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短答判例
行政事件訴訟法37条の4第1項所定の「重大な損害を生ずるおそれ」があると認められる場合 最一小判平成28年12月8日
概要
自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについては、行訴法3条7項の差止めの訴えの対象となる「一定の処分」や「重大な損害を生ずるおそれ」があるといえ、同項の差止めの訴えとして適法に提起することができる。
判例
事案:神奈川県内に所在し、海上自衛隊及び米海軍が使用する施設である厚木海軍飛行場の発する騒音により精神的及び身体的被害を受けていると主張して、厚木基地における一定の態様による自衛隊機及び米軍機の運航の差止め等を求めた事案において、差止訴訟の訴訟要件の有無が問題となった。
判旨:「行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である(最高裁平成23年(行ツ)第177号、第178号、同年(行ヒ)第182号同24年2月9日第一小法廷判決・民集66巻2号183頁参照)。
…前記事実関係等によれば、第1審原告らは、本件飛行場に係る第一種区域内に居住しており、本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や、不快感、健康被害への不安等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、その程度は軽視し難いものというべきであるところ、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い。また、上記騒音は、本件飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであるから、このような被害は、事後的にその違法性を争う取消訴訟等による救済になじまない性質のものということができる。
…以上によれば、第1審原告らの主張する前記…の自衛隊機の運航により生ずるおそれのある損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる。」
判旨:「行政事件訴訟法37条の4第1項の差止めの訴えの訴訟要件である、処分がされることにより『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められるためには、処分がされることにより生ずるおそれのある損害が、処分がされた後に取消訴訟等を提起して執行停止の決定を受けることなどにより容易に救済を受けることができるものではなく、処分がされる前に差止めを命ずる方法によるのでなければ救済を受けることが困難なものであることを要すると解するのが相当である(最高裁平成23年(行ツ)第177号、第178号、同年(行ヒ)第182号同24年2月9日第一小法廷判決・民集66巻2号183頁参照)。
…前記事実関係等によれば、第1審原告らは、本件飛行場に係る第一種区域内に居住しており、本件飛行場に離着陸する航空機の発する騒音により、睡眠妨害、聴取妨害及び精神的作業の妨害や、不快感、健康被害への不安等を始めとする精神的苦痛を反復継続的に受けており、その程度は軽視し難いものというべきであるところ、このような被害の発生に自衛隊機の運航が一定程度寄与していることは否定し難い。また、上記騒音は、本件飛行場において内外の情勢等に応じて配備され運航される航空機の離着陸が行われる度に発生するものであり、上記被害もそれに応じてその都度発生し、これを反復継続的に受けることにより蓄積していくおそれのあるものであるから、このような被害は、事後的にその違法性を争う取消訴訟等による救済になじまない性質のものということができる。
…以上によれば、第1審原告らの主張する前記…の自衛隊機の運航により生ずるおそれのある損害は、処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる。」
過去問・解説
(R7 予備 第21問 ウ)
自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについては、行政事件訴訟法第3条第7項の差止めの訴えの対象となる「一定の処分」を観念することができないから、無名抗告訴訟として適法とされる余地があるかどうかはともかく、同項の差止めの訴えとしては不適法である。
自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについては、行政事件訴訟法第3条第7項の差止めの訴えの対象となる「一定の処分」を観念することができないから、無名抗告訴訟として適法とされる余地があるかどうかはともかく、同項の差止めの訴えとしては不適法である。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平28.12.8)は、本肢と同種の事案において、自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについて、行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして捉えた上で、「処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる。」としている。
本判決は、第1審判決及び原審判決とは異なり、差止めの訴えの対象となる「処分」の捉え方について言及していないところ、自衛隊機の運航自体は事実行為であり、防衛大臣の命令は自衛隊機の離着陸1回ごとに完結し、それが反復継続するため、何を捉えて具体的に「処分」を観念するのかが難しいと説明されている(「行政判例百選」第8版・事件145の解説)。
したがって、自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについては、行訴法3条7項の差止めの訴えとして適法に提起することができる場合があり、同項の差止めの訴えとしては不適法であるとはいえない。
判例(最判平28.12.8)は、本肢と同種の事案において、自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについて、行政事件訴訟法3条7項の差止めの訴えとして捉えた上で、「処分がされた後に取消訴訟等を提起することなどにより容易に救済を受けることができるものとはいえず、本件飛行場における自衛隊機の運航の内容、性質を勘案しても、第1審原告らの自衛隊機に関する主位的請求(運航差止請求)に係る訴えについては、上記の『重大な損害を生ずるおそれ』があると認められる。」としている。
本判決は、第1審判決及び原審判決とは異なり、差止めの訴えの対象となる「処分」の捉え方について言及していないところ、自衛隊機の運航自体は事実行為であり、防衛大臣の命令は自衛隊機の離着陸1回ごとに完結し、それが反復継続するため、何を捉えて具体的に「処分」を観念するのかが難しいと説明されている(「行政判例百選」第8版・事件145の解説)。
したがって、自衛隊機の運航の差止めを求める訴えについては、行訴法3条7項の差止めの訴えとして適法に提起することができる場合があり、同項の差止めの訴えとしては不適法であるとはいえない。