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行政法 痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の発生と予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定 最二小判平成3年4月19日

概要
痘そうの予防接種によって重篤な後遺障害が発生した場合には、予防接種実施規則(昭和45年厚生省令第44号による改正前の昭和33年厚生省令第27号)4条の禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当する事由を発見することはできなかったこと、被接種者が右後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたものと推定すべきである。
判例
事案: 生後6か月のXが、保健所において予防接種法に基づく痘そうの予防接種を受けたところ、脳炎及び脊髄炎を発症し、下半身麻痺による運動障害及び知能障害の後遺症を残すに至ったことにつき、同後遺症は予防接種担当医の予診義務違反によるものであるなどとして、Xらが国、市等に対し国家賠償を求めた事案において、予防接種による後遺症について、予診の不十分と後遺障害の関係をどのように判断するかが問題となった。

判旨:「予防接種によって重篤な後遺障害が発生する原因としては、被接種者が禁忌者に該当していたこと又は被接種者が後遺障害を発生しやすい個人的素因を有していたことが考えられるところ、禁忌者として掲げられた事由は一般通常人がなり得る病的状態、比較的多く見られる疾患又はアレルギー体質等であり、ある個人が禁忌者に該当する可能性は右の個人的素因を有する可能性よりもはるかに大きいものというべきであるから、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、当該被接種者が禁忌者に該当していたことによって右後遺障害が発生した高度の蓋然性があると考えられる。したがって、予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 司法 第38問 イ)
予防接種により重篤な後遺障害をもたらす事故が発生した場合には、伝染病から社会を防衛するという公共目的のために特定個人が特別の犠牲を被ったことから、予防接種により被害を受けた者に対して、最高裁判所は損失補償による救済を認めている。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、痘そうの予防接種による重篤な後遺障害の問題について、当時の予防接種実施規則4条の禁忌者に該当したことの推定を問題としており、同判例では予防接種による後遺症の問題について損失補償ではなく損害賠償により解決を図っている。他に損失補償による救済を認めた最高裁判例も存在しない。

(H25 共通 第38問 4)
次の例は、損失補償請求権として法律構成することが考えられる事案について、損害賠償を認めることにより解決される例として適切か。

【例】
市の保健所で受けた予防接種により個人に後遺障害が生じた場合に、接種した医師の過失が一部推定され、市が損害賠償責任を負う例。

(正答)

(解説)
損失補償請求権は、適法な公権力の行使によって財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をするという概念である。
予防接種によって個人に後遺障害が生じることは、適法な公権力の行使によってその治療費相当額の金銭という財産権が侵害され、特別の犠牲を負った者に対して金銭で補填をする性質を有しているから、損失補償請求権として法律構成することが考えられる。
他方、判例(最判平3.4.19)は、本肢と同種の事案において、国家賠償請求という形での損害賠償請求が認めることで解決を図っている。

(H29 予備 第23問 イ)
損失補償は、適法な公権力の行使により特別の犠牲が生じた場合に、公平負担の見地から認められるものであるところ、特別の犠牲は財産上の損害に限られるのかという議論がある。
予防接種による副作用被害が問題となった事案では、生命や身体に対する損害であっても損失補償の対象になり得ると主張されたが、このような損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例は存在しない。

(正答)

(解説)
判例(最判平3.4.19)は、「予防接種によって右後遺障害が発生した場合には、禁忌者を識別するために必要とされる予診が尽くされたが禁忌者に該当すると認められる事由を発見することができなかったこと、被接種者が右個人的素因を有していたこと等の特段の事情が認められない限り、被接種者は禁忌者に該当していたと推定するのが相当である。」として、医師の過失を認定することで解決を図ろうとしている。
したがって、本判例は国家賠償による救済であり、他に損失補償による救済を明示的に認めた最高裁判所の判例はない。
総合メモ
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