4条2項2号は、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内に営業所があるときは、風俗営業の許可をしてはならないと規定している。右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。
ところで、右の法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下『施行令』という。)6条1号ロ及び2号は、特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある特定の施設に着目して、当該施設の周囲おおむね100メートルの区域内の地域を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。この規定は、当該特定の施設の設置者の有する個別的利益を特に保護しようとするものと解されるから、法4条2項2号を受けて右基準に従って定められた風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和59年東京都条例第128号)(以下『施行条例』という。)3条1項2号は、同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保護していると解すべきである(最高裁平成4年(行ツ)第109号同6年9月27日第三小法廷判決・裁判集民事173号111頁参照)。
これに対し、施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。
したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」
判旨:「法は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び風俗関連営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする(法1条)。右の目的規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは、困難である。
また、風俗営業の許可の基準を定める法4条2項2号は、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例で定める地域内に営業所があるときは、風俗営業の許可をしてはならないと規定している。右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。
ところで、右の法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下『施行令』という。)6条1号ロ及び2号は、特にその周辺における良好な風俗環境を保全する必要がある特定の施設に着目して、当該施設の周囲おおむね100メートルの区域内の地域を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。この規定は、当該特定の施設の設置者の有する個別的利益を特に保護しようとするものと解されるから、法4条2項2号を受けて右基準に従って定められた風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例(昭和59年東京都条例第128号)(以下『施行条例』という。)3条1項2号は、同号所定の施設につき善良で静穏な環境の下で円滑に業務をするという利益をも保護していると解すべきである(最高裁平成4年(行ツ)第109号同6年9月27日第三小法廷判決・裁判集民事173号111頁参照)。
これに対し、施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。
したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」
過去問・解説
(H26 共通 第30問 イ)
①の法令に関する説明を前提にした場合に、②の記述が最高裁判所の判例の内容として正しいものに〇、誤っているものに×を付した場合の組合せを、選びなさい。
①風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第4条第2項第2号は、風俗営業の許可の基準につき、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例(以下「施行条例」という。)で定める地域内に営業所があるときは風俗営業の許可をしてはならないと定め、法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下「施行令」という。)第6条第1号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。
②これらの規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは困難であり、施行令第6条第1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、上記の基準に従って規定された施行条例が定める地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。
①の法令に関する説明を前提にした場合に、②の記述が最高裁判所の判例の内容として正しいものに〇、誤っているものに×を付した場合の組合せを、選びなさい。
①風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「法」という。)第4条第2項第2号は、風俗営業の許可の基準につき、良好な風俗環境を保全するため特にその設置を制限する必要があるものとして政令で定める基準に従い都道府県の条例(以下「施行条例」という。)で定める地域内に営業所があるときは風俗営業の許可をしてはならないと定め、法の委任を受けて規定された風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令(以下「施行令」という。)第6条第1号イの規定は、「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めている。
②これらの規定から、法の風俗営業の許可に関する規定が一般的公益の保護に加えて個々人の個別的利益をも保護すべきものとする趣旨を含むことを読み取ることは困難であり、施行令第6条第1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、上記の基準に従って規定された施行条例が定める地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平10.12.17)は、「右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。」とした上で、「施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めている…。…したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。
判例(最判平10.12.17)は、「右の規定は、具体的地域指定を条例に、その基準の決定を政令にゆだねており、それらが公益に加えて個々人の個別的利益をも保護するものとすることを禁じているとまでは解されないものの、良好な風俗環境の保全という公益的な見地から風俗営業の制限地域の指定を行うことを予定しているものと解されるのであって、同号自体が当該営業制限地域の居住者個々人の個別的利益をも保護することを目的としているものとは解し難い。」とした上で、「施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めている…。…したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。
(R5 予備 第19問 ウ)
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく風俗営業の許可については、同法の委任を受けて定められた政令が「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を条例で風俗営業の制限地域とすべき基準として定めており、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含むと解されるから、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する。
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく風俗営業の許可については、同法の委任を受けて定められた政令が「住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域」を条例で風俗営業の制限地域とすべき基準として定めており、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含むと解されるから、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平10.12.17)は、「施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。
したがって、政令は、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含まず、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有しない。
判例(最判平10.12.17)は、「施行令6条1号イの規定は、『住居が多数集合しており、住居以外の用途に供される土地が少ない地域』を風俗営業の制限地域とすべきことを基準として定めており、一定の広がりのある地域の良好な風俗環境を一般的に保護しようとしていることが明らかであって、同号口のように特定の個別的利益の保護を図ることをうかがわせる文言は見当たらない。このことに、前記のとおり法1条にも法4条2項2号自体にも個々人の個別的利益の保護をうかがわせる文言がないこと、同号にいう『良好な風俗環境』の中で生活する利益は専ら公益の面から保護することとしてもその性質にそぐわないとはいえないことを併せ考えれば、施行令6条1号イの規定は、専ら公益保護の観点から基準を定めていると解するのが相当である。そうすると、右基準に従って規定された施行条例3条1項1号は、同号所定の地域に居住する住民の個別的利益を保護する趣旨を含まないものと解される。したがって、右地域に住居する者は、風俗営業の許可の取消しを求める原告適格を有するとはいえない。」としている。
したがって、政令は、住民が良好な風俗環境の中で生活する利益をその個別的利益として保護する趣旨を含まず、当該基準に従って規定された同法の施行条例が定める地域に居住する者は、当該許可の取消しを求める原告適格を有しない。