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行政法 市議会の議決無効確認を求める訴えの適否 最二小判昭和28年6月12日
概要
執行機関と議決機関との関係は、地方公共団体の内部の機関相互間の関係であり、法律が内部的解決に委ねることを不適当として特に訴えの提起を許している場合を除き、機関相互間の権限の紛争は、訴訟の対象とはならないから、市議会議員が、市議会議員としての資格において、市又は市長を被告として市議会の議決の無効又は議決の不存在の確認を求める訴えは、これを許容する法律の規定がない以上、市長が市議会の議決に拘束されるとしても、不適法である。
判例
事案:市議会の議決の無効確認訴訟において、市議会の議決のように行政機関相互の内部的権限について争いのある場合に、その無効を求める訴えの適法性が問題となった。
判旨:「上告人の布施市議会の本件議決の不存在又は無効確認を求める訴について考えて見るに、市議会の議決は法人格を有する市の内部的意思決定に過ぎないのであって、市の行為としての効力を有するものではなく、従って市を被告として不存在又は無効確認を求めることは全く無意味である。上告人は布施市議会議員なるが故にこのような確認を求める利益を有すると主張するのであるが、なるほど市長は市議会の議決に拘束されるけれども、このような執行機関と議決機関との関係は市の内部の機関相互間の関係であって若しその間に紛争があるならば市が内部的に解決すべく、訴訟をもって争うべき問題ではない。機関相互間の権限の争は法人格者間の権利義務に関する争とは異り、法律上の争として当然に訴訟の対象となるものではなく、法律が内部的解決に委せることを不適当として、例えば地方自治法176条5項のように特に訴の提起を許している場合にのみ、訴訟の対象となるものと解すべきである。そして市議会の議員が、市又は市長を被告として議決の無効又は不存在の確認を求める訴は、地方自治法その他の法律中に、これを許した規定がないのであるから、原判決が本訴を不適法としたのは正当である。
右説明のように議決はそれ自体訴訟の対象とすることはできないけれども、市長が市議会の議決に従って執行をした場合、その行為は市の行為として効力を持つに至るから、その無効を主張するについて利益を有する者は、議決の無効を理由として市の行為の効力を争うことはできる。本件建設大臣及大阪府知事に対する許可、認可の申請又はその変更認可の申請は、法人格を有する市の行為である点において、さきに説明した議会の議決と性質を異にする。しかしながら、その申請によって生ずる法律上の関係は布施市と相手方たる建設大臣又は大阪府知事との関係であって、第三者に利害関係のないことである。従って第三者は申請の効力について争う法律上の利益を有しないものと言わなければならない。このことは申請に対する所轄庁の許可認可についても同様であって、第三者がよって自己の法律上の利益を害される特別の事情のある場合は格別、通常の場合第三者は許可認可の効力を争う利益を有するものではない。そして本件の場合、上告人等はかかる特別の事情があるとの主張をしないのであるから原判決が本訴について訴の利益がないとしたのは正当である。上告人は布施市議会の議員であるが故に、本件申請及許可認可等の効力を争う利益を有するというのであるが、市議会議員は地方自治法の定めるところにより議決機関たる議会の構成員として市の意思決定に参与することができるけれども、議員としてなし得る事項は地方自治法その他法律中に定められており、これら法律の規定をはなれて議員なるが故に他の市民と異る立場に立つものではない。また市の住民なるが故に一般的に市の行為の効力を争う利益があるものということはできない。」
判旨:「上告人の布施市議会の本件議決の不存在又は無効確認を求める訴について考えて見るに、市議会の議決は法人格を有する市の内部的意思決定に過ぎないのであって、市の行為としての効力を有するものではなく、従って市を被告として不存在又は無効確認を求めることは全く無意味である。上告人は布施市議会議員なるが故にこのような確認を求める利益を有すると主張するのであるが、なるほど市長は市議会の議決に拘束されるけれども、このような執行機関と議決機関との関係は市の内部の機関相互間の関係であって若しその間に紛争があるならば市が内部的に解決すべく、訴訟をもって争うべき問題ではない。機関相互間の権限の争は法人格者間の権利義務に関する争とは異り、法律上の争として当然に訴訟の対象となるものではなく、法律が内部的解決に委せることを不適当として、例えば地方自治法176条5項のように特に訴の提起を許している場合にのみ、訴訟の対象となるものと解すべきである。そして市議会の議員が、市又は市長を被告として議決の無効又は不存在の確認を求める訴は、地方自治法その他の法律中に、これを許した規定がないのであるから、原判決が本訴を不適法としたのは正当である。
右説明のように議決はそれ自体訴訟の対象とすることはできないけれども、市長が市議会の議決に従って執行をした場合、その行為は市の行為として効力を持つに至るから、その無効を主張するについて利益を有する者は、議決の無効を理由として市の行為の効力を争うことはできる。本件建設大臣及大阪府知事に対する許可、認可の申請又はその変更認可の申請は、法人格を有する市の行為である点において、さきに説明した議会の議決と性質を異にする。しかしながら、その申請によって生ずる法律上の関係は布施市と相手方たる建設大臣又は大阪府知事との関係であって、第三者に利害関係のないことである。従って第三者は申請の効力について争う法律上の利益を有しないものと言わなければならない。このことは申請に対する所轄庁の許可認可についても同様であって、第三者がよって自己の法律上の利益を害される特別の事情のある場合は格別、通常の場合第三者は許可認可の効力を争う利益を有するものではない。そして本件の場合、上告人等はかかる特別の事情があるとの主張をしないのであるから原判決が本訴について訴の利益がないとしたのは正当である。上告人は布施市議会の議員であるが故に、本件申請及許可認可等の効力を争う利益を有するというのであるが、市議会議員は地方自治法の定めるところにより議決機関たる議会の構成員として市の意思決定に参与することができるけれども、議員としてなし得る事項は地方自治法その他法律中に定められており、これら法律の規定をはなれて議員なるが故に他の市民と異る立場に立つものではない。また市の住民なるが故に一般的に市の行為の効力を争う利益があるものということはできない。」
過去問・解説
(R1 予備 第21問 ウ)
執行機関と議決機関との関係は、地方公共団体の内部の機関相互間の関係であり、法律が内部的解決に委ねることを不適当として特に訴えの提起を許している場合を除き、機関相互間の権限の紛争は、訴訟の対象とはならないから、市議会議員が、市議会議員としての資格において、市又は市長を被告として市議会の議決の無効又は議決の不存在の確認を求める訴えは、これを許容する法律の規定がない以上、市長が市議会の議決に拘束されるとしても、不適法なものとして却下を免れない。
執行機関と議決機関との関係は、地方公共団体の内部の機関相互間の関係であり、法律が内部的解決に委ねることを不適当として特に訴えの提起を許している場合を除き、機関相互間の権限の紛争は、訴訟の対象とはならないから、市議会議員が、市議会議員としての資格において、市又は市長を被告として市議会の議決の無効又は議決の不存在の確認を求める訴えは、これを許容する法律の規定がない以上、市長が市議会の議決に拘束されるとしても、不適法なものとして却下を免れない。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭28.6.12)は、「執行機関と議決機関との関係は市の内部の機関相互間の関係であって若しその間に紛争があるならば市が内部的に解決すべく、訴訟をもって争うべき問題ではない。機関相互間の権限の争は法人格者間の権利義務に関する争とは異り、法律上の争として当然に訴訟の対象となるものではなく、法律が内部的解決に委せることを不適当として、例えば地方自治法176条5項のように特に訴の提起を許している場合にのみ、訴訟の対象となるものと解すべきである。そして市議会の議員が、市又は市長を被告として議決の無効又は不存在の確認を求める訴は、地方自治法その他の法律中に、これを許した規定がないのであるから、原判決が本訴を不適法としたのは正当である。」としている。
判例(最判昭28.6.12)は、「執行機関と議決機関との関係は市の内部の機関相互間の関係であって若しその間に紛争があるならば市が内部的に解決すべく、訴訟をもって争うべき問題ではない。機関相互間の権限の争は法人格者間の権利義務に関する争とは異り、法律上の争として当然に訴訟の対象となるものではなく、法律が内部的解決に委せることを不適当として、例えば地方自治法176条5項のように特に訴の提起を許している場合にのみ、訴訟の対象となるものと解すべきである。そして市議会の議員が、市又は市長を被告として議決の無効又は不存在の確認を求める訴は、地方自治法その他の法律中に、これを許した規定がないのであるから、原判決が本訴を不適法としたのは正当である。」としている。