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契約の成立、契約の効力、契約上の地位の移転、契約の解除、定型約款 - 解答モード

条文
第523条(承諾の期間の定めのある申込み)
① 承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
② 申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。
過去問・解説

(H29 司法 第23問 ウ)
承諾期間の定めのある申込みに対し、その承諾の通知がその期間内に発送された場合には、その承諾の通知が申込者に到達しなかったときであっても、契約は成立し、その効力が生ずる。

(正答)  

(解説)
523条2項は、承諾期間の定めのある申込みについて、「申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定している。そして、承諾の意思表示についても、到達主義(97条1項)が採用されている。
したがって、承諾期間の定めのある申込みに対し、その承諾の通知がその期間内に発送された場合であっても、その承諾の通知が申込者に到達しなかったときは、承諾の意思表示の効力が発生するべき時点において既に申込みの意思表示の効力が失われているから、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)とはいえず、契約は成立しない。


(R2 司法 第22問 ア)
AがBに対し、承諾の期間を申込みから1週間と定めて撤回の権利の留保なく契約の申込みをし、その2日後に申込みを撤回したが、Bは申込みから5日後に承諾した場合、契約は成立していない。

(正答)  

(解説)
523条1項は、「承諾の期間を定めてした申込みは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。」と規定している。
AがBに対し、承諾の期間を申込みから1週間と定めて撤回の権利の留保なく契約の申込みをしているから、申込みから1週間を経過するまでは、申込みを撤回することができない。したがって、Aが申込みから2日後に申込みを撤回しているにもかかわらず、申込みから1週間を経過するまでは、申込みの効力が持続するから、Bが申込みから5日後に承諾したことにより、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)とはいえず、契約は成立しない。


(R2 司法 第22問 オ)
AがBに対して承諾の期間を申込みから1週間と定めて契約の申込みをしたところ、Bは申込みから10日後に承諾した場合、契約は成立していない。

(正答)  

(解説)
523条2項は、承諾期間の定めのある申込みについて、「申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定している。
AがBに対して承諾の期間を申込みから1週間と定めて契約の申込みをしたところ、Bが申込みから10日後に承諾した時点では、承諾の期間の経過により、Aの申込みはその効力を失っている。したがって、契約は成立していない。

該当する過去問がありません

条文
第524条(遅延した承諾の効力)
 申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。
過去問・解説

(H29 司法 第23問 エ)
申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。

(正答)  

(解説)
524条は、「申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。」と規定している。


(R6 司法 第24問 ウ)
Aが隔地者Bに対して承諾の期間を定めて申込みをした場合において、Bの承諾の通知がその期間の経過後に到達したとしても、通常の場合には期間内に到達したはずであることをAが知っていたときは、Aが遅滞なくBに対して承諾の通知が延着したことを通知しなければ、期間内に到達したものとして契約が成立する。

(正答)  

(解説)
523条2項は、「申込者が前項の申込みに対して同項の期間内に承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。」と規定し、524条は「申込者は、遅延した承諾を新たな申込みとみなすことができる。」と規定している。延着したことを通知しなかった場合に期間内に到達したものとみなされるのではない。
Aが隔地者Bに対して承諾の期間を定めて申込みをした場合において、Bの承諾の通知がその期間の経過後に到達しているから、Aの申込みはその効力を失う(523条2項)一方で、Bの承諾は新たな申込みとみなされる(524条)。したがって、Aが承諾の通知をしていない以上、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)とはいえず、契約は成立しない。

該当する過去問がありません

条文
第525条(承諾の期間の定めのない申込み)
① 承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。
② 対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。
③ 対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。
過去問・解説

(H21 司法 第23問 エ)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙は「甲を100万円でお譲りください」というもので、4月3日午後3時にBに届いたが、Aは、本件手紙を投函した後、気が変わり、4月3日午後9時に、「本件手紙が届くかと思いますが、事情により、甲をお譲り願う件はなかったことにしてください」という内容の文書をファクシミリでBに送信し、当該ファクシミリ文書は同日時にB宅に届いた。しかし、Bは、4月4日、「100万円で甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月6日にAに届いた場合、甲の売買契約が4月6日に成立する。

(正答)  

(解説)
525条1項本文は、「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。」と規定している。
本肢の事例では、申込みがBに到達してから撤回まで6時間しか経過しておらず、「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間」が経過したとはいえないから、Aは、申込みを撤回することができない。したがって、4月6日に、Bの手紙がAに到達することでBの承諾の意思表示がその効力を生じ(97条1項)、甲の売買契約が成立する。


(H21 司法 第23問 オ)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙は「甲を100万円でお譲りください」というものであったが、Aは、手紙を投函した後、気が変わり、4月2日午後9時、「本件手紙が届くかと思いますが、事情により、甲をお譲り願う件はなかったことにしてください」という内容の文書をファクシミリでBに送信し、当該ファクシミリ文書は同日時にB宅に届いた。その翌日である4月3日、本件手紙がBに届いた。しかし、Bは、4月5日、「100万円で甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月7日にAに届いた場合、甲の売買契約が4月5日に成立する。

(正答)  

(解説)
確かに、525条1項本文は、「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない」と規定しており、本問では、AはBに対し、4月1日、申込みに係る本件手紙を出し、本件手紙が4月3日にBに届いていることから、AのBに送信した「本件手紙が届くかと思いますが、事情により、甲をお譲り願う件はなかったことにしてください」という内容のファクシミリ文書がB宅に届いた4月2日午後9時の時点では、「申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間」が経過したとはいえない。
しかし、97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定しているから、本件手紙がBに届いていない4月2日午後9時の時点では、Aの申込み意思表示はその効力を生じていない。525条1項本文は、申込みの意思表示の効力が生じている場合を前提とした規定であるから、4月2日午後9時の時点では、525条1項本文の要件を満たすかどうかにかかわらず、Aは自由に申込みの意思表示を撤回することができる。
したがって、4月2日午後9時に当該ファクシミリ文書がB宅に届いたことにより、Aは申込みの意思表示は撤回されているから、甲の売買契約は成立しない。


(R2 司法 第22問 イ)
Aが対話中にその終了後も契約の申込みが効力を失わない旨を表示せずに対話者であるBに対して契約の申込みをしたところ、Bは対話終了後の翌日に承諾した場合、契約は成立していない。

(正答)  

(解説)
525条3項本文は、対話者間における承諾の期間の定めのない申込みについて、「対話者に対してした第1項の申込みに対して対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかったときは、その申込みは、その効力を失う。ただし、申込者が対話の終了後もその申込みが効力を失わない旨を表示したときは、この限りでない。」と規定している。
本肢の事例では、Aが対話中にその終了後も契約の申込みが効力を失わない旨を表示せずに対話者であるBに対して契約の申込みをしたところ、Bは、対話が継続している間に承諾しておらず、対話終了後の翌日に承諾したにとどまるから、Bが承諾をした時点では、既にAの申込みはその効力を失っている。したがって、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)とはいえず、契約は成立しない。


(R4 司法 第36問 イ)
隔地者に対して承諾期間を定めないでした申込みは、申込者が撤回する権利を留保した場合を除き、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。

(正答)  

(解説)
525条1項は、「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。」と規定している。


(R6 司法 第24問 イ)
Aが対話者Bに対して承諾の期間を定めないで申込みをしたときは、対話が継続している間は、Aは、申込みを撤回することができる。

(正答)  

(解説)
525条は、対話者間における承諾の期間の定めのない申込みについて、1項において「承諾の期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは、撤回することができない。ただし、申込者が撤回をする権利を留保したときは、この限りでない。」と規定する一方で、2項において「対話者に対してした前項の申込みは、同項の規定にかかわらず、その対話が継続している間は、いつでも撤回することができる。」と規定している。
したがって、525条2項の適用により、Aが対話者Bに対して「承諾の期間を定めないでした申込み」について、「対話が継続している間」は、Aはこれを撤回することができる。

該当する過去問がありません

条文
第526条(申込者の死亡等)
 申込者が申込みの通知を発した後に死亡し、意思能力を有しない常況にある者となり、又は行為能力の制限を受けた場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。
過去問・解説

(H28 共通 第3問 ウ)
AがBに対し契約申込みの通知を発した後、Aが行為能力を喪失した場合、Bがその事実を知っていたとしても、当該契約申込みの効力は生じる。

(正答)  

(解説)
526条は、「申込者が申込みの通知を発した後に…行為能力の制限を受けた場合において、…その相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。」と規定している。
本肢の事例では、AがBに対し契約申込みの通知を発した後、Aが行為能力を喪失しているが、Bがその事実を知っていたため、当該契約申込みの効力は生じない。


(R2 司法 第22問 エ)
AがBに対して契約の申込みの通知を発した後に死亡したが、Aは自らが死亡したとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示しておらず、BはA死亡の事実を知らずに承諾した場合、契約は成立していない。

(正答)  

(解説)
526条は、「申込者が申込みの通知を発した後に死亡し…た場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。」と規定している。
本肢の事例では、AがBに対して契約の申込みの通知を発した後に死亡したており、「申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき」と「その相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったとき」のいずれにも当たらないから、Aの申込みはその効力を失わない。したがって、Bが承諾をしたことにより、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)ことになり、契約は成立する。


(R5 共通 第2問 エ)
契約の申込者が申込みの通知を発した後に意思能力を有しない常況にある者となった場合において、その相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。

(正答)  

(解説)
526条は、「申込者が申込みの通知を発した後に…意思能力を有しない常況にある者とな」った場合において、「申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。」と規定している。


(R6 司法 第24問 エ)
Aが隔地者Bに対して申込みをした場合において、申込みの通知がBに到達した後にAが死亡し、Bが承諾の通知を発する前にAの死亡を知ったときは、その後にBが承諾をしたとしても、契約は、成立しない。

(正答)  

(解説)
526条は、「申込者が申込みの通知を発した後に死亡し…た場合において、申込者がその事実が生じたとすればその申込みは効力を有しない旨の意思を表示していたとき、又はその相手方が承諾の通知を発するまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは、その効力を有しない。」と規定している。
本肢の事例では、Aが隔地者Bに対して申込みをした場合において、申込みの通知がBに到達した後にAが死亡しており、Bが「承諾の通知を発するまでにその事実を知ったとき」に当たるから、Aの申込みはその効力を有しない。したがって、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)とはいえないから、契約は成立しない。

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条文
第527条(承諾の通知を必要としない場合における契約の成立時期)
 申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。
過去問・解説

(H29 司法 第23問 イ)
申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。

(正答)  

(解説)
527条は、「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。」と規定している。


(R6 司法 第24問 オ)
AのBに対する申込みにおいて、Bが契約の目的物の製造に着手すれば承諾の通知がなくても契約が成立するとされていた場合は、Bがその目的物の製造に着手したとしても、Aが着手の事実を知るまでは、契約は、成立しない。

(正答)  

(解説)
527条は、「申込者の意思表示又は取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合には、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があった時に成立する。」と規定している。
本肢の事例では、「申込者の意思表示…により承諾の通知を必要としない場合」に当たるから、Bがその目的物の製造に着手したことにより、契約が成立する。

該当する過去問がありません

条文
第528条(申込みに変更を加えた承諾)
 承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。
過去問・解説
正答率 : 83.3%

(H21 司法 第23問 ウ)
A(東京在住)は、友人の美術品愛好家B(京都在住)が所有する複数の掛け軸のうち掛け軸「甲」を手に入れたいと考えた。そこで、AはBに対し、4月1日、そのための手紙を出し、この手紙は4月3日にBに届いた(以下これを「本件手紙」という。)。本件手紙は「甲を100万円でお譲りください」というものであり、これに対し、Bが4月4日、「120万円でよろしければ甲をお譲りします」という返事の手紙を出し、この手紙が4月6日にAに届いたところ、AがBに、4月7日、「それでは120万円で甲をお譲りください」という手紙を出し、この手紙が4月9日にBに届いた場合、甲の売買契約が4月9日に成立する。

(正答)  

(解説)
528条は、「承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。」と規定している。また、97条1項は、「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる」と規定しており、同条1項の到達主義は承諾の意思表示にも適用される。
本肢の事例では、「甲を100万円でお譲りください」というAの申込みに対して、Bが「120万円でよろしければ甲をお譲りします」という返事をしたことにより、これはAの申込みの拒絶とともに、Bによる新たな申込みとみなされる。したがって、AがBに、4月7日、「それでは120万円で甲をお譲りください」という手紙を出し、この手紙が4月9日にBに届いたことにより、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致した(522条1項)ことになり、甲の売買契約が4月9日に成立する。


(H29 司法 第23問 ア)
承諾者が申込みに条件を付して承諾し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなされる。

(正答)  

(解説)
528条は、「承諾者が、申込みに条件を付し、その他変更を加えてこれを承諾したときは、その申込みの拒絶とともに新たな申込みをしたものとみなす。」と規定している。

該当する過去問がありません

条文
第533条(同時履行の抗弁)
 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行を含む。)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。
過去問・解説

(H18 司法 第1問 5)
代金の一部だけを支払った段階で目的物について種類又は品質に関する契約不適合が明らかになり、損害賠償請求が認められる場合には、買主は、残代金の支払について、損害賠償との同時履行の抗弁を主張することができる。

(正答)  

(解説)
533条本文括弧書は、同時履行の関係に立つ「相手方…の債務の履行」には「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行」も含まれると規定している。
したがって、売買契約(555条)における代金支払債務と、目的物の種類又は品質に関する契約不適合を理由とする債務の履行に代わる損害賠償債務(415条1項本文、2項)とは、同時履行の関係に立つ。


(H29 司法 第26問 3)
不動産の売買契約に基づき売主が買主に対して代金の支払を訴訟で請求する場合おいて、売買契約の目的不動産について契約不適合があり、買主が損害賠償請求権を有するときは、売主の代金請求権と買主の損害賠償請求権は同時履行の関係にある。

(正答)  

(解説)
533条本文括弧書は、同時履行の関係に立つ「相手方…の債務の履行」には「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行」も含まれると規定している。
したがって、売買契約(555条)における代金支払債務と、目的不動産の種類又は品質に関する契約不適合を理由とする債務の履行に代わる損害賠償債務(415条1項本文、2項)とは、同時履行の関係に立つ。


(H29 司法 第28問 イ)
請負人が仕事の目的物を引き渡した場合において、その目的物に種類・品質に関する契約不適合があり、注文者が修補に代わる損害賠償を請求したときは、注文者は、その賠償を受けるまでは報酬全額の支払を拒むことができる。

(正答)  

(解説)
533条本文括弧書は、同時履行の関係に立つ「相手方…の債務の履行」には「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行」も含まれると規定している。
したがって、請負契約(632条)における報酬支払債務と、目的物の種類・品質に関する契約不適合を修補に代わる損害賠償債務(415条1項本文、2項)とは、同時履行の関係に立つ。


(R1 司法 第24問 エ)
AとBは、平成31年4月1日、A所有の中古自転車(以下「甲」という。)を、同月10日引渡し、同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した。AがBに約定どおり甲を引き渡さなかったことから、Bは、Aに対し、平成31年4月21日、代金につき弁済の提供をしないまま、甲の引渡しを求めた。この場合、Aは、Bに対し、同時履行の抗弁権を主張して、Bからの引渡請求を拒むことができる。

(正答)  

(解説)
同時履行の抗弁権が認められるためには、「相手方の債務が弁済期に」あることを要する(533条但書)。
本肢の事例では、平成31年4月21日の時点では、Bの代金支払債務の弁済期も到来しているから、Aは、Bに対し、代金支払債務を「その債務」とする同時履行の抗弁権を主張して、Bからの引渡請求を拒むことができる。


(R5 司法 第23問 ウ)
注文者に引き渡された仕事の目的物の品質が請負契約の内容に適合しないものである場合、注文者の報酬支払義務と、請負人の修補に代わる損害賠償義務とは、同時履行の関係にある。

(正答)  

(解説)
533条本文括弧書は、同時履行の関係に立つ「相手方…の債務の履行」には「債務の履行に代わる損害賠償の債務の履行」も含まれると規定している。
したがって、請負契約(632条)における報酬支払債務と、目的物の品質に関する契約不適合を修補に代わる損害賠償債務(415条1項本文、2項)とは、同時履行の関係に立つ。

該当する過去問がありません

条文
第536条(債務者の危険負担等)
① 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
② 債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。この場合において、債務者は、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。
過去問・解説

(H23 司法 第24問 1)
Aは、Bから「自分の肖像画を描いてほしい。完成した肖像画と引換えに報酬100万円を払う」と頼まれて請け負い、その後、Bの肖像画を完成させ、A宅に保管していたところ、引渡期日前に、この肖像画は隣人の失火によって焼失した。この場合、Bは、Aに対して、報酬100万円を支払わなければならない。

(正答)  

(解説)
536条1項は、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定している。
本肢の事例では、完成した仕事の目的物である肖像画が隣人の失火により焼失しており、請負人Aの仕事完成債務が「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たる。したがって、「債権者」Bは、「反対給付」である報酬100万円の支払いを拒むことができる。
なお、平成29年改正民法は、利益帰属者危険負担の原則・所有者危険負担の原則を実質的根拠として「特定物であること・種類物の特定」により対価危険が移転すること(債権者主義)を定めていた改正前民法534条・535条を削除した上で、物の滅失・損傷に関する危険が「目的物の引渡し」により売主から買主に移転するという新ルールを定めている(567条1項)。これは、目的物の引渡しにより目的物の支配が売主から買主への移転することに着目したものである(潮見佳男「民法(債権関係)改正法の概要」初版247頁、268~270頁)。567条1項は、売買以外の有償契約にも準用される(559条)ところ、本肢の事例では、「目的物の引渡し」前における履行不能であるから、567条1項ではなく、一般規定である536条1項が適用される。他の選択肢についても同様である。


(H23 司法 第24問 3)
Aは、Bとの間で、「Bが大学を卒業した際には、Aは、A所有の特定の自動車を10万円でBに売り渡す」という契約をしたが、A宅敷地内の車庫に保管されていたこの自動車は、隣人の失火によって焼失し、その後、Bは、大学を卒業した。この場合、Bは、Aに対して、代金10万円を支払わなければならない。

(正答)  

(解説)
536条1項は、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定している。
本肢の事例では、特定物売買における目的物であるA所有の特定の自動車が隣人の失火により焼失しており、売主Aの引渡債務が「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たる。したがって、「債権者」Bは、「反対給付」である代金10万円の支払いを拒むことができる。


(H25 司法 第17問 イ)
建物を目的物とする売買契約が締結された後、その引渡期日が到来する前に売主の占有下で当該建物の全部が滅失した場合、当該建物の滅失が買主の責めに帰すべき事由による場合、売主は、買主に対して代金の支払を請求することはできない。

(正答)  

(解説)
536条は、1項において「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定する一方で、2項前段において「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と規定している。
本肢の事例では、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である買主は、「反対給付」である代金支払債務の履行を拒むことができない。したがって、売主は、買主に対して代金の支払を請求することができる。


(H25 司法 第17問 エ)
建物を目的物とする売買契約が締結された後、その引渡期日が到来する前に売主の占有下で当該建物の全部が滅失した場合、当該建物の滅失が買主の責めに帰すべき事由による場合、買主は、既に売主に代金を支払っているときでも、その返還を請求することはできない。

(正答)  

(解説)
536条は、1項において「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定する一方で、2項前段において「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と規定している。本肢の事例では、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である買主は、「反対給付」である代金支払債務の履行を拒むことができない。この意味において、売主は、買主に対して代金の支払を請求することができる。
もっとも、本肢の事例では、買主は、既に売主に代金を支払っており、支払済みの代金の返還を請求することの可否が問われているところ、平成29年改正民法により、危険負担の法律効果は、反対債務の消滅ではなく、反対債務の履行拒絶に変更されている。したがって、仮に536条1項が適用される場合であっても、「債権者」である買主は、「反対給付」である代金支払債務の履行を拒むことができるにとどまり、代金支払債務が消滅するわけではないから、買主が代金を支払っている場合には、不当利得(703条、704条)として代金の返還を求めることができるわけではない。買主が売主の引渡債務の履行不能を理由に代金の返還を求めるためには、履行不能を理由に売買契約を解除(542条1項1号)した上で原状回復請求権(545条1項本文)する必要がある。


(H26 司法 第16問 ウ)
売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んだ場合において、その後そのワインが買主の過失により滅失したときは、買主は、ワインの代金債務を免れない。

(正答)  

(解説)
536条は、1項において「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定する一方で、2項前段において「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と規定している。
本肢の事例では、売主が債務の本旨に従って買主の住所にワインを持参したが、買主がその受領を拒んでいるから、ワインが滅失した時点では、売主の引渡債務は履行されていない。そして、そのワインが買主の過失により滅失したことにより、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である買主は、「反対給付」である代金債務の履行を拒むことができない。


(H27 司法 第22問 3)
建物の建築を目的とする請負契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由により建築途中の建物が滅失した場合であっても、請負人は、新たに建物を建築し、これを完成させなければ、注文者に対し、請負代金全額の支払を請求することはできない。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法により、危険負担の法律効果は、反対債務の消滅ではなく、反対債務の履行拒絶に変更されている。したがって、仮に536条1項が適用される場合であっても、「債権者」は、「反対給付の履行を拒む」ことができるにとどまり、「反対給付」に係る債務が消滅するわけではない。
本肢の事例では、建物の建築を目的とする請負契約において、当事者双方の責めに帰することができない事由により建築途中の建物が滅失しており、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である注文者は、「反対給付」である請負代金債務の履行を拒むことができる。もっとも、請負人の仕事完成債務は存続しているから、請負人は、新たに建物を建築し、これを完成させれば、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったとき」という状態は解消されるから、注文者は、536条1項に基づいて請負代金債務の履行を拒むことができなくなり、かつ、同時履行の抗弁権(533条本文)も主張できなくなるから、請負代金債務の履行を拒むことができなくなる。この意味において、請負人は、新たに建物を建築し、これを完成させなければ、注文者に対し、請負代金全額の支払を請求することはできない、といえる。


(R1 司法 第24問 ア)
AとBは、平成31年4月1日、A所有の中古自転車(以下「甲」という。)を、同月10日引渡し、同月20日代金支払の約定でBに売却する旨の売買契約を締結した。甲は、平成31年4月8日、Bの責めに帰すべき事由により滅失した。この場合において、AがBに対して同月20日に代金の支払を請求したときは、Bは、この請求を拒むことができない。

(正答)  

(解説)
536条は、1項において「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定する一方で、2項前段において「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と規定している。
本肢の事例では、甲が買主Bの責めに帰すべき事由により滅失しており、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である買主は、「反対給付」である代金支払債務の履行を拒むことができない。


(R2 司法 第15問 エ)
AとBは、Aが所有する骨董品甲をBに100万円で売却する旨の売買契約を締結した。売買契約の締結後、Aが甲をBに引き渡す前に、甲が第三者の失火により焼失したときは、Bの代金支払債務は当然に消滅する。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法により、危険負担の法律効果は、反対債務の消滅ではなく、反対債務の履行拒絶に変更されている。したがって、仮に536条1項が適用される場合であっても、「債権者」は、「反対給付の履行を拒む」ことができるにとどまり、「反対給付」に係る債務が消滅するわけではない。


(R5 司法 第26問 イ)
注文者の責めに帰すべき事由によって請負人が仕事を完成することができなくなったときは、注文者は、報酬の支払を拒むことができない。

(正答)  

(解説)
536条は、1項において「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定する一方で、2項前段において「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができない。」と規定している。
本肢の事例では、注文者の責めに帰すべき事由によって請負人が仕事を完成することができなくなっており、「債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったとき」に当たるから、「債権者」である注文者は、「反対給付」である報酬支払債務の履行を拒むことができない。


(R6 司法 第25問 ア)
特定物甲の売主Aが買主Bから代金の支払を受けるまでに、甲は、ABいずれの責めにも帰することができない事由によって滅失又は損傷した。
甲の滅失がBへの引渡し前に生じた場合において、AがBに対し代金の支払を求めて訴えを提起したときは、Bの危険負担の抗弁は、BがAに対し代金の支払を拒絶することを主張して行使しなければならない。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法により、危険負担の法律効果は、反対債務の消滅ではなく、反対債務の履行拒絶に変更されている。そして、536条1項に基づく履行拒絶の抗弁を主張するものは、抗弁事実として、履行拒絶の意思表示も主張する必要がある(権利抗弁)。したがって、Bの危険負担の抗弁は、BがAに対し代金の支払を拒絶することを主張して行使しなければならない。


(R6 司法 第25問 イ)
特定物甲の売主Aが買主Bから代金の支払を受けるまでに、甲は、ABいずれの責めにも帰することができない事由によって滅失又は損傷した。
甲の滅失がBへの引渡し前に生じた場合において、AがBに対し代金の支払を求めて訴えを提起し、Bの危険負担の抗弁の主張が認められるときは、請求棄却の判決がされる。

(正答)  

(解説)
536条は、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定している。
したがって、甲の滅失がBへの引渡し前に生じた場合において、AがBに対し代金の支払を求めて訴えを提起し、Bの危険負担の抗弁の主張が認められるときは、請求棄却の判決がされる。同時履行の抗弁権(533条本文)が認められた場合と異なり、引換給付判決がされるのではない。


正答率 : 33.3%

(R6 司法 第25問 ウ)
特定物甲の売主Aが買主Bから代金の支払を受けるまでに、甲は、ABいずれの責めにも帰することができない事由によって滅失又は損傷した。
甲の損傷がBへの引渡し前に生じた場合には、過分の費用を要することなく甲を契約の内容に適合した状態に修復して引き渡すことができるときであっても、Bは、危険負担の抗弁を主張して、代金の一部の支払を拒むことができる。

(正答)  

(解説)
536条は、「当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。」と規定おり、412条の2第1項は、履行不能について「債務の履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして不能であるとき」と定義している。
本肢の事例では、特定物甲がABいずれの責めにも帰することができない事由によって損傷しているが、過分の費用を要することなく甲を契約の内容に適合した状態に修復して引き渡すことができるため、売主Aが「債務を履行することができなくなったとき」に当たらない。したがって、Bは、危険負担の抗弁(536条1項)を主張して、代金の一部の支払を拒むこともできない。もっとも、Bは、同時履行の抗弁(533条本文)を主張して、代金の一部の支払を拒むことはできる。

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条文
第537条(第三者のためにする契約)
① 契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。
② 前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。
③ 第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。 
過去問・解説

(H18 司法 第23問 イ)
Aが宝石をBに売り、その代金をBがCに支払うとの契約を締結し、Cが受益の意思表示をした場合、Aが宝石をBに引き渡したが、Bが代金をCに支払わないときは、CはBに対して代金を自己に支払うよう請求することができるが、AもBに対して代金をCに支払うよう請求することができる。

(正答)  

(解説)
537条1項は、「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。」と規定している。
本肢の事例では、要約者(債権者)Aが宝石を諾約者(債務者)Bに引き渡したが、諾約者Bが代金を第三者(受益者)Cに支払わないときは、第三者Cは諾約者Bに対して代金を自己に支払うよう請求することができるが、要約者Aも諾約者Bに対して代金を第三者Cに支払うよう請求することができる。


(H21 司法 第25問 1)
契約により、当事者の一方(債務者)が第三者に対してある給付をすることを約束したときは、その第三者は、債務者に対し、直接にその給付を請求する権利を有する。第三者が債務者に対し、その契約の利益を享受する意思を表示したときは、第三者の権利は、前記契約が成立した時にさかのぼって発生する。

(正答)  

(解説)
537条は、1項において「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。」と規定した上で、3項において「第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。」と規定している。
したがって、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」を取得するのは、第三者のためにする契約が締結された時点ではなく(なお、契約締結時点で、第三者のためにする契約は成立している。)、第三者が債務者に対して利益を享受する意思表示した時である。


(H28 司法 第23問 ア)
Aは、Bとの間で、Aの所有する著名な陶芸家の銘が入った絵皿(以下「甲」という。)をBに300万円で売り、代金はBがCに支払うとの合意をした。AB間の売買契約の当時、Cが胎児であり、受益の意思表示をすることができなかったときは、その後Cが出生したとしてもAB間の売買契約は無効である。

(正答)  

(解説)
537条2項は、第三者のためにする契約について、「前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定している。
したがって、AB間における第三者のためにする売買契約の当時、「第三者」Cが胎児であり、受益の意思表示をすることができなかったときであっても、AB間の売買契約は有効である。


(R2 司法 第23問 エ)
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。売買契約において契約の締結時には出生していなかったFに甲の所有権を取得させることが定められた場合、売買契約は無効である。

(正答)  

(解説)
537条2項は、第三者のためにする契約について、「前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定している。
したがって、第三者のためにする売買契約において契約の締結時には出生していなかった「第三者」Fに甲の所有権を取得させることが定められた場合であっても、売買契約は有効である。


(R4 予備 第10問 ア)
AとBは、AがBに絵画甲を代金50万円で売り、Bがその代金全額をCに支払う旨の契約を締結した。Cは、Bに対して受益の意思を表示した後は、Bに対して直接に50万円の支払を請求する権利を有する。

(正答)  

(解説)
537条は、1項において「契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約したときは、その第三者は、債務者に対して直接にその給付を請求する権利を有する。」と規定した上で、3項において「第1項の場合において、第三者の権利は、その第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する。」と規定している。
したがって、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」を取得するのは、第三者のためにする契約が締結された時点ではなく(なお、契約締結時点で、第三者のためにする契約は成立している。)、第三者が債務者に対して利益を享受する意思表示した時である。


(R4 予備 第10問 イ)
AとBは、AがBに絵画甲を代金50万円で売り、Bがその代金全額をCに支払う旨の契約を締結した。AB間の契約は、その締結時においてCが胎児であったときには、無効である。

(正答)  

(解説)
537条2項は、第三者のためにする契約について、「前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定している。
したがって、AB間における第三者のためにする契約は、その締結時において「第三者」Cが胎児であったときも、有効である。


(R5 司法 第1問 ア)
AがBの母Cとの間で締結した、Aの所有する甲土地をBに無償で与える旨の第三者のためにする契約は、その成立の時にBが胎児であったとしても、そのためにその効力を妨げられない。

(正答)  

(解説)
537条2項は、第三者のためにする契約について、「前項の契約は、その成立の時に第三者が現に存しない場合又は第三者が特定していない場合であっても、そのためにその効力を妨げられない。」と規定している。
したがって、AC間における第三者のためにする契約は、その成立の時に「第三者」Bが胎児であったとしても、有効である。

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条文
第538条(第三者の権利の確定)
① 前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。
② 前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。
過去問・解説

(H18 司法 第23問 ウ)
Aが宝石をBに売り、代金は、AがDと連帯してCに対して負っている借入金債務を弁済するため、BがCに支払うとの契約を締結した場合、既にDがCに対する債務を弁済していたときは、Cが受益の意思表示をした後であっても、Aは、Bとの契約を合意解除することができる。

(正答)  

(解説)
第三者のためにする契約における「第三者の権利」とは、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」であり(537条1項)、これは「第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」ものである(同条3項)。そして、538条2項は、「前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。」と規定している。
本肢の事例では、第三者(受益者)Cが諾約者(債務者)Bに対して受益の意思表示をした時点で、第三者Cが「第三者の権利」を取得するから、それ以降、要約者(債権者)Aは、第三者Cの承諾を得なければ、諾約者Bとの契約を合意解除することができない。


(R2 司法 第23問 オ)
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。売買契約において第三者Gに甲の所有権を取得させることが定められ、Gの受益の意思表示がされた後、Aが甲の引渡しを遅滞した場合、Bは、Gの承諾を得なければ、売買契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
第三者のためにする契約における「第三者の権利」とは、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」であり(537条1項)、これは「第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」ものである(同条3項)。そして、538条2項は、「前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。」と規定している。
本肢の事例では、第三者(受益者)Gが諾約者(債務者)Aに対して受益の意思表示をした時点で、第三者Gが「第三者の権利」を取得するから、それ以降、要約者(債権者)Bは、第三者Gの承諾を得なければ、売買契約を解除することができない。


(R4 予備 第10問 ウ)
AとBは、AがBに絵画甲を代金50万円で売り、Bがその代金全額をCに支払う旨の契約を締結した。AとBは、CがBに対して受益の意思を表示するまでは、合意により代金額を変更することができる。

(正答)  

(解説)
第三者のためにする契約における「第三者の権利」とは、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」であり(537条1項)、これは「第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」ものである(同条3項)。そして、538条1項は、「前条の規定により第三者の権利が発生した後は、当事者は、これを変更し、又は消滅させることができない。」と規定している。
したがって、要約者(債権者)Aと諾約者(債権者)Bは、第三者(受益者)Cが諾約者Bに対して受益の意思を表示するまでは、合意により代金額を変更することができる。


(R4 予備 第10問 エ)
AとBは、AがBに絵画甲を代金50万円で売り、Bがその代金全額をCに支払う旨の契約を締結した。CがBに対して受益の意思を表示した後は、BがCに対して50万円の支払をしない場合であっても、Aは、Cの承諾を得なければ、Bとの契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
第三者のためにする契約における「第三者の権利」とは、「第三者」が「債務者に対して直接にその給付を請求する権利」であり(537条1項)、これは「第三者が債務者に対して同項の契約の利益を享受する意思を表示した時に発生する」ものである(同条3項)。そして、538条2項は、「前条の規定により第三者の権利が発生した後に、債務者がその第三者に対する債務を履行しない場合には、同条第1項の契約の相手方は、その第三者の承諾を得なければ、契約を解除することができない。」と規定している。
したがって、第三者(受益社)Cが諾約者(債務者)Bに対して受益の意思を表示した後は、諾約者Bが第三者Cに対して50万円の支払をしない場合であっても、要約者(債権者)Aは、第三者Cの承諾を得なければ、諾約者Bとの契約を解除することができない。

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条文
第539条(債務者の抗弁)
 債務者は、第537条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。
過去問・解説

(R4 予備 第10問 オ)
AとBは、AがBに絵画甲を代金50万円で売り、Bがその代金全額をCに支払う旨の契約を締結した。CがBに対して受益の意思を表示した後は、AがBに甲を引き渡していない場合であっても、Bは、Cからの50万円の支払請求を拒むことができない。

(正答)  

(解説)
539条は、「債務者は、第537条第1項の契約に基づく抗弁をもって、その契約の利益を受ける第三者に対抗することができる。」と規定している。
したがって、諾約者(債権者)Bは、要約者(債権者)Aに対して有する「第537条1項の契約に基づく抗弁」である同時履行の抗弁(533条本文)をもって、第三者(受益者)Cからの50万円の支払請求を拒むことができる。

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第539条の2

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条文
第539条の2(契約上の地位の移転)
 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。
過去問・解説

(R2 司法 第23問 ウ)
AB間においてAの所有する中古の時計甲の売買契約が締結された。Bが、Eとの間で、売買契約における買主たる地位をEに譲渡する旨の合意をした場合、Aの承諾の有無にかかわらず、買主たる地位はEに移転する。

(正答)  

(解説)
539条の2は、「契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。」と規定している。
したがって、Bが、Eとの間で、売買契約における買主たる地位をEに譲渡する旨の合意をした場合、「その契約の相手方」Aの「承諾」がなければ、買主たる地位はEに移転しない。

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条文
第540条(解除権の行使)
① 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。
② 前項の意思表示は、撤回することができない。
過去問・解説

(R2 予備 第10問 イ)
契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約の目的を達成することができない債務について、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、契約の解除がされたものとみなされ、当該債務は当然に消滅する。

(正答)  

(解説)
540条1項は、「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。」と規定しているから、契約解除の効果が発生するためには、解除の意思表示が必要である。したがって、541条又は542条所定の解除事由が認められる場合であっても、解除の意思表示がなければ、契約は解除により消滅しない。


(R2 司法 第37問 イ)
解除の意思表示は、撤回することができない。

(正答)  

(解説)
540条2項は、解除の意思表示について、「前項の意思表示は、撤回することができない。」と規定している。


(R3 司法 第22問 イ)
契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約の目的を達成することができない債務について、債務者が履行をしないでその時期を経過したときは、契約の解除をすることなく、当該債務は当然にその効力を失う。

(正答)  

(解説)
540条1項は、「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。」と規定しているから、契約解除の効果が発生するためには、解除の意思表示が必要である。したがって、541条又は542条所定の解除事由が認められる場合であっても、解除の意思表示がなければ、契約は解除により消滅しない。

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条文
第541条(催告による解除)
 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。
過去問・解説

(R5 共通 第24問 ア)
債務者が債務の履行をせず、債権者が期間を定めないでその履行の催告をした場合において、その催告の時から相当の期間を経過しても債務が履行されないときは、債権者は、契約を解除することができる。

(正答)  

(解説)
541条本文は、催告による解除について、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」と規定している。

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条文
第542条(催告によらない解除)
① 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができる。 
 一 債務の全部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
 三 債務の一部の履行が不能である場合又は債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示した場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき。
 四 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、債務者が履行をしないでその時期を経過したとき。
 五 前各号に掲げる場合のほか、債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき。
② 次に掲げる場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の一部の解除をすることができる。 
 一 債務の一部の履行が不能であるとき。
 二 債務者がその債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき。
過去問・解説

(H21 司法 第26問 ア)
建物の建築請負契約において、仕事の目的物である建物に種類又は品質に関する契約不適合があり、そのために契約した目的を達することができないときは、注文者は、そのことを理由として契約の解除をすることができる。

(正答)  

(解説)
542条1項5号は、無催告解除できる場合として、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」を挙げている。
したがって、建物の建築請負契約において、仕事の目的物である建物に種類又は品質に関する契約不適合があり、そのために契約した目的を達することができないときは、注文者は、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかである」ことを理由として、無催告で契約を解除することができる。


(H23 司法 第24問 4)
Aは、Bとの間で、「Bが大学を卒業した際には、Aは、A所有の特定の自動車を10万円でBに売り渡す」という契約をしたが、Aの失火によってこの自動車は焼失し、その後、Bは、大学を卒業した。この場合、Bは、この売買契約を解除することはできない。

(正答)  

(解説)
542条1項1号は、無催告解除できる場合として、「債務の全部の履行が不能であるとき」を挙げている。
したがって、買主Bは、売主Aの引渡「債務の全部の履行が不能である」ことを理由として、売買契約を解除することができる。


(H23 共通 第25問 イ)
売買の目的物の種類・品質に契約不適合があった場合、債権者が追完の催告をしても契約した目的を達するのに足りる追完がされる見込みがないことが明らかであるときは、買主は、契約を解除することができる。

(正答)  

(解説)
542条1項5号は、無催告解除できる場合として、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」を挙げている。
したがって、売買の目的物の種類・品質に契約不適合があった場合、債権者が追完の催告をしても契約した目的を達するのに足りる追完がされる見込みがないことが明らかであるときは、買主は、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかである」ことを理由として、無催告で契約を解除することができる。


(H25 司法 第17問 ウ)
建物を目的物とする売買契約が締結された後、その引渡期日が到来する前に売主の占有下で当該建物の全部が滅失した場合、当該建物の滅失が売主の責めに帰すべき事由による場合、買主は、既に売主に代金を支払っているときは、契約を解除して、その代金の返還を請求することができる。

(正答)  

(解説)
542条1項1号は、無催告解除できる場合として、「債務の全部の履行が不能であるとき」を挙げている。
したがって、買主Bは、売主Aの引渡「債務の全部の履行が不能である」ことを理由として、売買契約を解除して、原状回復請求権(545条1項本文)を行使してその代金の返還を請求することができる。


(H25 司法 第17問 オ)
建物を目的物とする売買契約が締結された後、その引渡期日が到来する前に売主の占有下で当該建物の全部が滅失した場合、当該建物の滅失が不可抗力による場合、買主は、既に売主に代金を支払っているときは、その返還を請求することができる。

(正答)  

(解説)
542条1項1号は、無催告解除できる場合として、「債務の全部の履行が不能であるとき」を挙げており、また、平成29年改正民法下では債務者の帰責事由は解除要件とされていない。したがって、その引渡期日が到来する前に売主の占有下で当該建物の全部が滅失した場合、当該建物の滅失が不可抗力による場合、買主は、「債務の全部の履行が不能である」ことを理由として、売買契約を解除して、原状回復請求権(545条1項本文)を行使してその代金の返還を請求することができる。
もっとも、540条1項は、「契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。」と規定しているから、契約解除の効果が発生するためには、解除の意思表示が必要である。したがって、541条又は542条所定の解除事由が認められる場合であっても、解除の意思表示がなければ、契約は解除により消滅しない。よって、買主は、売買契約を解除することなく、代金の返還を請求することはできない。


(H29 共通 第24問 エ)
売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて代金の支払を催告したにもかかわらず、買主が代金の支払を拒絶する意思を明確に表示したときは、売主は、相当の期間が経過する前であっても、当該売買契約を解除することができる。

(正答)  

(解説)
542条1項5号は、無催告解除できる場合として、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」を挙げている。
したがって、売主が目的物を引き渡したが、買主が代金を履行期の経過後も支払わない場合において、売主が買主に対して相当の期間を定めて代金の支払を催告したにもかかわらず、買主が代金の支払を拒絶する意思を明確に表示したときは、売主は、相当の期間が経過する前であっても、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかである」ことを理由として、無催告で当該売買契約を解除することができる。


(R2 予備 第10問 ウ)
債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の全部の解除をすることができる。

(正答)  

(解説)
542条1項3号は、契約全部を無催告解除できる場合として、「債務の一部の履行が不能である場合…において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」を挙げている。
したがって、債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の全部の解除をすることができる。


(R3 司法 第22問 ウ)
債務の一部の履行が不能である場合において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないときは、債権者は、催告をすることなく、直ちに契約の全部の解除をすることができる。

(正答)  

(解説)
542条1項3号は、「債務の一部の履行が不能である場合…において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができない」場合には、債権者は、前条の催告をすることなく、直ちに契約の解除をすることができるとしている。


(R5 共通 第24問 ウ)
債務者が債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなときは、債権者は、催告をせずに直ちに契約を解除することができる。

(正答)  

(解説)
542条1項5号は、無催告解除できる場合として、「債務者がその債務の履行をせず、債権者が前条の催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかであるとき」を挙げている。
したがって、債務者が債務の履行をせず、債権者が催告をしても契約をした目的を達するのに足りる履行がされる見込みがないことが明らかなときは、債権者は、催告をせずに直ちに契約を解除することができる。

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条文
第543条(債権者の責めに帰すべき事由による場合)
 債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるときは、債権者は、前2条の規定による契約の解除をすることができない。
過去問・解説

(H21 司法 第27問 ウ)
Aが所有する甲不動産について、Bを売主とし、Cを買主とする売買契約が成立した場合、Bが甲不動産をAから取得してこれをCに移転することができたにもかかわらず、C自らAと交渉して甲不動産を直接取得したことから、BがAから甲不動産の所有権を取得することができなくなったときは、Cは、甲不動産の売買契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法下では、債務者の帰責事由が解除権の発生要件とされていない一方で、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」が解除権の発生障害事由とされている(543条)。
本肢の事例では、BがAから甲不動産の所有権を取得することができなくなったため、他人物売買における売主の権利供与義務(555条、561条)の「全部の履行が不能であるとき」(541条1項1号)に当たる。しかし、C自らAと交渉して甲不動産を直接取得したことから、BがAから甲不動産の所有権を取得することができなくなっているため、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」に当たるから、解除権は発生しない。したがって、Cは、甲不動産の売買契約を解除することができない。


(R3 共通 第23問 イ)
AB間の売買契約において、売主Aが買主Bに対して引き渡した目的物の数量が不足しており、契約の内容に適合しない場合において、数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じた場合には、BはAB間の売買契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法下では、債務者の帰責事由が解除権の発生要件とされていない一方で、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」が解除権の発生障害事由とされている(543条)。
本肢の事例では、売買契約における契約内容に適合する数量の目的物も引き渡す義務(555条、562条1項参照)の「一部の履行が不能である場合…において、残存する部分のみでは契約をした目的を達することができないとき」(542条1項3号)又は「債務の一部の履行が不能であるとき」(同条2項1号)に当たるから、契約の全部解除又は一部解除の事由が認められる。しかし、数量の不足がBの責めに帰すべき事由によって生じているため、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」に当たるから、解除権は発生しない。したがって、BはAB間の売買契約を解除することができない。


(R5 共通 第24問 イ)
債務者が債務の履行をしない場合において、その不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、債権者は、契約を解除することができない。

(正答)  

(解説)
平成29年改正民法下では、債務者の帰責事由が解除権の発生要件とされていない一方で、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」が解除権の発生障害事由とされている(543条)。
したがって、債務者が債務の履行をしない場合において、その不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、「債務の不履行が債権者の責めに帰すべき事由によるものであるとき」でない限り、債権者は、契約を解除することができない。

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条文
第544条(解除権の不可分性)
① 当事者の一方が数人ある場合には、契約の解除は、その全員から又はその全員に対してのみ、することができる。
② 前項の場合において、解除権が当事者のうちの1人について消滅したときは、他の者についても消滅する。
過去問・解説

(R5 共通 第24問 オ)
賃借人が死亡し、複数の相続人が賃借権を共同相続した場合、賃貸人が賃貸借契約を解除するには、その相続人全員に対して解除の意思表示をしなければならない。

(正答)  

(解説)
545条2項は、解除に伴う原状回復(545条1項本文)について、「前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない」と規定している。また、545条4項は、「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。」と規定している。したがって、動産の売買契約が締結され、売買代金の一部が支払われた後で、当該売買契約が売主の債務不履行を理由に解除された場合、売主は、買主の損害を賠償する義務を負い(415条1項本文)、また、受領した売買代金の一部を返還するに当たっては、その受領の時からの利息を付す必要がある。

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条文
第545条(解除の効果)
① 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
② 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
③ 第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
④ 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。
過去問・解説

(H21 司法 第26問 オ)
動産の売買契約が締結され、売買代金の一部が支払われた後で、当該売買契約が売主の債務不履行を理由に解除された場合、売主は、買主の損害を賠償する義務を負うが、受領した売買代金の一部を返還するに当たっては、その受領の時からの利息を付す必要はない。

(正答)  

(解説)
545条2項は、「前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない」と規定している。そして、同条1項本文は、「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う」と規定している。したがって、売買契約が解除された場合に、売主は、受領した売買代金の一部を返還するに当たり、その「受領の時から利息を付さなければならない」。


(H23 共通 第25問 ウ)
売買の目的物の種類・品質に契約不適合があり、買主がそのことを理由に契約を解除することができる場合、買主は、契約を解除するとともに、売主に対して損害賠償を請求することもできる。

(正答)  

(解説)
545条4項は、「解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。」と規定している。同条4項は、解除の効果に関する直接効果説からは、債権者(解除権者)を保護する趣旨に基づき、法律が特に解除の遡及効に制限を加えることで、損害賠償請求との関係では債務不履行責任が残存するものとして扱い、債権者に履行利益の賠償請求権を認める規定であると理解されることになる(仮に、損害賠償請求との関係でも遡及効を徹底させると、債務ひいては債務不履行の事実も存在しなかったことなり、債権者には信頼利益の賠償が認められるにとどまることになる。)。
したがって、売買の目的物の種類・品質に契約不適合があり、買主がそのことを理由に契約を解除することができる場合、買主は、契約を解除するとともに、売主に対して損害賠償を請求することもできる(ただし、債務不履行に基づく損害賠償請求の要件(415条)を満たす必要がある。)。


(H27 司法 第36問 エ)
売主が、買主から売買代金の一部を受領した後、買主の債務不履行を理由として売買契約を解除した場合において、売主がその売買代金の一部として受領した金銭を買主に返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。

(正答)  

(解説)
545条2項は、解除に伴う原状回復(545条1項本文)について、「前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない」と規定している。したがって、売主が、買主から売買代金の一部を受領した後、買主の債務不履行を理由として売買契約を解除した場合において、売主がその売買代金の一部として受領した金銭を買主に返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。


(H28 司法 第7問 ア)
AがB所有の甲土地をBから買い受け、BからAへの所有権移転登記を経由した後に、AB間の売買契約が解除された場合、Bは、Aに対し、甲土地の所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。

(正答)  

(解説)
545条1項は、「当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。」と規定している。
したがって、当AがB所有の甲土地をBから買い受け、BからAへの所有権移転登記を経由した後に、AB間の売買契約が解除された場合、Bは、Aに対し、原状回復請求権を行使して、甲土地の所有権移転登記の抹消登記手続を請求することができる。


(H29 共通 第16問 ア)
動産の売買契約が締結され、その代金の一部が支払われた後で、当該売買契約が債務不履行を理由に解除された場合、売主は、受領した売買代金の一部を返還するに当たり、その受領の時からの利息を付す必要はない。

(正答)  

(解説)
545条2項は、解除に伴う原状回復(545条1項本文)について、「前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない」と規定している。したがって、動産の売買契約が締結され、その代金の一部が支払われた後で、当該売買契約が債務不履行を理由に解除された場合、売主は、受領した売買代金の一部を返還するに当たり、その受領の時からの利息を付す必要がある。


(R2 予備 第10問 オ)
解除権が行使された場合の原状回復において、金銭以外の物を返還するときは、その物を受領した時以後に生じた果実をも返還する義務がある。

(正答)  

(解説)
545条3項は、解除に伴う原状回復(545条1項本文)について、「第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。」と規定している。


(R3 司法 第22問 オ)
解除権が行使された場合の原状回復において、金銭以外の物を返還するときは、その物を受領した時以後に生じた果実をも返還しなければならない。

(正答)  

(解説)
545条3項は、解除に伴う原状回復(545条1項本文)について、「第1項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。」と規定している。

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条文
第546条(契約の解除と同時履行)
 第533条の規定は、前条の場合について準用する。
過去問・解説

(H27 司法 第21問 エ)
売買契約の解除により両当事者が互いに原状回復義務を負う場合、両当事者の原状回復義務は同時履行の関係にない。

(正答)  

(解説)
546条は、「第533条の規定は、前条の場合について準用する。」として、解除に伴う原状回復について同時履行の抗弁を認めている。
したがって、売買契約の解除により両当事者が互いに原状回復義務を負う場合、両当事者の原状回復義務は同時履行の関係にある。


(H29 共通 第24問 イ)
売主が目的物を引き渡し、買主が代金の一部を支払った場合において、債務不履行を理由に売買契約が解除されたときは、売主の目的物返還請求権と買主の代金返還請求権とは、同時履行の関係にない。

(正答)  

(解説)
546条は、「第533条の規定は、前条の場合について準用する。」として、解除に伴う原状回復について同時履行の抗弁を認めている。
したがって、売主が目的物を引き渡し、買主が代金の一部を支払った場合において、債務不履行を理由に売買契約が解除されたときは、売主の目的物返還請求権と買主の代金返還請求権とは、同時履行の関係にある。


(R1 司法 第22問 イ)
売買の目的物である未登記建物に契約不適合があることを理由に売買契約が解除された場合、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは、同時履行の関係にある。

(正答)  

(解説)
546条は、「第533条の規定は、前条の場合について準用する。」として、解除に伴う原状回復について同時履行の抗弁を認めている。
したがって、売買の目的物である未登記建物に契約不適合があることを理由に売買契約が解除された場合、売主の代金返還義務と買主の建物返還義務とは、同時履行の関係にある。

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条文
第547条(催告による解除権の消滅)
 解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。
過去問・解説

(H22 司法 第4問 ウ)
債務不履行責任を負う契約当事者が、相手方に対し契約を解除するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず確答がなかったときは、以後、その当事者は、相手方から損害賠償の請求を受けることはない。

(正答)  

(解説)
547条は、「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。」と規定している。同条は、催告による解除権の消滅について定めているのであり、催告による損害賠償請求権の消滅について定めているものではない。


(H27 司法 第35問 エ)
債務不履行に基づく解除権が発生した場合、その相手方が、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をし、その期間内に解除の通知を受けなかったときは、解除権は、消滅する。

(正答)  

(解説)
547条は、「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。」と規定している。


(H29 共通 第16問 ウ)
AB間で売買契約が締結され、Aが債務不履行に陥っている場合において、AがBに対して相当の期間を定めて契約を解除するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、Bがその期間内に解除の通知をしないときは、Aは、以後債務不履行責任を負わない。

(正答)  

(解説)
547条は、「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。」として、催告による解除権の消滅について定めているが、債務不履行責任全般(例えば、損害賠償請求権)が消滅するわけではない。


(R2 予備 第10問 ア)
解除権の行使について期間の定めがない場合において、相手方が、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、当該期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する。

(正答)  

(解説)
547条は、「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する。」と規定している。


(R3 司法 第22問 エ)
解除権の行使について期間の定めがない場合において、相手方が、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、当該期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は消滅する。

(正答)  

(解説)
547条は、「解除権の行使について期間の定めがないときは、相手方は、解除権を有する者に対し、相当の期間を定めて、その期間内に解除をするかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その期間内に解除の通知を受けないときは、解除権は、消滅する」と規定している。

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条文
第548条(解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅)
 解除権を有する者が故意若しくは過失によって契約の目的物を著しく損傷し、若しくは返還することができなくなったとき、又は加工若しくは改造によってこれを他の種類の物に変えたときは、解除権は、消滅する。ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。
過去問・解説

(R2 予備 第10問 エ)
解除権を有する債権者が、過失によって契約の目的物を著しく損傷した場合には、その債権者が解除権を有することを知らなかったとしても、解除権は消滅する。

(正答)  

(解説)
548条は、本文において解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅について規定する一方で、但書において「ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。」と規定している。


(R3 司法 第22問 ア)
解除権を有する者が、過失によって契約の目的物を返還することができなくなった場合には、自身が解除権を有することを知らなかったとしても、解除権は消滅する。

(正答)  

(解説)
548条は、本文において解除権者の故意による目的物の損傷等による解除権の消滅について規定する一方で、但書において「ただし、解除権を有する者がその解除権を有することを知らなかったときは、この限りでない。」と規定している。

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第548条の3

ノートページ表示
条文
第548条の3(定型約款の内容の表示)
① 定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。ただし、定型約款準備者が既に相手方に対して定型約款を記載した書面を交付し、又はこれを記録した電磁的記録を提供していたときは、この限りでない。
② 定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。ただし、一時的な通信障害が発生した場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。
過去問・解説

(R3 司法 第16問 ウ)
定型約款中に損害賠償の額を予定する条項があって、定型約款準備者の相手方が、定型取引合意前に定型約款の内容を示すよう請求したにもかかわらず、定型約款準備者が正当な事由なくこれに応じないまま、定型取引合意がされたときは、当該条項は、合意されたものとはみなされない。

(正答)  

(解説)
548条の2第1項2号は、「定型約款…の個別の条項についても合意をしたものとみなす」場合として、「定型約款を準備した者(以下「定型約款準備者」という。)があらかじめその定型約款を契約の内容とする旨を相手方に表示していたとき」を挙げている。そして、548条の3は、第1項本文において、「定型取引を行い、又は行おうとする定型約款準備者は、定型取引合意の前又は定型取引合意の後相当の期間内に相手方から請求があった場合には、遅滞なく、相当な方法でその定型約款の内容を示さなければならない。」と規定する一方で、第2項本文において「定型約款準備者が定型取引合意の前において前項の請求を拒んだときは、前条の規定は、適用しない。」と規定している。
したがって、定型約款中に損害賠償の額を予定する条項があって、定型約款準備者の相手方が、定型取引合意前に定型約款の内容を示すよう請求したにもかかわらず、定型約款準備者が正当な事由なくこれに応じないまま、定型取引合意がされたときは、当該条項は、合意されたものとはみなされない。

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