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故意(故意総論) - 解答モード
条件付故意 最一小判昭和56年12月21日
概要
判例
判旨:「被告人甲は、乙及び丙との間で、被害者らがこがねビル四階のV方に押し掛け又は喧嘩となるなどの事態になれば、被害者を殺害するもやむないとして、V殺害の共謀を遂げ、その際、現実に殺害の実行に着手すべき右の事態については、乙ら現場に赴く者の状況判断に委ねられた、というのである。…謀議された計画の内容においては被害者Vの殺害を一定の事態の発生にかからせていたとしても、そのような殺害計画を遂行しようとする被告人甲の意思そのものは確定的であったのであり、被告人甲は被害者Vの殺害の結果を認容していたのであるから、被告人甲の故意の成立に欠けるところはないというべきである。」
過去問・解説
(H25 予備 第7問 1)
暴力団組長甲は、配下組員乙に対し、「もし、Aがこちらの要求を聞き入れなかったら、Aを殺してこい。Aがこちらの要求を聞き入れるのであれば、Aを殺す必要はない。」旨指示し、乙にけん銃を手渡した上、乙を対立する暴力団組員Aのところに行かせた。乙は、Aが要求を聞き入れなかったので、Aをけん銃で射殺した。甲には殺人罪の故意が認められる。
(R4 司法 第1問 2)
暴力団組員甲は、配下の組員乙に対し、抗争状態にある暴力団組員Aとの間でもめごとが起きた場合にはAを殺害してよいが、実際にAを殺害するかは乙の判断に任せる旨伝えて拳銃を渡し、乙も了承したところ、乙は、Aともめたことから、殺意をもってAを射殺した。甲が乙とAの間でもめごとが起きることがあり得ると認識していた場合、甲には、殺人罪の故意が認められる。
故意における認識の程度 最二小判平成2年2月9日
概要
判例
判旨:「被告人は、本件物件を密輸入して所持した際、覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはないから、これと同旨と解される原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
(H25 予備 第7問 4)
覚せい剤が含まれている錠剤を所持していた甲は、同錠剤について、身体に有害で違法な薬物類であるとの認識はあったが、覚せい剤や麻薬類ではないと認識していた。甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。
(H27 司法 第9問 1)
【事例】
Aは、外国へ旅行に行った際、旅行先で知り合ったBから、荷物を預けるので手荷物として日本まで運んでほしいと依頼され、これを了承し、その荷物を日本に持ち込んだが、荷物の中身は覚せい剤であった。
なお、覚せい剤をみだりに日本に持ち込んだ場合には覚せい剤取締法の輸入罪が成立し、麻薬をみだりに日本に持ち込んだ場合には麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立するものとする。
【記述】
Aは、Bから預かった荷物の中身は「薬物ではない。」と聞かされていたが、「薬物以外の何か違法なものかもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
(H27 司法 第9問 3)
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と聞かされたものの、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず、「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識してこれを日本に持ち込んだ場合でも、「覚せい剤」という認識がある以上、Aには覚せい剤取締法の輸入罪が成立する。
(正答)✕
(解説)
確かに、判例(最判平2.2.9)は、「覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物類であるとの認識があったというのであるから、覚せい剤かもしれないし、その他の身体に有害で違法な薬物かもしれないとの認識はあったことに帰することになる。そうすると、覚せい剤輸入罪、同所持罪の故意に欠けるところはない…。」としており、Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤である。」と聞かされていたため、荷物の中身が覚せい剤であることを認識している以上、事実の錯誤には当たらず、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識していた点は違法性の錯誤にとどまるとも思える。しかし、事実の錯誤とは、刑法的評価の対象となる事実に関する錯誤を意味する一方で、違法性の錯誤とは、刑法的評価の基準となる規範(行為規範それ自体)に関する錯誤を意味すると理解されている(高橋則夫「刑法総論」第5版393頁)。そして、Aは、覚せい剤が違法な薬物であることを知らず、「覚せい剤とは高価な化粧品のことである。」と認識していたのだから、刑法的評価の対象となる事実に関する錯誤、すなわち事実の錯誤が認められる。
したがって、Aについては、事実の錯誤により覚醒剤取締法の輸入罪の故意は認められず、同罪は成立しない。
(H27 司法 第9問 4)
Aは、Bから預かった荷物の中身は「覚せい剤かもしれないし、もしかしたら麻薬かもしれない。」と思ってこれを日本に持ち込んだ場合、Aには客体の認識に錯誤があり、麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪の法定刑が覚せい剤取締法の輸入罪の法定刑よりも軽いときには、Aには麻薬及び向精神薬取締法の輸入罪が成立する。
(H29 司法 第3問 イ)
覚せい剤を含有する粉末を所持していた甲は、同粉末が身体に有害で違法な薬物であることは認識していたが、覚せい剤や麻薬ではないと認識していた。この場合、甲には覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪の故意が認められる。
(R1 司法 第11問 1)
甲は、乙から、甲宛てに荷物を発送したので受け取ってほしいと依頼され、もしかしたら同荷物には覚せい剤を含む身体に有害で違法な薬物が入っているかもしれないと思いながら、乙が覚せい剤を忍び込ませた荷物を受け取って所持していた。この場合、甲には、覚せい剤取締法違反(覚せい剤所持)の罪が成立する。