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通則、人

第3条

条文
第3条(権利能力)
① 私権の享有は、出生に始まる。
② 外国人は、法令又は条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する。
過去問・解説
(H30 司法 第1問 ア)
胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。

(正答)  

(解説)
3条1項は、「私権の享有は、出生により始まる」と規定している。
したがって、胎児には権利能力が認められないから、胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。

(R5 司法 第1問 ウ)
胎児を受贈者として死因贈与をすることができる。

(正答)  

(解説)
3条1項は、「私権の享有は、出生により始まる」と規定している。
したがって、胎児には権利能力が認められないから、胎児を受贈者として死因贈与をすることはできない。
総合メモ

第3条の2

条文
第3条の2(意思能力)
 法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする。
過去問・解説
(H25 共通 第2問 ア)
意思能力が欠けた状態で契約を締結した者は、後見開始の審判を受けていなくても、その契約の無効を主張することができる。

(正答)  

(解説)
3条の2は、「法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その法律行為は、無効とする」と規定している。
したがって、意思能力が欠けた状態で契約を締結した者は、後見開始の審判を受けていなくても、その契約の無効を主張することができる。

(R5 共通 第2問 イ)
契約の当事者がその意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その契約の無効を善意無過失の第三者にも対抗することができる。

(正答)  

(解説)
契約の当事者がその意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その契約の無効を主張することができる(3条の2)。また、3条の2は、第三者保護の規定を設けていない(94条~96条対照)。
したがって、契約の当事者がその意思表示をした時に意思能力を有しなかったときは、その契約の無効を善意無過失の第三者にも対抗することができる。
総合メモ

第5条

条文
第5条(未成年者の法律行為)
① 未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。
② 前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。
③ 第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。
過去問・解説
(H21 司法 第1問 1)
負担のない贈与をする旨の申込みを受けた未成年者が法定代理人の同意を得ないでした承諾は、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
5条1項は、本文において「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」と規定している。
負担のない贈与は、「単に権利を得…る法律行為」(5条1項但書)に当たる。
したがって、負担のない贈与をする旨の申込みを受けた未成年者が法定代理人の同意を得ないでした承諾は、取り消すことができない。

(H22 司法 第1問 ア)
未成年者は、その法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を自由に処分することができる。

(正答)  

(解説)
5条3項は、前段において「第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。」と規定した上で、後段において「目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」と規定している。
したがって、未成年者は、その法定代理人が目的を定めないで処分を許した財産を自由に処分することができる(5条3項後段)。

(H23 予備 第1問 ア)
未成年者は、単に義務を免れる法律行為について、その法定代理人の同意を得ないですることができる。

(正答)  

(解説)
5条1項は、本文において「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」と規定している。
したがって、未成年者は、「単に…義務を免れる法律行為」について、その法定代理人の同意を得ないですることができる(5条1項但書)。

(H29 共通 第1問 イ)
A(17歳で、親権に服する男性である)の親権者が、新聞配達のアルバイトによりAが得る金銭の処分をAに許していた場合において、Aがそのアルバイトによって得た金銭で自転車を購入したときは、Aがその売買契約を締結する際に親権者の同意を得ていないときであっても、Aは、その売買契約を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
5条3項は、前段において「第1項の規定にかかわらず、法定代理人が目的を定めて処分を許した財産は、その目的の範囲内において、未成年者が自由に処分することができる。」と規定した上で、後段において「目的を定めないで処分を許した財産を処分するときも、同様とする。」と規定している。
本肢では、A(17歳で、親権に服する男性である)の親権者が、新聞配達のアルバイトによりAが得る金銭の処分をAに許していたのだから、「目的を定めないで処分を許した財産を処分するとき」(5条3項後段)に当たる。
したがって、Aがそのアルバイトによって得た金銭で自転車を購入したときは、Aがその売買契約を締結する際に親権者の同意を得ていないときであっても、Aは、その売買契約を取り消すことができない。

(H29 共通 第1問 オ)
A(17歳で、親権に服する男性である)が相続によって得た財産から100万円をBに贈与する旨の契約を書面によらずに締結した場合において、書面によらない贈与であることを理由にAがその贈与を撤回したときでも、Aが贈与の撤回について親権者の同意を得ていなかったときは、Aは、贈与の撤回を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
5条1項は、本文において「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と規定する一方で、但書において「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」と規定している。
Aが自己を贈与者とする贈与契約を撤回することは、Aにとって「単に…義務を免れる法律行為」に当たる。
したがって、Aが贈与の撤回について親権者の同意を得ていなかったときであっても、Aは、贈与の撤回を取り消すことができない(5条1項但書)。

(H30 司法 第10問 ア)
未成年者AがA所有の甲土地をBに売却し、その旨の所有権移転登記がされた後、Bが、Aの未成年の事実を過失なく知らないCに甲土地を売却し、その旨の所有権移転登記がされた場合において、AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。

(正答)  

(解説)
AB間における甲土地の売買契約は、Aの法定代理人の同意を得ないで締結されたものであるから、Aは、甲土地の売買契約を取り消すことができる(5条1項本文)。
そして、5条1項は、第三者保護の規定を設けていない(94条~96条対照)。
したがって、Aは甲土地の売買契約の取消しをCに対抗することができる。
よって、AがBに対する売買の意思表示を取り消したときは、Cは、Aに対し、甲土地の所有権の取得を主張することができない。

(R1 共通 第1問 ア)
未成年者がした売買契約は、親権者の同意を得ないでした場合であっても、その契約が日常生活に関するものであるときは、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
未成年者の法律行為の取消しについて規定している5条には、成年被後見人の法律行為の取消しと異なり、「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない」(9条但書)という例外は設けられていない。
したがって、未成年者がした売買契約は、親権者の同意を得ていない以上、その契約が日常生活に関するものであるときであっても、5条1項本文に基づいて、取り消すことができる。
総合メモ

第6条

条文
第6条(未成年者の営業の許可)
① 一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。
② 前項の場合において、未成年者がその営業に堪えることができない事由があるときは、その法定代理人は、第4編(親族)の規定に従い、その許可を取り消し、又はこれを制限することができる。
過去問・解説
(H20 司法 第2問 オ)
未成年者であっても、許可された特定の営業に関しては、行為能力を有する。

(正答)  

(解説)
6条1項は、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と規定している。
したがって、未成年者であっても、許可された特定の営業に関しては、行為能力を有する。

(H21 司法 第1問 2)
未成年者が、法定代理人から営業の許可を得た後、法定代理人の同意を得ないで当該営業に関しない行為をした場合には、その行為は取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
確かに、6条1項は、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と規定している。
しかし、未成年者は、「許された…営業に関し」ない行為については、行為能力を有しない。
したがって、未成年者が、法定代理人から営業の許可を得た後、法定代理人の同意を得ないで当該営業に関しない行為をした場合には、5条1項本文に基づいて、その行為は取り消すことができる。

(H28 司法 第1問 ウ)
一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

(正答)  

(解説)
6条1項は、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と規定している。
したがって、一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する。

(H29 共通 第1問 ア)
A(17歳で、親権に服する男性である)がその親権者から営業を行うことを許可された後に親権者の同意を得ずに売買契約を締結した場合には、その売買契約がその営業に関しないものであっても、Aは、その売買契約を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
確かに、6条1項は、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と規定している。
しかし、未成年者は、「許された…営業に関し」ない行為については、行為能力を有しない。
したがって、Aは、5条1項本文に基づいて、売買契約を取り消すことができる。

(R4 共通 第1問 イ)
営業を許された未成年者がした法律行為は、その営業に関しないものであっても、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
確かに、6条1項は、「一種又は数種の営業を許された未成年者は、その営業に関しては、成年者と同一の行為能力を有する」と規定している。
しかし、未成年者は、「許された…営業に関し」ない行為については、行為能力を有しない。
したがって、営業を許された未成年者がした法律行為は、その営業に関しないものである場合には、5条1項本文に基づいて、取り消すことができる。
総合メモ

第7条

条文
第7条(後見開始の審判)
 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
過去問・解説
(H18 司法 第20問 3)
未成年後見人が選任されている未成年者については、後見開始の審判をして成年後見人を付することはできない。

(正答)  

(解説)
7条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、…未成年後見人…の請求により、後見開始の審判をすることができる。」と規定している。
したがって、未成年後見人が選任されている未成年者についても、後見開始の審判をして成年後見人を付することはできる。

(H21 司法 第1問 5)
後見開始の審判は本人が請求することはできないが、保佐開始の審判は本人も請求することができる。

(正答)  

(解説)
7条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人…の請求により、後見開始の審判をすることができる」と規定しているから、本肢前半は誤っている。
なお、11条本文は、「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人…の請求により、保佐開始の審判をすることができる」と規定しているから、本肢後半は正しい。

(H22 司法 第31問 エ)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、その者の4親等の親族は、家庭裁判所に後見開始の審判の申立てをすることができる。

(正答)  

(解説)
7条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、…4親等内の親族…の請求により、後見開始の審判をすることができる」と規定している。

(H29 共通 第1問 エ)
A(17歳で、親権に服する男性である)が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある場合でも、Aが成年に達するまでは、家庭裁判所は、Aについて後見開始の審判をすることができない。

(正答)  

(解説)
7条は、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、…未成年後見人…の請求により、後見開始の審判をすることができる。」と規定している。
したがって、未成年後見人が選任されている未成年者についても、後見開始の審判をして成年後見人を付することはできる。
よって、Aが成年に達する前であっても、家庭裁判所は、Aについて後見開始の審判をすることができる。
総合メモ

第8条

条文
第8条(成年被後見人及び成年後見人)
 後見開始の審判を受けた者は、成年被後見人とし、これに成年後見人を付する。
過去問・解説
(H24 司法 第2問 2)
契約を締結した成年者がその後に後見開始の審判を受けたとき、成年後見人は、その契約の当時、既にその成年者につき後見開始の事由が存在していたことを証明して、その成年者のした契約を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
9条本文は、「後見開始の審判を受けた者」を「成年被後見人」とする旨を規定しているところ、成年被後見人となるには「後見開始の審判を受けた者」であることを要する(8条)から、成年者について後見開始の事由が存在しているだけでは「成年被後見人」に当たらない。
したがって、成年者が契約を締結した時点で「後見開始の審判」を受けていなかった以上、その契約を「成年被後見人の法律行為」として取り消すことはできない。
総合メモ

第9条

条文
第9条(成年被後見人の法律行為)
 成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。
過去問・解説
(H18 司法 第20問 1)
成年被後見人が建物の贈与を受けた場合、成年被後見人は、当該贈与契約を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。そして、建物の贈与は、「日用品の購入その他日常生活に関する行為」には当たらないから、9条但書の適用はない。
また、成年被後見人の法律行為の取消しついて規定している9条には、未成年者の法律行為の取消しについて規定している5条と異なり、「ただし、単に権利を得、又は義務を免れる法律行為については、この限りでない。」(5条1項但書)という例外は設けられていない。そのため、成年被後見人を受贈者とする贈与について、「単に権利を得…る法律行為」であることを理由として取消権を否定することもできない。
したがって、成年被後見人が建物の贈与を受けた場合、成年被後見人は、9条本文に基づいて、当該贈与契約を取り消すことができる。

(H20 司法 第3問 2)
成年被後見人が、後見人の同意を得ずに電気料金を支払った行為は、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。そして、電気料金の支払いは「日用品の購入その他日常生活に関する行為」に当たる。
したがって、成年被後見人が、後見人の同意を得ずに電気料金を支払った行為は、取り消すことができない(9条但書)。

(H21 司法 第1問 3)
成年被後見人がした行為であっても、日用品の購入は、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。そして、電気料金の支払いは「日用品の購入その他日常生活に関する行為」に当たる。
したがって、成年被後見人がした行為であっても、日用品の購入は、取り消すことができない。

(H28 共通 第3問 ア)
成年被後見人であるAがBから日用品を買い受けた場合、Aが成年被後見人であることをBが知らなかったとしても、Aの成年後見人Cは、当該日用品の売買契約を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。
したがって、成年被後見人であるAがBから日用品を買い受けた場合、9条但書の適用により、Aの成年後見人Cは、当該日用品の売買契約を取り消すことができない。なお、9条本文に基づく取消しにおいて、行為の相手方の主観は問われない。

(R1 共通 第1問 イ)
成年被後見人がした売買契約は、成年後見人の同意を得てした場合であっても、その契約が日常生活に関するものであるときを除き、取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。

(R3 司法 第7問 エ)
Aがその所有する甲土地をBに売却した後、Bが甲土地をCに転売し、それぞれその旨の登記がされた。その後、AとBとの間の売買契約は、Aが成年被後見人であることを理由として取り消された。Cが、Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合、Aは、Cに対し、甲土地の所有権が自己にあることを主張することができない。

(正答)  

(解説)
AとBとの間の売買契約は、Aが成年被後見人であることを理由として取り消された(9条本文)ことにより遡及的に無効になる(121条)から、Aは甲土地の所有権を復帰的に取得する。
そして、9条は、第三者保護の規定を設けていない(94条~96条対照)。
したがって、Cが、Aが成年被後見人であったことを過失なく知らなかった場合であっても、Aは、Cに対し、甲土地の所有権が自己にあることを主張することができる。

(R6 司法 第1問 エ)
成年被後見人が成年後見人の同意を得ずに日用品の購入をしたときは、成年後見人は、その購入を内容とする契約を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
9条は、本文において「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。」と規定する一方で、但書において「ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」と規定している。
総合メモ

第11条

条文
第11条(保佐開始の審判)
 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第7条に規定する原因がある者については、この限りでない。
過去問・解説
(H26 司法 第1問 ウ)
保佐開始の審判は、本人の同意がなくてもすることができる。

(正答)  

(解説)
11条は、保佐開始の審判の要件として、「本人、配偶者、4親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求」とするだけであり、本人の同意を必要としていない。

(H29 司法 第33問 ア)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者についても、その者の配偶者が保佐開始の審判を求める申立てをした場合には、家庭裁判所は、保佐開始の審判をすることができる。

(正答)  

(解説)
11条但書は、「第7条に規定する原因がある者については、この限りでない」として、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(7条)を保佐開始の審判の対象から除外している。
したがって、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、11条本文所定の者が保佐開始の審判を求める申立てをした場合であっても、家庭裁判所は、保佐開始の審判をすることができない。

(R6 司法 第1問 ア)
精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者について保佐開始の申立てがされたときは、家庭裁判所は、保佐開始の審判をすることができる。

(正答)  

(解説)
11条但書は、「第7条に規定する原因がある者については、この限りでない」として、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」(7条)を保佐開始の審判の対象から除外している。
したがって、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、11条本文所定の者が保佐開始の審判を求める申立てをした場合であっても、家庭裁判所は、保佐開始の審判をすることができない。
総合メモ

第13条

条文
第13条(保佐人の同意を要する行為等)
① 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。 
 一 元本を領収し、又は利用すること。
 二 借財又は保証をすること。
 三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
 四 訴訟行為をすること。
 五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
 六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
 七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
 八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
 九 第602条に定める期間を超える賃貸借をすること。
 十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第17条第1項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
② 家庭裁判所は、第11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第9条ただし書に規定する行為については、この限りでない。 
③ 保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。 
④ 保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。 
過去問・解説
(H18 司法 第20問 4)
被保佐人が、貸金返還請求の訴えを提起するには保佐人の同意を要するが、被保佐人を被告として提起された貸金返還請求訴訟に応訴するには保佐人の同意は要しない。

(正答)  

(解説)
13条1項4号は、「被保佐人が…その保佐人の同意を得なければならない」場合として、被保佐人が「訴訟行為をすること」を挙げているから、訴えの提起を行うについて保佐人の同意を要する。
他方で、民訴法32条1項は、「被保佐人…が相手方の提起した訴え…について訴訟行為をするには、保佐人…の授権を要しない」と規定しているから、応訴するには保佐人の同意を要しない。

(H20 司法 第3問 3)
被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、貸付金の弁済を受けた行為は、取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
13条1項1号は、「被保佐人が…その保佐人の同意を得なければならない」場合として、「元本を領収し、又は利用すること」を挙げているところ、貸付金の弁済を受けた行為は「元本を領収…すること」に当たる。
したがって、被保佐人が、保佐人の同意を得ずに、貸付金の弁済を受けた行為は、13条4項に基づいて、取り消すことができる。

(H24 司法 第1問 ウ)
保佐人の同意を得なければならない行為について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないとき、被保佐人は、家庭裁判所に対し、保佐人の同意に代わる許可を請求することができる。

(正答)  

(解説)
13条3項は、「保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる」と規定している。

(H25 共通 第2問 エ)
被保佐人は、保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たときは、自己の判断でその保証契約の締結を取りやめることはできない。

(正答)  

(解説)
13条1項は、被保佐人が同項各号に掲げる行為をするにつき、その保佐人の同意を得ることを要求しているが、保佐人の同意を得たときはその同意に基づく行為を行う義務を定めているわけではない。
したがって、被保佐人は、保証契約を締結する前にその行為をすることについて保佐人の同意を得たときであっても、自己の判断でその保証契約の締結を取りやめることができる。

(H26 司法 第1問 エ)
保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

(正答)  

(解説)
13条3項は、「保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる」と規定している。

(R1 共通 第1問 ウ)
被保佐人がした保証契約は、保佐人の同意を得てした場合には、取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
13条1項2号は、「被保佐人が…その保佐人の同意を得なければならない」場合として、「保証をすること」を挙げている。もっとも、保佐人の同意を得れば、被保佐人が「保証をすること」は妨げられない。この点において、保佐人は、同意権を有しない未成年後見人とは異なる。
したがって、被保佐人がした保証契約は、保佐人の同意を得てした場合には、取り消すことができない。

(R6 司法 第1問 オ)
保佐人の同意を得なければならない行為について、被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず保佐人が同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の申立てにより、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。

(正答)  

(解説)
13条3項は、「保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる」と規定している。
総合メモ

第15条

条文
第15条(補助開始の審判)
① 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第7条又は第11条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
② 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
③ 補助開始の審判は、第17条第1項の審判又は第876条の9第1項の審判とともにしなければならない。
過去問・解説
(R6 司法 第1問 イ)
本人以外の者から補助開始の申立てがされたときは、家庭裁判所は、本人の同意がなければ、補助開始の審判をすることができない。

(正答)  

(解説)
15条2項は、「本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない」と規定している。
したがって、本人以外の者から補助開始の申立てがされたときは、家庭裁判所は、本人の同意がなければ、補助開始の審判をすることができない。
総合メモ

第20条

条文
第20条(制限行為能力者の相手方の催告権)
① 制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、1箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
② 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
③ 特別の方式を要する行為については、前2項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
④ 制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
過去問・解説
(H18 司法 第32問 3)
詐欺による意思表示をした者が、相手方から、1か月以上の期間を定めて、その期間内に当該意思表示を追認するかどうかを確答すべき旨の催告を受けた場合、その期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
詐欺による意思表示について、制限行為能力者の相手方の催告権(20条)のような規定は設けられていない。

(H19 司法 第3問 ア)
Aは、Bとの間で、B所有の不動産を代金1000万円で購入する旨の契約を締結した。Aが契約時に未成年であった場合、Aが成年に達した後、BがAに対して1か月の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告し、Aがこの期間内に確答を発しなかったときは、Aの行為を追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者…となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、Aが催告期間内に確答を発しなかったことにより、Aの行為を追認したものとみなされる。

(H19 司法 第3問 イ)
Aは、Bとの間で、B所有の不動産を代金1000万円で購入する旨の契約を締結した。Aが被保佐人であった場合、BがAに対して1か月の期間内にAの保佐人Cの追認を得るように催告し、Aがこの期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、Aの行為を取り消したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条4項は、「制限行為能力者の相手方は、被保佐人…に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人…がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、20条1項により、AがAの行為を取り消したものとみなされる。

(H19 司法 第3問 エ)
Aは、Bとの間で、B所有の不動産を代金1000万円で購入する旨の契約を締結した。Aが成年被後見人であった場合、BがAの成年後見人Cに対して1か月の期間内にAの行為を追認するか否かを確答すべきことを催告し、Cがこの期間内に確答を発しなかったときは、Aの行為を取り消したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者…となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」と規定し、20条2項は、「制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。」と規定している。
したがって、制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人に対して催告をして確答がなかった場合は、行為を追認したものとみなされる。

(H20 司法 第3問 5)
被保佐人が取り消すことができる行為を行った場合、その相手方は、被保佐人に対して、保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができるが、保佐人に直接追認するか否かの回答を求める催告をすることはできない。

(正答)  

(解説)
20条4項前段は、「制限行為能力者の相手方は、被保佐人対しては、第1項の期間内にその保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。」と規定している。また、同条2項は、「制限行為能力者が行為能力者とならない間に、…保佐人に対し…催告をすることもできる。」と規定している。
したがって、被保佐人が取り消すことができる行為を行った場合、その相手方は、被保佐人に対して、保佐人の追認を得るべき旨の催告をすることができるだけでなく(20条4項前段)、被保佐人が行為能力者とならない間に、保佐人に直接追認するか否かの回答を求める催告をすることもできる(同条2項)。

(H22 司法 第4問 ア)
被保佐人の締結した契約について、相手方が被保佐人に対して1か月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたにもかかわらず、被保佐人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、以後、その相手方は被保佐人が締結した契約であることを理由に契約を取り消されることはない。

(正答)  

(解説)
20条4項は、「制限行為能力者の相手方は、被保佐人…に対しては、第1項の期間内にその保佐人…の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人…がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、被保佐人その契約を取り消したものとみなされる。

(H23 司法 第2問 イ)
制限行為能力者の行為を追認するかどうかの催告に対し、法定代理人が定められた期間内に追認拒絶の通知を発し、期間経過後に到達した場合、追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条2項の「確答」については、「発しないとき」とあることから、97条1項の規定する到達主義の例外として、発信主義が採用されている。所定の期間内に追認拒絶の通知を発している以上、追認拒絶の効果が生じる。
したがって、制限行為能力者の行為を追認するかどうかの催告に対し、法定代理人が定められた期間内に追認拒絶の通知を発したことにより、その時点で追認拒絶の効果が生じる。

(H25 司法 第3問 1)
行為能力の制限を理由に取り消すことができる行為について、制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができ、その場合に、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者…となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」と規定している。

(H27 司法 第35問 ア)
被保佐人との間で不動産の売買契約を締結した者が、保佐人に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をし、保佐人がその期間内に確答を発しなかった場合には、その売買契約を追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者…となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」と規定し、20条2項は、「制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。」と規定している。
したがって、制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人に対して催告をして確答がなかった場合は、行為を追認したものとみなされる。

(H29 司法 第2問 ア)
被保佐人Aが保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにBに対してA所有の甲土地を売り渡した。BがAの保佐人に対し当該売買契約を追認するかどうか確答することを1か月の期間を定めて催告した場合において、保佐監督人があるときは、保佐人が保佐監督人の同意を得てその期間内に追認の確答を発しなければ、当該売買契約を取り消したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条3項は、「特別の方式を要する行為については、…その方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と規定している。もっとも、保佐監督人があるときに、保佐人が保佐監督人の同意を得ることは「特別の方式を要する行為」には該当しない。
したがって、本肢の事例では、保佐人が保佐監督人の同意を得てその期間内に追認の確答を発しなくても、当該売買契約を取り消したものとみなされない。

(H29 司法 第2問 イ)
被保佐人Aが保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにBに対してA所有の甲土地を売り渡した。BがAに対し当該売買契約について保佐人の追認を得ることを1か月の期間を定めて催告した場合において、Aがその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、当該売買契約を取り消したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条4項は、「制限行為能力者の相手方は、被保佐人…に対しては、第1項の期間内にその保佐人…の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人…がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、Aが催告期間内にその追認を得た旨の通知を発しなかったことにより、当該売買契約を取り消したものとみなされる。

(H29 司法 第2問 ウ)
被保佐人Aが保佐人の同意又はこれに代わる家庭裁判所の許可を得ずにBに対してA所有の甲土地を売り渡した。Aが行為能力者となった後に、BがAに対し当該売買契約を追認するかどうか確答することを1か月の期間を定めて催告した場合において、Aがその期間内に確答を発しないときは、当該売買契約を追認したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」と規定している。
したがって、本肢の事例では、Aが催告期間内に確答を発しなかったことにより、Aの行為を追認したものとみなされる。

(R4 司法 第3問 イ)
未成年者Aと契約を締結したBが、Aの法定代理人Cに対してその契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした。この場合において、CがBの定めた期間内に確答を発しないときは、Cは、その契約を取り消したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
20条1項は、「制限行為能力者の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者…となった後、その者に対し、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす」と規定し、20条2項は、「制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする」と規定している。
したがって、制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人に対して催告をして確答がなかった場合は、行為を追認したものとみなされる。

(R5 司法 第5問 イ)
AがBを欺罔して、B所有の甲土地をAに贈与する旨の意思表示をBにさせた場合、Aは、Bに対し、相当の期間を定めて、その期間内に当該意思表示を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。

(正答)  

(解説)
詐欺による意思表示について、制限行為能力者の相手方の催告権(20条)のような規定は設けられていない。
総合メモ

第21条

条文
第21条(制限行為能力者の詐術)
 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。
過去問・解説
(H23 予備 第1問 エ)
成年被後見人は、行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときであっても、その行為を取り消すことができる。

(正答)  

(解説)
21条は、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と規定している。

(H24 司法 第2問 4)
制限行為能力者が、自己を行為能力者であると信じさせるために相手方に対して詐術を用いて法律行為をした場合は、その法律行為の要素に錯誤があるときでも、錯誤による取消しを主張することはできない。

(正答)  

(解説)
21条は、「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたとは、その行為を取り消すことができない」と規定するにとどまり、錯誤による取消し(95条1項柱書)の主張まで排斥するものではない。
総合メモ

第25条

条文
第25条(不在者の財産の管理)
① 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
② 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
過去問・解説
(H22 司法 第2問 ア)
Aから動産甲を購入する旨の契約を締結したBが、契約締結時に代金のうち一部を支払い、その後、残代金の弁済を提供して動産甲の引渡しを求めたにもかかわらずAがこれに応ぜず、それから相当期間が経過した後にAがその住所を去って行方が分からなくなった。Aがその財産の管理人を置かないで行方不明になった場合において、家庭裁判所は、Bの請求により、Aの財産の管理について必要な処分を命ずることができる。

(正答)  

(解説)
25条1項は、「従来の住所…を去った…不在者…がその財産の管理人…を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係…の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる」と規定している。
したがって、本肢の事例では、Aがその財産の管理人を置かないで行方不明になった場合において、家庭裁判所は、Bの請求により、Aの財産の管理について必要な処分を命ずることができる。

(R5 司法 第3問 ア)
不在者とは、従来の住所又は居所を去り、その所在を知ることができない者をいう。

(正答)  

(解説)
25条は、不在者について、単に「従来の住所又は居所を去った者」と規定するにとどまり、その所在を知ることができない者であることまで要求していない。

(R5 司法 第3問 イ)
不在者がその財産の管理人を置かなかったときは、利害関係人のみならず検察官も、家庭裁判所に対し、その財産の管理について必要な処分を命ずるよう請求することができる。

(正答)  

(解説)
25条1項は、不在者が管理人を置かなかったときに財産の管理について必要な処分を請求することができる者について、「利害関係人又は検察官」と規定している。
総合メモ

第27条

条文
第27条(管理人の職務)
① 前2条の規定により家庭裁判所が選任した管理人は、その管理すべき財産の目録を作成しなければならない。この場合において、その費用は、不在者の財産の中から支弁する。
② 不在者の生死が明らかでない場合において、利害関係人又は検察官の請求があるときは、家庭裁判所は、不在者が置いた管理人にも、前項の目録の作成を命ずることができる。
③ 前2項に定めるもののほか、家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。
過去問・解説
(R5 司法 第3問 ウ)
家庭裁判所は、不在者が置いた管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる。

(正答)  

(解説)
27条3項は、「家庭裁判所は、管理人に対し、不在者の財産の保存に必要と認める処分を命ずることができる」と規定している。
総合メモ

第28条

条文
第28条(管理人の権限)
 管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。
過去問・解説
(R1 司法 第2問 ア)
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから、家庭裁判所は、Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。Aが甲土地を所有している場合、BがAを代理して甲土地をCに売却するためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
103条は、権限の定めのない代理人の権限として、「保存行為」(1号)と「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(2号)を挙げているところ、土地の売却はいずれにも当たらないから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)に当たる。
したがって、本肢の事例において、Aが甲土地を所有している場合、BがAを代理して甲土地をCに売却するためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。

(R1 司法 第2問 イ)
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから、家庭裁判所は、Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。Aが所有する現金が発見された場合、BがAを代理してその現金をD銀行のA名義普通預金口座に預け入れるためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
現金を銀行の普通預金口座に預け入れることは、103条2号でいう「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用…を目的とする行為」に当たるから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)ではない。
したがって、本肢の事例において、Aが所有する現金が発見された場合、BがAを代理してその現金をD銀行のA名義普通預金口座に預け入れるためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(R1 司法 第2問 ウ)
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから、家庭裁判所は、Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。AがEに対して借入金債務を負っており、その債務が弁済期にある場合、BがAのためにEに対しその債務の弁済をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
弁済期にある債務を弁済することは、103条1号でいう「保存行為」に当たるから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)ではない。
したがって、本肢の事例において、BがAのためにEに対しその債務の弁済をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(R1 司法 第2問 エ)
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから、家庭裁判所は、Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。Aが被相続人Fの共同相続人の1人である場合、BがAを代理してFの他の共同相続人との間でFの遺産について協議による遺産分割をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
他の共同相続人との間で遺産について協議による遺産分割をする行為は、「保存行為」(103条1号)と「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(同条2号)のいずれにも当たらないから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)に当たる。
したがって、本肢の事例において、BがAを代理してFの他の共同相続人との間でFの遺産について協議による遺産分割をするためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。

(R1 司法 第2問 オ)
Aがその財産の管理人を置かないで行方不明となったことから、家庭裁判所は、Bを不在者Aの財産の管理人として選任した。Aに子Gがいる場合、BがAを代理してGに対し結婚資金を贈与するためには、家庭裁判所の許可を得る必要はない。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
不在者の子に対し結婚資金を贈与する行為は、「保存行為」(103条1号)と「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(同条2号)のいずれにも当たらないから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)に当たる。
したがって、本肢の事例において、Aに子Gがいる場合、BがAを代理してGに対し結婚資金を贈与するためには、家庭裁判所の許可を得る必要がある。

(R5 司法 第3問 エ)
不在者が置いた管理人は、不在者の生存が明らかである場合であっても、家庭裁判所の許可を得ることにより、不在者が定めた権限を超える行為をすることができる。

(正答)  

(解説)
28条は、前段において「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定した上で、後段において「不在者の生死が明らかでない場合において、その管理人が不在者が定めた権限を超える行為を必要とするときも、同様とする。」と規定している。

(R5 司法 第3問 オ)
家庭裁判所が選任した不在者の財産の管理人は、相続人である不在者を代理してそれ以外の相続人との間で協議による遺産分割をするときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。

(正答)  

(解説)
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。
相続人である不在者を代理してそれ以外の相続人との間で協議による遺産分割をすることは、「保存行為」(103条1号)と「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(同条2号)のいずれにも当たらないから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)に当たる。
したがって、家庭裁判所が選任した不在者の財産の管理人は、相続人である不在者を代理してそれ以外の相続人との間で協議による遺産分割をするときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。

(R5 司法 第35問 オ)
相続財産の清算人が相続財産に属する財産を売却するときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。

(正答)  

(解説)
953条は、不在者の財産の管理に関する28条を、相続財産の清算人について準用している。
28条前段は、「管理人は、第103条に規定する権限を超える行為を必要とするときは、家庭裁判所の許可を得て、その行為をすることができる。」と規定している。そして、相続財産に属する財産の売却行為は「保存行為」(103条1号)と「代理の目的である物又は権利の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為」(同条2号)のいずれにも当たらないから、「第103条に規定する権限を超える行為」(28条)に当たる。
したがって、相続財産の清算人が相続財産に属する財産を売却するときは、家庭裁判所の許可を得なければならない。
総合メモ

第30条

条文
第30条(失踪の宣告)
① 不在者の生死が7年間明らかでないときは、家庭裁判所は、利害関係人の請求により、失踪の宣告をすることができる。
② 戦地に臨んだ者、沈没した船舶の中に在った者その他死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、それぞれ、戦争が止んだ後、船舶が沈没した後又はその他の危難が去った後1年間明らかでないときも、前項と同様とする。
過去問・解説
(H22 司法 第35問 ア)
Aには妻Bとの間に子としてCとDがいて、Cには妻Eとの間に子としてFとGがいる場合において、Aが死亡した。Aが死亡した時、Cは既に7年間生死が明らかでなく、Aの死亡後Eの請求により家庭裁判所が失踪の宣告をし、この審判が確定した場合には、Aの相続人はBDFGである。

(正答)  

(解説)
被相続人Aの妻であるBは890条前段により、子であるDは887条1項により、Aの相続人となる。
Aの子であるCは、Aが死亡した時、既に7年間生死が明らかでなく、Aの死亡後にEの請求により家庭裁判所が失踪の宣告がなされ、この審判が確定したことにより、生死が明らかでなくなってから7年を経過した時点で死亡したものとみなされる(30条1項、31条)から、Aの相続人になることができない(同時存在の原則)。これに伴い、Cの子であるF及びGは、Cを代襲してAの相続人となる(887条2項本文)。
したがって、Aの相続人はBDFGである。

(R3 共通 第1問 ア)
不在者の推定相続人は、家庭裁判所に失踪宣告の請求をすることができる。

(正答)  

(解説)
不在者の推定相続人は、「利害関係人」として、家庭裁判所に失踪宣告の請求をすることができる(30条1項)。
総合メモ

第31条

条文
第31条(失踪の宣告の効力)
 前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に、同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。
過去問・解説
(H29 共通 第3問 ア)
沈没した船舶の中に在ったAについて失踪宣告がされた場合には、Aはその沈没事故の後1年が経過した時に死亡したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
30条2項は、特別失踪について、「…沈没した船舶の中に在った者…の生死が、それぞれ、…船舶が沈没した後… 1年間明らかでないときも、前項と同様とする。」と規定している。
31条後段は、特別失踪の宣告の効力について、「同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。」と規定している。したがって、沈没した船舶の中に在ったAについて失踪宣告がされた場合には、Aはその沈没事故の後1年が経過した時にではなく、その沈没事故による危難が去った時に、死亡したものとみなされる。

(H29 共通 第3問 イ)
Aの生死が7年間明らかでなかったことから、Aについて失踪宣告がされた場合には、Aは、7年間の期間が満了した時に死亡したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
31条前段は、普通失踪の宣告の効力について、「前条第1項の規定により失踪の宣告を受けた者は同項の期間が満了した時に…死亡したものとみなす。」と規定している。

(R3 共通 第1問 イ)
死亡の原因となるべき危難に遭遇した者の生死が、その危難が去った後1年間明らかでないことを理由として失踪宣告がされた場合には、失踪宣告を受けた者は、その危難が去った時に死亡したものとみなされる。

(正答)  

(解説)
31条後段は、特別失踪の宣告の効力について、「同条第2項の規定により失踪の宣告を受けた者はその危難が去った時に、死亡したものとみなす。」と規定している。
総合メモ

第32条

条文
第32条(失踪の宣告の取消し)
① 失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。この場合において、その取消しは、失踪の宣告後その取消し前に善意でした行為の効力に影響を及ぼさない。
② 失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。
過去問・解説
(H29 司法 第3問 オ)
Aの生死が7年間明らかでなかったことから、Aについて失踪宣告がされ、Aが死亡したものとみなされた後に、Aの生存が判明したが、失踪宣告が取り消されずにAが死亡した場合には、もはやその失踪宣告を取り消すことができない。

(正答)  

(解説)
32条前段は、「失踪者が生存すること又は前条に規定する時と異なる時に死亡したことの証明があったときは、家庭裁判所は、本人又は利害関係人の請求により、失踪の宣告を取り消さなければならない。」と規定している。

(R3 共通 第1問 エ)
失踪宣告が取り消された場合、失踪宣告によって財産を得た者は、失踪者の生存につき善意であっても、財産を得ることによって受けた利益の全額を失踪者に返還しなければならない。

(正答)  

(解説)
32条2項は、本文において「失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。」と規定する一方で、但書において「ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う。」と規定している。
本肢は、32条2項本文に基づく返還義務について、善意の財産取得者の場合であっても「財産を得ることによって受けた利益の全額を失踪者に返還しなければならない」としている点において、誤っている。
なお、財産取得者の返還義務の法的性質は不当利得であり、悪意者を保護する必要はないとの理由から、32条2項但書は善意の財産取得者についてのみ適用されると解されている(通説)。
総合メモ

第32条の2

条文
第32条の2(同時死亡の推定)
 数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
過去問・解説
(H22 司法 第35問 ウ)
Aには妻Bとの間に子としてCとDがいて、Cには妻Eとの間に子としてFとGがいる場合において、Aが死亡した。AはCFとともに同一の事故で死亡したが、これらのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでない場合には、Aの相続人はBDGである。

(正答)  

(解説)
A、その子であるC及びCの子であるFは、「同時に死亡したものと推定」される(32条の2)から、これらの者の間に相続関係は生じない。
Aの妻であるBは、「被相続人の配偶者」として、Aの相続人となる(890条前段)。また、Aの子のうちDは、「被相続人の子」として、Aの相続人となる(887条1項)。さらに、死亡したCの子であるGは、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき…その者の子がこれを代襲して相続人となる。」(887条2項本文)との規定により、Cを代襲してAの相続人となる。
したがって、Aの相続人はBDGである。

(R6 司法 第34問 ウ)
被相続人Aと子Bが死亡した場合において、その死亡の先後が不明であったときは、Bの子Cは、Bを代襲してAの相続人となる。

(正答)  

(解説)
A及び子Bは、「同時に死亡したものと推定」される(32条の2)から、これらの者の間に相続関係は生じない。
この場合、Bの子は、「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき…その者の子がこれを代襲して相続人となる。」(887条2項本文)との規定により、Bを代襲してAの相続人となる。
総合メモ