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行政法 破壊消防に伴う損失補償の要件 最三小判昭和47年5月30日

概要
消防法29条3項にいう延焼の防止のために緊急の必要があったといえるためには、消火若しくは延焼の防止又は人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要する。
判例
事案:Y村の消防団による消防活動によってXら所有の建物及び動産が破壊されたことについて、Xらが、Y村に対し、国家賠償法1条により損害賠償を請求した事案において、消防法29条3項における「消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるとき」の意義が問題となった。

判旨:「消防法29条によれば、(1)火災が発生しようとし、または発生した消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防吏員または消防団員が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条1項の場合)および(2)延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、火勢、気象の状況その他周囲の事情から合理的に判断して延焼防止のためやむを得ないと認められるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条2項の場合)には、そのために損害を受けた者があっても、その損失を補償することを要しないが、(3)右(1)および(2)にかかげた消防対象物および土地以外の消防対象物および土地について、消防長もしくは消防署長または消防本部を置かない市町村においては消防団の長が、消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときに、これを使用し、処分しまたはその使用を制限した場合(同条3項の場合)には、そのために損害を受けた者からその損失の補償の要求があれば、その損失を補償しなければならないことが明らかである。すなわち、火災の際の消防活動により損害を受けた者がその損失の補償を請求しうるためには、当該処分等が、火災が発生しようとし、もしくは発生し、または延焼のおそれがある消防対象物およびこれらのもののある土地以外の消防対象物および土地に対しなされたものであり、かつ、右処分等が消火もしくは延焼の防止または人命の救助のために緊急の必要があるときになされたものであることを要するものといわなければならない。 ところで、これを本件についてみるに、原審が適法に確定した事実関係、ことに、原判決添付図面表示のB建物の東方約30メートルの距離にあつた御母衣旅館ではほとんど延焼の危険がなかったこと、風向は南ないし南々西から北ないし北々東であったが、風速は4ないし6メートル位で弱かったこと、右図面表示のト建物とル建物との間隔は5メートルあり、同図面表示のト、チ、リ、ヌの各建物はほとんど間隙なく接続していたが、ト建物とヌ建物との距離は約30メートルあったこと、バラック建構造の右建物をブルトーザーで破壊するには1棟につき3分位しか要しなかったこと、しかし、右図面表示のイ建物から北方約50メートルに1箇所、それから更に北方約50メートルに1箇所ガソリンスタンドがあったこと等に徴すれば、本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」
過去問・解説
(R6 予備 第23問 イ)
旅館Aで火災が発生し、消防団長が消火活動に当たり、旅館Aに隣接する建物Bを破壊した際、建物Bへの延焼のおそれはなかったものの、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象とならない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭47.5.30)は、本肢と同種の事案において、「本件破壊消防活動の行なわれた当時右図面表示のロ、ニ、ヌの建物自体は必ずしも延焼のおそれがあったとはいえないが、B建物から北に連なる建物への延焼を防止するために右ロ、ニ、ヌの建物を破壊する緊急の必要があったものであることは明らかである。してみれば、小坂消防団長が右建物を破壊したことは消防法29条3項による適法な行為ではあるが、そのために損害を受けた被上告人らは右法条によりその損失の補償を請求することができるものといわなければならない。」としている。
したがって、付近の建物への延焼防止のため建物Bを破壊する緊急の必要性があった場合、建物Bの損失は補償の対象となる。
総合メモ
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