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放火及び失火の罪(結果) - 解答モード
「焼損」の意義 大判大正7年3月15日
概要
判例
判旨:「苟モ放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」
過去問・解説
(H25 司法 第14問 イ)
「焼損」とは、火力により目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用が失われた状態をいう。
(R1 共通 第8問 3)
「焼損」とは、火力により目的物の重要部分が焼失し、その本来の効用が失われた状態をいい、不燃性の建造物のコンクリート壁が媒介物の火力によって崩落した場合、「焼損」に当たる。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大7.3.15)は、「放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」として、焼損について、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に至ったことを指すことを示している。
不燃性の建造物のコンクリート壁が媒介物の火力によって崩落したとしても、火が媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したとはいえないから、「焼損」に当たらない。
(R5 司法 第8問 5)
甲は、Vが居住する木造家屋の押し入れの床にガソリンをまいて火をつけたところ、同押し入れの床板が独立して燃焼するに至ったが、他に燃え移る前に消し止められた。この場合、上記家屋の効用を失うに至っていなければ、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立することはない。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大7.3.15)は、「放火ノ所為カ一定ノ目的物上ニ行ハレ導火材料ヲ離レ独立シテ燃焼作用ヲ営ミ得ヘキ状態ニ在ルトキハ公共ノ静謐ニ対スル危険ハ既ニ発生セルヲ以テ縦令其目的物ヲシテ全然其効用ヲ喪失セシムルニオヨハサルモ刑法ニ所謂焼燬ノ結果ヲ生シ放火ノ既遂状態ニ達シタルモノトス」として、焼損について、火が媒介物を離れて目的物に燃え移り、目的物が独立して燃焼を継続する状態に至ったことを指すことを示している。
甲が火をつけたところ、押し入れの床板が独立して燃焼するに至っているから、家屋の効用を失うに至っていなくとも、甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。
「焼損」の意義 最三小判昭和23年11月2日
概要
判例
判旨:「被告人が原判示家屋の押入内壁紙にマッチで放火したため火は天井に燃え移り右家屋の天井板約1尺4方を焼燬した事実を認定しているのであるから、右の事実自体によって、火勢は放火の媒介物を離れて家屋が独立燃焼する程度に達したことが認められるので、原判示の事実は放火既遂罪を構成する事実を充たしたものというべきである。されば、原判決が右の事実に対し刑法第108条を適用して放火既遂罪として処断したのは相当…。」
過去問・解説
(H18 司法 第19問 ア)
甲は、木造アパートの空室の壁際に置いてあったダンボール箱に火をつけ、火を板壁に燃え移らせて放火したが、板壁の一部を焼損した時点で、アパートの住民に消し止められた。甲は、そのアパートに人が居住している部屋があることを認識していたが、人が居住する部屋に延焼するかもしれないとは認識しておらず、空室のみを焼損するつもりだった。甲に現住建造物等放火既遂罪が成立する。
(H20 司法 第10問 オ)
甲は、多数人が住居として使用する乙所有の集合住宅1棟を全焼させる意思で、同住宅のうち、だれも現在しない空き部屋に放火した。他の住居部分に燃え移る可能性はあったが、甲が放火した空き部屋の床及び天井の大部分が燃焼した時点で消火されたため、他の住居部分は燃焼しなかった。この場合、甲には現住建造物等放火未遂罪が成立するにとどまる。
「公共の危険」の意義 最三小決平成15年4月14日
概要
② 市街地の駐車場において、放火された自動車から付近の2台の自動車に延焼の危険が及んだことなど判示の事実関係の下では、110条1項にいう「公共の危険」の発生が認められる。
判例
判旨:「同法110条1項にいう『公共の危険』は、必ずしも同法108条及び109条1項に規定する建造物等に対する延焼の危険のみに限られるものではなく、不特定又は多数の人の生命、身体又は前記建造物等以外の財産に対する危険も含まれると解するのが相当である。そして、市街地の駐車場において、被害車両からの出火により、第1、第2車両に延焼の危険が及んだ等の本件事実関係の下では、同法110条1項にいう『公共の危険』の発生を肯定することができるというべきである。本件について同項の建造物等以外放火罪の成立を認めた原判決の判断は、正当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第3問 ①)
教授と学生A及びBが、刑法第110条の建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」に関する議論をしている。
【発言】
教 授. 刑法第110条第1項に規定される建造物等以外放火罪は、条文上「公共の危険」の発生を要求していますが、Aさんは、この「公共の危険」の内容について、どのように考えますか。
学生A. 私は、「公共の危険」とは、①(a. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に対する延焼の危険・b. 現住建造物等又は他人所有の非現住建造物等に限定せず、不特定又は多数の人の生命、身体又は財産に対する危険)をいうと理解しています。
教 授. Aさんの考え方は、判例の立場と同じですね。
学生A. はい、そうです。
学生B. 私は、判例の立場には反対しています。Aさんの考え方だと、例えば、犯人が小さなゴミ箱1個に放火した際、たまたまその横に置き忘れられていた不特定人の小さな物品1個に延焼の危険が発生しても、「公共の危険」が発生したとされかねず、不当な結果にならないでしょうか。
学生A. 私の立場に立っても、各事案ごとの具体的状況の中で火災に基づく危険の拡大作用が認められるかどうかを判断することになると思います。
(H24 共通 第17問 1)
甲は、日頃恨みを持っていたVの所有する自動車が止めてある駐車場に出向き、同車にガソリンをかけて火をつけ、同車を焼損させたところ、同駐車場に駐車されていた第三者が所有する自動車10台に延焼する危険が生じたものの、駐車場が住宅地から離れていたため、住宅その他の建物に延焼する危険は生じなかった。甲には建造物等以外放火既遂罪は成立しない。
(H30 司法 第16問 エ)
甲は、住宅街の中にある駐車場内に駐車されていた乙所有の自動車にガソリンをまいて放火したところ、同自動車が勢いよく炎上し、その付近に駐車されていた所有者の異なる自動車3台に火が燃え移りかねない状態になったが、付近の建造物に燃え移る危険は生じなかった。甲には他人所有建造物等以外放火罪(第110条第1項)は成立しない。
建造物等以外放火罪と公共の危険 最一小決昭和60年3月28日
概要
判例
判旨:「110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきである…。」
過去問・解説
(H19 司法 第3問 ⑤)
教授と学生A及びBが、刑法第110条の建造物等以外放火罪の成立要件である「公共の危険」に関する議論をしている。
【発言】
教 授. 建造物等以外放火罪が成立するためには、「公共の危険」の認識が必要かどうかについて議論しましょう。
学生B. 私は、「公共の危険」の認識は、 必要と考えます。なぜなら、責任主義の原則から考えて結果的責任は否定されるべきであるからです。
学生A. しかし、あなたの考えでは、実際上、現住建造物等放火罪又は他人の所有の非現住建造物等放火罪の未必の故意が認められてしまうという問題が生じませんか。
学生B. 私の立場でも、刑法第110条における「公共の危険」の認識内容について、延焼の危険の認識と区別することは可能だと考えます。
教 授. この点に関するあなたの考え方は、判例と同じですか。
学生B. 私は、判例に⑤(i. 賛成・j. 反対)する立場です。
(H21 司法 第11問 5)
甲は、公共の危険発生の認識がないまま、自己所有の自動車に放火してこれを焼損したところ、公共の危険が生じた。この場合、甲には公共の危険発生の認識がないのであるから、建造物等以外放火罪の既遂罪は成立しない。
(H25 予備 第7問 2)
甲は、駐車場で他人の所有する自動車に放火し、公共の危険を生じさせた。その際、甲は、公共の危険が発生するとは認識していなかった。甲には建造物等以外放火罪の故意は認められない。
(H29 予備 第8問 4)
甲は、不要となった甲所有の自動車を燃やそうと考え、同自動車に放火し全焼させ、公共の危険を生じさせた。甲に公共の危険が生じることについての認識がなかった場合でも、甲には、建造物等以外放火罪が成立する。
(R3 司法 第16問 3)
甲は、自己が所有する自動二輪車に放火してこれを焼損し、よって公共の危険を生じさせたが、その公共の危険が生じることについての認識はなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪は成立しない。