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刑法 密閉された室内全体にガソリンを撒いた行為と放火罪の実行の着手 横浜地判昭和58年7月20日 - 解答モード

概要
木造建物を焼燬する目的で密閉された室内全体にガソリンを撒いた行為は放火罪の実行の着手に当たる。
判例
事案:木造建物を焼燬する目的で密閉された室内全体にガソリンを撒いた事案において、放火罪の実行の着手に当たるかが問題となった。

判旨:「本件家屋は木造平成家建であり、内部も特に不燃性の材料が用いられているとは見受けられず、和室にはカーペットが敷かれていたこと、本件犯行当時、本件家屋は雨戸や窓が全部閉められ密閉された状態にあったこと、被告人によって撒布されたガソリンの量は、約6.4リットルに達し、しかも6畳及び4畳半の各和室、廊下、台所、便所など本件家屋の床面の大部分に満遍無く撤布されたこと、右撒布の結果、ガソリンの臭気が室内に充満し、被告人は鼻が痛くなり、目もまばたきしなければ開けていられないほどであったことが認められるのであり、ガソリンの強い引火性を考慮すると、そこに何らかの火気が発すれば本件家屋に撒布されたガソリンに引火し、火災が起こることは必定の状況にあったのであるから、被告人はガソリンを撒布することによって放火について企図したところの大半を終えたものといってよく、この段階において法益の侵害即ち本件家屋の焼燬を惹起する切迫した危険が生じるに至ったものと認められるから、右行為により放火罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。
 よって、右の点に関する弁護人の主張は採用できない。
 (なお、前記のとおり本件焼燬の結果は被告人自身がタバコを吸おうとして点火したライターの火に引火して生じたものではあるが、前記の状況の下でライターを点火すれば引火するであろうことは一般人に容易に理解されるところであって予想し得ないような事柄ではなく、被告人はライターを点火する時に本件家屋を焼燬する意思を翻したわけでもないから、右のような経緯で引火したことにより本件の結果が生じたからといって因果関係が否定されるものではなく、被告人は放火既遂罪の刑責を免れない。)」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(R2 司法 第11問 ウ)
甲は、Vが居住する木造家屋に火をつけて焼損しようと考え、同家屋台所において、プロパンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに、ガソリン約18リットルを撒布したが、点火行為には至らなかった。甲には、現住建造物等放火未遂罪が成立する。

(正答)

(解説)
裁判例(横浜地判昭58.7.20)は、「被告人はガソリンを撒布することによって放火について企図したところの大半を終えたものといってよく、この段階において法益の侵害即ち本件家屋の焼燬を惹起する切迫した危険が生じるに至ったものと認められるから、右行為により放火罪の実行の着手があったものと解するのが相当である。」としている。
甲は、乙が居住する木造家屋にプロパンガスを多量かつ長時間にわたり放出するとともに、引火性の高いガソリン約18リットルを撒布しているから、この時点で現住建造物放火罪の実行の着手が認められる。
したがって、甲には、現住建造物等放火未遂罪が成立する。

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