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刑法 過失の共同正犯の成否 最二小判昭和28年1月23日 - 解答モード
概要
判例
判旨:「被告人両名は、飲食店Aから仕入れた『ウイスキー』と称する液体には『メタノール』(メチルアルコール)を含有するかも判らないから、十分にこれを検査し、『メタノール』を含有しないことを確めた上で、客に販売すべきであったに拘らず、不注意にも何等の検査をせず、被告人両名は、『意思を連絡して』本件液体を販売した事実を認定したのである。
即ち、原判決は、被告人両名の共同経営にかかる飲食店で、右のごとき出所の不確かな液体を客に販売するには『メタノール』を含有するか否かを十分に検査した上で、販売しなければならない義務のあることを判示し、被告人等はいずれも不注意にもこの義務を懈り、必要な検査もしないで、原判示液体は法定の除外量以上の『メタノール』を含有しないものと軽信してこれを客に販売した点において有毒飲食物等取締令4条1項後段にいわゆる『過失ニ因リ違反シタル』ものと認めたものであることは原判文上明らかである。しかして、原判決の確定したところによれば、右飲食店は、被告人両名の共同経営にかかるものであり、右の液体の販売についても、被告人等は、その意思を連絡して販売をしたというのであるから、此点において被告人両名の間に共犯関係の成立を認めるのを相当とするのであって原判決がこれに対し刑法60条を適用したのは正当であって、所論のような違法ありとすることはできない。」
過去問・解説
(H25 司法 第15問 4)
複数の行為者につき、行為者共同の注意義務が観念でき、行為者がその共同の注意義務に違反し、共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には、過失犯の共同正犯が成立し得る。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭28.1.23)は、「右飲食店は、被告人両名の共同経営にかかるものであり、右の液体の販売についても、被告人等は、その意思を連絡して販売をしたというのであるから、此点において被告人両名の間に共犯関係の成立を認めるのを相当とする…。」として、共同の注意義務を観念した原判決の判断を支持している。
また、その後の判例(最決平28.7.12)は、「業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには,共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である…。」として、過失犯の共同正犯の成立のためには、共同の注意義務に違反したことが必要であるとしている。
したがって、行為者共同の注意義務が観念でき、行為者がその共同の注意義務に違反し、共同の注意義務違反と発生した結果との間に因果関係が認められる場合には、過失犯の共同正犯が成立し得る。
(H29 共通 第11問 ア)
【事例】
土木作業員甲及び乙は、現場監督者丙の監督の下で、X川に架かる鉄橋の橋脚を特殊なA鋼材を用いて補強する工事に従事していたが、作業に手間取り、工期が迫ってきたことから、甲及び乙の2人で相談した上で、より短期間で作業を終えることができる強度の弱いB鋼材を用いた補強工事を共同して行った。その結果、工期内に工事を終えることはできたものの、その後発生した豪雨の際、A鋼材ではなくB鋼材を用いたことによる強度不足のために前記橋脚が崩落し、たまたま前記鉄橋上を走行していたV1運転のトラックがX川に転落し、V1が死亡した。なお、甲及び乙は同等の立場にあり、甲及び乙のいずれについても、B鋼材を工事に用いた場合に強度不足のために前記橋脚が崩落することを予見していなかったものの、その予見可能性があったものとする。
【記述】
甲及び乙には、強度の弱いB鋼材で補強工事を行うことの意思連絡はあるが、不注意の共同はあり得ないから、甲及び乙に業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地はない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭28.1.23)は、「右飲食店は、被告人両名の共同経営にかかるものであり、右の液体の販売についても、被告人等は、その意思を連絡して販売をしたというのであるから、此点において被告人両名の間に共犯関係の成立を認めるのを相当とする…。」として、共同の注意義務を観念した原判決の判断を支持している。
また、その後の判例(最決平28.7.12)は、「業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには,共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である…。」として、過失犯の共同正犯の成立のためには、共同の注意義務に違反したことが必要であるとしている。
甲と乙は、共同で工事をし、A鋼材を用いて補強するべき義務を負っていたが、短期間で作業を終えることができる強度の弱いB鋼材を用いた補強工事を共同して行ったから、共同の業務上の注意義務に共同して違反したといえる。
したがって、不注意の共同もあり得るため、甲及び乙に業務上過失致死罪の共同正犯が成立する余地がある。
(R3 共通 第1問 1)
共同正犯に関する刑法第60条は、意思の連絡を要件としているので、過失犯には適用されない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭28.1.23)は、「右飲食店は、被告人両名の共同経営にかかるものであり、右の液体の販売についても、被告人等は、その意思を連絡して販売をしたというのであるから、此点において被告人両名の間に共犯関係の成立を認めるのを相当とする…。」として、共同の注意義務を観念した原判決の判断を支持している。
また、その後の判例(最決平28.7.12)は、「業務上過失致死傷罪の共同正犯が成立するためには,共同の業務上の注意義務に共同して違反したことが必要である…。」として、過失犯の共同正犯の成立のためには、共同の注意義務に違反したことが必要であるとしている。
いずれの判例も、共同正犯に関する60条を過失犯にも適用できることを前提としている。