現在お使いのブラウザのバージョンでは、本サービスの機能をご利用いただけない可能性があります
バージョンアップを試すか、Google ChromeやMozilla Firefoxなどの最新ブラウザをお試しください
刑法 共同正犯と意思連絡の要否 大判大正11年2月25日 - 解答モード
概要
判例
判旨:「刑法第六十條ニ二人以上共同シテ犯罪ヲ實行シタル者ハ皆正犯トスト規定シ行爲者各自カ犯罪要素ノ一部ヲ實行スルニ拘ラス其ノ實行部分ニ應シテ責任ヲ負擔スルコトナク各自犯罪全部ノ責任ヲ負フ所以ハ共同正犯カ單獨正犯ト異リ行爲者相互間ニ意思ノ連絡即共同犯行ノ認識アリテ互ニ他ノ一方ノ行爲ヲ利用シ全員協力シテ犯罪事實ヲ發現セシムルニ由ル然ルニ若シ行爲者間ニ意思ノ連絡ヲ缺カンカ縱令其ノ一人カ他ノ者ト共同犯行ノ意思ヲ以テ其ノ犯罪ニ參加シタリトスルモ全員ノ協力ニ因リテ犯罪事實ヲ實行シタルモノト謂フヲ得サルカ故ニ共同正犯ノ成立ヲ認ムルヲ得サルモノトス故ニ共同正犯トシテ問擬スルニハ判文中行爲者相互ノ間ニ意思ノ連絡アリタルコトヲ認ムルニ足ルヘキ事實理由ノ明示ナカルヘカラス然ルニ原判示ニ依レハ被告想市ニ對シ刑法第六十條適用シ脅迫住居侵入建造物損壞器物毀棄傷害罪ノ法條ニヨリ同被告ヲ處分シタルニ拘ラス其ノ事實理由ニハ單ニ被告想市ハ被告浮松等カ新藏方ヘ押寄セタルコトヲ聞知シ其ノ襲撃ニ參加シ右被告等ト共ニ新藏方住宅内ニ石煉瓦等ヲ投込ミ且拔刀ヲ振ツテ屋内ニ侵入シ之ヲ疊ニ突キ立テナカラ新藏等ニ對シ(以下中畧)脅迫シ前記被告等ノ犯行ニ加擔シタリトアルノミニシテ被告想市ト他ノ被告トノ間ニ叙上脅迫侵入建造物損壞器物毀棄及傷害ノ各犯行ヲ共同實行スヘキ意思連絡アリタルヤ否詳カナラス從テ被告想市ノ行爲カ共同正犯トシテ前記各罪ヲ構成スルヤ否之ヲ知ルニ由ナキヲ以テ原判決ハ此ノ點ニ於テ理由不備ノ不法アリ同判決中被告想市ニ關スル部分ハ破毀ヲ免レス」
過去問・解説
(H20 司法 第5問 イ)
甲と乙が、丙に対して同時に1発ずつけん銃を発射し、そのうち1発は丙の頭部をかすめたものの命中せず、もう1発が丙の頭部に命中し、それにより丙は死亡した。丙の頭部に命中した銃弾が甲乙いずれのけん銃から発射されたものであるかは判明しなかった。甲は、乙がけん銃を発射することを知り、乙と共同して丙を殺害する意思で自らもけん銃を発射したが、乙は、甲がけん銃を発射することも丙を殺害しようとしていることも知らないまま、自分1人で丙を殺害する意思をもってけん銃を発射した場合、甲には殺人罪の共同正犯が成立し、乙には殺人未遂罪の単独犯が成立する。
(H22 司法 第5問 イ)
甲は、人通りの少ない道路を通行中、知人の乙が見知らぬ丙を「金を出せ。」と言いながらロープで縛り上げ、丙を道路脇の草むらの中に連れ込むのを偶然目撃した。甲が、乙が立ち去ったのを見届けてから草むらの中に入ったところ、丙が縛られたままでいたので、甲は、丙が身に付けていた腕時計を奪った。強盗罪の共同正犯が成立するか。
(H24 共通 第15問 4)
【事例】
甲と乙は、V経営の食料品店で買った弁当を食べたら食中毒になった旨の嘘を言って因縁を付けてVを脅迫するとともに、同人に軽度の暴行を加え、これらの暴行・脅迫により同人を畏怖させて、損害賠償金の名目で50万円を支払わせ、これを分配することを計画した。乙は、計画に従い、同店に行き、Vに対し、「この店の弁当を食べたら食中毒になった。店の営業を続けたければ50万円払え。払わないと、この店の弁当で食中毒になったと書いたビラをばらまくぞ。」と語気鋭く申し向けた上、Vの額を手の平成で軽くたたいた。Vは、これをよけようとした際、バランスを崩して転倒し、全治約1週間を要する後頭部打撲の怪我を負った。
Vは、乙が食中毒になったことは嘘であると気付いたが、乙の要求に応じないと、更に暴力を振るわれたり、店を中傷するビラをまかれるかもしれないと畏怖し、手持ちの現金30万円を乙に渡し、残りの20万円は翌日支払うことで乙を納得させた。
乙は、同店を出て、甲と会い、前記経緯を説明した上、Vから受け取った30万円のうち15万円を分け前として甲に渡した。
乙は、翌日、同店を訪れてVから残りの20万円を受け取ろうとしたが、通報を受けた警察官が同店近くにいたので、20万円の受取は断念した。
乙は、甲に事前に相談することなく、腹いせに、「V経営の食料品店で買った弁当を食べた客が食中毒になった。」という虚偽の事実が書かれたビラを多数の者に配った。
なお、甲は、乙がVに怪我を負わせることや前記ビラを配ることを予想していなかった。
【記述】
虚偽のビラを配ったことについて、甲には、信用毀損罪も業務妨害罪も成立しない。
(H25 共通 第17問 4)
甲は、V宅に石を投げ付け窓ガラスを割り始めた。これをたまたま見た乙は、自分も窓ガラスを割りたいと思い、甲に気が付かれないよう、V宅に石を投げ付け、甲が割った窓ガラスとは別の窓ガラスを割った。甲と乙には器物損壊罪の共同正犯は成立しない。
(H26 司法 第7問 3)
Aは、BがVを殴打しようとしているときに、Bに気付かれずにVの足を押さえ付けたため、Bは、Vの顔面を殴打して顔面打撲の傷害を負わせることができた。この場合、Aには傷害罪の共同正犯が成立する。
(R4 司法 第7問 1)
甲は、友人乙がV所有の自動車(以下「V車」という。)の車体をバットで叩いて損壊しているのを発見し、自分も加勢しようと考え、乙に気付かれないように物陰から石を投げ付け、V車の窓ガラスを割った。乙は、その直後に周囲を見回し、物陰にいた甲の姿を見て、甲がV車に石を投げ付けたと認識したが、それ以降は、甲及び乙のいずれも、V車の損壊行為を行わなかった。この場合、甲には、器物損壊罪の共同正犯が成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判大11.2.25)は、「若シ行爲者間ニ意思ノ連絡ヲ缺カンカ縱令其ノ1人カ他ノ者ト共同犯行ノ意思ヲ以テ其ノ犯罪ニ參加シタリトスルモ全員ノ協力ニ因リテ犯罪事實ヲ實行シタルモノト謂フヲ得サルカ故ニ共同正犯ノ成立ヲ認ムルヲ得サルモノトス」として、意思連絡を欠く片面的共同正犯を否定している。
甲がV車の窓ガラスを割るまで、甲乙の間で何ら意思の連絡もないから、行為者間に意思の連絡を欠いているといえる。
また、乙は、その直後に周囲を見回し、物陰にいた甲の姿を見て、甲がV車に石を投げ付けたと認識したが、それ以降は、甲及び乙のいずれもV車の損壊行為を行わなかったから、共同実行の事実も欠ける。
したがって、甲に器物損壊罪の共同正犯は成立しない。