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民法 第441条 - 解答モード
条文
第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。ただし、債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。
過去問・解説
(H21 司法 第30問 イ)
Aが所有し運転するタクシーに、Bが所有し運転する自家用車が衝突する交通事故が発生し、AB所有の各車両が損傷するとともに歩行者Cが負傷した。当該交通事故により、Aには50万円の損害が、Bには80万円の損害が、Cには100万円の損害が、それぞれ生じ、当該交通事故及びCの負傷についての過失割合はAが2割で、Bが8割であり、また、Cの負傷にはCの過失が認められなかった。CがAに対して事故後5年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起した場合、同訴訟の提起は、BのCに対する損害賠償債務についても消滅時効の完成が猶予される。
(正答) ✕
(解説)
AとBは、共同不法行為者として、Cに対して損害賠償責任を負う(719条1項)。
平成29年改正前民法下では、連帯債務が真正連帯債務と不真正連帯債務に分類され、真正連帯債務についてのみ民法上の連帯債務の規定(436条以下)が適用されると理解されていたため、不真正連帯債務である共同不法行為者の損害賠償責任については民法上の連帯債務の規定は適用されず、その結果、弁済による債務消滅以外の事由については、共同不法行為者の一人に生じた事由は他の共同不法行為者に対してその効力を生じないとされていた。
しかし、平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、改正前民法下において不真正連帯債務と理解されていた連帯債務関係についても、民法上の連帯債務の規定が適用されることとなった。その一環として、共同不法行為者の損害賠償債務についても、連帯債務の規定が適用される。その結果、共同不法行為者の損害賠償債務について、弁済による債務消滅以外の事由についても、絶対的効力が認められる余地がある。
441条本文は、「第438条、第439条第1項及び前条に規定する場合を除き、連帯債務者の1人について生じた事由は、他の連帯債務者に対してその効力を生じない。」として相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、CがAに対して訴訟を提起した場合であっても、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予の効力は、Bには生じない。よって、BのCに対する損害賠償債務については、消滅時効の完成は猶予されない。
(H24 司法 第7問 エ)
AとBが連帯債務を負う場合において、Aが全部の負担部分を有するときは、Bが債権者に対して債務を承認しても、Aの債務について消滅時効は更新せず、その消滅時効が完成しても、Bは債務を免れることができない。
(H24 司法 第7問 オ)
AとBが夫婦の場合、Aが自己の単独名義でCと日常の家事に関して契約を締結して債務を負ったとき、CのAに対する債権の裁判上の請求により、CのBに対する債権の消滅時効も完成が猶予される。
(正答) ✕
(解説)
761条本文は、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。」と規定している。したがって、Aが自己の単独名義でCと「日常の家事に関して」契約を締結して債務を負ったとき、その債務についてA及びBは連帯債務者となる。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、CのAに対する債権の裁判上の請求により、CのAに対する債権の消滅時効は完成を猶予されるが、CのBに対する債権の消滅時効は完成を猶予されない。
(H24 予備 第9問 2)
主たる債務者の意思に反して連帯保証人となった者が、債権者から保証債務の履行を裁判上請求されたときは、主たる債務についての消滅時効の完成が猶予される。
(H24 予備 第9問 3)
主たる債務者から委託を受けて連帯保証人となった者が、債権者に対して保証債務を承認したときは、主たる債務についての消滅時効が更新される。
(正答) ✕
(解説)
普通保証では、弁済その他債権者に満足を与える事由(付従性により債権者に影響を及ぼす事由)を除いては、保証人について生じた事由は、主たる債務者に影響を及ぼさない。これに対し、連帯保証では、連帯保証人の一人について生じた事由について、相対的効力の原則(441条)を採用した上で、更改(438条)、相殺(439条)及び混同(440条)については主たる債務者に影響を及ぼすとされている(458条)。
連帯保証人の「権利の承認」(152条1項)による時効の更新は、相対効効力を有するにとどまるから、連帯保証人が債権者に対して保証債務を承認しても、保証債務の消滅時効が更新されるにとどまり、主たる債務についての消滅時効は更新されない。
(H25 司法 第18問 ウ)
共同不法行為者の1人に対してした債務免除の意思表示は、被害者が他の共同不法行為者に対する債務免除の意思を有していなくても、他の共同不法行為者の利益のためにその効力を生ずる。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られている。したがって、債務免除(519条)は、本来は相対的効力を有するにとどまる。
他方で、441条1項但書は、「ただし、債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したときは、当該他の連帯債務者に対する効力は、その意思に従う。」と規定している。これは、債権者と他の連帯債務者の1人とが絶対的効力を持たせる旨の合意をすることにより、当該事由について絶対的効力を認めることができるとするものである(潮見佳男「プラクティス民法 債権総論」第5版補訂577頁)。本肢の事例では、債務免除について絶対的効力を持たせる旨の合意は認められないから、共同不法行為者の1人に対してした債務免除の意思表示は、他の共同不法行為者の利益のためにその効力を生ずることにはならない。
(H25 司法 第18問 オ)
被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。
(正答) 〇
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。
(H26 司法 第18問 1)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。AがBに対して履行の請求をしても、そのことを知らないC及びDについては、消滅時効の完成は猶予されない。
(H26 司法 第18問 3)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。AがBに対して300万円の連帯債務の全額について免除をした場合には、C及びDは、Aに対し、200万円の連帯債務を負う。
(H26 司法 第18問 4)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている。Bのために消滅時効が完成しても、C及びDは、Aに対し、300万円の連帯債務を負う。
(H29 司法 第20問 イ)
債権者Aに対する債務者Bの債務について、Cを引受人とする併存的債務引受の効力が生じた場合において、Bの債務が時効により消滅したとしても、AはCに対して債務の全額を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
470条1項は、「併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一の内容の債務を負担する。」と規定しているから、併存的債務引受の引受人Cと債務者Bは、連帯債務者の関係にある。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、消滅時効(166条以下)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、Bの債務が時効により消滅したとしても、その効力はCには及ばないから、AはCに対して債務の全額を請求することができる。
(H29 共通 第30問 ア)
Aが運転するタクシーとBが運転するタクシーが衝突する交通事故(以下「本件事故」という。)が発生し、Aが運転するタクシーの乗客Cが負傷し、Cに300万円の損害が生じた。本件事故についての過失割合は、Aが4割で、Bが6割であり、Cに過失はなかった。CがAに対して、本件事故後20年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起すれば、CのBに対する損害賠償請求権の消滅時効は完成しない。
(正答) ✕
(解説)
平成29年改正民法下では、連帯債務が真正連帯債務に一本化されたため、共同不法行為者の損害賠償債務も連帯債務として扱われ、連帯債務の規定の適用を受ける。
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、「裁判上の請求」による消滅時効の完成猶予(147条1項1号)は相対的効力を有するにとどまる。
したがって、被害者が共同不法行為者の1人に対して損害賠償債務の履行を請求しても、他の共同不法行為者の損害賠償債務の消滅時効は完成が猶予されない。よって、CがAに対して、本件事故後20年以内に損害賠償を請求する訴訟を提起しても、Bの損害賠償債務の消滅時効は完成を猶予されないから、CのBに対する損害賠償請求権の消滅時効(724条2号)が完成する。
(H29 司法 第18問 エ)
連帯債務者の1人が債務を承認したことによる時効の更新の効力は、他の連帯債務者には及ばない。
(H30 司法 第22問 エ)
Aに対し、BCDが等しい負担部分で300万円の連帯債務を負っている場合において、AがCに対して300万円の連帯債務全額について免除をしたときでも、B及びDは、Aに対し、300万円の連帯債務を負う。
(R2 共通 第17問 ア)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。DがAに対して甲債務の支払請求訴訟を提起し、請求を認容する判決が確定した場合において、D及びBが別段の意思を表示していないときは、甲債務の消滅時効は、Bについても判決確定の時から新たにその進行を始める。
(正答) ✕
(解説)
441条本文は、連帯債務における相対的効力の原則を定めており、連帯債務における絶対的効力事由は、更改(438条)、相殺等(439条)及び混同(440条)に限られているから、確定判決等による権利確定による消滅時効の更新(147条2項)は相対的効力を有するにとどまる。
D及びBが別段の意思を表示していないため、絶対的効力を持たせる旨の合意も認められないから、「債権者及び他の連帯債務者の1人が別段の意思を表示したとき」(441条但書)にも当たらない。したがって、原則通り、Dについて生じた確定判決による権利確定による消滅時効の更新の効力は、Bには及ばない。よって、甲債務の消滅時効は、Bについては、判決確定の時から新たにその進行を始めることにはならない。
(R2 共通 第17問 イ)
ABCは、Dに対して、60万円の借入金債務(以下「甲債務」という。)を連帯して負担し、負担部分は均等とする合意をしていた。DがCに対して甲債務を免除する意思表示をした場合において、D及びAが別段の意思を表示していないときは、DがAの債務を免除する意思を有していなかったとしても、Dは、Aに対して60万円の支払を請求することはできない。
(R6 司法 第23問 ウ)
A及びBがCに対し60万円の連帯債務を負担する場合において、CがAに対し債務を免除したときは、B及びCが別段の意思を表示していない限り、Cは、Bに60万円の支払を請求することができない。