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行政法 国が地下道を新設したことにより、消防法の定める離隔距離規定違反の状態となり、ガソリンタンクの移動を余儀なくされたことによる損失 最二小判昭和58年2月18日

概要
道路法70条1項の定める損失の補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむをえない必要があってした通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られ、道路工事の施行の結果、危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことを内容とする技術上の基準を定めた警察法規に違反する状態を生じ、危険物保有者が右の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされたことによって被った損失は、右補償の対象には属しない。
判例
事案:国道の交差点に地下横断歩道が新設された結果、同交差点に面する土地でガソリンスタンドを経営していたXが、消防法等の警察法規上の規制により埋設されていたガソリンタンクを移転しなければならなくなったため、その移転費用相当額について損失補償等を請求した事案において、当該移転費用が道路法70条1項の補償の対象となるかどうかが問題となった。

判旨:「道路法70条1項の規定は、道路の新設又は改築のための工事の施行によって当該道路とその隣接地との間に高低差が生ずるなど土地の形状の変更が生じた結果として、隣接地の用益又は管理に障害を来し、従前の用法に従ってその用益又は管理を維持、継続していくためには、用益上の利便又は境界の保全等の管理の必要上当該道路の従前の形状に応じて設置されていた通路、みぞ、かき、さくその他これに類する工作物を増築、修繕若しくは移転し、これらの工作物を新たに設置し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合において、道路管理者は、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならないものとしたものであって、その補償の対象は、道路工事の施行による土地の形状の変更を直接の原因として生じた隣接地の用益又は管理上の障害を除去するためにやむを得ない必要があってした前記工作物の新築、増築、修繕若しくは移転又は切土若しくは盛土の工事に起因する損失に限られると解するのが相当である。したがって、警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被つたとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。 これを本件についてみると、原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」
過去問・解説
(H23 共通 第37問 イ)
次の【甲群】に掲げるXの各損失について、国又は地方公共団体が損失補償は不要であると主張する場合に、それぞれの理由として最も適切なものを、【乙群】に掲げるAからFまでの中から選びなさい。

【甲群】
Xが埋設した石油の導管が、近隣に新たに建築物が建築されたために、石油パイプライン事業法に基づく石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令第13条第1号に違反する状態となり、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用

【参照条文】石油パイプライン事業の事業用施設の技術上の基準を定める省令
第13条 導管を地下に埋設する場合は、次の各号に掲げるところによらなければならない。
 一 導管は、その外面から建築物、地下街、隧道その他の告示で定める工作物に対し告示で定める水平距離を有すること。
 二~七 (略)

【乙群】
A.警察規制による損失であるから。
B.公用制限による損失であるから。
C.地域一帯において土地及び土地利用の現状を変更することの公共性が高いところ、こうした現状変更のための規制による損失であるから。
D.地域一帯において土地及び土地利用の現状を維持することの公共性が高いところ、こうした現状維持のための規制による損失であるから。
E.土地利用の規制により、利益を受ける者が反面で被ることになる損失であるから。
F.土地の利用権が、付与された当初から一定の公益上の理由により消滅すべきことが予定されていたところ、このように予定されていた権利の消滅による損失であるから。

(正答)A

(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、【甲群】と同種の事案において、「警察法規が一定の危険物の保管場所等につき保安物件との間に一定の離隔距離を保持すべきことなどを内容とする技術上の基準を定めている場合において、道路工事の施行の結果、警察違反の状態を生じ、危険物保有者が右技術上の基準に適合するように工作物の移転等を余儀なくされ、これによって損失を被ったとしても、それは道路工事の施行によって警察規制に基づく損失がたまたま現実化するに至ったものにすぎず、このような損失は、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないものというべきである。」としている。
したがって、Xが導管の移設工事をしなければならなくなった場合の工事費用は、警察規制による損失であるから損失補償が不要であるとするのが最も適切な理由である。

(R6 予備 第23問 ウ)
X社が自己所有地の地下にガソリンタンクを適法に設置したところ、その後、国が地下道を新設したため、上記ガソリンタンクの設置状況が消防法違反の状態となりその移転を余儀なくされた場合でも、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。

【参照条文】道路法
第70条 土地収用法第93条第1項の規定による場合の外、道路を新設し、又は改築したことに因り、当該道路に面する土地について、通路、みぞ、かき、さくその他の工作物を新築し、増築し、修繕し、若しくは移転し、又は切土若しくは盛土をするやむを得ない必要があると認められる場合においては、道路管理者は、これらの工事をすることを必要とする者(中略)の請求により、これに要する費用の全部又は一部を補償しなければならない。(以下略)
2~4 (略)

(正答)

(解説)
判例(最判昭58.2.18)は、本肢と同種の事案において、「原審の適法に確定したところによれば、被上告人は、その経営する石油給油所においてガソリン等の地下貯蔵タンクを埋設していたところ、上告人を道路管理者とする道路工事の施行に伴い、右地下貯蔵タンクの設置状況が消防法10条、12条、危険物の規制に関する政令13条、危険物の規制に関する規則23条の定める技術上の基準に適合しなくなって警察違反の状態を生じたため、右地下貯蔵タンクを別の場所に移設せざるを得なくなったというのであって、これによって被上告人が被った損失は、まさしく先にみた警察規制に基づく損失にほかならず、道路法70条1項の定める補償の対象には属しないといわなければならない。」としている。
したがって、X社の支出した移転費用は道路法第70条の規定する補償の対象とならない。
総合メモ
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